高市政権の軍拡と戦争国家化の急加速を阻止しよう

 高市政権は「台湾有事=存立危機事態」発言を撤回せず「従来の見解を変えるものでない」と居直り、自民党・日本維新の会連立政権の下、国民民主党、参政党など野党を巻き込みながら、中国との戦争準備を加速し、戦争国家化を一挙に進める政策を洪水のごとく打ち出している。発言は一連の政策と表裏一体のものだ。
 
2025年度補正予算=軍事費GDP比2%(※)の前倒し

 高市政権は2025年度補正予算の可決を今の臨時国会で狙っている。補正予算の最大の焦点は、トランプに約束した軍事費GDP比2%(11兆円)の2年前倒しの達成だ。このため防衛省予算の8429億円に加えて、海上保安庁予算やPKO派遣費、サイバー安保関連などの他省庁の防衛関連予算と合わせて1.1兆円が計上された。さらに来年度以降の軍事予算を先取りで確保するための「防衛力強化基金」に6278億円を投入した。過去最大だった昨年補正の8263億円の2倍にあたる1.7兆円もの軍事費の追加を行ったのだ。
 防衛省予算では艦艇建造費用として1222億円。「03式中距離地対空誘導弾」改善型などのミサイルの確保に566億円を充てる。北大東島への移動式警戒管制レーダー施設整備や馬毛島の軍事要塞化、辺野古基地建設等に3451億円を計上した。本来当初予算で計上するべきものを緊急支出や調整用の補正予算で追加する異常なやり方だ。
 軍事予算を含む総額17兆円の補正予算の財源には、一時的に上振れした税収、税外収入・前年度剰余金が使われるが、大半は11.7兆円と前年の2倍の規模に拡大した国債だ。

(※)防衛費当初予算8・7兆円+補正1・7兆円ではGDP比2%=11兆円に届かない。従来軍事費を小さく見せるためにNATO基準で軍事費とされる海上保安庁などの関連予算を除外してきたが、2%に届かせるためにこの関連予算1・2兆円を軍事費に含めた。

安保3文書の改定

 高市政権は、さらに安保3文書(『国家安全保障戦略』『国家防衛戦略』『防衛力整備計画』)を2026年中に改定することを決めた。対中戦争態勢と戦争国家化をさらに新しい段階に引き上げるためだ。米国の要求する3.5~5%水準への軍事費の引き上げ、従来の建前である「専守防衛」の完全放棄と中国本土攻撃兵器の大量装備、非核3原則の放棄と米国の核持ち込み、武器輸出制限解除、さらにはスパイ防止法をはじめ国民の監視と弾圧法制導入等を目論んでいる。改定の方向性と内容は、9月に公表された「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」の提言と10月の自民・日本維新の会の連立合意に示されている。
 わずか3年前に決めた安保3文書をなぜ早くも改定し、軍拡と戦争準備のアクセルを再度踏み込むのか。それは米国の軍事戦略の重点変更に対応するためだ。米国は従来中国主敵路線だった。しかしトランプは12月4日に公表した国家安全保障戦略NSS25で、「米本土と西半球(南北アメリカ)」軍事支配最優先にシフトし、欧州派遣戦力を削減し、対中国包囲は継続するが同盟国である日韓に大幅な軍事負担増を要求している。日本政府は日米の対中軍事包囲を維持するために、より一層大きな軍事力を自ら投入し、戦争推進のより大きな役割を引き受けるために安保3文書の改訂をするのだ。

長射程ミサイル配備に続く攻撃型兵器の導入

 22年安保3文書の最大の特徴の一つは中国を直接攻撃できる敵地攻撃能力=長射程ミサイルの大量装備にあった。トマホーク、12式地対艦ミサイル延伸型など1000発前後の装備を目指す。これは米太平洋艦隊のミサイルに比肩する量である。有識者会議の提言と連立合意は、引き続き長射程ミサイルの早期配備と大型弾薬庫の建設などを要求し、さらに無人機の大量導入、長射程ミサイルを搭載した攻撃型原子力潜水艦の保有を示唆した。原潜の保有は、核の平和利用を定めた原子力基本法に抵触する。数十発のミサイルを搭載し南中国海などからも攻撃できる原潜は非核だが、戦略原潜に準ずる攻撃力をもつものだ。
 また提言は洋上航空運用能力の強化(航空機発着艦の整備)を行っていくべきとの表現で、艦載機のより大規模な運用が可能な本格空母(原子力空母)の保有も示唆している。
 米軍と肩を並べて中国を攻撃するこれらの兵器は、どう考えても「専守防衛」のためでも「必要最小限」でもない。安保3文書の改訂では形式上残っている「専守防衛の枠内での集団的自衛権」の制約を、高市発言のように撤廃するつもりなのだ。

