特定利用空港・港湾指定
関西の公共・民間インフラの軍事利用を許すな

 政府は、民間で利用される公共の空港・港湾を、自衛隊・海上保安庁が平時から円滑に利用できる枠組として、インフラ管理者との協議を経て「特定利用空港・港湾」の指定をすすめている。2024年から現在までに全国24空港・33港湾が指定されている。
 政府の資料「総合的な防衛体制の強化に資する取組について」によれば、指定された空港や港湾では、管理者との調整の下で自衛隊・海上保安庁の航空機・船舶の 円滑な利用にも資するよう必要な整備又は既存事業の促進を図るとしている。これは災害対策、民間利用の利便性向上などにも役に立つとしながら、自衛隊の戦闘機の離発着のための滑走路や駐機場、艦船の寄港のための岸壁の整備を行うことを目的とする。自衛隊の駐屯地や特定利用空港・港湾とのアクセスの向上をはかるとして特定利用の対象に道路が加えられた。

特定利用港湾の目的…国費の優先投入による戦争態勢の準備

 自衛隊はすでに指定の有無にかかわらず、軍事拠点ではない公共の空港や港湾で訓練を実施している。軍事演習では、部隊や装備の移動に民間のフェリーが頻繁に使用され、駐屯地や演習場の外の漁港や海岸でも『生地(せいち)訓練』を行っている。
 特定利用港湾のしくみは、これに加えて、平時から軍事訓練、人員・物資の輸送に必要な軍事拠点の整備を優先的に行い、その運営についてインフラ管理者との事前調整を容易にするための制度だ。戦闘機や大型護衛艦の運用を可能にするため、滑走路の延伸、駐機場の拡張、岸壁の増設・補強等が国費で実施され、国土交通省の通常予算ではなく、防衛省の関連経費を含む「総合的な防衛体制の強化に資する経費」が投入される。2025年度に968億円、2026年度に2250億円の予算が計上された。2004年に成立している「特定公共施設等利用法」(武力攻撃事態等において自衛隊や米軍が民間の空港・港湾・道路などを優先的に利用できるようにするための手続き)に直結する。指定された施設では、基地が使用不能になった事態を想定した訓練(給油・補給・弾薬搭載まで含む)が実際に行われている。

米軍の使用も想定

 特定利用空港・港湾の全国での指定は 自衛隊基地が攻撃を受けた際の分散展開先として活用される。それは戦力の残存性を高め戦闘を継続するための戦略に基づく。米軍は「ACE」(Agile Combat Employment・機敏戦闘展開)で大型基地(ハブ)に集中させる方式から、部隊を小規模に分散させ、周辺の複数の小型基地や民間空港(スポーク)に展開させる方式へと転換している。政府の説明では、あくまで関係省庁とインフラ管理者との間で設けられるものであり、米軍が本枠組みに参加することはないとされているが、自衛隊の分散展開は、「共同輸送」「共同補給」「共同整備」といった分野での日米軍事一体化、連携がすすめられるなかで米軍のACEを支える「プラットフォーム」として機能していくことは不可避だ。

軍事目標となる危険

 政府は、自衛隊や海上保安庁の平素の利用に大きな変化はなく、当該施設が攻撃目標とみなされる可能性が高まるとはいえず、むしろ、我が国への攻撃を未然に防ぐための抑止力や対処力を高め、我が国への攻撃の可能性を低下させるもので我が国国民の安全につながるものとしている。しかし、ジュネーブ条約第58条は、国家に対して民間人を軍事目標の近くに置いてはならないと義務づけている(軍民分離の原則)。同条約第一追加議定書第52条では、軍事行動に実効的に使われる施設を「軍事目標」と定め、攻撃の対象(保護の対象外)となりうると規定している。軍事的に強化された地域は 有事には「守られる場所」ではなく 「攻撃される場所」になりうる。また軍用機・軍艦の往来による騒音・振動、施設周辺の立ち入り制限の強化、地域の不動産価値・観光・経済への影響も懸念される。

