対ドイツファシズム戦勝記念日
5/8 第三次徴兵制反対学校ストに5万人
メルツ政権、対ロシア戦争準備を本格化

はじめに――ドイツ軍国主義化に急転換したメルツ政権

 ドイツはこの1年で大きく変化した。22年にショルツ政権が「時代の転換」を宣言したのを受け、昨年5月に発足したメルツ政権(CDU/SDU/SPD3党連立)は、ドイツの再武装と軍国主義化に本格的に転換した。ドイツ帝国主義は、同盟国に負担を押し付けるばかりの米帝国主義トランプ政権に、支援を当てにせず依存することなしに、主体的にロシアと軍事対決する路線に舵を切る決断をした。メルツは2025年5月14日の政府宣言で、政府のあらゆる行動における最優先事項は「ドイツ連邦軍の強化」であると宣言しただけでなく、ドイツ連邦軍を近代化して「ヨーロッパ最強の通常軍」にするとも宣言した。その目標は、ドイツ支配下のEUを米国と同等の軍事力を持つ組織に武装させ、米帝国主義に頼らずに戦争を遂行できるようにすることである。
 それ以降ドイツは急ピッチで戦争体制づくりに踏み込んでいる。軍拡と軍事支出を縛っていた「軍事ブレーキ」を完全に外し、徴兵制を復活させる「兵役近代化法」を、5万人の高校生学校ストライキの激しい抗議の中で成立させた。この軍事対決路線は、戦争プロパガンダと、ロシアが明日にも侵攻してくるかもしれないというデマで、恐怖を日夜煽り続けることによって支えられ維持されている。

反戦運動の最前線に立つ高校生学校スト~秋に第四次ストを計画

 

5月8日の「学校ストライキ 徴兵正反対」のプラカード
この日、3回目のストライキを行い、ドイツ全土で徴兵制とドイツ国家の戦争準備に反対して街頭に立った。
「学校ストライキ」サイトから 
https://schulstreikgegenwehrpflicht.com/

 5月8日、対ドイツファシズム戦勝記念日に合わせたこの日、徴兵制反対高校生学校ストライキの第3回全国行動が行われた。150都市で5万人が参加した。ボンでは学生たちがプラカードや旗、横断幕を掲げ、拡声器やメガホンを持ち、「二度と戦争はしない!二度と徴兵はしない!二度とファシズムはしない!」のスローガンを叫んだ。年配の支持者たちも学生たちに加わり、平和の旗やドイツ平和協会・統一戦争抵抗者(DFG―VK)の旗を掲げている。ノルトライン=ヴェストファーレン州学生評議会、GEW(教育科学労働者組合)のさまざまな支部、ver.di(統一サービス労組)青年グループなどの多くの団体が、ストライキ中の学生たちへの連帯を表明した。ストライキ委員会の代表が演説を行った。「連邦政府は、前例のない速さで軍備増強を進めている一方で、教育制度やいわゆる福祉国家は組織的に骨抜きにされている。若者の死因の第一位は自殺であり、教育ではなく戦争に投資が行われている結果、4人に1人の子どもが貧困の中で暮らしている」と批判した。カイザー広場にあるナチスの犠牲者のために1950年に建てられた記念碑の周りに集まり、臨時の集会を開き、1分間の黙祷の後、慰霊碑に花が手向けられた。
 警察はボンでやったようにどこでも自制していたわけではない。ミュンヘンでは、警察は再びデモ隊を攻撃し、「メルツ、なぜ東部戦線で死なないんだ?」というスローガンが書かれた横断幕を掲げた学生を告訴した。警官は列をなしてデモ隊を撮影し恐怖を与えようとした。報道関係者たちは、学校ストライキにおけるSDAJ(ドイツ共産党DKPの青年組織)の役割、指導性について調査するよう依頼されたことを公然と認めた。
 徴兵制反対学校ストライキ運動は、秋には4回目のストライキを計画している。今や徴兵制反対学校ストライキ運動は、反戦、反軍拡、反軍国主義の恒常的戦線となり、全国的運動の最前線である。学生たちの立場と言い分は階級的で明瞭だ。若者の未来は若者が決める、我々抜きで徴兵を勝手に決めるな。この戦争は我々の戦争ではない、金持ちと大企業の利益のための戦争だ。彼らの子どもは戦争に行かない、行って殺し殺されるのは我々だ、戦場で砲弾の餌食になるのは我々だ、我々はそんな死を望まない。金持ちは戦争を望み、若者は未来を望む、と。

「福祉国家」を解体し、戦時体制構築を急ぐ

ウクライナやイスラエルとの兵器共同開発と生産
 4月14日、ドイツはウクライナとの関係を「戦略的パートナーシップ」へと格上げした。ピストリウス国防相はキエフを訪問し、ウクライナの「驚異的な革新能力とスピード」を称賛し、最大1500㎞の航続距離を持つドローンの共同開発と生産に合意した。ドローは相互接続性に長けており、他の兵器システムとのデジタルネットワークは「ゲームチェンジャー」に成り得るとドイツ軍は見ている。
 独仏の防衛関連企業KNDSは、イスラエル兵器メーカーのラファエル社との合弁事業を年末までに始める予定である。この計画は、ミサイルと防空システムはイスラエルで製造し、ドイツで生産する軍用車両に搭載し、欧州防空システムの一部となるものである。

