「事項要求」の乱発で大幅上乗せ
8月31日、防衛省は2027年度(次の防衛力整備計画の初年度)予算の概算要求*として過去最大の8兆8908億円を決定した。
*「防衛省資料:令和9年度概算要求の概要」
https://www.mod.go.jp/j/budget/yosan_gaiyo/fy2027/yosan_20260831.pdf
15年連続の増額であり、2022年度比では6割以上もの増加である。今回の概算要求の最大の特徴は、150を超える事業が金額を示さない「事項要求」として要求されたことだ。事業の実施を要求しながら必要額を概算要求段階では示さず、安保3文書の改訂を見込んで、国会審議直前の年末の予算編成まで先送りする仕組みである。改訂作業を進める「総合的な国力から安全保障を考える有識者会議」では、次期防衛力整備計画を5年間で70兆円規模とする案が報じられている。政府が見込む2026年の名目GDP691.9兆円とし、米の要求に忠実に従うとすれば、来年度はGDP比2%でも約13.8兆円、3.5%を5年計画で達成なら約24.2兆円に達する。従来の2倍ペースで毎年2兆円づつ軍事費を増やす法外な軍拡だ。米国が求める3.5%(関連費5%)が現実になれば、財政と暮らしへの負担はとんでもない規模になる。
膨大な予算は何に使われるのか―「防衛力の変革」の中身
防衛省は「5年以内に防衛力を変革する」として「新しい戦い方」への全面的な移行を押し出している。従来の戦争の仕方、軍事技術を全面的に刷新するつもりだ。その内容として、①AI、②無人アセット、③スタンド・オフ、④統合防空ミサイル防衛、⑤宇宙、⑥サイバーの6項目を掲げる。さらに、⑦太平洋・シーレーン防衛、⑧防衛生産・技術基盤、⑨人的基盤の3項目を掲げる。自衛隊は戦争を自動化し、さらに強大な攻撃力の獲得に向けて突き進んでいる。
AI指揮統制――「米国技術」で早期整備
予算要求の最大の目玉は、AIを使った指揮統制と標的選定の自動化だ。統合作戦司令部の意思決定支援には海外技術の早期導入(米国パランティア社のAI戦闘システム「Maven Smart System」が有力)が明記され、複数のAIを連動させる仕組み(「AIオーケストレーター」)、高機密情報を扱うクラウド、防衛情報通信基盤が整備される。狙いは、偵察で得た情報を分析し、標的を選び、攻撃を命じるまでの時間を短縮することにある。米国製AIが指揮統制システムの中核になることにより、日米軍事一体化、日本の軍事的従属は新たな段階に入る。日米軍事演習(キーン・エッジ、ヤマサクラ)において運用試験が開始されているが、米のAIの判断に自動的に従うことになり、独自の判断はますます弱まる。情報の誤りやAIの誤認があれば、誤った判断が短時間で攻撃命令につながる。実際、米国パランティア社のシステムに基づくイラン南部ミナブの学校への攻撃では、多数の子どもを含む民間人が死亡した。また、最近中国船が核兵器の部品を運んでいるという誤情報から米軍が臨検を準備し、直前に誤りが判明して中止された事例もある。
無人アセット(偵察・攻撃装備)「安く、大量に、人が死なずに?」
AIと並ぶ重点項目が、無人機の大量導入である。防衛省は「世界一無人アセットを駆使する組織」を目標に掲げ、さまざまな種類の無人機を大量に導入しようとしている。滞空型無人攻撃機MQ9B(1機76億円)の17機購入をはじめ、小型攻撃用ドローン各種など陸海空自衛隊がこぞって大量かつ多様なドローンの導入が目論まれている。ウクライナや中東の戦争では、すでにドローンが戦闘のあり方を大きく変えている。自衛隊へのドローン販売をめぐっては、国内外の大手軍需企業や新興企業が群がっている。イスラエル製ドローンも候補に挙がっている。
長射程ミサイルの多層化による対中攻撃力の増強
地上、艦艇、戦闘機から発射する各種長射程ミサイルの量産と配備を進め始めた。25式地対艦ミサイルの取得加速に加え、同ミサイルやトマホーク(マッハ1)を速度で5倍上回る25式高速滑空弾や超音速誘導弾など高速、迎撃困難なミサイルの開発、配備を加速する。これらはこれまで保有してこなかった中距離弾道弾に近いミサイルになる。
2027年度要求には、水中から発射する極超音速誘導弾、潜水艦にミサイルを搭載する垂直発射システム、無人潜水艇(UUV)から長射程ミサイルを発射する装置の研究が盛り込まれた。攻撃手段が陸・海・空・海中へ広がれば、相手側はどこから攻撃されるか予測しにくくなる。こうした増強は、中国に新たな脅威として受け止められ、軍事的緊張を高める。
