トランプ「ガザ接収=民族浄化」計画を撤回させよう
米=イスラエルは交渉プロセスを妨害するな

パレスチナ人によるガザ統治の基本原則を守れ

 トランプ大統領は2月4日、訪米したネタニヤフ・イスラエル首相と会談し、「ガザ全住民を国外に移住させる」「米国がガザを接収する」計画を突然ぶち上げた。ガザ住民を全員追出し、強制移住させ、大量虐殺した跡地を接収・所有し、整地し、高級リゾート開発をするという。残忍、異常、吐き気のする構想だ。思いつきやでまかせではない。政権中枢で構想を練り上げ、ネタニヤフともすり合わせた上でのガザ強奪計画だ。それは、まさに「第二のナクバ(大破局)」であり「民族浄化」そのものだ。占領地の住民の追放や移送はジュネーブ諸条約の追加議定書でも禁じられており、国際人道法違反である。国際的にも、支持する声はイスラエル以外には全くない。
 同時にトランプは、イスラエルへの武器販売の一部制限解除、1トン爆弾1800発と500キロ爆弾4700発の供与を決めた。さらに、「反ユダヤ主義」だとして国連人権理事会からの脱退、UNRWAへの資金を拠出停止の継続を発表するなど、イスラエルと一体となって侵略と植民地主義支配を強化する姿勢を露わにした。
 ハマスはじめパレスチナ抵抗勢力の各派は、すぐさまトランプ計画を批判し、断固としてガザの地にとどまって闘うこと、全世界がこれを阻止するために行動すべきことを訴えた。サウジアラビアやエジプトも反対である。中国は「パレスチナ人によるパレスチナ統治」が基本原則だとし、強制移住に反対を明言した。ドイツやフランスでさえ批判声明を出した。
 1月19日のガザ停戦合意が発効するや、南部に避難していた何十万人ものパレスチナ人民が北部に戻った。全体が瓦礫の山と化し、家屋も病院も学校も廃墟と化した土地に次々と帰還している。彼らは、今回のトランプ計画に反発し、「我々は去らない」「存在することが抵抗だ」と怒りを露わにする。彼らは、幾世代にもわたり生命をつないできた先住民族なのだ。誰もその土地を奪うことも、彼らを追放することもできない。この確固たる決断と不屈の意志こそ、トランプの「ガザ接収・民族浄化」計画に対するパレスチナ人民の回答である。
 今回のトランプ計画は、停戦交渉そのものに打撃を与えかねない。さらにガザ住民が強制移住に抵抗すれば当然、今度は米軍の直接介入、さらなる大量虐殺だ。まずは国際的な圧力を集中しトランプ計画を撤回させよう。

ハマスとパレスチナ人民が勝ち取ったガザ停戦

 ガザ停戦は、ハマスとパレスチナの抵抗勢力、そしてガザの人々が多大な犠牲を出しながら勝ち取った成果であり、勝利である。同時に、ヨルダン川西岸の抵抗勢力、レバノンのヒズボラやシリア、イエメンの抵抗勢力とイランなど「抵抗の枢軸」の勝利である。そして、イスラエルに国際的圧力をかけてきた、世界中の連帯運動、中国やグローバル・サウス諸国の成果である。
 我々はガザ停戦協定を歓迎する。1年4カ月以上にわたるイスラエルの虐殺をようやく止められる。人道支援物資も届けられる。
 西側メディアでは、停戦はハマスが追いつめられた結果との報道が支配的だ。「幹部や多くの戦闘員が殺害され、弱体化」「レバノンのヒズボラへの打撃やシリアのアサド政権打倒で孤立」等々。しかし、それは事実ではない。この停戦の内容は昨年5月以降出されていたものと基本的に変わらず、ハマスは一貫して受け入れると表明していた。これを拒否し停戦を阻んできたのはネタニヤフであり、そのネタニヤフが受け入れざるをえなくなったからこそ、停戦が成立したのである。スモトリッチなど連立政権内の極右が反対しても、今回は応じなかった。イスラエルがガザ北部への帰還を認めたということは、北部から人々を追い出し新しい入植地として併合するという「将軍たちの計画」の破綻を認めざるをえなかったということを意味する。
 そして、イスラエルをそこまで追い込んだのは、ハマスをはじめとする抵抗勢力、そしてガザの住民すべての、膨大な犠牲を出しながらの闘いであった。停戦後まず明らかになったのはハマスの健在ぶりだ。長期にわたって攻撃を受け、ガザを瓦礫の山にされ、幹部を殺害されても、組織的活動が保たれている。停戦初日の捕虜交換に際して大量のハマス戦闘員が姿を現した。戦闘員だけでなく、制服を着た警官や、市民防衛隊など行政組織のスタッフも登場した。治安部隊がガザ全域に展開し、治安維持、交通整理にあたり、住民の相談に応じる姿が見られた。米国も新たに1万~1万5000人の戦闘員が加わったと認めている。現在でもまぎれもなく、ガザを統治しているのはハマスであることを示し、ハマス壊滅など不可能だという現実をネタニヤフに突きつけたのだ。

