日米軍事演習「レゾリュート・ドラゴン25」
過去最大の対中国戦争の演習
各地で広がる抗議の声

 9月11日から25日まで陸上自衛隊と米海兵隊の日米共同軍事演習「レゾリュート・ドラゴン25」(RD25)が、九州、山口、沖縄・南西諸島と北海道を舞台に過去最大規模で行われた。

 米海兵隊と陸海空軍5千人と自衛隊1万4千人の合計1万9千人が参加した。RDは、米海兵隊の主力部隊が戦車を捨て、対中国戦争を想定してミサイル部隊として最前線に展開するフォース2030(2020年)構想と遠征前進基地作戦(EABO)を実践するために、2021年に始まった。

 今年は中国本土を攻撃できるタイフォン(トマホーク)システムを初めて日本(岩国)に持ち込んだのをはじめ、海兵隊の主力装備である高機動ロケット砲システムHIMARS(PrSMミサイル発射が可能)、NMESIS(ネメシス)ミサイルなどの対艦ミサイル全部を初めて南西諸島に展開した(与那国へのHIMARS持ち込みは断念した)。EABOでは米海兵隊は最前線の南西諸島の島々に対艦、対空ミサイルや通信システムなどを展開する。連動して陸自が、12式、88式対艦ミサイル部隊をはじめ宇宙、サイバー、電子戦を含む領域横断作戦体制で協力して、米軍と一体での対中国攻撃態勢を作ったのだ。まさに海兵隊・陸自による対中国戦争の予行演習だ。

 沖縄・南西諸島では、中国との近距離戦闘訓練―最新無人兵器が投入され、昨年3月に勝連分屯地(沖縄県)に新編された第7地対艦ミサイル連隊(隷下に奄美、宮古、石垣のミサイル中隊)がこの演習に初めて参加した。石垣駐屯地には、無人車両搭載型の対艦ミサイル発射システムNMESIS、短距離防空システムMADIS(マディス)などの中国との近距離戦闘を担う最新兵器が、自衛隊機によって運ばれた。演習は、これら米軍の最新兵器システムと自衛隊のミサイル部隊や電子戦部隊による中国艦船に対する共同対艦攻撃訓練の検証の場となった。

九州全域での訓練

 墜落事故の続く海兵隊のMV22オスプレイが九州各地の演習場で離発着訓練をおこなった。開設されたばかりの佐賀駐屯地からも陸上自衛隊のオスプレイV22が参加し、鹿児島の鹿屋基地を起点に九州各地の演習場を飛びかった。

 日出生台演習場(大分)では九州・沖縄のミサイル部隊を統括する第2特科団を含む陸上自衛隊4千人と米海兵隊500人が共同指揮所開設訓練、対着上陸訓練、対艦戦闘訓練、対空戦闘訓練、共同衛生訓練(戦傷者移送訓練)を実施した。十文字原演習場(大分)、目達原駐屯地(佐賀)で航空機駐機・燃料補給訓練を行った。佐世保では陸自の物資を米軍の艦艇に積載する訓練を実施した。健軍駐屯地(熊本)では、陸上自衛隊千名と米海兵隊、陸軍350名が参加し、共同指揮所開設訓練、高遊原分屯地(熊本)では共同補給・輸送訓練を行った。大矢野原演習場(熊本)でも、自衛隊員1500人と海兵隊150人が日出生台演習場と同様の訓練を行った。佐多対空射場、奄美駐屯地(鹿児島)では沿岸監視訓練、NEWS(ネットワーク電子戦システム)での電磁波実射を行った。奄美の瀬戸内分屯地では12式地対艦誘導弾を使った対艦戦闘訓練を行った。自衛隊基地がない徳之島でも海浜公園、漁港、総合運動場を使用して訓練を行い、無人艇ALPVを使用した物資輸送訓練や陸自の無人偵察機による情報収集訓練を行った。九州各地の自衛隊基地や演習場そして基地のない島でも、この演習を通じて米軍が自由に使用できる状況が作り出され、基地の恒常的な共有化が進められている。

長射程巡航ミサイルシステム「タイフォン」の岩国への展開

米陸軍の長射程巡航ミサイル発射装置タイフォン・システムが、フィリピンに続いて、この演習で初めて米海兵隊岩国基地に展開された。タイフォン・システムは、対地攻撃も可能な対空ミサイルSM6(射程370km) とトマホーク(射程1600km)を発射できる。米軍はすでに艦載型トマーク2000発を中国に振り向けることができる(次㌻の図参照)。それに加えて中国を射程におさめる地上発射長射程巡航ミサイルを第一列島線上に配備することは中国との軍事的緊張を格段に高める。中国は、タイフォンの展開に即刻抗議した。