非核三原則の見直し

 高市政権のもう一つの狙いは、非核三原則(持たず、作らず、持ち込ませず)の放棄だ。歴代政府が「国是」としてきたものを単なる「閣議決定」と貶め、廃棄し、米国の核の傘の実効化を進める。昨年、米国との「拡大抑止」協議を閣僚級に引き上げ、核使用時の情報共有や意思決定プロセスを確認する「拡大抑止に関するガイドライン」を策定した。
 昨年2月に実施された日米共同指揮所演習「キーン・エッジ24」では、「台湾有事」シナリオの中で、中国側が核兵器使用を示唆する設定が組み込まれ、自衛隊が米軍に対し「核の脅しで対抗するよう求め」、米側もこれに応じたと報道された。9月の日米合同演習「レゾリュート・ドラゴン25」では、中国本土への攻撃が可能で核弾頭搭載型の開発も進められているトマホークの発射が可能な「タイフォン」システムが米軍岩国基地に展開され、演習終了後も2ヶ月間居座った。高市政権は、たとえ米軍兵力が縮小するような事態でも、米国の核兵器持ち込みを可能にし、それによって中国を威嚇し、場合によっては使用することで日米の軍事力を維持しようとしている。
  
国家あげての軍需生産と「、防衛装備移転3原則」ルールの見直しによる国産の殺傷能力ある兵器の輸出拡大
  
 武器輸出の完全解禁は政府と財界の強い要求だ。2014年に安倍政権は「武器輸出」禁止を骨抜きにして「防衛装備移転3原則」を制定した。この時は輸出できるのは「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5類型に限られ、殺傷力ある武器の輸出は除外された。その後ライセンス生産品、共同開発であれば殺傷能力ある兵器でも輸出ができるようにした。さらに「共同開発」として11隻の「もがみ型フリゲート艦」のオーストラリアへの輸出が決まった。ライセンス生産の地対空ミサイルシステム「パトリオット」も米国へ輸出された。すでに運用指針の廃止を見越して、中古軍艦、「03式中距離地対空誘導弾」のフィリピンへの輸出、ニュージーランドへの「もがみ型フリゲート艦」の輸出交渉が進められている。
 有識者会議は、経団連の元会長が座長となり、日本最大の軍事独占の三菱重工の現役会長がメンバーに加わっている。「安全保障と経済成長をリンクさせる、好循環をもたらすべき歴史的な転換」だとして武器輸出の全面解禁、軍需生産を柱にした成長戦略を追求している。国家主導での防衛技術・生産基盤とサプライチェーンの強化として、国営工廠や「防衛公社」の設立、軍事研究開発での産学官の連携、スタートアップの参入を含む民間技術の取り込みなどを提言している。軍事予算の急拡大に伴う急速な軍需産業の拡大自体がさらなる軍拡の原動力になっている。

人民監視=日本版CIA、スパイ謀略組織の創設

 野放図な軍事費拡大、戦争準備は、他方で人民に増税の重荷と人民関連予算の大幅減をもたらす。それは必ず一層の貧困化と広範な不満を生み出さずにはおかない。高市政権が実現を目指している国家は、この不満を監視と抑圧の体制で抑え込むネオ・ファッショ的国家、軍国主義国家である。
 自民・日本維新の会は、憲法9条改正、緊急事態条項創設の条文起草委員会の設置に加えて、「インテリジェンス政策」の機能の強化として内閣情報調査室及び内閣情報官を格上げし、「国家情報局」及び「国家情報局長」を創設し、「内閣情報会議」を「国家情報会議」に改編すること、2027年度末までに独立した対外情報庁(仮称)を創設することや 情報要員(インテリジェンス・オフィサー)養成機関を創設することを合意した。
 2013年特定秘密保護法の制定、2017年の共謀罪(改正組織犯罪処罰法)、2024年の「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」に続いて、とうとう米国CIAや英国MI6を模倣して、公安調査庁、公安警察、内閣情報調査室、防衛省・自衛隊情報部門、外務省国際情報統括官等に分散している組織を再編統合して、防諜と諜報の両面から全面的な国家監視と謀略の体制を作ろうとしている。

高市政権の戦争国家化に反撃を

 高市政権による全面的な戦争準備と戦争国家への暴走は、米国の意向にそって自らの軍隊を持って中国との戦争の最前線に立つ意思を示すものであり、人民解放軍を含む中国政府の激しい反発と批判を招いている。一方、高市政権は高い支持率を維持し、国民の政権への批判は極めて弱い。
 戦争国家化に反対する反戦平和運動は、大軍拡補正予算と共に、今年から来年の通常国会での予算を巡る闘争、長射程ミサイル配備や弾薬庫建設に反対する闘争で正念場を迎える。しかし、戦争国家への道は、世界の力関係と人々の生活悪化との矛盾に突き当たらざるをえない。高市発言に対する反対の運動が起こり始めている。世界と日本の反戦平和運動が団結すれば戦争は止めることができる。高市政権の危険性を粘り強く訴え、全国各地の運動と連携して高市政権の暴走を止めよう。


(NOW)

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