ベネズエラ連帯闘争を継続しよう
1月3日の米軍のベネズエラ侵略とマドゥーロ大統領夫妻の拉致・連行から1ヶ月が経った。以来、マドゥーロ夫妻解放要求デモがベネズエラ全土の約5000あるコムーナの主導で連日行われている。それ自体が新たな攻撃を阻止する取り組みだ。
抗議行動は世界各地でも継続されている。日本のわれわれも東京と大阪で1月4日にこの国際的抗議行動に合流し、その後もキャンペーンを継続している。
米帝国主義は、ラ米カリブ地域の反米・反帝革命の拠点ベネズエラのボリバル革命を倒せば、キューバを崩壊させ、この地域全体を支配できると考えている。だがこのトランプの露骨な前時代的・植民地主義的な野心は、内外の力関係によって思惑通り進まなくなった。侵略後1ヶ月のベネズエラをめぐる最新情勢を報告する。
(小津)
革命権力を打倒できず ロドリゲス大統領代行を容認

http://www.psuv.org.ve
マドゥーロ大統領夫妻の拉致・連行という衝撃的な「成功」の直後から、トランプ政権は思惑外れと限界に見舞われることになった。
第1に、革命権力を打倒できなかったことだ。革命の根本問題は権力問題である。この権力を誰が握るかがベネズエラとボリバル革命の帰趨を決める。現在、ベネズエラの国家権力は、依然としてマドゥーロが大統領だと断言し、自らは代行に過ぎないというデルシー・ロドリゲスと、内務相ディオスダド・カベージョ、国防相ウラジミール・パドリーノ・ロペスの3人で固めている。カベージョは、革命的民主主義政党社会主義統一党(PSUV)の副党首であり、元軍人で治安・諜報機関、民兵組織を率いている。マドゥーロ大統領を排除しても革命政権は倒れず、これらの指導者を中心に瞬時に結束したのだ。米ベッセント財務長官は、しかるべき時期に選挙を命じる、有力候補者はマチャドだと命令口調で発言した。これに対してロドリゲスは、「不快で無関係」「われわれは外部からの命令を一切受け入れない」「ベネズエラには政府があり、人民だけに従う」と警告した。
第2に、トランプは、かつてグアイドを「暫定大統領」に担いだときのように、西側政府・メディアの寵児マチャドをすぐには担がなかった。否、担げなかったのだ。ノーベル平和賞を横取りされたからではない。担げば、人民が起ち上がり石油利権まで放棄せざるを得なくなると踏んだのである。
第3に、ボリバル革命の人民的基盤をなすコムーナを叩き潰すことができていない。2026年初の「連邦政府評議会(CFG)」において、ロドリゲスは、統治モデルの基本的な柱として草の根組織の重要性を強調した。2025年に選出された地方自治体の代表者も参加して、この評議会は、より強固なコムーナ国家の構築を目指している。コムーナは堅固だ。
第4に、次の攻撃に対する防衛態勢の準備も進めている。ロドリゲスがボリバル国軍(FANB)最高司令官に就任し、軍内部の戦略的再編を実施した。米軍の今回の侵攻で弱点となったのはデジタル空間の防衛だ。そのための新たな機関である国家防衛・サイバーセキュリティ局の設立を発表した。軍と民兵組織との合同訓練も継続されている。
第5に、ロドリゲス代行は石油の国家主権を守り抜くことに成功した。あれだけ石油資源を欲しがったトランプに譲歩させたのだ。エクソンモービルなど石油メジャーが再接収を恐れて躊躇している事情もある。
ロドリゲスは老練な外交官のように振る舞っている。トランプに付け込ませないように慎重に、国家主権と革命の防衛に集中している。それは、マス・メディアが騒ぐような米国への譲歩や従属などではなく、新たな侵略を防ぐ平和共存外交である。2019年以来断絶している外交関係を復旧させる協議が行われている。その下で、ベネズエラ空域の制限が解除され、大使館の再開が準備されている。代行はミラフローレス宮殿で米国臨時代理大使ローラ・ドグと会談した。
もちろん、トランプがいつ再び牙を剥くかは分からない。ロドリゲスらもそれを自覚している。
石油生産の国家主権確保と持続的経済成長
ベネズエラ議会は、1月29日、炭化水素法の改正法案を全会一致で可決した。これは、「エネルギー主権」の原則に基づき石油・エネルギー資源の活用を最適化するものである。国営石油会社(PDVSA)との契約の枠組みにおいてであれば、民間企業も石油産業における上流部門の事業の実施主体となり得ること、所管省の許可を得れば割り当て分を直接販売できるというものだ。確かに譲歩ではあるが、投資を呼び込むためには必要である。現にルビオ国務長官は不満を表明している。
