【102号主張】G7広島「戦争サミット」に反対しよう
今こそ停戦を! 中国のウクライナ和平提案支持!
対中戦争準備をやめ、平和共存政策に転換せよ

[1]原爆被害者を冒涜する「戦争サミット」ーー広島を戦争に利用するな

(1) ウクライナ戦争と対中戦争準備をめぐって、米を頭目とする西側帝国主義と、社会主義中国が主導する「多極化」世界との対立が先鋭化している。ウクライナ戦争の停戦・和平交渉による解決か、武器援助と戦争継続・エスカレートか。対中戦争準備か平和共存か。今年のG7サミットは、戦争か平和かが鋭く問われる緊迫した状況下で開催される。
 米と西側帝国主義は、G7サミットに照準を合わせ、NATO、日米、米韓、AUKUSと軍事同盟を多層的に強化しながら戦争準備を加速している。何もかもが軍事一辺倒だ。ウクライナに「代理戦争」を押しつけ、戦車をはじめ大量の武器供与でウクライナに徹底抗戦させ、あくまでもプーチン・ロシアを敗北させ打倒する計画を推し進めている。さらに英国は、チャレンジャー戦車に搭載する劣化ウラン弾のウクライナ供与を発表し、さらなる戦争エスカレートに踏み出した。西側の政府・メディアは、「プーチンの核恫喝」やベラルーシへの戦術核配備を声高に非難するが、これらが米・NATOの核恫喝と圧倒的優位にあるNATO兵力への対抗措置であることを全く言わない。米・NATOはロシアに対する戦術核などの核包囲網を狭め、ABM条約、INF条約破棄に続いて新STARTまで停止し、欧州での戦争拡大と核情勢を極めて不安定で危険なものにしている。
 アジアにおいても、帝国主義の同盟諸国を総結集させて対中戦争準備、対中包囲を加速し始めた。「使いやすい」小型核のSLBM配備、トマホークをはじめ数千発の長距離巡航ミサイル配備と中距離戦力での優位追求、海兵隊ミサイル連隊配備、日米および米韓の軍事演習と日韓「正常化」、豪への原潜配備合意とAUKUS強化、フィリピンへの米軍基地増設、等々。
 これらはすべて、米バイデン政権の核戦力と通常戦力の両方での新たな優位追求である。戦争と核の脅威の根源は米と西側帝国主義にある。
 米と西側帝国主義は、G7広島サミットを、ウクライナ戦争支援と対中戦争準備を高らかに謳い上げ総動員を誓う、文字通りの「戦争サミット」にしようとしているのだ。

(2) 米バイデンと西側帝国主義全体の戦争計画の先兵・先導役の任務を積極的に担っているのが岸田政権である。国内政局から軍事・外交政策に至るまですべてがG7に向けて強引に推し進められている。
 岸田はG7にゼレンスキー、韓国や豪州、BRICS分断のためにインドやブラジル、IMF・世銀や国際エネルギー機関(IEA)などの国際機関を招請し、西側帝国主義の総結集の場にしようとしている。
 「安保3文書」、長距離攻撃力保有と軍事費2倍化、対中戦争での最前線攻撃基地化、等々を決めたのもすべてがG7に向けた動きである。岸田はG7をテコに「戦争国家」づくりをエスカレートしてきたのだ。沖縄・南西諸島の攻撃基地化、石垣島への陸自駐屯地開設、大分・青森など全国での大型弾薬庫建設など、日本列島全体を対中戦争の最前線とする戦争計画、戦争態勢づくりも同様だ。
 さらにバイデン政権は韓国に圧力をかけ、日韓「正常化」を強行した。対中対決を最優先に、日本政府をけしかけて尹政権に徴用工問題で「屈辱外交」を強要し、日本の侵略戦争と植民地支配の責任問題を棚上げさせた。
 それだけではない。岸田政権は、福島汚染水の海洋放出を主要議題の一つに入れた。G7で帝国主義諸国の同意を取り付け、中国、韓国、ロシアなど周辺国の反対を押し切って強行しようというのだ。

