第2次トランプ政権は、発足直後から大規模な「不法」移民摘発を実行した。その暴力装置の役割を果たしたのが国土安全保障省(DHS)傘下の移民関税執行局(ICE)と税国境警備隊(CBP)だ。摘発は強引で残酷であった。各地で抗議行動が頻発し次第に大規模化した。行き詰まった政権は、6月、ロサンゼルスに、次いでワシントン、シカゴ等々に州兵を派遣した。事態が一気に悪化したのは今年に入り、ミネアポリスで連続射殺事件が起こってからだ。抗議行動は飛躍的に拡大し、全米規模の歴史的な闘争となりつつある。
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占領下のミネアポリスとテロ部隊 ICE
トランプ政権の「不法移民」取り締まり作戦は、昨年12月から一気に大規模化した。標的は、民主党の地盤で連邦政府と異なる温和な移民政策をとる聖域都市(サンクチュアリ・シティ)でもあるミネソタ州ミネアポリスだ。そこにはソマリア移民の最大のコミュニティがある。トランプは、ミネアポリスと対岸のセントポールを含むツインシティに、DHS(国土安全保障省)傘下のICE(移民関税執行局)の部隊4000人を派遣した。ICEは白昼街頭で「重武装」し、非白人を見ては、捕まえたり殴ったり、車から引きずり出したり、やりたい放題の暴力を振るった。
当然、市民らは身を守る活動に出た。居住地ではICEを見れば笛で合図し合うのが日常となった。街頭では、暴力行為を写真に撮ることで抑制したり、連行されようとするのを妨げ止めたりした。そんな活動の中で二人の事件が引き起こされた。
1月7日ICEの捜査官が、人権侵害を監視していた法的観察者で3児の母親でもある37歳の市民レニー・ニコール・グッドを運転中の車目掛けて銃撃し殺害した。24時間も経たないうちに、数万人の労働者、地域住民、若者らが虐殺と連邦政府による市占拠に抗議するためにミネアポリス中心部に押し寄せた。
そのわずか2週間余り後の1月24日の早朝、今度はミネアポリス南部で、覆面をしたICEがアレックス・プレッティを取り囲み、地面に押さえつけて暴行し、5秒間にわたり10発以上もピストルを繰り返し撃って虐殺した。彼は37歳の市民で、退役軍人省が経営するVA病院のICU看護師として働いていた。サービス従業員国際労働組合(SEIU)の組合員であった。彼の人生の最後の行為は、仮面の捜査員に身体的に暴行されている女性を助けようとしたことだった。
しかし、これは氷山の一角だ。DHSによれば、250万人を国外へ追放した。うち60万5000人が強制送還だ。逮捕者数は59万5000人を超えた。収容施設では虐待が深刻だ。ICEの拘留中に死亡した人は32人にものぼる。ICE職員はイスラエルの国立都市訓練センターでイスラエルの警察や治安部隊と共同訓練を頻繁に実施している。ガザ地区で軍事請負業者として働いていた者は語る、「まさにイスラエル軍がガザ地区で行っている行動だ」と。

3・28の「ノー・キングス・デー」へ
1月23日、グッド氏の虐殺に抗議して全国行動が行われた。ミネソタ州の労働組合と数十万人の市民は「ミネソタゼネスト」を組織した。700以上の企業も閉鎖され、数万人のミネソタ州民が街頭や空港に集結し統一行動を行なった。労働組合、地域指導者、宗教指導者らが、「ICEは出て行け・真実と自由の日」と題して呼びかけた行動だ。
わずか3週間で2人の市民が殺されたミネアポリスでは、24日夜、何百人もの人々がプレッティ氏を追悼した。抗議は同じ聖域都市のニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコにも広がった。
1月30日の全国行動は、その1週間前のミネアポリスの人々による抗議の市閉鎖に呼応し、全米の300の都市や町で全国的な閉鎖「ナショナル・シャットダウン」運動となった。ニューヨークでは2万5000人の集会とデモが行われた。デモは公立高校生のストライキによって推進された。
闘争はさらに発展する。3回目の「ノー・キングス・デー」は3月28日に計画され、主要イベントはミネソタ州のツインシティ(ミネアポリスとセントポール)で開催されることになった。
ICEの人員・資金面での急膨張
ICEの人員と資金の面での急膨張は凄まじい。2025年にはICEの規模が1万人から2万2千人に倍増し、新規採用者には5万ドルの契約ボーナスが提供された。訓練期間はわずか8週間に短縮された。一部の捜査員は身元調査が完了する前に派遣された。
