10月18日から23日にかけての5日間、キューバは深刻な電力危機に見舞われた。9割が電気を奪われ、冷蔵保存していた備蓄食料が腐って食べられなくなる事態に直面した。当然学校は閉鎖となり、事実上経済活動全体がストップしてしまった。直接の原因は、大型ハリケーン「オスカー」がキューバ東部を直撃し発電所や送電網を破壊したことと、ハリケーンの影響により石油タンカーが接岸できず燃料不足に陥ったことによる。しかし、真の原因は、60年以上に及ぶ米国による厳しい経済封鎖にある。この経済封鎖で、大きな機械から小さなネジ1本に至るまでが封鎖の対象商品となり、発電所・送電網ではスペアパーツがなく、正常なメンテナンスができない状態が長年続いてきた。そして、キューバと取引した国家や企業には、米銀を通じドル決済が遮断されるため、キューバは石油をはじめとした必要物品の輸入が事実上閉ざされている。さらに、11月にかけ、次の大型ハリケーン「ラファエル」がキューバ中部に襲来した。そのうえ、東部で地震が発生する等、未曽有の自然災害が現在キューバ全土を襲っている。
60年以上のキューバに対する米の経済封鎖は、電力不足にとどまらず、経済全体に、そして人民生活全般にわたって壊滅的な打撃を与え続けている。ロドリゲス外相は国連総会の場で、「経済封鎖による累積損失は1640億ドル以上であり、ドル価値の下落を考慮すると1兆ドル以上に及ぶ」と演説した。またディアスカネル大統領はXを通じ、「昨年1年間の経済封鎖による損害は50億ドル強」と発信している。これは、キューバの砂糖やニッケル等「財」の年間輸出総額22億ドルの2倍以上に当たるほどの巨額であり、想像を絶する被害がキューバ全体を覆っていることは明らかだ。そしてこの経済封鎖は、強まり続けている。直近では、トランプが退任直前の2021年1月に、キューバを「テロ支援国家」リストに再指定し、243項目もの新たな経済制裁項目を追加し、その後バイデンが4年間追認し続けた。これらは特にキューバ経済の屋台骨である観光業に深刻な影響を与えている。
このようなキューバの窮地に対し、全世界は、即座の支援を開始した。中国やベネズエラ等のALBA諸国は、電力危機の原因は米の経済封鎖であるとし、経済封鎖の即時解除を米に要求するとともに、実際の物資支援を強めている。ベネズエラは、300トン以上の必要物品を急遽キューバに送った。中国は、今年初めにキューバへの支援第1弾を実施したが、今回の自然災害被害を受け、すぐさま11月には第2弾の支援を開始した。
キューバ国内でも、政府・人民一体となった即座の災害復興が開始されている。ディアスカネル大統領は、ロシア・カザンで開かれたBRICS+首脳会合への出席を急遽取りやめ、被災した各地を精力的に回り、人民を激励し、復興の陣頭指揮に当たっている。特に電力施設に対しては、全土から旅団が派遣され、懸命の復旧工事が続けられている。これらにより、東部の停電はほぼ解消できるまでに回復した。
国連総会で「米によるキューバへの経済制裁に反対する決議」が圧倒的多数で採択
10月30日、国連総会の場で、「米によるキューバへの経済制裁に反対する」決議が187ヵ国という圧倒的多数の賛成で採択された。反対したのは米とイスラエルの2か国。棄権はモルドバ1カ国。さらにユニセフ等35の国際機関も賛成している。この決議の採択は32回目であり、投票のたびに圧倒的多数の国々が賛成の票を投じている。このような全世界の声を全く無視して、米は厚顔無恥にも経済封鎖を続けている。今回の決議に対して、採択の瞬間にディアスカネル大統領は、聖書になぞらえ「小さなキューバが、傲慢な態度で世界の要求を必ず無視する隣国の米帝国を再び打ち負かした」と発信した。
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いよいよ来年1月からトランプとルビオ国務長官をはじめとする共和党超タカ派がタッグを組む露骨な帝国主義政治・外交・軍事政策が開始される。今まで以上に米の露骨な反キューバ、反ベネズエラ、反中国政策が展開されるだろう。それは、われわれに対して、今まで以上にキューバ連帯、ベネズエラ連帯、中国連帯等の活動を強化することを求めている。キューバから発信されている「Tumba el Bloqueo!(経済封鎖を打ち倒せ!)」の声に呼応し、米の経済封鎖に反対するキューバ連帯活動を強めよう!
(佐竹)