香港「国安条例」でメディアが誹謗・中傷

対中戦争反対と反中・嫌中宣伝反対を結合しよう
西側による中国の国家分裂策動に反対する 
  

 香港立法会(議会)は、3月19日、中国・香港政府が提出した「国家安全条例案」を全会一致で可決し、23日より施行した。これに対し、日本を含む西側政府・メディア、その意を受けた「香港専門家」「人権団体」が、再び反中・嫌中宣伝をエスカレートさせている。「統制強化だ」「自由と民主主義に反する」「自由が制限される」等々。
 中国・香港政府が、なぜ今回の条例を制定せざるを得なかったのか?直接の理由は2019年の香港暴動である。この暴動の真実、本質を明らかにすることなしに、条例制定の背景は理解できない。
 それでは、香港暴動とは何だったのか?それは、民主化ではなく、中国国家の分裂策動だった。米英主導の西側帝国主義と、かねてから香港を独立させ、米英の属国にしようとしていた反中・反社会主義勢力(いわゆる「民主派」)の共謀による、社会主義中国の国家分裂策動であった。結託して植民地統治下の香港に戻そうとしたのだ。彼らは、騒乱状態をつくり出せば、香港政府を転覆させ、中央政府や人民解放軍の介入を引き出し、騒乱の中で香港を分離独立させることができると考えた。米CIAが得意とする政権転覆=「カラー革命」である。 

          (MK)

香港暴動の本質=「カラー革命」を暴露しよう

(1) 2019年春、香港政府は「逃亡犯条例改正案」条例を制定しようとした。他国へ逃亡した殺人犯を逮捕するためだった。それ自体は争乱や暴動とは何の関係もない。ところが、米英と「民主派」は勝負に打って出る。トランプ政権は中国に関税戦争、ハイテク戦争を開始し、対中政策を大転換したばかりだった。千載一遇のチャンスとばかりに、かねてからの政権転覆計画を実行に移した。
 同年2月から6月の間に、香港の「民主派」活動家は頻繁に訪米し、米政府関係者と謀議を重ねた。ペンス副大統領が開いた安全保障会議(NSC)にまで香港「民主派」は招かれた。そして改正案審議が始まった6月、西側政府・メディアと共に、彼らは突如この改正案が「香港市民を強制的に逮捕・拘禁するものだ」「表現の自由がなくなる」「暗黒社会になる」などと騒ぎ始め、デモを開始した。西側政府・メディアが一斉に国家分裂策動を「民主化」に塗り替えて世界中に流した。これにリベラルや左翼までもが合流した。

(2) 香港デモを扇動したグループにはメディア王や富裕層が加わる「民間人権陣線」と、その行動部隊として登場した若者を中心とする「勇武派」という二つがあった。なかでも「勇武派」の犯罪行為は常軌を逸していた。周庭や黄之鋒たちだ。彼らは、デモを批判する住民や警官にテロを働き、公共交通や道路など公共物、各種インフラを攻撃し、あちこちに放火した。親中派の人々や商店は襲撃され焼き討ちにあった。議会や警察署を襲撃し、破壊と暴力の限りを尽くしたのだ。
 「民主派」は、終始、米英と一体となって動いた。CIAの別働隊NED(全米民主基金)は多額のカネを「民主派」に提供した。「民主派」のデモでは常に星条旗や英国旗が打ち振られ、あからさまに西側諸国の介入を求めた。デモ隊の横断幕には「トランプさん、香港を救って下さい」とあった。また香港統治時代最後の総督パッテンは中国に警告を発した。黄之鋒はNEDの資金を受けとり、米国での「香港人権・民主主義法案」の成立を前にした議会公聴会に出席し、中国に対する制裁の必要性を訴えた。また周庭は流ちょうな日本語で何度も日本の介入を要求した。

(3) 19年9月、局面は変わった。香港行政長官が条例案を撤回したことに加え、民間人権陣線や勇武派の破壊・暴力活動がエスカレートし、彼らの目的が「民主化」ではなく単なる暴動だと市民が気付き始めたのだ。一般市民は完全に離れてしまった。困った「民主派」は「香港の分離独立」まで進むしかない。条例案撤回後も「トランプ政権の介入」「中国への制裁」「香港政府打倒」をスローガンに破壊活動をエスカレートさせ、最後は自滅した。
 一方、米国政府は「中国共産党政権打倒」の目論見を明言した。20年7月にポンペオ国務長官は、「共産中国を変革する(つまり共産党政権を打倒する)」と明言した。当時、香港はまさ国家分裂、政権転覆、テロ、外国勢力の介入の真っ只中にあった。
(4) こうした事態を前にして、中国政府が20年に「国家の安全を守り、国家分裂や政権転覆、テロ、外国勢力との共謀を防ぎ、香港の繁栄と安定の維持、香港市民の権利と利益そして国家の安全保障のために」(「香港国家安全維持法」第一章 第1条)国安法を制定したのは当然の措置だった。さらに、香港政府が今回、それを補足・補完する条例を、香港基本法23条に則り制定したのも当然のことだろう。キーワードは「外国の介入」と「国家分裂」だ。