(3) 7年前、当時の米大統領オバマは、核兵器禁止に背を向け、原爆投下の過ちを一切認めること

なく「核なき世界」という偽善的な言葉で広島を愚弄した。1兆ドルの核近代化計画を決めたのはそのオバマだ。だがバイデンは、このような偽善さえ投げ捨て、公然と核威嚇も含めた戦争の呼びかけを広島から行おうというのだ。米国大統領が真っ先に広島で行うべきは、世界で唯一核兵器を使用した惨たらしい無差別大量殺りく、核人体実験の国家責任を認め、その戦争犯罪を謝罪し反省することである。それどころか、米と同盟諸国、世界帝国主義が結束してウクライナ軍事援助、対中軍事対決を宣言する、新たな核軍拡、劣化ウラン供与さえも公然と容認する――これほど被爆地広島とすべての原爆被害者を侮辱し冒とくするものはない。
 広島は被爆地であると同時に軍都であった。サミットの舞台となるホテルはかつての軍港・宇品に位置する。アジア太平洋を侵略する兵士たちが出兵していったこの地で、再び進軍ラッパを鳴らすのか。
 われわれは、米の戦争犯罪を免罪し、加害国日本の侵略戦争と植民地支配の責任さえなきものにする「戦争サミット」、日本の軍国主義と帝国主義外交のために被爆地広島を利用することに反対する。

[2]中国の平和攻勢と「多極化」戦略――米帝一極支配、政治・軍事覇権の時代の終焉の始まり

(1) しかし、米帝一極支配の時代は、西側帝国主義の猛烈な巻き返しにもかかわらず、音を立てて崩れつつある。米と西側帝国主義が描くG7「戦争サミット」のシナリオは思惑通りには進まなくなった。とくに2月24日、中国がウクライナ戦争の停戦と外交交渉による解決をめざす和平提案を発表し、実際に政治的外交的攻勢に打って出たことが状況を一変させた。米帝主導の西側帝国主義の異常な軍事攻勢に対して、社会主義中国による怒濤の平和・外交攻勢が始まった。
 戦争一辺倒の帝国主義か、平和と紛争解決の社会主義中国か、これが現在の国際政治の展開軸になっている。中国の平和外交戦略の基本は、昨年4月に習近平が打ち出した「グローバル安全保障イニシアティブ(GSI)」構想である。それは、非同盟、主権尊重と内政不干渉、対話と協議による紛争解決、平等・互恵・ウィンウィンの国家間関係、核戦争防止と核不拡散体制、等々を柱とする現代における平和共存戦略に他ならない。ウクライナ和平提案は、まさにこれを具体化したものだ。われわれはこれを断固支持する。米政府や西側政府・メディアは、一様に拒否、揶揄、無視で応えた。だが事態は確実に前に進みつつある。プーチンは直ちに中国提案を歓迎・支持した。徹底抗戦を続けてきたゼレンスキーも拒否できない状況だ。ブラジルや途上諸国が次々と支持を表明した。遂にNATO諸国からも、スペインやフランスが中国提案に理解を示し始めた。全体として、潮目が変わり、西側の徹底抗戦戦略の足元が揺らぎ始めている。
 どちらが平和の立場に立ち、どちらが戦争の立場に立っているのか。どちらがウクライナ民衆の犠牲を終わらせ、どちらがウクライナを駒にして、ロシアの弱体化と打倒、欧州支配、世界覇権を求めているのか。もはや明らかである。中国の和平提案は、今後ますます世界に戦争の原動力が誰にあるかを暴露し、停戦・和平の突破口を切り開いていくだろう。

(2) 中国は3月10日、世界を驚かせる外交をやってのけた。ワシントンではなく北京で外交が回る時代になった。米が何十年にもわたり侵略と政権転覆、石油略奪でやりたい放題だった中東で、宿敵同士だったイランとサウジアラビアの和解を仲介したのだ。北京で王毅政治局員を挟んで両国外相が握手する映像は米も西側政府・メディアの誰も予想できなかった。その後、中東で和解の連鎖反応が生じている。サウジとシリアの関係正常化、米・サウジが介入したイエメン戦争終結の動き、シリアとUAEなどアラブ諸国との関係改善など、中東はデタントと安定の方向に急速に歩み出している。
 これまで中東は米帝の独壇場であった。とくにサウジはイスラエルと並ぶ米帝の中東覇権の最大の要であった。今回の和解は、狂暴な軍事国家イスラエルの外堀を埋めることにもなる。米国とサウジとの「石油|ドル交換」(ペトロダラー)体制は、ドル覇権の最大の柱だ。サウジが米国から離反すれば、米帝の石油支配と同時に、ドル覇権も揺らぐ。
 3月20日には、習近平国家主席がロシアを訪問してプーチン大統領と会談し、両国の戦略的パートナーシップをうたう2つの共同声明が発表された。それは、冷戦時代の政治的・軍事的同盟とは異なる新しい国家間モデルをめざし、軍事ブロックではない「非同盟」と「多極化」への共同作業を追求するという意味で、二国間関係の枠組みを超える意義を持つものだ。さらに3月26日、ホンジュラスが台湾と断交し、中国との国交樹立調印式が北京で行われた。これも単なる二国間問題ではなく、ラ米カリブの反米・反帝の歴史的うねりを反映したものである。台湾の蔡英文訪米は、馬英九元総統の訪中でかき消した。

