ウクライナのネオナチによる停戦妨害を許すな
ネオナチと結びついたゼレンスキー政権

 ウクライナでのネオナチの浸透を問題にすると、まず出てくるのが、「プーチンの侵攻のプロパガンダだ」というものだ。ウクライナにはナチスなどいないし、その最たる証拠としてゼレンスキー大統領はユダヤ人ではないか、と。しかし、本当にこの問題をこんなふうに打ち切ってよいのだろうか。ウクライナでのネオナチの浸透はすでに看過できるレベルをはるかに超えている。その進出・横暴はナチスドイツを彷彿させるといっても過言ではない。その象徴のような事例が「ナチズムを賞賛する行為に反対する国連決議」(2020年)に、米国とウクライナの2か国だけが反対票を投じたことだ。ゼレンスキー大統領は4月7日、ギリシャ議会でビデオ演説したが、その際、信じられないことに2名のネオナチのアゾフ大隊隊員にアピールをさせ、ウクライナ政府とネオナチがいかに親密な関係にあるかを自ら白日の下にさらした。スタンディングオベーションでゼレンスキーを迎えた議会は直後にブーイングと怒りに包まれた。ウクライナでのネオナチに関するいくつかの実態を紹介し、重大な警鐘を鳴らしたい。

国家に深く浸透するネオナチ

 ウクライナには、多くのネオナチ集団が跋扈している。それらの集団は、ナチスのシンボルである「ウルフフック(ヴォルフスアンゲル)」や「黒い太陽」の標章をこれでもかと見せつける形ではためかせ、大手を振って市中を練り歩いている。その数は30~40にも上る。その中でもっとも有名で中心となっているのが「アゾフ大隊(連隊)」だ。2014年のマイダン・クーデターにおいて、重要な役割を演じたサッカーのレイシズムフーリガンを加え表舞台に登場した。その後、指導者アンドリー・ビレツキーのもと、内外からの多額の支援もあり、その活動はより過激となっていく。他のネオナチ集団を糾合しながらウクライナ東部を拠点とする(中心はマリウポリ)。ミンスク停戦合意で多くの自治権を獲得した東部地方のロシア系ウクライナ人に対して、合意を反故にして8年間にわたって攻撃を仕掛け、虐殺を実行してきた。ロシア語を話せばなぶり殺しにし、白昼堂々拉致・監禁・拷問を繰り返した。その過程で殺された住民は1万5千人にも及ぶ。その蛮行に歩調を合わせるように、アゾフ大隊はネオナチの武装民兵集団から正式にウクライナ正規軍に編入され、「国家警備隊」へとジャンプアップした。ウクライナは世界で唯一ネオナチが正規軍に編入された国である。ビレツキーは国家から勲章を授与され、2014年から19年まで国会議員だった。
 さらに、極右政党や右派グループが14年のマイダン・クーデター以降、国会議長、副首相、国家安全国防委員会事務局長、青年スポーツ大臣等、議会や政府要人から、軍最高司令官顧問、検事総長、キエフの警察署長等の軍・警察・司法機構の中枢に至るまで入り込んだ。極右政党の大半は19年選挙で議席を失ったが、依然として軍の中枢をはじめ国家機構、行政の多くにネオナチが影響力を持っている。ゼレンスキー政権はネオナチと深く融合・一体化した反共・反ロシアの右翼反動政権である。その政策は戦争が始まって成人男性の出国を禁止して戦争への協力を義務付け、3月には野党の多くを活動禁止にするなど反動的強権政治だ。ネオナチはキエフ周辺や東部2州周辺などの戦闘地域では戦闘部隊として大きな力を持っている。その浸透ぶりはNATOが公式に紹介したウクライナ正規軍女性兵士の胸に「黒い太陽」の標章が堂々とつけられていて、慌てて写真を削除したほどだ。ネオナチは子どもや若者むけに「市民のための射撃・戦闘訓練」を開き、青年スポーツ省から資金提供を受けて、子どもたちにファシズムをすり込む戦闘教育訓練キャンプを行っている。

極端な反ロシア、白人至上主義

 アゾフ大隊の指導者ビレツキーは、上記のウクライナ東部での虐殺を「現代の白い十字軍」として誇らしく語っている。彼はことあるごとに「世界の白人種族を率いて劣等種族に対する最後の聖戦を行う」と白人至上主義を堂々と宣言し続けている。その影響はウクライナだけにとどまらない。アゾフ大隊での戦闘訓練を受けに外国から流れ込んだ「戦闘員」は6年間で約2万人にも上る。ファシストの世界的センターになっているのだ。彼らは米国やカナダに帰り右翼・白人至上主義グループをいくつも作り出している。2019年にニュージーランドで起こった、モスクで礼拝するイスラム教徒に対する銃乱射事件(ヘイトクライム)の犯人は、熱烈なビレツキー信奉者だった。