中国の国家分裂を煽る日本メディア――未だに「民主派」を英雄視

(1) 日本のメディアは、台湾と同様、香港をまるで「独立国家」のように扱い、当時も今も、「民主派」(分離独立派)を無条件で英雄視し、米英と「民主派」の謀議・共謀も、彼らの暴力・破壊活動も、なぜ自滅したのかの原因やプロセスも調査・報道しない。その後、米英政府は市民権を与える、亡命を認めると言いながら、英国だけで18万人規模の移住者を受け入れながら、ハシゴを外した。多くの移住者は、他国への再移住を強要され、放置され、極貧生活に陥り、「楽天地」のはずが地獄へ一変した。要するに、用済みとなったのだ。これが「カラー革命」に失敗した者に対する帝国主義の仕打ちだ。
 しかし、日本メディアは、このような悲惨な顛末も報道しない。懲りずに、今度は「国家安全条例」に対する誹謗・中傷を始めたのである。曰く、「自由を奪われた香港の将来を憂慮する」(日経)、「香港の治安条例 社会と経済が窒息する」(朝日)、「香港、国安条例が成立」(毎日)、「香港の国安条例 中国の信用損ねる強権政治」(読売)。ところが、本来、岸田政権の対中戦争、反中・嫌中宣伝と真正面から闘い、日中平和共存への転換を説くべき日本共産党も、大手メディアに合流した。「香港 国安条例が成立 審議わずか12日 人権抑圧さらに」「香港の人権状況 さらなる弾圧法制定を許すな」(赤旗)。

(2) 各紙に共通するのは、「香港からあらゆる自由が奪い取られる」、「犯罪行為の定義があいまい、いくらでも拡大解釈できる」、「外国人や外資系企業も無関係ではない」、「香港でスパイの疑いをかけられるリスクも高まる」、「一国二制度は完全に形骸化」、「言論による政府批判ができない」、「人権弾圧を内政干渉として拒否するな」といったところだ。
 しかし、これらはデタラメだ。前記の如く、対象者は「外国の介入と国家分裂」に従事した者だ。条例は、基本的に、米英や西側帝国主義と共謀して国家転覆を図る者に絞った規定になっている。一言すれば、「カラー革命」対策なのである。だから、国家の安全を脅かす罪を犯した少数の個人を対象とする一方、犯罪の要素を正確に定義している。犯罪と刑罰の適法性、無罪の推定、被告人その他法的手続きの参加者の自己防衛権およびその他の手続き上の権利の原則、さらに法律が遡及的でないという原則も規定している。また、特定の犯罪に対する具体的な免除と防御を定め、法執行機関は法的条件に従って権限を行使し、厳格な手続きに従い、司法の監視を受けなければならない。

(3) もはや、2019年ではない。メディアがいくら騒いでも、もはや容易に「カラー革命」ができない時代に入った。西側の支配や介入は「民主主義」で、これを拒否するのは「独裁」「権威主義」という「西側の普遍的価値観」や植民地主義的横暴は通用しなくなっている。中国と「グローバル・サウス」は協力して、世界情勢を変えつつあるのだ。ほとんどの新興・途上諸国は、米・NATOの対ロシア戦争や対露制裁も、米・イスラエルの大虐殺戦争も支持しない。侵略戦争や内政干渉や経済制裁を乱用する米帝と西側帝国主義のやりたい放題はできなくなっている。

対中戦争の道を掃き清める反中・嫌中イデオロギー

 岸田政権は、目下、対中戦争準備に全力を挙げている。近日、岸田は訪米し、安保条約体制の根本的な転換を、日本の国会審議を抜きに、米国との間で決定する計画だ。すでに、軍事費倍増や攻撃ミサイル配備、南西諸島の軍事要塞化から、日本版軍需産業の復活、武器輸出解禁、経済安保法まで、日本の軍国主義復活はかつてない全面的なもの、全く新しい段階に入った。
 そしてメディアの反中・嫌中宣伝は、この軍国主義の新段階に不可欠なイデオロギー装置なのである。対中戦争のためには、予め、中国を悪魔化しておかねばならない。イラクを侵略する前にサダム・フセインを独裁者に仕立て上げたように、習近平総書記を独裁者に仕立てねばならない。中国は「残忍な国家」「権威主義国家」「自由も民主主義もない国」等々、中国に対する恐怖や嫌悪を、あらゆる機会を使って刷り込んでいくことが必要だ。
 今回の国家安全条例をめぐる誹謗・中傷もその一つだ。だが、これは、反中・嫌中宣伝全体のごく一部に過ぎない。反スパイ法、新疆ウイグル問題、内モンゴル問題、チベット問題、台湾問題、Tiktok問題、福島原発汚染水問題、中国経済崩壊論、等々。対中戦争反対、日中平和共存への転換の闘いを、反中・嫌中イデオロギーとの闘いと結合して闘おう。

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