イラク戦争20周年と米国反戦運動
米国が一方的に仕掛けたイラク戦争
終わりなき米国の戦争にNOを ウクライナに平和を

イラク戦争から20年 いまだ償われぬ米帝国主義の戦争犯罪

 20年前の3月20日、米国ジョージ・ブッシュ政権は、国連憲章、国際法を踏みにじり、イラクへの武力攻撃=侵略戦争を開始。ブッシュ政権は何の証拠もなくフセイン政権が大量破壊兵器を保有していると決めつけ戦争を仕掛けた。国連の調査団が調査をしている最中に、しかも国連安保理が米国の対イラク戦争決議を拒否するのを見越し、戦争を開始したのだ。すべてが米国による言いがかりの戦争だった。ブッシュは2002年、イラク、イラン、朝鮮民主主義人民共和国は「テロ支援国家」だと決めつけた。アフガニスタン戦争開始後、次はフセインのイラクだと照準を定めていた。「大量破壊兵器を保有している」「アルカイダをかくまっている」等は口実にすぎず、何の根拠もないことは当初から明白だった。今では米国もイラクがテロとも大量破壊兵器とも無関係であったことを認めざるを得ない。しかし、戦争が誤りであったとは絶対に認めない。米国は自分に従わず反抗する国家に対してどんな汚い手を使ってでも戦争を仕掛け、政権を打倒しようとする。それは20年前のイラクも、今日の対ロシア(ウクライナ)戦争も変わらない。これが覇権国家、戦争国家米国の本性だ。

イラク戦争犠牲者は30万人とも60万人とも

 イラク戦争は、主権国家イラクのフセイン政権を崩壊させ、イラク国土を破壊し、戦闘員だけでなく多くの市民を虐殺した帝国主義侵略戦争だ。石油と中東支配、軍産複合体の利益のための戦争であり、メディアを総動員する中であらかじめ準備された戦争だった。イラク戦争とその後の米軍占領、混乱の中、多数のイラク人民が殺された。Costs of War Projectによれば、03年3月から23年3月までの間に市民約20万人を含む30万人が殺され、ピーク時には300万人を超える人々が国内避難民になった。イギリスのランセットが行った調査では03年3月から06年6月までの間に60万人が暴力によって殺されたとされる。アフガニスタン戦争を大きく上回る市民の犠牲者だ。国家と国土が破壊され、傀儡政権の腐敗や宗派対立の激化、ISなどのテロ組織の台頭、そのもとでの貧困と失業、乳幼児の死亡率の上昇などが11年のオバマの戦争終結宣言後も続く。劣化ウラン弾の大量使用は国土の汚染と深刻な健康被害をもたらした。

イラク戦争に一切の反省を示さぬ米国 日本も同罪だ

 イラク戦争後も米国は、リビア、シリア、さらにはラ米、中東、アフリカと全世界で次々と意に沿わぬ国家に制裁、侵略と略奪を続け、米帝の世界覇権体制維持のため甚大な被害を与え続けている。
 米国は一方的に嘘の口実で仕掛けた犯罪的なイラク戦争の責任を一切とっていない。その無反省ぶりは、1991年湾岸戦争と2002年にイラク戦争に無制限の武力行使を認めた決議「軍事力行使権限承認(AUMF)」の廃止を、20年も経った今年3月にようやく上院で可決したことにも現れている。米国はイラクの人々に謝罪と補償をすべきだ。プーチンに国際刑事裁判所から逮捕状が出されるのなら、バイデンはじめ歴代政権も戦争犯罪人として裁かれるべきだ。
 当時の小泉政権は「ブッシュが言うなら間違いなく大量破壊兵器はある」と米国べったりで、いち早く公式に理解と支持を表明。憲法に反し自衛隊をイラクに海外派兵する「イラク特措法」を成立させ、後方支援と「復興支援」の名のもと自衛隊を現地派遣。戦場に米兵を輸送した。岸田首相は3月23日の参院予算委員会で「イラク戦争に関し、評価する立場にない」とし、対イラク攻撃を支持した日本政府の判断は適切だったとの認識を示した。イラク戦争への加担の無反省は日本政府も同じだ。

マスメディアの戦争犯罪も許されない

 ニューヨークタイムズやワシントンポストなど米国マスメディアは、イラク戦争20周年にあたりイラク戦争を特集したが、そこには一切の反省のかけらもない。戦争の根拠とされた大量破壊兵器やアルカイダとのつながりなどなかったことは認めるが、戦争を仕掛けたことそのものは間違っていないというのだ。だから20年たっても国連憲章に反して独立主権国家を打倒した犯罪も認めないし、戦争犯罪に対してイラクと人民に謝罪し補償することも要求しない。この点では日本のマスコミも同罪だ。米国に加担して自衛隊を送り侵略戦争に加担したことを批判しもしない。イラク戦争当時は多少批判的な色彩もあった米国のメディアは、今では好戦一色になって米国の覇権主義維持の先兵を買って出ている。ウクライナ戦争においてもロシアを悪魔化し、米・NATOの東方拡大、核ミサイル配備は棚上げにして戦争を煽っている。ノルドストリーム爆破という米国テロにも口を閉ざした。

