対中包囲網の最前線で米軍との統合へ突き進む自衛隊

フィリピンで自衛隊が対艦ミサイル実射

 米中首脳会談直前の4月20日から5月8日、フィリピンを舞台に、米比主催の多国間軍事演習「バリカタン2026」が実施された。日本・オーストラリア・カナダ・フランス・ニュージーランドが加わり、総勢1万7000人が参加した41回目の過去最大規模の演習だ。
 注目すべきはその規模だけではない。米軍はNMESIS(無人地対艦ミサイルシステム)、HIMARS(高機動ロケット砲システム)などの最新装備を投入し、地上配備型中距離ミサイル発射システム「タイフォン」から米国外で初めてトマホークを実射した。
 自衛隊は今年初めて大規模な陸上自衛隊実戦部隊1400人を送り込んだ(昨年は艦艇中心で150人)。着上陸作戦、統合防空、サイバー対処など実戦さながらの多面的訓練を行い、台湾に近いルソン島北部から88式地対艦誘導弾を実射して約75㎞沖の標的艦を撃沈した。これは米国外では初めての88式の実射だった。
 この演習はフィリピンを中国を標的とするトマホーク発射基地とし、さらにバシー海峡を88式やNMESIS対艦ミサイル配備で封じて中国艦隊に打撃を与える米軍の遠征前進基地作戦EABOに基づく訓練だ。88式と自衛隊は完全に米軍に組み込まれている。自衛隊が他国の艦船攻撃を前提にした対艦ミサイル部隊」の海外派遣を行ったのは初めてで、日本の自衛と直接関わらない他国への攻撃兵器の派遣は従来の集団的自衛権の議論さえ無視した既成事実作りである。かつて日本軍が占領したフィリピンで、これまでにない攻撃的な戦闘訓練が展開されたのだ。

米太平洋軍指揮下での戦争演習

 「バリカタン2026」に続き、6月22日~7月1日には米インド太平洋軍が主導する多国間実動訓練「ヴァリアント・シールド2026」(VS26)が実施され、これと重ねて6月20日~30日には九州・沖縄・南西諸島で日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン2026」(RD26)が行われる。
 自衛隊は前回(2年前)のVS24に初めて参加した。VS26はハワイの米インド太平洋軍主催で、日米豪比による統合作戦・指揮統制訓練が行われる。自衛隊からは統合幕僚部、陸、海、空自衛隊、宇宙作戦軍、補給・後方支援部隊までほぼ全領域の部隊が参加する。これらの部隊はインド太平洋軍の命令・指揮下に統合した部隊として行動する。すなわち自衛隊が米軍の全面的指揮下で行う戦争の訓練だ。ハワイ・グアムから北海道・宮城・奄美・鹿児島など日本全域を一つの戦域としてあらゆる訓練が行われる。初めて参加する宇宙作戦軍は、衛星による監視、電磁妨害、サイバー攻撃などの訓練を行い目標設定などでデータ提供を行う。VS26には米国陸軍の「タイフォン(Typhon)」が鹿児島県の鹿屋基地に展開し、九州から中国本土をトマホークミサイルで狙う。
 VS26から9月の日米合同演習「オリエント・シールド」にかけて、「タイフォン」は鹿屋基地に配備される。10月以降は、在日米軍基地内に「一時保管」される計画だ。3月の日米首脳会談において、両国はタイフォンの日本配備について合意していた。日本政府はこの事実を公表せず隠している。中長距離ミサイルの持ち込みは「装備における重要な変更」であり日米安保条約に基づく「事前協議」が対象だ。戦闘作戦行動を「移動」、配備を「一時保管」とごまかすことは許されない。タイフォン配備で米軍はいつでも即座に中国本土を攻撃することができ、さらに核トマホークミサイルができれば核搭載も不可能ではなく、非核三原則の見直し=核持ち込み容認の動きと密接にリンクしている。
 米海兵隊との共同演習であるRD26では石垣島へのNMESIS展開、宮古島でのV-22輸送訓練、熊本での長射程ミサイル指揮所訓練などが行われる。VS26が日米豪比の指揮統制と長射程ミサイル運用を統合し、RD26が南西諸島の島々を実際の火力展開拠点として固める。両演習は、単なる部隊間連携を超えて、米軍が司令塔となり日本列島と東・南シナ海を組み込む一体的な戦闘態勢を完成させる訓練だ。日米両軍は、敵を発見してから撃破するまでの一本の鎖から、「誰が獲物を見つけても、網全体でその情報を共有し、最も適した者が仕留める」へと進化させようとしている。
 
