建物の3分の2が被害を受ける
米=イスラエルがガザとパレスチナ住民に対する大量虐殺戦争を開始してから1年が経った。国連衛星センター(UNOSAT)が2024年9月に収集した高解像度の衛星画像に基づいて分析したところ、合計で16万3778の建造物が被害を受けた。これらは全て、米国が供与したF15戦闘機や大型爆弾、バンカーバスターによるものだ。映像を見れば周辺一帯の建物が根元から倒壊し、粉々に崩れている。住民は建物もろとも圧死させられる。
*10月7日以降、ガザ地区の「建物の66%が被害を受けた」 UNOSAT
https://www.palestinechronicle.com/66-of-buildings-damaged-in-gaza-since-october-7-unosat/
ランセット方式では21万人の死者
ガザ保健省によれば、死者は約4万2千人、負傷者は約9万7千人、行方不明者は約1万人、計約15万人に及ぶ(10月5日)。だが、これは全部ではない。
英医学雑誌ランセットによれば、この数字は大きく過小評価されているという。2つ理由がある。一つは、建物破壊が激しくデータ収集が困難だからだ。もう一つは、間接的被害が含まれていないからである。病院崩壊、食糧・水・シェルター不足、人道援助の妨害がもたらす飢餓や栄養失調、生殖疾患、伝染性疾患(最近ではポリオ)、非感染性疾患など、間接的死者数は膨大な数にのぼる。
ランセットによれば、間接的な死亡者数は、直接死者数の3倍から15倍に及び、今年7月20日に最大18万6000人以上と推計している。仮に、同じ方法で10月5日時点の4万2千人の死者に対し、直接死1人につき間接死4人という推定を当てはめれば、直接間接を合わせた死者数は21万人にのぼる。これはガザ地区総人口の約9%に相当する。文字通り、大虐殺、ジェノサイドそのものだ。
*「ガザの死者を数える:困難だが不可欠」ランセット 2024/07/20
https://www.thelancet.com/action/showPdf?pii=S0140-6736%2824%2901169-3
大量虐殺ドクトリン=「ダヒヤ・ドクトリン」とは何か?
こうした建物の根こそぎ破壊による大量虐殺をネタニヤフ政権が軍事ドクトリンとしていることは、日本や西側では伝えられていない。ハマス戦闘員を直接攻撃するのではなく、意図的に民間人、民間インフラを標的にし、空爆で超大型爆弾を大量使用し、建物を一瞬で倒壊させ、意図的に住民を多数爆死・圧死させるなど、圧倒的武力行使で住民全体に深刻な苦痛を与える作戦教義だ。これを「ダヒヤ・ドクトリン」という。イスラエル軍では、これに基づき敵の5~20倍の市民を殺してもかまわないとされる。国際法違反を堂々と軍事ドクトリンとしているのだ。このドクトリンは元々、2006年にベイルートの住宅密集地ダヒヤで当時のイスラエル参謀本部作戦局長ガディ・エイゼンコットが考案したものだ。彼は、昨年10月以降のガザ攻撃でも戦時内閣で要職を務めた。
*「ダヒヤ・ドクトリン」がダヒヤに戻る
https://www.aljazeera.com/opinions/2024/10/3/dahiyeh-doctrine-returns-to-dahiyeh
ジュネーブ条約違反 医療・学校・人道支援従事者を虐殺
ジュネーブ条約は、軍事目標と民間人を区別せずに攻撃することを明確に禁止している。医療従事者や援助従事者を含む民間人、および病院や学校などの民間施設が戦時中に保護されなければならないという原則である。この国際法を全面的に蹂躙しているのがイスラエルだ。国家が戦時国際法を守らなければ国家テロであり、戦争犯罪だ。
過去1年に、約300人の人道支援従事者を虐殺した。ガザの病院や医療施設を攻撃し、500人以上の医療従事者を虐殺した。数百人の医療従事者が拘束され、行方不明となっている。その多くは病院への襲撃中に拘束されており、病院長も含まれている。
白旗を掲げた老人や民間人を射殺。ガザで捕虜にされた3人のイスラエル市民も、同様の状況でイスラエル軍によって処刑された。パレスチナ人の記者やカメラマンやジャーナリストが130人以上虐殺された。イスラエルが真実を隠蔽し、報道させないためだ。
*なぜ民間人を虐殺することがイスラエルの意図的な戦略なのか
https://electronicintifada.net/blogs/maureen-clare-murphy/why-massacring-civilians-israels-deliberate-strategy