地方議会や住民への説明もないまま指定

 特定空港・港湾の指定は、防衛省・国土交通省・内閣府が選定した候補地を空港・港湾管理者に対して説明し、①管理者は、平素において自衛隊・海上保安庁の運用や訓練等による施設の円滑な利用について、関係法令等を踏まえ適切に対応する。②自衛隊・海上保安庁とインフラ管理者は、国民の生命・財産を守る上で緊急性が高い場合又は航空機の飛行や船舶の航行の安全を確保する上で緊急性が高い場合(武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態を除く)であって、当該施設を利用する合理的な理由があると認められるときには、民生利用に配慮しつつ、緊密に連携しながら、自衛隊・海上保安庁が柔軟かつ迅速に施設を利用できるよう努める。③上記の着実な実施に向けて、関係者間において連絡・調整体制を構築し、円滑な利用に関する具体的な運用のための意見交換を行うとする「空港・港湾における円滑な利用に関する確認事項」に合意すれば内閣官房主導の関係閣僚会議で決定され公表される。国会や地方議会での審議や指定の影響を直接うける地域市民・住民への説明は行われない。市民の頭越しに決定される特定利用港湾の指定は、憲法がうたう平和的生存権を脅かす。

関西での新しい指定の動き

 

 2026年3月30日、国(内閣官房、国土交通省、海上保安庁、防衛省)から、関係自治体に対して新たに関西国際空港・大阪国際空港、堺泉北港、神戸空港 、姫路港を「特定利用空港・港湾」の対象候補として検討しているとの説明があった。神戸空港は、神戸市、堺泉北港は大阪府、姫路港は兵庫県が管理者となっている。これら3つの施設への指定は管理者の同意が必要だ。関西国際空港・大阪国際空港は法的管理者が国(国交大臣)、指定管理者が 新関西国際空港株式会社となっている。大阪府・兵庫県は形式上、法的手続きの当事者ではなく同意権、拒否権はなしとされる。しかし、関西国際空港、大阪国際空港、神戸空港の年間利用者数は合計で5000万人をこえる。堺泉北港と姫路港は、近畿のエネルギー供給基地として、発電所・LNG基地などが立地する金属・化学工業の集積地を背後に持つ重要港湾だ。指定されることで影響を受ける立地自治体や周辺自治体の議会や地域住民に説明されることなく指定されることは許されない。
 近畿で唯一2025年4月1日付で「特定利用空港」に指定された和歌山県の南紀白浜空港では、その年の10月21日、航空自衛隊のF15戦闘機4機による「タッチ・アンド・ゴー」訓練が、開港以来初めて実施された。2025年度予算で11億円が配分され、既存の2000㍍滑走路の強化や2500㍍への延伸準備、エプロン拡張などが進められている。

特定利用空港・港湾の指定反対の声を上げよう

 大阪の吉村知事は「安全保障上の観点から府民にとっても大切なこと」 として「前向きに考えたい」と表明し同意する意向だ。指定候補のひとつである伊丹空港は、第二次世界大戦終結後の1945年、連合国軍(主に米軍)に接収され基地が拡張され、滑走路の整備が行われた。1958年、日本に返還され、「大阪空港」として再開。返還後も、日米行政協定に基づき、アメリカ軍用機は伊丹空港に自由に離着陸できる状態だった。1960年代、ベトナム戦争が本格化すると、アメリカ軍用機の伊丹空港への離着陸は頻繁になった。調査では、当時の伊丹空港における自衛隊機・米軍機の発着は月に数百機に及んだと記録されている。
 関西での指定の動きに、平和団体、全港湾など労働組合や自治体議員の間で大阪府、兵庫県、神戸市に対して「指定に同意するな」「説明会の開催を求める」との要請書が提出され運動が始まっている。
 沖縄県では、国管理の那覇空港、市管理の石垣港(石垣市)、平良港(宮古島市)が指定される中で県管理の中城湾港、宮古空港 、新石垣空港が玉城デニー知事の反対で指定を許していない。
 対中戦争準備そのものである特定利用港湾の新たな指定と既指定の撤回を求める全国の闘いと連帯して関西からも公共・民間施設の一切の軍事利用拡大に反対する声を上げていこう。


(NOW)

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