米トランプ政権は、1月3日のベネズエラへの軍事侵攻以降、ことあるごとに「次の攻撃はキューバだ」と名指しし、キューバへの露骨な脅迫を続けている。そんなトランプの脅しに全くひるむことなくキューバ人民・政府が立ち向かっているのを目の当たりにして、トランプ政権はさらなる強権を発動した。1月29日には、「キューバが米の安全上の異常で並外れた脅威だ」と決めつけ「国家非常事態」を宣言し、キューバに石油を供給する国に高関税を課すと一方的に宣告した。キューバに対する事実上の石油全面封鎖を目指すものだ。
米が60年以上に及び課してきた経済封鎖でキューバ経済を厳しい状況に追い込んだうえ、更なる石油全面封鎖で経済を窒息させようとしている。断じて許すことはできない。すでに昨年1年間、米による経済封鎖策でキューバは80億ドル近くの損失を受けている。これば1年間の外貨収入に匹敵する。
キューバ政府は直ちにトランプの新たな横暴を非難し反撃に出ている。全世界からも非難の声が相次いでいる。中国は、ただちに「キューバが国家の主権と安全を守り、外部からの干渉を拒否することを強く支持する」と米の横暴を非難した。ロシア、ベトナムも相次いで非難声明を発した。ベネズエラは、米の行政命令を拒否するとの態度を明らかにした。メキシコは米への非難声明を発するとともに、トランプの大統領令発布以降も食料等の人道援助をメキシコ海軍護衛の下キューバに送り続けている。そしてキューバへの石油輸出継続を懸命に模索している。
1月3日以降のキューバへの米の攻撃は、このような直接的な軍事的脅迫、経済的圧力だけではない。より狡猾な攻撃も同時にしかけている。ひとつは大量で多様なフェイクニュースの流布である。それも非常に巧妙に作成されている。例えばキューバ中央銀行の銀行業務が停止した(=銀行からお金が引き出せなくなった)等である。
さらにもう一つの狡猾な攻撃がある。米トランプ政権は1月14日突如、昨年10月末にハリケーン・メリッサに被災した人たちに人道支援物資を送ってきた。被災から77日後のことである。その物資の送付に対しては、キューバ政府に一切の連絡もなくその頭越しに、キューバ政府とは関係ないキューバカトリック教会を通じて配布するというもの。キューバの厳しい経済状態のもと、被災した人への物資援助を通じて、米への反感を、少しでも和らげようとするものである。同時にこの援助物資の配布は、国内のカトリック教会をキューバ政府にとって代わるものとして、ゆくゆくは位置付けていこうとする狙いも秘めている。
米トランプ政権は、ICEによる相次ぐ射殺等に対する大規模な米国内での抗議行動によって、非常な窮地に立たされている。国内の窮地を他国への侵略によってそらせようとするのは、帝国主義者の常とう手段だ。キューバへの軍事攻撃脅迫が、脅迫から実施に移される危険が高まっている。
キューバはこの侵攻に備え、1月に3回も全土での国土防衛戦闘訓練を行った。それも地域住民、特に若者が大量に参加しての訓練である。そして地方軍民兵を積極的に軍全体の組織に組み入れ、全国民で国土防衛に力を注ぐことを表明した。ディアスカネル大統領は、「米のキューバへの攻撃がどれほどの代償を伴うかを計算しなければならない」と米への警告を発し、「決して、降伏は選択肢にはならない」、「このような困難な時代には、勇気と度胸をもって立ち向かわなければならない」と宣言している。
米の攻撃に果敢に反撃するキューバ政府・人民

米トランプの厳しい攻撃に対し、キューバ人民は全くこうべを垂れてはいない。実際はまったく逆だ。今まで以上に革命精神を高揚させ、政府と一体となって反撃の行動を展開している。以下で、順を追ってその行動を紹介する。
①キューバ全土で連日繰り広げられたベネズエラ攻撃糾弾緊急抗議行動
キューバでは、ベネズエラへの軍事侵攻直後に首都ハバナで大規模抗議集会とデモ行進が行われた。集会壇上でまずマイクを握ったディアスカネル大統領は、「帝国主義を打倒せよ!」の叫びと共にアピールを開始した。アピールでは米の蛮行を厳しく非難し、マドゥーロ大統領夫妻の即時解放を強く要求した。キューバでの抗議集会は首都ハバナだけではない。1月3日には、ハバナと同時刻にサンディアゴ・デ・クーバやシエゴ・デ・アビラで、4日には、西部の中心都市ピナール・デル・リオで、そして6日には、サンクティ・ススポーツ大学やハバナ大学等でも抗議の集会が学生の手で開かれた。