(3) 米政府が世界に命令し、世界を支配してきた

第二次世界大戦後の、とりわけソ連崩壊後の米帝国主義の一極支配体制、世界覇権体制が急速に掘り崩され始めているのである。これが今日新たに生まれつつある「中国主導の多極化の世界秩序」に他ならない。
 「多極化」を主導しているのは社会主義中国である。米と西側帝国主義が戦争一辺倒、軍事同盟を主体として世界覇権体制を維持しようとしているのに対し、中国は戦争と軍事支配に反対し、多国間主義外交、非同盟、主権尊重・内政不干渉と相互協力・ウィンウィンを掲げる。拡大BRICS、SCO(上海協力機構)、G20、さらにはG77+1拡大、等々を軸に、多くの新興・途上諸国(グローバルサウス)を引き入れ、これに一帯一路を結びつける形で平和的な経済協力を拡大している。
 「多極化」の柱であるBRICSは、GDP総額(購買力平価)の世界シェアは31・5%、G7の30・7%を上回った(2021年)。総人口はBRICSが32億3000万人で世界人口の約4割に対し、G7は人口比で10%を占めるにとどまる。新興・途上諸国の多くがBRICSに接近している。昨年イランが正式加盟を申請したのに続き、サウジが加盟の意向を表明した。さらにアルジェリア、ナイジェリア、アルゼンチン、メキシコなど多くの途上諸国が加盟を検討している。これら諸国の多くは、中国の一帯一路参加・協力国である。今日、世界で140ヵ国、30国際機関が一帯一路協定に署名している。

(4) 中国と新興・途上諸国の共産主義者が使う「多極化」とは何か? 文字通り、米帝一極支配を突き崩す国際的規模の階級闘争の概念である。それは、米帝が軍事、ドル・金融、ハイテク、メディアなど持てる手段を総動員して中国とロシア、反米諸国を猛攻撃し、その覇権を維持しようとすることへの対抗戦略である。
 衰退したとはいえ、米帝一極支配と西側帝国主義の世界覇権の力はまだ圧倒的だ。中国単独では米と西側の軍事力に太刀打ちできない。致命的なのは、先進帝国主義諸国の中から中国やロシアへの戦争を阻止する先進国革命が当分望めないことだ。このような中で、米帝と西側帝国主義の侵略と収奪をどうやってはね返すか。社会主義中国は新興・途上諸国との友好・協力関係を土台にするしかない。
 それは米ソ冷戦時代の平和共存戦略とは違う。かつて、ソ連社会主義は軍事的・政治的・経済的同盟を結び、米帝主導の西側帝国主義と真正面から対決した。今回、中国が提起しているのは、非同盟・非対立、主権尊重・内政不干渉、対話と協議による紛争解決などを原則とする新しい平和共存戦略である。そこに、帝国主義に支配・抑圧され、内政干渉にさらされる多くの新興・途上諸国の資本主義諸国を結集させているのである。それは今日のまだまだ不利な彼我の国際的力関係を考量した、考えに考え抜かれた戦略なのである。
 要するに、「多極化」とは、米帝の一極覇権の包囲網の中で、一方では中国、キューバなどの社会主義諸国、ベネズエラなど社会主義指向諸国が自らを防衛する闘争形態であり、他方では新興・途上諸国、とりわけその中の民族解放勢力が石油・天然資源の略奪や収奪から、制裁や経済封鎖、デカップリングから自らの主権、自立・独立を守る抵抗形態に他ならない。その意味で「多極化」は、優れて国際的規模の階級闘争の新しい形態なのである。
 社会主義中国の平和外交政策と「多極化」戦略を積極的に支持すること、反米・反帝の途上諸国と連帯して、帝国主義の戦争策動、世界覇権体制を抑え込んでいくことは、先進諸国の左翼・共産主義者の最重要の任務である。「多極化」は没階級的だ、ブルジョア概念だという一部左翼の批判は、時代の流れの中で押し流されていくだろう。

