政権支持率の急落と反高市世論の高まり――臨時国会闘争の好条件
潮目は明らかに変わった。来る臨時国会は、もはや今年2月の衆議院選挙圧勝後の高市政権ではない。闘えば押し返せる可能性が高まった。発足当初8割~9割近くあった高市政権の支持率が急落している。支持率が41%と発足以来初めて5割を割り込むとともに、不支持率が44%となり、初めて不支持率と支持率が逆転した(毎日新聞)。特に30~40代、それも女性の支持率が急落し、無党派層の「高市離れ」も加速している。国会周辺と全国で沸き起こっている「高市やめろ」「めちゃくちゃな政治に抗議」のペンライト行動は、若者や女性の姿が目立つ。反高市の世論の高まりをストレートに表している(参照記事:高市「むちゃくちゃ政治」内閣の暴政を糾弾する )。
若者や女性を闘いに突き動かしている第一の要因は、イラン戦争が生活を直撃していることだ。物価高、資材不足、水産・農産物から加工品までのあらゆるものの値上げ、輸送費や運賃の値上げなど、生活の隅々にまで影響が及んでいる。第二に国会の機能不全だ。巨大与党による暴走と野党の対決姿勢の欠如の下で、一人一人が国会前で、街頭で、「自分が声を上げなければ」と立ち上がっているのだ。
国内では、インフレ、物価高による実質賃金の低下と人民生活の悪化が進行し、教育、医療、介護、年金等福祉の解体が進んでいる。高市政治の本質は、熊本地震への対応でも露呈した。酷暑の避難所と車内で被災者が命を削られる中で、パフォーマンスに熱中し、水、冷房、清潔なトイレ、簡易ベッド、医療・介護、安心して眠れる住まいの声には無策のままだ。能登半島地震や10年前の熊本地震を経ても、体育館での雑魚寝や車中泊や「関連死」が繰り返されている。命を守る基盤整備を後回しにする政治に、人民の怒りが集中している。
特に深刻かつ急激に進む若者・女性の貧困の連鎖
貧困化は全世代で進むが、中でも深刻なのは、非正規労働・低所得層と若年層の生活だ。公式統計の非正規雇用約37%に、無権利状態のフリーランスや「事業主」、低賃金の正社員等を加えれば、実質的な非正規労働者は全体の5~6割に及ぶ。ダブルワーク・トリプルワークを余儀なくされ、約3割の世帯が貯蓄ゼロという現状だ。中でも母子世帯(ひとり親世帯)は2世帯に1世帯が貧困に陥っており(44.5%)、平均所得は約300万円未満、母親の多くがパートや派遣などの非正規労働を掛け持ちしている。
もはや単に「生活が苦しい」という水準ではない。十分な食事や休養が取れない、病気でも受診できない、住宅を確保できない、介護離職する、奨学金債務を抱える、過労死・精神疾患が増える、若者が将来展望を失う、地方で学校・病院・交通・商店が消える、そして若い世代が経済的理由から結婚・出産・子育てを断念せざるを得ない、等々を引き起こしている。年間67万人となった出生数の低下に表れている。労働者個人と家族が日々安心して生活できる賃金と労働条件、同時に労働力を次世代に継承できる社会的諸条件、これら一切が奪われているのである。もはや19世紀前半にマルクスがイギリスの資本主義の暗黒時代を活写した「労働力再生産」の危機の現代版である。
そのもとで世代間の貧困の連鎖が深刻化している。それはバブル崩壊後35年の構造的窮乏化である。いわゆるロストジェネレーション、就職氷河期世代(1993年から2004年に卒業・就職期を迎えた1970~1980年代前半生まれの世代)が親世代となった。一方では高齢の親の年金に頼ってぎりぎりの生活を送るいわゆる8050問題、7040問題が深刻化し、他方では自身が低賃金の非正規労働者であり、生活が苦しく子育てや仕送りの余裕がない、大学に行かせるには多額の学費や奨学金を借りざるをえないなど、貧困の連鎖が急激に進行している。すべての世代での貧困が急進行し、セーフティネットとしての家族が機能不全に陥り、貧困を背景として深刻な虐待や犯罪が引き起こされている。
若年層の生活保護の急増など若者の生活状態の深刻化とともに、女性の抑圧された生活実態と労働条件にも注目する必要がある。女性抑圧は家庭内から労働現場にいたるまで地続きである。女性労働者は、いわゆるエッセンシャルワーク(生活に直結する仕事)の多くを担っている。医療・保健・福祉、保安・運輸・建設、接客・販売・調理などの就業者は全体の35%、約2000万人にものぼる。極度の低賃金と過重なシフト勤務で退職が後を絶たない。「慢性的な人手不足」は、骨太の方針でいうようなスキル不足ではなく、日本の異常な低賃金構造にあるのだ。その低賃金の根源は政府の政策にある。①低い診療報酬・介護報酬の下で雇用される医療・介護・福祉労働者、②国・自治体の契約に依存する公共労働者(民間委託された清掃・交通等の労働者)、非正規公務員、非正規教育労働者、③最低賃金制度で規制される労働者とその近傍労働者等々が全体の低賃金構造を生み出している。