②犠牲となった革命英雄戦士32名を人民の敬意と大きな悲しみの中で葬送
1月15・16日は、キューバ全土が深い悲しみに包まれた。1月15日早朝、ベネズエラ政府の正式要請を受け、マドゥーロ大統領警護の任務に就き、最新装備に身を包んだ米軍特殊部隊兵士と最後まで勇敢に戦い、命を落とした32名の革命英雄戦士の遺骨が、ベネズエラからホセ・マルティ国際空港に到着した。空港での追悼式典では、ディアスカネル大統領やラウル将軍等政府首脳が直立して遺骨に敬意を表する中、内務相が「彼らは戦いに倒れたが、永遠に歴史に名を刻んだ。…キューバは尊厳を守るために高い代償を払うことがあっても決して諦めない」の言葉で結び、追悼式典は閉幕した。
その後32名の遺骨は、遺体を安置する革命軍省本部に向かった。沿道を多くの人民が埋め尽くした。革命英雄戦士に敬意を表するとともに、その痛みを自分たちの痛みとするために。そして遺体が安置された革命軍省本部には、遺体と最後の別れをするために何万にも上る多くの人民が詰めかけた。人民の悲しみが天候を変わらせたのか、雨の降りだした中、参列を待つ長い列が沿道を覆い尽くした。
そして、1月16日には、ハバナで追悼式典が開催され、ここにも多くの人民が参集した。ディアスカネル大統領は、開口一番「戦いで倒れた我らの英雄たちに名誉と栄光を!」と述べてこの日の演説を始めた。「我々の勇敢な戦士たちは、通常兵器を携え、士気と任務への忠誠心を持って、死ぬまで戦い、敵を打ち負かした。…彼らはファシズムの進出に対する我々の民族の剣であり盾だった」と32名の英雄戦士を称えた。そして、最後に「一緒に行進しよう!そして彼らの英雄的な模範を記念して誓おう!祖国か死か!勝つ!」を連呼し演説を結んだ。この追悼式典はハバナだけでなく、オルギン、シエンフエゴス等多くの都市でも開かれ、涙ながらに遺体に別れを告げる人民が相次いだ。
③若者が主催した反帝国主義トーチ行進
1月27日には、ホセ・マルティ生誕を記念して、反帝国主義トーチ(たいまつ)行進が学生主催で行われた。この行動は、73年前の1953年1月27日に、マルティの生誕100周年を記念して初めて行われ、若きフィデル・カストロが参加し、モンカダ兵営攻撃の前奏曲となった。今年は、その伝統を受け継ぎ「反帝国主義」を鮮明に掲げ、合わせてフィデル生誕100周年にキューバ革命前進への誓いを新たにする行動となった。主催した若者はまずホセ・マルティを称え、彼の「良き弟子」フィデル・カストロの遺産と共に国を導き続けることを誓い、トーチ行進を敢行した。
④農業生産増と歪みの是正を推進するための各省共産党委員会相次いで開催
上記のような行動とともに、キューバでは厳しい経済状態の中、自立に向け政府が先頭に立って、農業生産増・歪みの是正を中心とした経済改革を進めている。現在のような米からの圧力の中でも、1月下旬に連日、各省の共産党委員会を開き、各地に根差した方策を追求し実践している。とともに、祖国防衛の強化も合わせて取り組んでいる。
中国・ロシア・メキシコ等による多大な援助
先述したように米の石油全面封鎖に対して多くの国が非難声明を発している。それだけでなく、1月以降キューバに対して、以前にも増して暖かい援助の手が差し伸べられている。まず中国。緊急に8千万ドルの多額の資金と6万トンに及ぶコメの援助を決めた。すでにコメの第1弾はキューバに届き、人民の配給に回されている。さらに、中国現地のキューバ医薬品企業との取引を通じ、手に入りにくかったアスピリンなどの汎用医薬品も送り届けられている。次にロシア。1月下旬には、内務相がキューバにおもむき、キューバとの連帯が変わらないことをアピールした。そしてメキシコ。シェインバウム大統領は、トランプの圧力にも屈さず、ことあるごとにキューバに石油をはじめとする支援品を送ることを言明し続け実行に移している。
ディアスカネル大統領は、トランプが石油全面封鎖策を発布した翌日の1月30日に、次のような言葉で決意を新たにした。「わが党、国家、政府、革命軍、内務省、そして団結した国民は、1月3日にベネズエラで英雄的に戦死した32名のキューバ人兵士たちと同じ勇気と決意をもって、追加的な封鎖措置やあらゆる軍事的脅威・攻撃に立ち向かう用意がある」と。いつにもましてキューバ連帯活動の重要性が増している。活動を強化しトランプの野望を打ち砕こう!
(2026年2月3日 佐竹)