[3] 新たな金融恐慌の切迫と「脱ドル化」によるドル・金融覇権の掘り崩し

(1) 米帝の政治・軍事覇権の時代の終焉の始まりが、2007~08年のグローバル金融恐慌以来の新たな金融恐慌の切迫と同時に進んでいる。3月10日、シリコンバレー銀行(SVB)が、同12日にはシグネチャー銀行が破綻した。信用不安が欧州に波及し、巨大銀行クレディスイスの株価が急落し、破綻状態に陥った。即座にスイス中央銀行が資金注入を表明し、スイスのトップ銀行UBSに買収させた。さらに米欧の中小銀行から預金が流出し、信用不安が高まっている。グローバル金融恐慌の爆発は現実のものになりつつある。
 今回の金融危機の背景には、現在のコロナショックの、さらにはリーマンショック以来の、より根源的には1970年代のIMF=ブレトンウッズ体制崩壊後の、先進国中央銀行信用の無制限の膨張によって、資本主義経済の循環的・構造的危機を乗り切ってきた異常な金融バブル経済が歴史的な限界にきていることがある。爆発源は債券バブルの崩壊、とりわけ米国債バブルの破綻である。SVB銀行の破綻は、直接には同行の資産(米国債)が急落したことだ。
 米国と西側諸国は現在、究極のジレンマに陥っている。膨大な中央銀行信用の残高が世界的規模で需給関係のバランスを崩し、1970年代以来のインフレーションを爆発させている。FRBなど各国中央銀行は金利引き上げで対応しているが、なかなかインフレ・物価高が収まらない。引き締めすぎると今度は景気後退に陥る。いわゆるスタグフレーションである。すでに米欧日の景気後退も現実のものとなっている。
 今回の金融危機が、米帝主導の西側帝国主義の対ロシア代理戦争、対中戦争にも打撃を与えることは確実だ。すでに欧米諸国で爆発しているインフレ・物価高に抗議し、賃上げを要求する労働運動を一段と加速することは不可避である。反戦運動と労働運動の結合が現実味を増している。

(2) バイデン政権の目下の最大の懸念は、財政拡張力の限界、財政破綻である。米国債を発行できなければ何もできない。危機対策としてのFRBの過剰ドル供給も、巨額の軍事費支出も、全て米国債発行で賄う。ウクライナへの戦費支援も、対中戦争準備の軍事費も、核兵器近代化資金も、全て、発行した大量の国債の引き受け手があるからだ。その引き受け手は米国内の銀行・金融機関と、外国政府・金融機関である。金融危機と債券バブル崩壊、米国債バブル崩壊は国内銀行・金融機関の購入能力を減退させ、対中戦争準備は最大規模の購入者中国をなくすことにつながる。
 実は最近バイデン政権は、米国債購入増を中国側に持ち掛けたが、当然中国はこれを拒否した。対中戦争、対中デカップリングを推進する政府の要請など受けるはずがない。
 中国は、2007~08年の金融恐慌時に、米国債購入や巨額財政で米側を救済した経緯がある。だが、米中対立が激化して以来、中国は戦略的に米国債保有を急速に減らしている(2013年の1・3兆ドルをピークに22年末には8600億ドルへ、将来的には1000億ドルとも言われている)。当然であろう。米帝は、西側のロシア資産を勝手に奪う略奪国家である。対中戦争準備の中で、いずれ中国の米国債を没収することが目に見えているからだ。かつての米国債の最大購入者中国がこのまま減らし続ければ、サウジ・イラン和解によるペトロダラー体制の危機とともに、ドル覇権が一段と不安定になるのは間違いない。

