「歴史的合意」の虚構――武装解除の強制とガザ再植民地化を許すな
トランプ米大統領は7月30日、ガザ停戦第2段階を進めるための「歴史的な合意」に達したとして、ハマスが「完全武装解除」に同意したと発表した。31日には、トランプが議長を務める「平和評議会」が、「和平計画」の「第2段階」を進めるための「ロードマップ」を発表した。だが、ハマスの「武装解除」は、あくまでイスラエル軍撤退が前提条件だ。無条件の「完全武装解除」など同意していない。
トランプの発表は、全くのデタラメで虚偽の宣伝である。11月に中間選挙を控えるトランプは、対イラン戦争が行き詰まる中で、中東での「成果」を誇示するため、「和平計画」が進んでいるという体裁を整えたいのだ。
さらに平和評議会は、31日のロードマップにあったイスラエル軍の段階的撤退という枠組みを、ネタニヤフとの会談直後に書き換えた。ネタニヤフ自身も4日、「完全武装解除までは現在のラインから撤退しない」と公言した。要するに、パレスチナの武装解除を、イスラエル軍撤退の先行条件へと180度変えたのである。ハマスが声明で、重火器の問題を合意の枠組みに含めるには、あらゆる形態の攻撃の停止、イスラエル軍のガザからの撤退、復興の開始などが前提だと主張し、撤退前の一方的武装解除を拒否したのは当然である。この間の動きは、「平和評議会」なるものが調停機関でも何でもなく、トランプとイスラエルの立場に立って、パレスチナ側に一方的に武装解除を押しつけるものでしかないことを、改めて明らかにした。
ハマスはまた、イスラエルが第1段階の義務を完全に履行し、殺害と攻撃を停止することが第2段階の前提だとしている。イスラエルは今もガザでの爆撃・殺戮を続け、占領地域を拡大している。イスラエルは、第2段階どころか昨年10月に合意された第1段階すら履行していないのだ。「和平計画」を進めるつもりも、ガザから撤退するつもりも全くない。イスラエル軍の支配地域は当初の53%を超え、6~7割に拡大した。軍はイエローライン沿いに23キロ超の土塁と軍事拠点を築き、閣僚らはガザ再入植まで唱えている。一時的な撤退線を、恒久的な軍事境界へ変える動きである。
イスラエル軍のガザ占領と攻撃の継続こそが和平の最大の障害である。パレスチナ側に一方的武装解除を迫るこのような「ロードマップ」では、和平など実現しない。「イスラエルによる攻撃の中止、ガザからの全面撤退」を強く前に出して要求しよう。それによってイスラエルに国際的圧力をかけること、それこそが唯一の真の和平への道だ。
「停戦」下で続くジェノサイドと飢餓攻撃
昨年10月からの「停戦」後も続く、ガザ住民へのイスラエルの攻撃は、激しさを増している。ガザ保健省は、7月1カ月間の死者が、今年に入って最多の152人に上り、そのうち子どもが21人だったと発表した。8月2日には1日で19人が殺害された。昨年10月以降イスラエル軍の攻撃で死亡したパレスチナ人は1200人を超えている。23年10月のジェノサイド開始からの死者は7万3000人以上、負傷者は17万人4000人を超えた。
イスラエルは飢餓攻撃も続けている。食料安全保障レベルを1から5の段階で評価する統合段階食料安全保障分類(IPC)は7月23日、4月中旬~6月末に120万人超(59%)がフェーズ3以上、うち21万2000人がフェーズ4だったと発表した。国連3機関も約140万人が深刻な食料不安にあり、今後1年で約7万4000人の子どもが急性栄養失調の治療を必要とすると警告した。
環境と農業も破壊された。2025年10月までに樹木作物の98%が失われ、多くの耕地は土壌の質と生産性を奪われて、耕作地として復旧できない状態にある。さらに不発弾が広大な土地を使用不能にしている。イスラエルが奪っているのは、パレスチナ人がガザで生き続けるための土台そのものである。
ガザ再占領と並行して、ヨルダン川西岸での入植地拡大・併合政策を加速させている。26年上半期だけで341件の破壊作戦を行い、740棟の建造物を破壊した。さらに、85億シェケル(23億ドル)の枠組み協定に署名し、西岸に約1万2000戸の入植住宅と大規模インフラを建設する計画を開始した。軍、入植者、行政、道路、財政を一体化し、正式な併合宣言を行わないままパレスチナ人を土地から追放する政策だ。
レバノンでも「停戦」踏みにじるイスラエル――占領と攻撃を継続