全米で集会・デモ 200団体が結集 新しい運動の開始

 米国内でイラク反戦運動をリードした反戦団体ANSWER連合(戦争を止めレイシズムを終わらせるために今こそ行動を)は、イラク侵攻20周年を期して3月18日、「ウクライナに平和を――終わりなき米国の戦争にNOを」「戦争マシンではなく人民の必要にカネを使え」をスローガンに、全米12ケ所でウクライナ戦争に抗議し停戦を要求する行動を呼びかけた。米国内から米の戦争犯罪を追及し、ウクライナ戦争への武器・資金援助を明確に批判する運動が始まった。そこでは、以下のスローガンが提起された。

ウクライナに平和を! エスカレーションではなく交渉を
NATOを廃止せよ――シリア、キューバ、ジンバブエ、ベネズエラ、エチオピア、エリトリア、イラン、その他の多くの国々に対する米国の軍孤高主義と制裁を終わらせろ
戦争機械ではなく、人々に必要なものに金を出せ!
中国と戦争するな!
人種差別・アパルトヘイトのイスラエルへの米国援助を終わらせよ!
他の国の人々ではなく、国内で人種差別や偏見と闘おう!
米国はハイチから手を引け!
米軍アフリカ軍司令部を解体せよ!
シリアの包囲を終わらせよ!
ムミア・アブ・ジャマル、ジュリアン・アサンジ、レナード・ペルティエなど、全ての政治囚を釈放せよ!

 呼びかけに応え、200を超える反戦団体、環境保護団体など広範な団体が行動に参加。参加団体は、戦争反対と独自の要求を掲げた統一イメージのポテッカーを作成し、SNSで集会参加を呼びかけた。日本のノーモア沖縄戦命どぅ宝の会や、台湾をめぐる戦争を止める「沖縄対話プロジェクト」もこれに賛同した。
 ワシントン・ホワイトハウス前の行動には数千人が参加。「イラク戦争を思い出せ――これ以上ウソに基づく戦争をするな」「NATOにNO、平和にYES」「中国は敵ではない」などの横断幕やプラカードをもって行進した。
 南カルフォルニアでも、「戦争や占領のためではなく、仕事や教育のためのお金を!」「爆弾ではなく学校の建設を!」、「ウクライナの平和への道:交渉しエスカレートさせるな!」「平和のために:NATOを解体!」などと書かれたプラカードを掲げ、ミラマー海兵隊航空基地の門の前に結集。通行中の多くの運転手がクラクションを鳴らし支持を表明した。
 反帝組織である平和のための黒人同盟は 「おそらく、3月18日のデモは変化が起きていることを示している。若い黒人や他の植民地化された人々が率いる反帝国主義運動が台頭しつつある」とツィートした。
 3月18日行動は中国習近平のロシア訪問の直前でもあった。コードピンクは、バイデン政権にウクライナ戦争停戦に向けた中国の和平提案を習近平と話し合うことを求める署名を提起。「バイデンはプーチンと話し合え」のプラカードや「中国は敵でない」(China Is Not Enemy)とのバルーンを掲げた。

世界の反戦平和運動の力で 帝国主義の戦争を止めよう

 米国では4月1日のアトランタをはじめ、以降もウクライナ戦争の終結を求める行動が続いている。
 ウクライナ戦争1周年を期し欧州各国でも対ロ制裁による生活水準の悪化、核戦争危機に反対し、米国とNATOに即時停戦を求める運動が続いている。
 ドイツでは、左翼党国会議員サーラワーゲンニヒトとフェミニスト作家のアリスシュヴァイツァーが、左翼党の方針に反し、ウクライナへの武器の提供に反対しショルツ首相に停戦交渉を主導することを要求する「平和のためのマニュフェスト」を提起。70万人を超える署名が集まった。2月25日に呼びかけられたベルリン集会には5万人が参加。4月6日―10日には「武器供給の代わりに休戦!平和と気候保護のために!」を掲げ、恒例のイースター行進が行われる。
 英国ストップ・ザ・ウォー連合は、英国政府が戦車と劣化ウラン弾をウクライナに送ることの中止を求め、4月22日、ウクライナでのNATOとロシアの代理戦争の停戦を求めるロンドン集会に、ヨーロッパ反戦勢力の結集を呼びかけている。

       (IM)

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