まやかしの消費税食料品1%反対、「給付付き税額控除」阻止
高市政権は8月5日、消費税を食料品だけ2年間だけ8%から1%へ減税すると同時に、「給付付き税額控除」導入の閣議決定を行った。これが臨時国会最大の焦点になる。われわれはこの閣議決定そのものに反対だ。様々な毒饅頭が埋め込まれている。第1に、食料品限定ということだ。8月から10月にかけてすでに1万8000品目もの食料品値上げが予定されている。政府案では実施は来年4月以降だ。さらに値上げは続くだろう。とにかく焼け石に水なのである。第2に、2年間限定という点だ。2年後に5兆円もの大増税となる。第3に、最も悪質なのが「給付付き税額控除」だ。「現金給付」をエサにして、財務省の宿願であるマイナンバーカードと公金指定口座を結び付け、名寄せと所得・資産の全面捕捉・審査を制度化しようと目論んでいるのである。2029年度からマイナンバーカードの義務化を強行するという。むしろ食料品1%への減税は、この制度への「誘い水」「つなぎ」に過ぎない。恐ろしい騙しの悪知恵、まるで焼け太りだ。メディアも野党も押し黙っている。争点を前記の第1や第2に逸らしている間に、人民を騙して第3を導入する。これが政府・財務省の野望である。是が非でもこの野望を打ち砕こう。
われわれは、消費税についてシンプルに5%からゼロ(廃止)を恒久減税として要求する。減税対象の切り縮めにも、期間限定にも反対である。
こんな政府案でも「消費税減税」という言葉が出た途端、メディアは一斉に猛烈に反発した。「社会保障が維持できない」「代替財源がない」など。だが、消費税は目的税ではなく一般財源である。そもそも37年前の消費税は、大企業法人税や富裕層所得税の税率を大幅に引き下げる原資として、その負担を労働者・人民に全面転化するために導入された。とりわけ低所得者の生活苦を顧みずに導入した階級的税制度である。そして37年後の現在、その収奪的・階級的本質が露わになり、生活苦が続出しているのである。
財源はある。政官財の日本の権力構造にメスを入れ、金融資本など支配階級に「応能負担」原則を導入することだ。歳入面では、消費税導入発端時点の法人税・所得税の税率に巻き戻すこと、株式投機や金融投機でボロ儲けする「金利生活者」に重税を強いることだ。これに歳出面では、政府・野党・メディアがタブー視する軍事費を大幅削減し、金融資本への補助金や大盤振る舞いをやめることだ。労働者・人民の生活は待ったなしだ。税をめぐる階級的イデオロギー闘争を積極果敢に挑んでいこう。
改憲阻止――反戦平和と生活防衛闘争を結合し、高市政権打倒へ
高市政権は任期中改憲を目論んでいる。改憲案を早期に起草し、来年の通常国会での改憲発議と国民投票の強行へと持ち込む構えだ。自民党総裁としての任期(2028年秋)、衆議院での圧倒的な議席数がある今を逃してはならないと考えているのだ。改悪された国民投票法はCM規制、SNS規制等が欠落し、偽動画、誹謗中傷、巨費を投じた広告が野放しになる危険がある。
衆院憲法審査会は7月16日の会議で「条文起草委員会」の設置を合意することはできなかった。共産や中道など野党が反対しただけでなく、与党内でも改憲項目の優先順位や9条改憲の中身について開きがある。これを何とかごり押ししようとしている。衆院憲法審査会では、9条改悪、とりわけ2項の改悪による国防軍、自衛軍を明記することが前提に議論が進められている。そして目下の焦点になっているのが緊急事態条項だ。「社会秩序の混乱」「武力攻撃」等の緊急事態時における内閣による緊急政令の制定が公然と語られている。戦争における国家緊急権の発動は、憲法の核心である人権尊重を一時停止し、戦争への国民の協力義務化、総動員を可能とするものだ。対中戦争準備の総仕上げとなる改憲に反対し、条文起草や国民投票の動きを阻止しよう。
高市支持率急落は、人々を闘争に組織し反対運動を前進させる有利な条件を生み出している。全国に広がるペンライト行動は、反戦平和と生活防衛を結合した人民運動としてかつてない画期的な闘いとして発展している。職場、地域、学校、医療・福祉の現場から声を上げ、反戦平和と生活防衛を一つの人民運動として組織しよう。消費税廃止、軍事費削減、賃金と社会保障の抜本的引上げを勝ち取り、高市政権打倒へ進もう。
2026年8月9日
『コミュニスト・デモクラット』編集局