フィリピンとの軍事「同盟」関係の強化
 
 バリカタン、VS、RDは一体のもので、日本からフィリピンまで列島線沿いに中国に対するミサイル攻撃基地、海峡封鎖と対艦攻撃基地を構築するものだ。高市政権は米国の軍事力を補完しつつ、フィリピン・オーストラリア・ニュージーランドとの連携で対中包囲網の形成に主導的に関与することによって、米国の関与をつなぎとめようとしている。日本は2025年9月に円滑化協定(RAA)、2026年1月に物品役務相互提供協定(ACSA)を発効させ、自衛隊はフィリピンでの演習に大量の武器やミサイルを携えて本格参加できるようになった。5月には小泉防衛大臣が訪比し、「あぶくま型護衛艦」の供与協議を開始した。88式地対艦誘導弾も武器輸出候補に加えられた。マルコス大統領の訪日では両国関係を「包括的・戦略的パートナーシップ」に格上げし、軍事情報保護協定の交渉開始でも合意した。監視データ活用・武器輸出・整備拠点整備を通じて、自衛隊のフィリピン駐留の可能性も現実味を帯びている。フィリピンは日本とは同盟関係にはない。しかし高市政権はフィリピンの武装を援助し、対中敵意をあおり、日本とともに対中戦争の最前線に立たせようとしている。
 
緊張を煽っているのはどちらか

 米日比豪などによる絶え間ない軍事演習と包囲網構築は中国の対抗措置を呼び起こしている。中国海軍は「バリカタン2026」の直後、空母「遼寧」を中心とする艦隊を西太平洋に派遣し、実弾射撃訓練を実施すると公表した。しかしこれは定例の訓練だ。米日と中国では演習の頻度・規模・内容を比較すれば、米日が圧倒的に多大で、その非対称性は明らかだ。どちらが地域の緊張を主導しているか、問うまでもない。政府やマスコミが煽る「中国脅威論」は、日米の戦争準備態勢の強化を正当化するためのものだ。

中国・フィリピン・ベトナムから突きつけられる批判と平和の対案

 中国外務省は「88式の実射は自衛の範囲をはるかに超えている」「かつて東南アジアを侵略した日本は歴史を真摯に反省し、軍事分野の言動を慎むべきだ」と批判した。フィリピンの反戦平和運動も声を上げている。「三大陸社会研究所」アジア支部などが主催したウェビナーで活動家のラソン・バルデス・ファブロス氏は、フィリピン憲法が外国軍基地を禁じているにもかかわらず新たな基地が建設・運営されている実態を告発した。フィリピン列島は「前方地雷国家」へと変貌させられ、先住民族の土地が奪われハイテク軍事産業の拠点とされていると批判し、「真の安全保障はミサイルではなく、食卓の食べ物と尊厳ある暮らしの中にある」と訴えた。ベトナムの翻訳家であり活動家のルナ・グエン氏は、ベトナムが独立を守るために「軍事同盟を結ばない」「他国に対抗するために他国と連携しない」「自国に外国の軍事基地を置かない」「武力による威嚇や行使をしない」という「4つのNO」政策を堅持しており、これがアジア諸国の平和のモデルになり得ると主張した。

中国と再び戦争を起こさせないために―戦争を止めるのは私たちだ

 米中首脳会談に現れた米中関係の「建設的戦略的安定」への転換は、ひたすら中国を敵視し地域の平和を脅かす高市政権の犯罪的役割を際立たせている。マスコミ報道と高市首相の強気の発言とは裏腹に、中国が「平和共存・平等互恵」を軸とする新たな国際秩序を構築しようとする中で、軍事的封じ込めに固執する日本は、アジア太平洋の平和構築の流れから取り残され、孤立を深めている。対米従属路線は歴史的な岐路に立たされている。
 台湾の頼政権は中国を「域外の敵対勢力」と呼び、「中国が台湾を併合すれば次に脅かされるのは日本やフィリピンだ」と対中強硬姿勢を打ち出す。しかし世論調査では7~8割が現状維持を支持し、台湾海峡で戦火が生じた場合に米軍が台湾を守ること」を「信じない」と答えた層が約6割に達した。対中交渉による戦火回避を支持する声も過半数を超えた(4月調査)。台湾の民意は戦争を望んでいない。
 そもそも日本は資源・食料の海外依存度が高く、貿易が止まれば滅びる。とても他国と戦争をできるような国ではない。フィリピン以外のASEAN諸国は中立政策を堅持し、対中包囲網構築には距離を置いている。中国の軍事力は、日米の侵略を許さないだろう。
 アジアでの緊張エスカレーションの根源は、米帝国主義とそれに自発的に従属する高市政権の側にある。日本の反戦平和運動は、高市政権の暴走を阻止しアジアで再び戦争を起こさせないという責務を負っている。中国の平和的共存政策、ASEAN諸国の中立化政策を支持し、沖縄・九州・西日本から全国の反戦平和運動と連帯しながら、日米軍事一体化・対中包囲・対中戦争準備に反対していこう。アメリカはアジアから手を引け。日本は中国敵視政策をやめ、日中友好への転換を。


(NOW)

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