戦闘領域を宇宙・サイバー・情報空間へ拡大 予算要求は、ミサイルだけでなく、宇宙、サイバー、電磁波、情報空間にも広がっている。ミサイル防衛では、迎撃ミサイルSM6PAC3―MSEの金額が「事項要求」とされている。宇宙分野では、宇宙空間を監視するシステムの強化に99億円、衛星への妨害を把握する装置に34億円、衛星画像などの解析データに327億円と追加の事項要求を計上した。サイバー分野では、相手のシステムに入り攻撃を止める「アクセス・無害化措置」と通信情報の利用に308億円と事項要求を盛り込んだ。電磁波分野でも、新型電子戦機を事項要求とし、相手の通信やレーダーを妨害する装置に29億円と事項要求を計上している。さらに、防衛政策局には「認知戦」の専門部署が設けられ、情報発信や世論も作戦の対象になろうとしている。
自衛隊の活動範囲を太平洋と海上交通路へ拡大
概算要求には、新たな柱として「太平洋・シーレーン防衛」が加わった。シーレーンとは、資源や食料を運ぶ重要な海上交通路のことである。具体策として、「いずも」型護衛艦の改修、北大東島の警戒監視施設、硫黄島の荷役施設の調査などが盛り込まれている。これにより、自衛隊の活動範囲は南西諸島から西太平洋・第2列島線へ広がる。フィリピン軍やオーストラリア軍への武器輸出も進められていることと合わせ、自衛隊は、米アジア太平洋軍を司令塔とする中国包囲の軍事体制の中で、決定的かつ不可欠な役割を担うことになる。
長期戦に備え、弾薬庫を増設し司令部を地下化
「継戦能力」とは、攻撃を受けた後も指揮命令を続け、弾薬、燃料、食料、部品、人員を補給しながら戦闘を続ける力をいう。長期戦への備えとして、弾薬庫の増設と司令部の地下化が進められている。しかし、防護の対象は指揮中枢や兵器が中心で、戦闘の持続が目的であり、住民をどう守るかなどは全く眼中にない。
予算が支える軍需産業の利益
大軍拡によって利益を得るのは、一部の巨大軍需資本と関連企業だ。最近は新しい戦争技術に素早く対応するために軍事スタートアップ企業の育成にも手を出す。概算要求に盛り込まれた長射程ミサイル、無人機、艦艇などの調達・開発は、軍需企業の受注拡大に直結する。重工3社の防衛関連受注残高は、2026年3月末時点で6兆2500億円に達した。国が工場や設備を所有して企業に使わせるGOCO制度や、企業再編への出資を通じて、設備投資と開発のリスクも公費で負担する。つまり、軍事予算は、安全保障を名目に軍需企業の受注と利益を公費で支える仕組みでもある。この他、武器輸出や軍事技術開発を目的とする法人が国によって設立され、その業務を担う部署も防衛省内に新たに設置される。
防衛省を超えて膨らむ軍事関連予算
軍備拡張に関わる予算は、防衛省だけに計上されているわけではない。政府は「骨太の方針」で、通常の歳出とは別に『「強く豊かな日本」投資枠』を設けた。各省庁の要求額を見ると、外務省は安全保障関連のODA・OSAを含む1兆2165億円、経済産業省は経済安全保障と防衛産業基盤の強化に約1兆5500億円、海上保安庁は過去最高の3448億円、警察庁は外事情報局への格上げを含む4451億円、内閣官房は国家情報局関連に54億円、デジタル庁は1兆295億円を要求している。さらに、平時から自衛隊や海上保安庁が利用する「特定利用空港・港湾」は57施設から100施設以上に拡大されようとしている。これは国土交通省の予算だ。幅広い分野が安全保障政策に組み込まれ、国家予算全体で軍事化が進められている。
軍拡が圧迫する財政と暮らし
冒頭に書いたように、米国の要求通りなら毎年2兆円ずつ軍事費が増える。これに軍事関連費が加れば毎年4・3兆円が必要になるが、計画では財源問題はパスされている。一方、国の借金返済などに使う国債費は、過去最大の36兆6386億円に達し、厚生労働省の要求額を上回った。想定金利が上がったため、国債費は前年度より5兆円以上増えている。
このような軍事・安保最優先の予算を続ければ、間違いなく生活関連・人民関連予算の大幅削減や増税が避けられなくなる。すでに2027年1月から防衛特別所得税が始まる。これまでも軍事費が増えると、社会保障や防災など、暮らしに必要な予算が圧迫されてきた。来年度概算要求でも社会保障費の増加分は約4000億円に抑えられた。今後の人民生活切り捨てと人民からのむしり取りが格段に厳しいものとなるだろう。
日本が優先すべき道
米中両国は、今、緊張をやわらげようとしている。その一方で、日本が軍事費を増やし、中国を標的に長射程ミサイルや無人兵器の配備、米軍との連携を強めれば、地域の緊張はさらに高まる。
日本が優先すべきなのは、軍事力で対立することではない。日中平和友好を土台に、対話と交流を重ね、衝突を防ぐ外交である。税金を命と暮らしのために使うには、防衛予算の増加を止め、平和外交へ切り替える必要がある。そのためには、高市政権を倒すしかない。
(NOW)