 防衛省は硫黄島の噴火のため空母艦載機の離発着訓練(FCLP)を岩国基地で行うと直前に通告した。基地容認派の市長を含め、議会、広範な住民から中止の声が強く上がる中で、米軍は岩国基地ではFCLPをやらないとの約束をやぶり 25年ぶりに休日夜間を含めた訓練を強行した。岩国市には1064件の騒音苦情が寄せられ、滑走路周辺では日常生活に支障をきたす70デシベル以上の騒音が1500回以上測定された。広島県の湯崎知事は「県民の不安は増大し、強い憤りを感じている」と、二度と岩国基地でFCLPを実施しないよう要請した。

 北海道でも、中国との戦闘を想定した日米共同の調整所開設、対艦戦闘、着上陸戦闘、兵站・衛生訓練、滑走路復旧訓練が行われた。米海兵隊MV22オスプレイの離着陸・兵員輸送訓練やHIMARS(多連装ロケット弾)の実射訓練も実施された。

演習中止を求める運動

 「レゾリュート・ドラゴン25」の実施を前に「戦争を止めよう!沖縄・西日本ネットワーク」は演習中止を求める声明を出して全国に行動を呼びかけた(下に声明文)。与那国島では新町長が「オスプレイ飛来や公道を使用した訓練は容認できない」と中止を要請した。防衛省は当初予定されていた与那国島へのHIMARSやオスプレイ、陸上自衛隊の12式地対艦ミサイルの展開を中止し、衛生訓練のみを実施した。

 9月13日、宮古島の平良港では市民が港のゲート前で抗議行動を行い、PFI船舶(民間契約による輸送船) から宮古島駐屯地への車両輸送訓練を中止に追い込んだ。石垣市は、市民に防衛省の演習の説明資料すら事前開示せず、市民の抗議によって演習開始後に沖縄県のサイトを転載する形で公開した。石垣市は「説明は防衛省が発信すべきもの」で「行政文書」だから開示請求の手続きをしろと市民に求め、市民の不安を顧みない市長に市民団体は批判の声をあげた。

宮古島駐屯地基地司令と中谷防衛大臣の運動への威圧

 8月6日に宮古島で自衛隊が行った徒歩防災訓練に対する市民の抗議行動に、宮古駐屯地の比嘉司令が「やるんだったら許可を取ってこい」 「許可を取れ、早く、取ってこい」と恫喝した。抗議の場所は「いらぶ大橋海の駅」の公共駐車場であり、市民が使用するのに許可は不要で自衛隊の主張には何の根拠もない。自衛隊側も訓練について使用許可申請をしていなかった。 比嘉司令は防衛省上層部の指示であり「威圧的だと捉えられたのであれば、それは本意ではなく、そのことについて申し訳ない」と述べただけで発言は撤回も処分もされていない。

 この件について、中谷元防衛大臣は9月19日の記者会見で「自衛隊の活動に対して過度な抗議活動や妨害行為が続いている」と発言した。宮古島での物資輸送訓練に対する抗議を例に挙げ「訓練の変更を余儀なくされたことは大変遺憾」「良識を持ってやってもらいたい」と発言した。抗議活動を萎縮させ市民の声を封じることを意図するものだ。市民の抗議行動への一連の威圧に対して多くの市民団体から謝罪と撤回を求める声が上がっている。

関西でも軍事演習反対の行動
  
 「レゾリュート・ドラゴン25」と並行して、9月16日~24日に伊丹の陸上自衛隊中部方面隊、第3師団が主体となり、米陸軍に加え、初めてオーストラリア陸軍が加わって日米豪合同軍事演習「オリエント・シールド25」が行われた。9月20日には演習が実施されている京丹後経ヶ岬の米軍Xバンドレーダ基地ゲート前で現地抗議行動が行われた。訓練に参加していた米兵が基地外で小銃を携行して歩行したことや、住民に事前連絡をせずに8月30日から昼夜を問わず稼働を続けている発電機の騒音問題、7月の日米「部隊実働訓練」が京丹後市に事前連絡もなく近畿中部防衛局も把握していなかったことなどに対して抗議の声をあげた。大阪でも9月15日「沖縄を再び戦場にさせない実行委員会」の呼びかけた軍事演習の中止を求めるスタンディング行動に60名が参加した。

沖縄・九州・西日本の運動に連帯して対中戦争準備に反対していこう
  
 一連の軍事演習は、日米に加えてフィリピン、オーストラリア、韓国とのワンシアター構想(日本が提唱する中国軍事包囲網の構築)や自衛隊統合司令部の発足と在日米軍の司令部機能の再編による日米統合の軍事作戦司令部の一体化がすすめられる中で行われた。

