米国は、米中関係に何らかの動きがある時、必ずプロパガンダを流す。ブリンケンが以前予定した訪中前には、中国「スパイ気球事件」をでっち上げ、訪中を拒否された。だが、5ヶ月後、ペンタゴンは「実は情報を収集しなかった」と訂正(注1)。さらに6月19、20日の訪中前には、中国がキューバに「スパイ施設」建設を目論んでいるとのプロパガンダをでっち上げた。しかし、現在の中国に、米国本土近辺に「スパイ施設」を置かねばならぬ必要性も必然性も全くない。
そもそも米国には外国に軍事施設を置くことを批判する資格は全くない。それを言うなら、米国はキューバ国土を不法に占拠しているグアンタナモ海軍基地を撤去すべきであり、悪名高きグアンタナモ収容キャンプを閉鎖し、収監者を解放すべきである。こうした観点から「スパイ施設」プロパガンダを批判する。
(注1)米国防総省は、6/29に、撃墜した飛行船の破片を調べた結果、中国にデータを送り返すことはもちろん、情報収集もしていなかったことを認めた。中国は、民間飛行船が不可抗力で漂流したことを繰り返し伝えたにもかかわらず、バイデンは軍に命じて撃墜したのだ。5ヶ月にわたる異常な中国脅威論騒ぎを、西側政府・メディアは謝罪すべきだ。
中国がキューバに「スパイ施設」とのプロパガンダ
6月8日、反中宣伝の代表格、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、匿名の米国当局者を引用した「独占レポート」を発表し、中国が盗聴ステーションの建設を許可するため、資金不足のキューバに数十億ドルを払うことに同意したと報じた。欧米メディアの多くがWSJに続き「ニュース」を報道した。メディアのみならず、反中国をかねてから標榜する国会議員たちも即座に行動を起こした。曰く、かつてのキューバ危機の際に核弾頭が隠された村だ、パラボラアンテナがある、警告看板がある等々。全て憶測ばかりだ。
バイデン政権も、デマを助長している。ブリンケン国務長官は6月12日に述べた――「キューバに関しては、2021年1月にこの政権が発足したとき、中国政府が世界中で展開している、遠方での軍事力維持を目的とした海外でのロジスティクス、拠点、収集インフラを拡大する取り組みについて説明を受けた。われわれが持っている情報に基づくと、中国は2019年にキューバで情報収集施設を増強した」と。
キューバ、中国は直ちに反論
キューバ政府はただちに米国プロパガンダに対する反撃を開始。6月8日、キューバのカルロス・フェルナンデス・デ・コシオ外務副大臣は声明を発表した。その主旨は以下だ――WSJによるキューバと中国との間でのスパイ施設の設置に関する合意が存在するとの情報は全く事実無根で根拠がない。わが国は2014年1月にハバナで署名された「ラテンアメリカとカリブ海平和地帯宣言」に署名した。この宣言に基づき、米国の多数の軍事基地や軍隊、特にグアンタナモ県の国土の一部を不法占拠している軍事基地を含め、ラテンアメリカとカリブ海におけるすべての外国の軍事プレゼンスを拒否している。このような誹謗中傷は、米国外交官に対する音響攻撃に言及したもの(注2)、ベネズエラに存在しないキューバ軍部隊に関する虚偽、キューバに存在するとされる生物兵器研究所に関する嘘など、米国当局者によって頻繁に作り出されてきた。これらすべて、経済封鎖の強化、キューバの不安定化、キューバへの侵略を正当化し、米国および世論を欺く、悪意に満ちた虚偽の推論だ。米国のキューバに対する敵意と、人道的被害を誘発し、キューバ国民を罰する措置は、いかなる形であれ正当化できない、と。
(注2)米国外交官に対する音響攻撃とは、いわゆる「ハバナ症候群」のこと。2016年ハバナにある米国大使館およびカナダ大使館の職員間で発生して以降、世界中のアメリカ外交官が報告した一連の頭痛等の症状の通称。米国は当初、これらの症状が不特定の技術を使用した攻撃の結果であり、音波を利用した「音響攻撃」ではないかと告発した。
原因について米政府機関、CIAなどでも、攻撃ではなく大半がストレスとしたものや、「電磁波」としたものなどがあるが、キューバで録音された謎の音源を2人の研究者が分析したところ、何と、コオロギの一種の鳴き声と酷似していることが判明。米国はコオロギの声を、「電磁波」攻撃だ、「音響攻撃」だとして、批判の矛先をキューバに向けていた。一事が万事。「音響攻撃」批判は、米国が自らやっていることは「敵対」的な国もやっているに違いないと決めつける典型的な事例の一つだ。
