ベネズエラ マドゥロ大統領就任を支持し歓迎する
〇米帝=反革命極右の介入を大衆動員で撃退
〇4・27地方選挙勝利で政権基盤を固める

 1月10日、マドゥロ大統領が就任した。反革命勢力の妨害活動をすべて撃退し、マドゥロとボリバル革命を支持する人民の圧倒的な集会とデモに守られて新政権が発足した。極右勢力が呼びかけた9日の集会とデモは、100万人を動員すると主張していたが数千人の小規模なものにとどまって完全な失敗に終わった。帰国して大統領に就任すると豪語していたゴンサレスは、右翼政権諸国を歴訪しただけに終わった。
 米国とベネズエラ極右勢力は、昨年7月28日の大統領選挙を「不正選挙」とすることによるクーデター策動を早くから準備していた。だが、その「7・28カラー革命」は、完全な失敗に終わった。全国選挙評議会による公式結果の無視、米国との共謀によるゴンサレス勝利の「調査結果」発表と根拠となる資料の未公開・廃棄、かつてグアイドを勝手に大統領と宣言して反革命政権をつくろうとしたことの焼き直し=〝グアイド2・0〟策動、西側メディアを使った世界的な「不正選挙」キャンペーン、そして選挙直後の暴動、等々。だが、政府・人民は、その後の傭兵による武力攻撃なども含めて反革命策動を抑え込んで、マドゥロの勝利とボリバル革命を守り抜いた。
 1月10日の大統領就任式を挟んで、9~11日に首都カラカスで「反ファシズム世界フェスティバル」が開催され、125ヵ国から2000人を超える代表者が集結した(参照記事:カラカスで反ファシズム世界フェスティバル)。このフェスティバル参加者も、10日の就任式に「グランド・反ファシズム・マーチ」で大規模なマドゥロ大統領支持行動に合流した。

米制裁の追加と反革命勢力の衰退

 トランプは特使グレネルを派遣してマドゥロ大統領と会談し、事実上新政権を認めざるを得なかった。マドゥロは対等の立場を強調した。もちろんトランプの動きは予断を許さない。相変わらず国際メディアで「不正選挙」とゴンサレス勝利を繰り返し、マドゥロをはじめとするベネズエラ政府要人への懸賞金の増額・新設などの追加制裁もそのままだ。
 ベネズエラの極右勢力は、国内での支持をほとんど失った。また、政府と軍・警察は、暴動を起こそうと準備していた傭兵などを次々と摘発した。ベネズエラ国内は平和が保たれて新たな変革が推進されているが、国外では欧州やラ米のベネズエラ大使館が襲撃を受けている。それに対して、ベネズエラだけでなくALBA諸国をはじめ多くの国や社会運動などが、国際法違反として糾弾している。

4・27地方選挙に向け与党PSUVが大会を開催 経済回復と生活改善で人民の信頼増大

 マドゥロ大統領は、昨年7・28大統領選挙の勝利を踏まえ、今年の4月27日には地方選挙を行い、政権基盤をさらに強化する計画だ。2月4~6日、候補者選定と選挙方針を決めるため与党PSUVは大会を開いた。
 マドゥロ政権は、米制裁・封鎖による苦境の中で経済の大変革を成し遂げ、経済回復と生活改善で人民の信頼がいっそう高まっている。マドゥロ大統領は、6万3千回の一般討論を経て作成された「7つの変革の祖国計画2025-2031」を政治綱領に掲げて再選を果した。それは次のようなものである。新たな任期に入って、その実現へ向けて動き出している。