トランプはさらに拡大を計画している。倉庫や軍事基地を改装して12万から15万床の拘禁床を設置する計画だ。2025年には約100の新しい拘置施設が建設された。この拡大は行政の命令だけで起こったのではない、議会が承認し資金を提供したのである。予算については、国土安全保障省に644億ドル、そのうち約100億ドルがICEに割り当てられた。だが2025年の「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法」は、4年間でICEにさらに750億ドルの追加資金をもたらした。民主党はこれを止められなかっただけではない。それに賛成票を投じたのである。
調査報道記者たちは、この資金が築いた拘置システムの中で何が起こっているかを記録した。裁判官たちは、ICEが特定の拘束者を管轄区域から移すのを阻止するための裁判所命令を出している。だがICEはその命令に逆らっている。政権側は拘留を海外に移すことも追求している。
米国のファシズム化 ICEとネオファシストとの融合
トランプはナチスの「突撃隊」のような組織を作り出したのだ。ICEの暴力的な部隊は、ミネアポリスや他のアメリカの都市でドイツの1918―19年革命を鎮圧した「フライコール(自由軍団)」のように振る舞い、恣意的な処刑にも躊躇せず、偏執的な世界観を持ち、短気で強い人狩り本能を持つ過激な無法者たちが必要なのである。
国土安全保障省(DHS)は、昨年8月に「今すぐICEに参加を!」キャンペーンを開始し、11月に「祖国を守れ!すべての外国侵略者を追放せよ!」と呼びかけた。人気の右翼フォークバンドを利用したXICEの募集広告や、白人至上主義テロリストKKKのスローガンで動画投稿した。集まった者の多くは、腕や首に標章のタトゥーを入れたナチズムの信奉者、極右テロリストやファシストであった。プラウド・ボーイズや「パトリオット・フロント」、「アーリアン・フリーダム・ネットワーク」といったネオファシスト団体も、ICE部隊の攻撃に抗議する市民権活動家たちを襲撃する補助部隊として登場している。
世界侵略戦争と国内弾圧は一体のもの
米国内での弾圧と世界侵略戦争は一体だ。ジャーナリストのクリス・ヘッジズは、アメリカ社会のファシズム化と軍事化、無法空間の拡大、免責文化を、「帝国のブーメラン」と呼んだ。「戦争マシーンの国内への帰還」だと。これらの弾圧手法がファルージャのイラク人、ヘルマンド州のアフガニスタン人、米軍が占領する他の地域の人々にとってはごく普通の日常であり、「ガザのパレスチナ人を含む人々に対して完成させたテロマシンは、今や米国民に対して向けられている」と批判する。
労働運動が牽引し地域住民が参加する社会連帯運動
ミネアポリスは、2020年のジョージ・フロイド氏の虐殺から「Black Lives Matter」運動が全世界に拡大した震源地でもある。さらに1934年のチームスターズ(トラックドライバー労働組合)の闘争からの労働者階級の闘争の長い伝統を持つ都市でもある。それは今回の闘いにも受け継がれている。
全米看護師連合は声明で、「ICEの存在は患者たちの安全感に大きな影響を与える」と、病院にICEが入ることの禁止を政府に要求した。ミネアポリス看護師組合は、病院当局に直ちに禁止措置をとるように要求している。しかし病院当局は、連邦当局と対峙する代わりに、ICEが医療施設内で活動することを許している。恐怖から患者が病院に居られない、来られない状態を克服するために、医師と看護師がICEの活動を暗号化されたグループチャットを使って連絡し合い、コミュニティの人々の協力を得ながら仕事を遂行している。
公立学校の教員もまた最前線に立っている。子どもの登下校の安全を確保する活動が、教員組合を中心に、家族や社会団体、教会、住民や学生、移民のコミュニティを含む地域全体で取り組まれている。家から出られない移民家族のために、市民権を持つ地元住民たちが率先して食料品や医薬品の配達を組織している。子どもや親が捜査官に連れ去られないように守っている。全米教員連盟(UFT)、国際サービス産業労働組合(SEIU)、チームスターズなどの全国の主要労働組合がそれに固く連帯している。
これこそ労働組合運動が牽引する社会的連帯運動である。トランプのファッショ的暴虐を押し返す唯一の力は、ブルジョア二大政党から独立して行動する労働運動が牽引する組織化された人民の力だけである。
