石破政権の来年度予算案と闘おう
○「能動的サイバー防御」法案を廃案へ
○軍事費を大幅削減し、人民生活予算へ回せ 

 7日の石破・トランプによる初の日米首脳会談は、石破首相によるトランプ礼賛と「手土産」で媚びを売り親密さを演出するという異様な会談となった。石破首相は、日本の軍事費増や米からの武器購入、「1兆ドル」の対米投資などの対米貢献をアピールした。日米共同声明は、「核の傘」も含めたアジア・太平洋地域での対中軍事包囲網強化での日米連携、「日米関係の新たな黄金時代」を表明した。石破首相は、27年度までの軍事費倍増に加え、27年度以降の軍事力の「抜本的強化」を約束した。「ガザ接収・住民強制移住」のトランプ発言は黙認した。持論であった「日米地位協定の改定」は一切言及しなかった。許しがたいことに、野党の立憲・維新・国民はこぞって日米会談の「成果を歓迎」と表明した。日米同盟強化を公然と賛美したのだ。国会では、自公政権の少数与党の転落で、労働者・人民が自らの要求実現を支配層に迫っていく格好の政治的条件が作り出されている。野党は、この有利な力関係を利用し、対中戦争準備と軍事費倍増予算に正面から反対し、日米安保優先、人民生活破壊の政策からの転換を要求して対決すべきだ。
 石破首相は、通常国会の施政方針演説で、「楽しい日本」「令和の列島改造」などという、何の裏付けもない空虚で時代錯誤のスローガンを使い、世論の猛反発を買った。人民は、コメをはじめ終わりが見えない生活必需品の値上げ、生活の悪化と低賃金の不安定雇用、高齢者の生活苦と老後不安、出産や子育ての大きな負担、被災地での避難生活の長期化などで日々苦しんでいる。ふざけたスローガンは、われわれ人民を愚弄するものだ。
 石破首相は、「世界一の防災大国」を掲げ、「国土強靭化」の新計画を打ち出すことを表明した。だがそれは、無駄な箱モノや不要な盛り土などで予算ばかり食って何の強靭化にも役立たなかった東日本大震災後の「国土強靭化基本法」の二の舞ではないのか。国交省の報告でも、道路や橋、トンネル、河川管理施設、上水道などがことごとく老朽化し、自然災害に耐えられない、いつ事故が起こってもおかしくない状況にある。安心して子どもを産み、育て、教育し、働き、健康を維持し、老後を送るという基本的な生活と生存の枠組みが破壊されてきている。全てが対中戦争・対中軍拡最優先の犠牲になっている。
 デタラメな「中国の脅威」を煽って対中戦争準備をしている場合ではない。人民予算を削って、軍事費倍増に走るなど許されない。社会保障や医療・介護、教育、インフラ整備など人民生活の必要な部門を最優先し、国民が安心して暮らせるために予算をつぎ込むべきだ。

軍事費突出、赤字膨張の来年度予算案反対

 通常国会の最大の対決点は、来年度予算案だ。予算全体は115兆5415億円と過去最大となった。軍事費と国債費(償還費28兆2179億円)の膨張の結果だ。社会保障費や文教費などは軒並み抑え込まれている。軍事費は、特別会計などから資金をかき集めて確保する「防衛力強化資金」が制度化され、軍事費増税(たばこ税、法人税は26年度から実施。所得税は当面留保。復興税の流用)の導入など予算全体が軍事費を最優先しそれを捻出することを軸とした構造に変えられている。国の借金である国債残高は1100兆円を超え、GDPの2・5倍だ。すでに過去の国債乱発は増税や収奪となって人民生活を圧迫・破壊している。予算案では、税収増により、国債の新規発行額は17年ぶりに30兆円を下回り、28兆6490億円を見込んでいるが、それでも歳入の約25%が借金だ。
 一方、削減、切り捨ての集中攻撃を受けているのは、医療・社会保障だ。「高額療養費制度」が改悪され、25年8月、26年8月、27年8月と、3年連続の負担増が織り込まれている。中間的な所得区分でも、現行から5万8500円増の13万8600円と、大幅引き上げになる。介護保険制度もさらなる改悪がもくろまれている。要介護1、2の保険給付外し、利用料の2割負担、3割負担の対象拡大(所得制限の見直し)、ケアプランの有料化、介護保険料支払い年齢(現在40歳)の引き下げ、相部屋の室料有料化、福祉用具の貸与から購入への制度転換等々。すでに医療控え、介護保険の利用控えが増えているが、さらに国民生活に深刻な影響を与えるのは間違いない。政府支配層はこの改悪を「世代間格差」や「尊厳死」「人生会議」などさまざまなイデオロギーや宣伝によって国民に受け入れさせようとしている。
 われわれは、軍事費突出を前提に赤字国債や人民生活切り捨てで賄うやり方に反対だ。軍事費倍増計画を撤回し、大幅に削減すること、国債発行を削減・停止することを喫緊の課題として要求する。逆累進性をもつ消費税を減税し、累進課税の強化、法人税の引き上げ、金融資産税導入など、富裕層と大企業の負担を強化するべきだ。