①経済・金融の封鎖と闘うための新しい経済 石油とガスの輸出だけでなく、より大きな付加価値を生み出す石油デリバティブ産業の発展、経済の多様化、石油のレント(超過利潤)構造の克服。新しいビジネスへの参入を目指す人々を支援する国家資金調達基金の創設、通貨ボリバルの防衛の継続、インフレ抑制による経済主権の保持、手続きの簡素化と官僚主義の削減、社会プログラムの強化と最低所得の回復、国民の社会的福利を保証するための「全国社会権監視所」の設立、累進課税改革、など。
② すべての分野での完全な独立 経済的および政治的独立の維持に加えて、ナショナル・アイデンティティの強化、テクノロジーへの取り組み、中央集権化されたデジタル政府の発展という3つの柱に基づいて、完全な独立を強化する。
③ 平和、主権、安全保障 これに関する取り組みはボリバル革命の初期から行われてきたが、米国の干渉と不誠実な国内グループのためにまだ脆弱であるため、国境管理と国土防衛を強化する。
④社会的変革 既存の社会的プログラムの強化。資金を最も脆弱な国民部門に振り向け、経済的・社会的支援を提供する。過去に実施し成功を収めた社会政策を再開し、米国の一方的な強制措置により効果が減少したミッションなどを強化する。「供給生産地域委員会(CLAP)」は、輸入品を100%国産品で代替することを目的として、社会的弱者のために継続される。
⑤ 政治的変革 政治システムの基盤としての「人民権力」をうち固めることに重点を置く。すべての政治主体による暴力の放棄、平和への取り組み、選挙プロセスの尊重を促進する。コムーナ(コミューン)は、戦略的プロジェクトとして再確認され、より大きな支持と活性化をもって推進されなければならない。
⑥エコロジーの変革 気候緊急事態に対処し、持続可能な実践を推進する目的で、予防政策を策定する。農業生態学的実践や農薬の代替を推進。自然地域の保全と持続可能性重視。市民生活の質を向上させる緑の都市計画。
⑦ 地政学的変革 地域統合と南南協力、米国の覇権への挑戦、平和外交と国際的展望の3つの主要点に焦点を当てている。ALBA、UNASUR、CELAC、メルコスール、ペトロカリベなどの統合メカニズムを強化。BRICSとの科学技術協力を促進。米国が支配する金融システムへの依存を減らすために、新興諸国との代替決済の方法を開発する。

 就任式を終えたマドゥロ大統領は、国民へのメッセージで、まず昨年の経済発展を確認し、いくつもの経済セクターでの成長が強調された。建設部門25.9%増、鉱業21%増、石油活動14%増、農業、貿易、自動車修理ともに6.2%増、製造業4.6%増などである。それらを背景に新たな取り組みが進められようとしている。
 生活必需品は既に90%以上が国産化され、昨年9月には食料がほぼ100%自給に達したことが報じられた。ベネズエラ経済は、必需物資の国内生産を達成したうえで、石油以外の多くの製品を輸出できるまでに発展しつつある。国際貿易に関連するすべての機関を一元化し調整する任務を負う「外国貿易省」が新設され、輸出プロセスの近代化と合理化を目的とした一連の改革が発表された。また、新しく創設された「ベネズエラ全国起業家連盟」は、16万回の集会を通じて350万人以上の市民が参加した広範な協議プロセスを経て誕生し、経済政策策定における参加型アプローチを反映している。

コムーナの拡大・発展と人民選挙による裁判官選出
 
 マドゥロ政権は、コムーナの拡大・発展を通じて「人民権力」の形成を強力に推し進めようとしている。
 昨年12月15日に、4800以上のコムーナで司法選挙が行なわれ、1万5000人以上の裁判官とその補欠(同人数)が選出された。コムーナは、立法権と行政執行権を既に持っている。それに加えて司法権も持つことになった。昨年10月の第111号で、「コミューン強化活動」が4月と8月に行われ、第3回目が年末に行われる予定であることを報告したが、それがこの裁判官選出として行われた。15歳以上のすべての人民が選挙権を持ち、各候補者は25歳以上で、代表を希望するコミュニティに最低3年間居住していること、評判が良いこと、地元の慣習や法律を理解していることなどの基準を満たしていることが必要である。今後、4年ごとに地元の一般投票で選出される。

中国との関係強化など国際関係の改善

 2023年9月のマドゥロ大統領訪中の時に、両国関係は最も高いレベルの「全天候型の戦略的パートナーシップ」に昇格した。中国共産党とPSUVとの党レベルでの相互交流も拡大している。その下で中国との経済関係が、そしてまたロシアや他のBRICS諸国との経済関係も、大きく発展してきている。それらがベネズエラの経済回復とさらなる発展をいっそう加速させている。
 「米州ボリバル同盟(ALBA)」の最近の会合で、ベネズエラはALBA諸国との経済統合を推進していくと発表した。マドゥロ大統領は、キューバが直面している新たな米制裁の下で、とりわけキューバとの協力の重要性を強調した。

ガイアナに軍事基地など米帝の新たな策動

 米国は、ベネズエラの東に隣接するガイアナで軍事演習を繰り返している。ベネズエラへの軍事的脅迫を行うと同時に、ガイアナの石油をはじめとする豊富な地下資源の略奪も行なっている。ガイアナの革命家によれば、米国は既にガイアナに軍事基地を構えているという。その軍事基地は、中南米各地の米軍基地とともに、ベネズエラを取り囲むネットワークを形成している。トランプ政権になって、どのような策動が新たに行われるかわからないが、ベネズエラ政府と国軍は、大規模な軍事演習を行うなど、対策を強化している。

(小津)

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