 自衛隊は対中攻撃力抜本強化のための12式地対艦ミサイル能力向上型の配備や迎撃が困難な高速滑空弾の前倒し配備を発表した。防衛省は5年で43兆円の軍事費の4年目となる26年度の防衛省予算概算要求で過去最大の予算を要求した。

 この秋には、長射程ミサイルの最初の配備が予定されている熊本、弾薬庫の建設がすすむ大分、馬毛島での軍事要塞建設が進む種子島(鹿児島)、製鉄所跡地に軍事複合拠点が計画される呉(広島)など各地で軍事拠点の強化に反対する行動が行われる。

 8月には祝園弾薬庫の建設工事が、住民の反対や不安の声を無視して強行された。10月19日には祝園現地での全国集会が呼び掛けられている。

 沖縄、九州、西日本各地の運動と連帯して中国に対する戦争態勢の準備を止めていこう。


     (NOW)

日米共同軍事演習「レゾリュート・ドラゴン25」の中止を求めます

 2025年9月11日から25日にかけて、日本各地、とりわけ沖縄県内において実施されようとしている日米共同実動軍事演習「レゾリュート・ドラゴン25」は、「台湾有事」を念頭に置いた実戦訓練であり、地域住民の生命、生活、平和に重大な脅威をもたらすものです。
 本演習では、与那国島への高機動ロケット砲システム「ハイマース」や、米海兵隊の輸送機MV-22オスプレイ運用と陸自オスプレイの全国への展開、石垣島への無人地対艦ミサイルシステム「NMESIS」、対空短距離兵器「MADIS」の戦闘訓練、さらには宮古島では12式地対艦ミサイルの輸送訓練、うるま市ホワイトビーチにおける無人艇「ALPV」の展開など、最新兵器の実戦運用を目的とした軍事演習が行われます。
 沖縄以外においても、日米オスプレイやCH47ほか、多数のヘリを展開しての負傷者輸送訓練、兵站訓練(補給品の空中投下訓練)、対艦戦闘訓練、上陸戦闘訓練などを計画。北海道では、九州・沖縄のミサイル部隊を束ねる第2特科団と米軍とが共同で実弾射撃訓練を、また遠征前進基地作戦の中核部隊である第12海兵沿岸連隊と陸自12式地対艦ミサイル部隊とが指揮機関訓練をするなど、一層具体的な戦闘を想定した、米軍指揮下での日米が一体となる共同訓練が行われます。
 中でも、山口県の岩国基地において国内初となる米軍中距離ミサイル発射装置「タイフォン」の展開は重大なエスカレートです。「タイフォン」の展開を認めれば、米軍中距離ミサイルの日本配備に道を開くことになりかねません。日米拡大抑止が強化されるもとでの“核搭載可能”な中距離ミサイル配備は、米軍による日本-アジアでのミサイル戦争態勢の本格化であり、唯一の戦争被爆国において許されることではありません。
 また、嘉手納基地における米軍無人偵察機の「無期限展開」、海上保安庁による無人機の追加配備など、軍事的緊張の増大は日々現実のものとなっています。九州・西日本、そして全国で戦争体制づくりがすすめられ、このままでは「日本列島が米軍の捨て石」にされる危険性を否定できません。「備え(軍備)すれば憂い増す」ことになるのです。
 こうした動きは、「住民の安全」や「地域の民意」を顧みることなく進められており、過去の戦争の記憶と向き合ってきた沖縄県民をはじめとする全国民の平和への切実な願いを踏みにじるものです。「抑止力」の強化や兵器の無人化によって命と生活の損失は軽減されるものではありません。歴史が証明する通り、真っ先に命が奪われるのはそこに暮らす住民です。
 「戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク」は、本演習に全国各地で反対の声を上げる市民と連帯し、以下のことを強く求めます。

一、日米両政府は日米共同軍事演習「レゾリュート・ドラゴン25」を即刻中止すること。
一、沖縄をはじめ、全国各地へのミサイル配備、無人兵器・偵察機の展開を直ちに見直し、撤回すること。
一、岩国基地での米軍中距離ミサイルシステム「タイフォン」の展開を撤回させること。
一、全国各地でのオスプレイの運用を中止すること。
一、地域住民の声を真摯に受け止め、軍事強化ではなく平和外交と対話を優先する政策転換を行うこと。

 私たちは「もの言わぬ民は滅びる」の言葉を胸に、いのちと平和と未来を守るため、声を上げ続けます。

2025年8月29日
戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク

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