停戦が明らかにした米=イスラエルの戦争犯罪

 停戦にはもう一つ重要な意義がある。これまで隠されていた大量虐殺の実態、その被害状況の調査が進むことだ。
 パレスチナ・中東系メディアが連日報じていたガザの死者数は、2月1日に4万7487人だったが、2月3日には突然、6万1709人へとはね上がった。それは、集団墓地や瓦礫に埋もれた人々、放置された遺体が次々に発見されたからだ(ガザのメディア局長サラマ・マルーフ氏)。 
 また、医学雑誌「ランセット」に掲載された、ペンシルベニア大学ミシェル・ギヨー教授の研究によると、ガザでのジェノサイド開始からの1年の間に、ガザの男性の平均寿命は73.6歳から35.6歳まで短くなり、半分以下となった。女性の平均寿命は77.5歳から47.5歳になった。これは世界のどの国よりも短い。
 新たに明らかにされる被害を暴露し、米=イスラエルの戦争犯罪を追及しよう。

西岸地区での戦争・併合策動を止めよう

 イスラエルはガザ停戦の一方で、ヨルダン川西岸で戦争を激化させている。昨年以来、西岸でも850人以上が殺されていたが、1月21日、ジェニンで新たな「対テロ作戦」を開始し、約2週間に50人以上を殺害した。ガザから戦車や装甲車を送り込み、極右の入植者と一体となって攻撃を激化させている。トランプは1月22日、ヨルダン川西岸のイスラエル極右集団に対する制裁を解除し、西岸での攻撃を後押ししている。パレスチナ自治政府はイスラエルの手先となって弾圧に手を貸している。さらにイスラエルは、入植者に直接所有権を付与することで入植を加速し、西岸全体の併合強行へと動き始めた。
 イスラエルは、他の周辺国への侵略もやめていない。レバノンでは、イスラエル軍が1月26日までの撤退期限を守らず、占領を続けている。シリアでは、イスラエルのカッツ国防相がイスラエル軍を無期限で駐留させると表明した。さらに、イエメンとイランに対する戦争を追求して、米国とともに中東全体の軍事支配をも狙っている。

戦争再開を狙う米=イスラエルを孤立させ、恒久停戦へ追い込もう

 国際的な反戦運動・パレスチナ連帯運動の任務は、何よりもまず、トランプのガザ接収・民族浄化計画を阻止することである。そして、イスラエルと米帝国主義、ネタニヤフとトランプが一体となってのジェノサイド再開を阻止し、恒久停戦とイスラエル軍の完全撤退を実現するため、運動の力によって両者を孤立させ、国際的圧力をかけ続けることである。
 ネタニヤフは停戦を受け入れても、破壊され尽くされたガザの再建を妨害し、住民の生活を脅かし続けている。UNRWAのイスラエル国内での活動を禁止する法律を1月30日に施行した。イスラエルが併合している東エルサレムに直接的影響が及ぶのに加え、ガザやヨルダン川西岸にも多大な悪影響を及ぼす。本来、停戦によって進むはずのガザへの物資の搬入が停滞させられている。教育や医療、開発面などでもUNRWAに代わるものはない。
 イスラエルの狙いは、UNRWAの活動禁止によって、「パレスチナ難民」という存在自体をなきものにすることだ。UNRWA活動禁止を撤回させなければならない。
 ネタニヤフは恒久停戦をするつもりはなく、戦闘再開の機をうかがっている。様々な口実をつけて第2期に向けての協議を決裂させようとするだろう。これを許してはならない。

石破政権と日本企業にイスラエル支持・協力をやめるよう迫ろう

 停戦だけでは根本的な問題は解決しない。パレスチナ人民が占領と植民地状態に置かれたままでは同じことが繰り返される。米国とイスラエルに、植民地支配をやめさせ、民族自決権に基づくパレスチナ国家の樹立を認めさせるまで、パレスチナ人民の闘いは続く。これに応えるため、米国に追随してイスラエルを支持してきた自国の政府・企業との闘いを続けよう。
 我々は日本政府と企業に対して、以下のことを要求する。
①トランプのガザ接収・パレスチナ人追放計画に明確に反対すること。
②イスラエル政府に停戦を守り、恒久停戦を受け入れるよう要求すること。
③イスラエル軍にガザからの撤退、ヨルダン川西岸での攻撃の中止を要求すること。
④イスラエルによるUNRWA活動禁止に抗議すること。ガザの住民に食料、水、医薬品などの物資を提供すること。
⑤イスラエル政府に、レバノン、シリアの占領地からの撤退を要求すること。イエメン、イランへの戦争に反対すること。
⑥パレスチナ国家を承認すること。イスラエル政府支持をやめ、軍用ドローン導入などイスラエルとの協力をやめること。

2025年2月9日
『コミュニスト・デモクラット』編集局

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