戦争への医療活動の組み入れ
 昨秋のドイツ連邦軍、救急隊、および行政機関によるハンブルクでの軍民連携訓練に続き、今年は戦傷者や戦死者の搬送と処置に関する大規模な医療訓練が行われる。これはまさに実戦的訓練である。「軍民協力」という言葉の裏には、あらゆる民間分野を軍事的論理に従属させて動員するという意図が隠され貫かれている。実戦演習への医療従事者動員は、国民総動員の予行演習への突破口を成すものである。

歴史修正主義と反動の強化
 民族主義者やネオファシストたちは、ソ連が侵略戦争とファシズムからの解放に貢献したという事実を何としても否定しようとしている。解放に活躍したM34戦車の撤去や対ファシズム戦勝記念碑・記念館の撤去を執拗に求めている。これらの歴史的事実が、現在のほとんど狂信的な反ロシア国家ドクトリンに疑念を抱かせかねないからだ。侵略戦争とファシズムからの解放のシンボルとなった赤旗や鎌と槌が、5月8日に登場することは、政府と支配層にとっては耐え難いことなのである。
 戦争国家体制を作るために、基本的人権そのものが意味を失うような、個人・団体の情報収集・監視の法律を、国会の夏季休会前に成立させることが企図されている。
 今年4月初旬からは、17歳から45歳までの男性市民は3ヵ月以上海外旅行をする場合、「ドイツ連邦軍の許可」を得なければならなくなった。これは市民の自由、移動の自由に対する信じがたい侵害であり、ドイツ国家がいかに戦時体制へ移行しているかを如実に示している。

軍需への転換に伴う脱工業化と雇用削減
 ドイツ自動車工業会(VDA)は、「現在の試算では、2035年までに22万5000人の雇用が失われると想定せざるを得ない」と言う。2019年から2025年の間にすでに10万人の雇用が失われている。
 IGメタル(金属産業労組)執行委員会が年初に指摘したように、「軍需産業はドイツを工業拠点として救うことはできない。防衛費の増額計画は防衛部門での雇用創出につながるものの、自動車産業、その膨大なサプライヤー、そして金属・電気工学産業などの主要部門での差し迫った雇用喪失を補うことはできない。危機への対応策は戦時経済ではなく、労働時間の短縮と従業員の利益を最優先する産業政策であるべきだ」と同組合は主張する。

最悪の社会保障削減攻撃
 メルツ政権は今や「福祉国家」を攻撃し、労働運動で勝ち取られてきた社会権を組織的に解体しようとしている。「現在の経済生産高では我々はもはや『福祉国家』を維持する余裕がない」と言い放つ。8時間労働制を攻撃し、年金も、健康保険制度も、長期介護保険も最終的には解体という根本的な目的が掲げられている。軍事費増額、社会保障制度廃止!これが支配層の基本的スローガンである。
 解雇された後に戦車製造工になるなど、どんな仕事でも受け入れざるを得ないという圧力が強まっている。18歳以上の全ての人に1年間の兵役を義務付ける法案が議論されており、シンクタンクはすでに高齢者にも兵役を義務付けるよう求めている。
 年金受給者の5人に1人は既に貧困の危機に瀕している。さらに「年金改革」は、受給開始年齢の70歳への引き上げ、税引き前給付水準の48%未満への引き下げ、高いインフレ率に年金保険料を連動させることなどを要求している。
 ドイツ雇用者団体連合(BDA)などの資本団体の代表者たちは、多くの病院の全面的な閉鎖、公的医療保険基金によるサービスの大幅な削減、所得に関係なくすべての人からの一定の医療保険料徴収を要求し、キリスト教民主同盟(CDU)は歯科治療を保険適用対象から外すという要求まで突きつけている。
  
学生・青年運動と労働運動の結合へ

 5月1日のメーデーでは、例年とは違って多くの場所で一部の演説者が、政府と資本の上からの激しい攻撃に「甘い社会的協力では到底対抗できない」と訴えた。しかし、労働組合はまだ、この不満を抵抗と下からの階級闘争に転換するための中心点を形成できていない。戦争政策は、ドイツが戦場になるあらゆる危険にもかかわらず継続されている。この破滅的政策を阻止できるのは、大衆、とりわけ労働者階級だけだ。DKPは、「不満を抵抗へと変えることのできる結集点は何よりも組織された労働運動から生まれなければならない」と主張する。
 戦場に送られる運命にあることを自覚している若者たちの不満は抵抗運動へと転化した。今度は労働者階級の番である。学生・青年運動と労働運動、反戦平和運動と社会運動の結合へ進む時である。そのために7月24―25日、「戦争ではなく平和を勝ち取る―第4回平和のための労働組合会議」がヴュルツブルクで開催される。  

 (渉)

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