大統領選に勝利したトランプは、新政権の主要なポストの人選を11月下旬にほぼ終えた。反動的な人物のオンパレードだ。特にラ米カリブ方面は、国務長官のマルコ・ルビオを筆頭に極右強硬派で占められている。ルビオは、フロリダ州マイアミ出身のキューバ系アメリカ人で、両親はキューバ革命時の亡命者。2011年からフロリダ州選出の上院議員で、長らく上院外交委員会でイラン、ベネズエラ、中国に対するタカ派として活動してきた。
トランプは、来年1月に就任すれば再びベネズエラでクーデターを強行する可能性が高い。すでに第1期大統領時代の2017年に対ベネズエラ制裁を強化し、19年1月にはクーデター策動を決行した。当時無名であったフアン・グアイドを「暫定大統領」に据えたのだ。そのクーデター立案者の一人がまさにマルコ・ルビオであった。米国を筆頭に欧州の帝国主義諸国とラ米カリブの米国に追随する諸国あわせて40か国以上がそれを支持した。だが、マドゥロ政権のもとに結束した労働者・人民の闘いがクーデター策動をはねのけ、マドゥロ政権を支持する国際連帯は90ヵ国以上にのぼった。クーデターに失敗した米国は、19年8月にベネズエラ中央銀行をブラックリストに登録して完全な経済封鎖で締め付け、屈服させようとした。だが、制裁・封鎖による未曽有の苦境の下で、マドゥロ政権と人民は、石油に依存しない経済を実現してそれを乗り越え、今日、新たな経済発展を実現するまでになった。
バイデン政権下で再びクーデター準備
ベネズエラへの介入はトランプだけではない。民主党・共和党は、ベネズエラの社会主義指向革命を叩き潰すことで完全に一致している。今年7月には、バイデン政権が「選挙クーデター」(「グアイド2・0」戦略)を画策し、反革命野党のゴンサレスを次期大統領にしようとしたが失敗した。首謀者マチャドは逃亡し、大統領候補ゴンサレスは敗北を認め、政治活動はしないと約束し、スペインに亡命した。
しかし、米大統領選挙でトランプが勝利した後の11月19日、突如、バイデンとブリンケン米国務長官がゴンサレスを次期大統領に正式承認した。ベネズエラは独立主権国家だ。かつての植民地時代のように、一国の大統領を、米国が宗主国面して決定する権限などない。さらに11月27日にはG7がゴンサレスを支持する声明を発表した。また米財務省が、ベネズエラの軍、警察、国家機関の職員21人に対する新たな制裁を発表した。
米国とG7の表明に呼応して、ゴンサレスは、新たな大統領の任期が始まる1月10日に権力を握ると表明した。
並行して、かつてトランプが発令した対ベネズエラ制裁・封鎖の法制化が進行している。「非合法なベネズエラ独裁政権(BOLIVAR)との事業およびリースの禁止法」(略して「ボリバル法」)が11月18日に下院で可決された。次期トランプ政権の国家安全保障補佐官に選ばれたマイク・ウォルツは、この法律は「宥和政策は行わないという強力なメッセージ」だと述べた。
ベネズエラ国内では、極右が新たなクーデター準備に動いている。「No Toクリスマス」不安定化計画と呼ばれているこの新たなテロ計画は、スリア州に拠点を置く反政府地下経済グループとマチャドが画策した陰謀である。政府はそれを摘発し、傭兵を逮捕して武器などを押収した。マチャドは、コロンビアで数週間を過ごし、準軍組織や麻薬密売組織のリーダーたちと会談し、この陰謀に資金を提供しているホセ・リンコン――スリア州の経済マフィアのリーダー的存在――とも会っていた。
反革命摘発と人民の防衛体制強化
ベネズエラ政府は、G7の「介入主義的で傲慢な態度」を糾弾し、新たな制裁措置は退任するバイデン政権による「絶望的な行為」だ、それはベネズエラ人民のさらなる団結を呼び起こすだけだと断言した。ベネズエラ国民議会は11月28日、「帝国主義封鎖に反対しベネズエラ・ボリバル共和国を守るためのシモン・ボリバル解放者基本法」を全会一致で承認した。この法律は、外部からの侵略から国を守り、外国の介入や一方的な制限措置を推進する政治家を罰することを目的としたものだ。
マドゥロ政権とベネズエラ人民は、度重なる米帝の介入と経済封鎖に敢然と闘い、ボリバル革命の防衛に邁進している。われわれは、石破政権のゴンサレス支持を撤回するよう要求する。ベネズエラ人民連帯、ボリバル革命連帯の取り組みをさらに強めよう。
(H)