*ガザでパレスチナ人ジャーナリストが殺害される RSF、10カ国で「フラッシュ抗議」を開催
https://www.palestinechronicle.com/palestinian-journalists-killed-in-gaza-rsf-holds-flash-protests-in-10-countries/
過去のどの紛争よりも多くの女性と子どもを殺した
オックスファム・インターナショナルは、米=イスラエルがガザ攻撃で6000人以上の女性と1万1000人の子どもを虐殺したとする衝撃的な報告書を出した。しかも、この数字には行方不明の数千人もの子どもが含まれていないという。
同団体によれば、2004年から2021年までの紛争による直接的な死亡者数をみれば、2016年にイラクで殺害された女性の最大数は2600人以上という。別の団体の報告書は、シリア紛争では年間平均4700人以上。国連の子どもと武力紛争に関する報告書によると、過去18年間にこれほど多くの子どもが死亡した紛争は他にないという。
*イスラエルのガザ戦争は、1年間で過去数十年間のどの紛争よりも多くの女性と子どもを殺した
https://www.commondreams.org/news/gaza-women-children
精神的・肉体的トラウマに苦しむ子どもたち
米=イスラエルの1年にわたる攻撃を生き延びた多くの子どもたちは、心理的・肉体的なトラウマを抱えている。ガザの2万5000人以上の子どもたちが「片親を失ったり、孤児になったりして、深い精神的苦痛に陥っている」。また「ほとんどの子どもたちが不安や深刻な身体の傷に苦しんでおり、手足を失っている」。別の報告では、今年9月末時点で、少なくとも1万6859人の子どもが殺された。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、ガザ地区の62万5000人以上の学齢期の子どもたちが、イスラエルのガザに対する継続的な侵略によって深刻なトラウマを経験していると発表した。
*「イスラエル」は、1年足らずでガザで約1万7000人の子どもたちを殺害した
https://english.almayadeen.net/news/politics/-israel–killed-almost-17-000-children-in-gaza-in-less-than
5万人以上の子どもたちが「急性栄養不良」に直面
今年9月初旬、ユニセフは、ガザのパレスチナ人の「5万人以上の子どもたちが急性栄養不良に苦しんでおり、現在、命を救う治療を必要としている」、「この惨状に苦しんでいるガザの人口のほぼ半数が子どもたちであることを忘れてはならない」、「1年にわたる戦争と人道支援の厳しい制限が、食料、健康、保護システムの崩壊につながり、子どもたちの栄養に壊滅的な結果をもたらしている」と報告した。
*深刻なトラウマに苦しむ62万5000人のガザの学齢期の子どもたち UNRWA
https://english.almayadeen.net/news/politics/625-000-school-aged-gaza-children-struggling-with-severe-tra
農地を破壊し、意図的な飢饉、飢餓を引き起こす
米=イスラエルは、ガザを封鎖することで、直接、食料や飲料水などの搬入を阻止し、飢餓や餓死を生み出しているだけではない。
国連によれば、今年9月までにガザ地区の恒久的な作物畑の約68%が被害を受けた。ガザ地区農業省は、イスラエルがガザの農業部門を直接空爆したり、重機や戦車を使ってブルドーザーで破壊したりして、ガザの農業部門を意図的に破壊したと述べた。
*ガザの農民たちは、破壊は意図的な「飢餓キャンペーン」だと言う
https://electronicintifada.net/content/gaza-farmers-say-destruction-deliberate-starvation-campaign/49111
民族浄化戦争の実態を暴き、戦争犯罪を糾弾しよう
ネタニヤフの今回の大虐殺戦争は文字通りの民族浄化戦争である。ガザ住民二百数十万人に、北へ、南へ何度も何度も「避難」させ、住居を破壊してはテントや瓦礫の中での生活を余儀なくさせ、肉体的・精神的重圧を強制し、衣・食・住環境全体を破壊し、衛生環境悪化で肉体的・精神的疾患を強いている。
これらあらゆる戦争犯罪を全面的に暴露しよう。武器・弾薬供給で直接的かつ全面的に支え、国連での停戦決議を拒否権行使で阻止し、メディアで意図的に隠蔽している米帝主導の西側帝国主義を批判しよう。
(K)