対中戦争に向けた攻撃的兵器の購入、武器輸出の促進反対

 来年度予算案の軍事費は8兆7005億円(デジタル庁所管含む。7500億円、10%増)と突出し、11年連続で過去最大を更新した。「5年で43兆円」という計画の3年目で、異常な膨張だ。さらに補正予算での巨額の軍事費計上が常態化し、24年度補正予算では8268億円が計上されている。兵器のつけ払いである後年度負担は総額15兆6628億円で、うち新規は6兆8953億円、この3年で約3倍に膨れ上がっている。
 きわめて危険な攻撃型の兵器導入を次々と予算化している。「敵基地攻撃能力」保有のための「スタンドオフ」攻撃能力の強化、長射程巡航ミサイルの大量装備、目標探知のために多数の小型人工衛星を連携させる「衛星コンステレーション」の構築、新イージス・システム搭載艦の整備、次期軍事通信衛星の整備、米国製の無人偵察機「シーガーディアン」2機の取得、小型攻撃用ドローンの取得等々。この機種選定にはイスラエル製も候補に上がる。
 憲法を蹂躙する武器輸出促進のための予算も計上されている。外務省は、「同志国」の軍に防衛装備品などを無償提供する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」に今年度比約30億円増の80.5億円を計上した。一方で、軍需産業が兵器を輸出仕様に改修する費用を全額補助する「防衛装備移転円滑化基金」の問題が暴露された。23~27年度の5年間で計2000億円が基金に投入される計画で、すでに800億円が蓄積されており(23、24年度の予算で400億円ずつ繰り入れ)、来年度も400億円計上されている。このうち約15億円しか使うめどが立っていないというのだ。「5年間で43兆円」の目標実現のためになりふり構わず軍事費を計上した結果だ。この基金は今後日本が武器輸出を促進するテコとなる危険な制度だ。

軍事費削減を要求し、石破政権と対決しよう

 国会議席数での力関係は野党に有利にもかかわらず、軍事費突出か人民生活優先かという来年度予算案の最重要課題での対決が回避されている。岸田政権崩壊の引き金となった裏金問題についても、自民党は「禁止よりも公開」で逃げ切ろうとしている。われわれは「企業・団体献金の全面禁止」を要求する。国民民主は「103万円の壁」問題、維新は「高校授業料無償化」を巡る取り引きだけで政権に秋波を送り、予算の成立にも加担する危険がある。要求そのものは当然のことと考える。しかし、2党による政権との駆け引きは、夏の参院選に向けた点数稼ぎである。何より許しがたいのは、突出した軍事費を全く問題にせず、その財源を「教育国債」や「日銀による永久国債保有」(国民民主)、子育て予算「別枠化」や子ども人数による課税の差別化(維新)でツケを後の世代や子どものいない世帯等に回そうとしていることだ。
 「103万円の壁」だけが問題ではない。問題は、上がらない賃金と高インフレの下で中・低所得者から高い所得税・住民税、社会保険料の過酷な収奪が行われていることだ。勤労人民全体に対して、非課税所得基準の引き上げと累進性の強化、社会保険料の大幅な引き下げ、そして何よりも消費税率の引き下げと廃止によって、可処分所得を増やし生活悪化を食い止めることこそが必要だ。
 高校授業料無償化も、家計を圧迫する教育費負担を軽減するという意味で重要な課題だ。しかし大学学費の値上げや数百万円にも上る奨学金の返済問題、小・中学校の学校給食費や校外学習の費用など、教育費の問題は高校の授業料だけではない。本当に教育費負担を緩和し、公教育を強化するためのトータルな施策を実現する必要がある。そのためには、まず、巨額の軍事費を削減する以外にはない。
 われわれは、「選択的夫婦別姓」の実現を支持する。立憲は「選択的夫婦別姓」の議員立法案を提出し、議会採決に持ち込む構えだ。自民党内保守派は「旧姓の通用使用拡大」という実質的に現行法と変わらない法案を対置することで党内をまとめ上げ、野党にゆさぶりをかけようとしている。あいまいな妥協を許してはならない。
 今国会の最大の焦点の一つが「能動的サイバー防御」法案だ。サイバー攻撃は戦争行為であり、「私信監視」等の人権侵害だけが問題ではない。中国への先制攻撃は直接の軍事衝突に発展する危険がある。「日本学術会議」法案もまた、首相が人事や予算を統制し、学術会議の自立性を奪い政府いいなりの御用機関化を目的とする法案だ。対中戦争準備のためのこれら法案を廃案に追い込もう。
 トランプ大統領の軍事費増額など対日要求増大によって、軍事費増大と大衆負担増・切り捨てをめぐって、政府・支配層と労働者・人民の諸矛盾が、従来以上に先鋭化することは間違いない。軍事費を大幅に削減し、対中戦争準備から日中平和友好へと路線転換しなければ、労働者・人民の状態悪化を食い止めることも、切実な要求を実現することもできない。
 戦争を阻止し人民生活を防衛するために、「対中戦争ではなく日中平和友好」を掲げ、石破政権との対決を強めよう。

2025年2月9日
『コミュニスト・デモクラット』編集局

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