イスラエル軍は、6月下旬の「停戦」後も、レバノン南部の占領を続け、空爆、砲撃、施設の爆破を繰り返している。7月6日にはナバティエで車両を攻撃し、学校長を含む4人を殺害した。 さらに7月31日には、直前にユネスコ世界遺産に登録されたシャキーフ要塞(ボーフォール城)周辺で大規模な爆破を実施し、ヒズボラの地下施設を破壊するため約700トンの爆薬を使用した。8月5日にもイスラエル軍は南部各地を空爆・砲撃し、少なくとも1人が死亡、12人が負傷した。占領を続けたまま相手にだけ武装解除を迫る――ガザで暴かれた手口が、レバノンでも繰り返されているのだ。レバノンからもイスラエル軍の全面撤退と、すべての攻撃の即時停止を要求しなければならない。
深まる国際的孤立とネタニヤフ政権の危機
イスラエルでは10月27日に総選挙が行われる。ネタニヤフの支持率は低下し、6月の世論調査で「首相として望ましい」とする回答は29.4%で、3月の40.5%から大幅に落ち込んだ。政権を失うと逮捕の恐れのあるネタニヤフは、政権維持のためになりふり構わない。7月14日には、ユダヤ教超正統派徴兵忌避者の逮捕・訴追を11月30日まで禁止する法律を強行可決した。軍参謀総長は、兵員不足が深刻化する中で軍の必要と矛盾すると批判した。兵士の確保よりも連立維持のために超正統派政党との取引を優先したのだ。
イスラエル軍内部からも、戦線の拡大と長期化に対する警告が出ている。イスラエル軍放送は、予備役の旅団・大隊が定数を大きく割り込み、戦闘可能な戦車が不足し、一部部隊が「事実上の崩壊」状態にあると報じた。軍はガザ、西岸、レバノン、シリア、イランなどで同時に作戦を続け、兵員と装備を消耗させている。
国際的孤立も一層深まっている。36カ国を対象とした調査では、国別の中央値で67%がイスラエルに否定的だった。米国でもギャラップの調査でパレスチナへの共感が41%でイスラエルへの共感36%を上回った。特に若年層ではイスラエル離れが鮮明になっている。
言うまでもなく、ネタニヤフ政権の命運を握るのは米国だ。連邦議会下院でも、7月15日の国務省支出法案の採決で、103人の民主党議員がイスラエルへの33億ドルの援助全廃に賛成した。修正案は否決されたが、2年前のイスラエル援助打ち切り法案に37人が賛成したのと比べて、大幅に増えた。
ニューヨーク市のマムダニ市長は、9月に訪米するネタニヤフをICC逮捕状に基づき拘束できるか検討したが、市長権限では不可能と判断し、連邦政府に拘束を求めた。コードピンクなどの反戦団体も、ネタニヤフの逮捕を要求する街頭行動を行っている。
頼みのトランプ政権との間でも、特にイランへの攻撃を巡って、米国の力を使って徹底的にイランを叩いておきたい、そして政権維持のためにも戦争を継続したいネタニヤフと、勝てないことが明らかとなった以上、中間選挙が近づく前にケリをつけたいトランプとの、利害の不一致が目立っている。
日本でもBDS運動を強化し、国際的なイスラエル包囲に合流を
イスラエルを包囲する国際的なBDS(ボイコット・投資撤収・制裁)運動は、具体的な成果を上げている。全米自動車労組(UAW)は6月の大会で、組合資金をイスラエル国債から引き揚げることを決めた。米メリーランド州の年金基金も、保有するイスラエル国債の85%を売却した。
イスラエルを国際的に孤立させる運動に、日本も合流しよう。日本政府・企業にイスラエルとの協力、ジェノサイドへの加担をやめさせよう。
高市政権は、イスラエル製ドローンの自衛隊への導入を狙っている。今年2月には、25年度軍事予算によるイスラエル製ドローンの購入を阻止した。しかし26年度には、2機種のイスラエル製ドローンが採用候補となっている。そのうちの1機種は、日本のファナック社からのロボット購入の疑いが強い、イスラエル軍需企業最大手のエルビット・システムズ社製だ。26年度導入予定のドローンは機体サイズも予算も25年度のものより大規模であり、イスラエル製導入を阻止する意義はより大きくなっている。「防衛省と住友商事・日本エヤークラフトサプライはイスラエルの虐殺ドローンを買うな!」の署名が7月3日から開始され、3万を超える署名が集まっている(https://x.gd/0gt1e)。この署名は第一次集約8月25日、8月末提出と決まった。
また、経済産業省は7月14日、イスラエルの半導体受託製造大手「タワーセミコンダクター」が富山県魚津市と新潟県妙高市で進める設備増強計画に対し、経済安全保障推進法に基づき、最大で約1600億円を補助すると発表した。これもまたジェノサイドへの加担だ。この補助金の撤回を要求する運動も開始されている。
「イスラエルによる攻撃の中止、ガザからの全面撤退」を実現するため、日本でも一層BDS運動を強化し、国際的な運動と力を合わせ、イスラエルに圧力をかけよう。
2026年8月9日
『コミュニスト・デモクラット』編集局