ナチスの協力者・ユダヤ人狩りの張本人が今や国家の英雄に

 ウクライナでのネオナチの浸透は同時に歴史におけるナチス礼賛へとつながっている。
 1941年に始まったナチスドイツ(ヒトラー)によるソ連侵攻において、ヒトラーの協力者として立ち振る舞ったのが、ステパーン・バンデラ率いる「ウクライナ民族主義者組織(OUN)」である。彼らは、ナチスと協力してユダヤ人、ポーランド人、ロシア人、ロマ狩りを大規模に進め、次々と殺していった。この時殺されたユダヤ人だけで90万人にも上る。バンデラ等は、大戦後、米・英の諜報機関によって戦犯扱いを免れ、身柄を保護された。このバンデラをマイダン・クーデター後のポロシェンコ大統領は「ウクライナ独立の英雄」と祭り上げた。次々に銅像が建立され、1月1日の誕生日には、毎年多くのネオナチがたいまつを掲げて「バンデラ万歳!」と叫びながら市中をデモ行進する。

黒幕・スポンサーとして君臨する大富豪のコロモイスキー

 これらネオナチの巨大化と過激活動に対しては、国内外からの手厚い支援・サポートがある。国内の支援者としてまず名前が挙がるのが、ウクライナで第2位の大富豪に上りつめた新興オリガルヒのイホル・コロモイスキーだ。彼はユダヤ人であるが、アゾフ大隊に多額の活動資金と武器を提供し、ウクライナ東部でのロシア系住民に対する虐殺を監視・指揮していた。同時に、大統領であるゼレンスキーの強力なスポンサーでもある。ゼレンスキーが大統領に就任するやいなや、ロシアとの対話推進という選挙公約を覆させて、ウクライナ国内のネオナチ集団・極右政党と手を結ばせ、ロシアへの戦争挑発・対決姿勢に転じさせた黒幕である。彼がここまでの大富豪にのし上がったのも、マフィア顔負けの直接の暴力行使を通じてだ。まさに札付きのファシストだ。

コロモイスキーとバイデンファミリーのどす黒いつながり

 このネオナチの黒幕コロモイスキーと非常に親しい関係にあるのが、バイデンファミリーである。バイデン大統領の息子ハンター・バイデンは、コロモイスキーがオーナーを務めるウクライナの天然ガス会社ブリスマの取締役に2014年から2019年まで座っていた。その月収は5万ドル。現在の日本円に直すと620万円もの報酬だ。
 そして直近では、ウクライナでの生物兵器研究・開発の中心となる生物共同研究ラボの建設・設立に際して、その責任請負会社であるメタビオタ社にハンター・バイデンが多額の資金を提供していたことが明るみにでた。

米とNATOによる手厚い支援

 ウクライナで国家中枢を牛耳るまでネオナチを浸透させた張本人が、米とNATOの軍事支援だ。特にその中心となったのが、武器供与と共同訓練である。2014年のマイダン・クーデター以後CIAやNATOの精鋭部隊が、ことあるごとにウクライナ軍と共同訓練を行ってきた。CIAに至っては、2015年からウクライナ東部にわざわざ出向き、アゾフ大隊=「国家警備隊」を含めた精鋭部隊に特殊訓練を行ってきた。また米のウクライナへの軍事支援は1993年から2014年までの20年間で40億ドル、2014年から昨年まででさらに20億ドルにのぼっている。これら巨額の軍事支援による最新鋭の武器が真っ先にネオナチの手に渡る。これが問題となり米議会ではネオナチへの武器支援を制限する条項が一旦は加わったが、最終的には国防総省の横やりで外された。ネオナチ集団を最新鋭の武器で武装させることがわかっていながら、米政府・国防総省は軍事支援を続けているのだ。

停戦締結の妨害に終始するネオナチと帝国主義

 停戦に向けての協議に対しても、停戦に進むことに反対し、あくまで戦争を継続すべきと公言しているのがネオナチ集団だ。彼らは、マリウポリや東部の地区で市民を「人間の盾」にして、ロシアと戦うとともに、戦意が低く厭戦気分のウクライナ正規軍の兵士らに後ろから銃を突きつけ、あくまで戦闘の継続を要求している。戦争の継続こそが彼らの特権と暴虐を保証してくれるからだ。
 その活動を後ろから支えているのが、現在米国を中心に日本を含めた32か国が行っているウクライナへの軍需物資供与だ。現段階で総額数十億ドルにも及ぶ武器がウクライナに次々運び込まれている。これらの武器は何が何でも戦争を継続しようとするネオナチに届けられる。ますます停戦が遠のくばかりだ。
 ネオナチと帝国主義が戦争推進者であることはますます明らかになっている。ネオナチの停戦妨害と帝国主義によるウクライナへの軍事支援を許してはならない。

(佐)

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