だが、中国にとっては、米国本土近くに「スパイ施設」を置く必然性も必要性も全くない。今や中国は軍事ではなく、平和共存とウィンウィンの経済協力で敵対する国同士を結びつけ、多極化世界を築きつつある。米国と事を構える必要も臨戦態勢を取る必要もない。
中国外務省の汪副報道局長は、6月9日の記者会見で、「デマを流して中傷することはアメリカの常とう手段で、恣意的に他国に内政干渉するのはアメリカの専売特許だ」と述べ、「アメリカこそ世界最大のハッカー帝国であり、正真正銘の盗聴大国だ」と強く反論、「アメリカは自分のことを反省し、キューバに対する内政干渉をやめるべきだ」とした。ワシントンの中国大使館関係者は、10日副報道局長声明を引用し、米国は「噂と中傷を広めている」、「米国は世界で最も強力なハッカー帝国だ」と批判。副報道局長は16日の記者会見で、噂や誹謗中傷を広めることは米国の一般的な戦術であるとし、米国は長い間秘密活動のためキューバのグアンタナモ港を不法に占領し、60年以上にわたりキューバに封鎖を課してきたと述べた。米国は自らを厳しく見つめ、「自由」「民主主義」「人権」を口実にキューバの内政に干渉するのをやめ、キューバに対する経済的、商業的、財政的封鎖を直ちに解除し、キューバとの関係と地域の平和と安定を改善するのに役立つ方法で行動せよ、とした。
米国はグアンタナモ基地・収容キャンプをこそ撤去すべきだ
グアンタナモ米軍基地は、キューバ東南部のグアンタナモ湾に位置する、アメリカ南方軍が管理する海軍の基地だ。1898年の米西戦争で米軍が占領し、アメリカ合衆国の援助でスペインから独立したキューバ新政府が1903年2月23日、グアンタナモ基地の永久租借を認めたことになっている。しかしキューバ革命によって成立したカストロ政権は、アメリカ合衆国の基地租借を非合法とした。国家主権がキューバにある以上、ただちに基地は返還・撤去されるべきだ。
人道上深刻なのは、併設されたグアンタナモ収容所の存在だ。周囲が地雷だらけで脱走が不可能な上、マスメディアにも実態が見えない海外基地、キューバ国内でもアメリカ合衆国内でもない、国内法でも国際法でもない軍法のみが適用される治外法権区域ということで、20世紀後半からキューバやハイチの難民を不法入国者として収容。さらに米国は、9・11「同時多発テロ」以降、中東などからの「テロ容疑者」とされた人々の尋問と収容をここで行っているのだ。拷問を伴った尋問、というより拷問を自己目的としたような収容者虐待の一端を示したい――2002年アフガニスタンから連行されたカナダ国籍の少年オマール。拘束された当時15歳。彼は、頭巾を被らされ、両手錠をかけたまま宙づりにされ、犬を使って脅された。米軍曹が彼の胃の上に乗り、足首と手首を彼の背中の後ろに縛り上げ、ついに失禁すると軍曹は地面に油を注いで引きずり回した――。他の被収容者に対しても、あらゆる暴力、放置、物理的拷問、尊厳と宗教的信念を踏みにじる行為――裸にする、女性軍曹による性的虐待、コーランを汚す、踏みつける――がなされた。米国は、租借条約上、完全な管轄権を持ち、かつ米国の主権下でもない「灰色地帯」を利用してこのような挙に出るのだ。
オバマ大統領は2008年の大統領選挙で、グアンタナモ収容施設を閉鎖すると公約したが、結局は貫徹しなかった。トランプ時代は、上に述べたような体制が維持された。
多い時には約500名、40カ国以上から来た人々が拘束されていた収容所には、今なお37名(2022年4月2日、その後多少減少したようだ)の人々が、国連、赤十字、人権NGO、米世論の目にも拘わらず収容され、バイデンは閉鎖の決断をするわけでもない。
米国は、キューバでの中国の「スパイ施設」を云々する前に、まずグアンタナモ基地を撤去し、収容所を廃止せよ。さらに中国の人権を云々する前に、グアンタナモでやってきた事、やっていることを厳しく見つめ直し、被収容者に、さらには世界の人々に謝罪すべきだ。
グアンタナモへの原潜停泊を許すな
折も折、キューバ外務省は7月11日、米国原子力潜水艦が、グアンタナモ基地に数日間滞在したと発表。この動きを米国による「挑発のエスカレーション」と断じた。声明は、米国がラ米・カリブ海に70以上の軍事基地を設立し、ラ米・カリブ海諸国の主権と利益に対する脅威である軍事的プレゼンスを維持していると強調。キューバの米軍駐留に反対し、カリブ海での米軍原潜出現と通過によってもたらされる危険性を警告し、改めて米国による不法占領地の返還を要求した。
(MK)