一方、ロドリゲス大統領代行が国民議会に提出した2025年の年次報告書は、数多くの成果を指摘している。PDVSAの石油生産は、25年12月に日量120万バレルを達成し、15年にオバマによって制裁が導入される前の水準を回復した。25年には、国内で消費するガソリン、ディーゼル、その他の石油製品のすべてが国内生産され、燃料輸入はゼロである。液化石油ガス(LPG)の輸出が開始され、生産レベルの向上を目指す取り組みが進展している。鉄鋼業や鉱業なども回復が加速している。経済成長は、25年12月に19四半期連続の持続的成長を記録し、25年の経済成長率は8.5%を達成した。
経済回復は、生活の質にも直接的な影響を与えている。正規雇用の持続的な増加が記録されており、公衆衛生指標の漸進的な改善が見られ、妊産婦死亡率と新生児死亡率が継続的に減少している。
ロドリゲスは、年次報告の最後に「アドミラブル・チャレンジ(驚嘆すべき挑戦)2026」計画を発表した。これは、現在の食糧生産水準(国内供給率99%)を維持し、農業関連産業、漁業、穀物、動物性タンパク質セクターなどの成長をさらに促進することを目指すものだ。自前の食糧は国家主権と革命の核心中の核心である。
労働者の所得増と社会保障を計画
ロドリゲス大統領代行は、また、「国家生産経済評議会」で「社会保護基金」の創設と、国の経済的権利を守るための委員会の設置を発表した。国内経済のいっそうの活性化と強化を目指すものだ。企業セクター、公的銀行と民間銀行、商工会議所の代表者らが一堂に会した。労働者の実質所得の回復を目的とした社会保障基金を設立し、その資金が、公的医療衛生システム、学校インフラ、食糧支援プログラム、および「ベネズエラ大規模住宅ミッション(GMVV)」の強化に充てられる。さらに、飲料水供給の最適化、国家電力システムの安定化、および全国の道路の修復のためのプロジェクトに資金を提供するため、「インフラ・サービス基金」を設立する。
また、経済外交政策の一環として、ベネズエラの経済的権利を国際的に擁護するための全国委員会を設立する。この委員会には、国家執行部と民間セクター(石油、アグリビジネス、工業、商業、地域団体、銀行、非石油輸出)の代表者が参加し、多国間機関や国際フォーラムにおいてベネズエラの経済的権利を守ることを目的とする。
これら一連の経済政策は、革命権力が基幹産業である国有石油部門を掌握しながら多様な市場経済を導入することで経済を活性化し、労働者・人民の生活向上を目指すボリバル革命の基本戦略を強化拡大するものである。
社会主義中国の静かなベネズエラ支援の威力
中国は、ベネズエラ侵略と大統領夫妻の拉致・誘拐直後から、表舞台の外交戦では国際法違反を厳しく非難し、これと並行して静かに反撃戦を開始した。軍事力に軍事力で対応するのではなく、中国の優位性を活用した「非対称的対応」と呼ぶものだ。1月4日の午前、中国人民銀行がボーイング、ロッキードなど米国の軍需産業との米ドル取引を一時的に停止すると発表した。続いて、中国国営電力会社は米国の電気機器供給業者との全契約の技術見直しを発表した。さらに、午後に入り、中国石油集団企業がグローバルな供給ルートの戦略的再編を発表した。年間470億ドル相当の米国製油所との石油供給契約が解除された。中国海洋船舶公司が中国の海運物流に依存している米国の港の利用を避け始めた。突然、通常のコンテナ輸送の35%を失い、ウォルマート、アマゾンなどにとって大惨事となった。翌5日には金融兵器を発動した。BRICSの金融インフラである「中国の越境銀行決済システム」(CIPS)を事前に計画されたかのように動かし、米国が支配するSWIFTシステムから切り替える手法がとられた。48時間以内に890億ドル相当の取引が決済され、34か国の中央銀行が中国のシステムで業務口座を開設した。マルクス主義や共産主義を自称する「極左」が中国の無為無策をあげつらう中で、これらのことを知る必要がある。
社会主義キューバと社会主義指向ベネズエラの革命的同盟の結束は固い。これを社会主義中国とロシアを含むBRICSとグローバル・サウスが包み込むように多様な形で後方支援している。このラ米カリブの2つの革命は、トランプの蛮行との闘いを通じてさらに発展するだろう。