(3) 国際決済システムをドルとNY連銀が牛耳ることがドル・金融覇権の根幹の一つだ。中国と新興・途上諸国はここにも風穴を開けつつある。
 米帝主導の西側帝国主義の新植民地主義的な途上国収奪を断ち切る、二重の過程が急速に進み始めた。第1は、中国を中心とする新興・途上諸国間の貿易・投資の拡大である。1997年から2010年にかけて、中国とアフリカ諸国との貿易額は22・4倍、中南米諸国との貿易額は約22倍に、さらに2010年から2021年にかけて、それぞれ2倍、2・5倍増加した。2000年から2018年にかけて、中国とアラブ諸国の貿易額は152億ドルから2443億ドルへと、20年足らずで16倍に急増した。途上国の中でも、中国を中心としたアジアには、特に経済協力のネットワークが形成されている。ASEAN、東アジア諸国、RCEPなどアジアが世界経済の中心になりつつある。
 第2は、この貿易・投資の決済システムを欧米主導の金融・通貨ネットワークから切り離すことだ。いわゆる「脱ドル化」である。中国はいくつかの新興市場経済国と通貨スワップを展開し、より高度で広範な金融・通貨協力のメカニズムを途上国間で構築しつつある。アジアインフラ投資銀行(AIIB)、BRICS諸国が設立した新開発銀行(NDB)の変革による、自律的な国際決済システムの推進、上海協力機構の枠組みの中での通貨・金融協力、一帯一路構想の枠組での東アジア経済統合のさらなる推進、RCEPの成果を統合する努力、東アジア・南アジアの買い手と中東・中央アジア・ロシアの売り手共通のエネルギー取引・決済ネットワークの構築、等々。
 とくにイラン・サウジ正常化合意は、米帝のドル・金融覇権からの脱却を加速する転換点となった。中国・ロシア間をはじめ拡大BRICS諸国間の自国通貨決済への移行、新たな金融システムの準備、中国・ブラジルの脱ドル化宣言。サウジの人民元建ての石油取引。ASEANのドル依存低下方針、マレーシアによるドル依存を減らすための「アジア通貨基金」設立提案、等々。すでに中国、ロシア、サウジ、パキスタン、イラン、ブラジル、その他数十の国と地域が二国・多国間協定でドルに依存しない現地通貨決済を確認している。
 貿易や投資でドルではなく代替通貨を採用する国が増えれば、外貨準備としての多額のドルを保有する必要がなくなる。世界経済全体の「脱ドル化」は、米帝のドル・金融覇権を根底から掘り崩すと同時に、世界金融システムにおける人民元の国際化を強め、中国の影響力は一段と拡大するだろう。

[4] G7「戦争サミット」反対の声を上げていこう――全世界の反米・反帝・平和勢力と連帯しよう

(1) 米帝主導の西側帝国主義による世界戦争の脅威と、それを阻止する中国社会主義と反米・反帝・平和勢力の台頭が同時に進行する――われわれは、このような新しい時代の入り口に立っている。
 米帝と西側帝国主義の力を侮ってはならない。地球と人類はかつてない世界的規模の戦争の脅威にさらされている。それは過去2度の世界大戦、戦後の米ソ冷戦に匹敵する、あるいはそれを超える戦争の危機である。世界最大の核大国米国が帝国主義を総結集し、核軍事大国ロシアを屈服・敗北させようとするウクライナ戦争は、即、欧州戦争=世界戦争に発展しかねない。欧州の反戦運動は、過去2つの欧州戦争を想起し、危機感を高めているのだ。さらに、世界第一の経済大国が第二の経済大国に襲いかかることそのことが世界戦争を意味する。経済大国中国と核軍事大国ロシアを同時に戦略敵にして戦争を構えるとは常軌を逸している。帝国主義の侵略性、好戦性はピークに達している。
 この戦争の脅威の原動力は、2つの世界大戦、戦後の米ソ冷戦と同じ原動力、すなわち世界中の資源と市場、途上国を支配しようとする強欲なグローバル帝国主義とグローバル金融独占資本の利潤追求、植民地主義支配への渇望にある。これらの根底にあるのは、社会主義中国の経済力の急速な台頭に対する階級的恐怖である。
 世界戦争を阻止した要因は様々であった。第一次大戦ではロシア革命が決定的だった。第二次大戦はソ連社会主義と反ファシズム戦争だった。戦後冷戦ではソ連と社会主義世界体制であったが、ソ連は激しい核軍拡競争に巻き込まれ崩壊してしまった。今回は「中国主導の多極化世界」が対峙している。

(2) 「中国主導の多極化世界」の新しい時代における反戦平和運動の任務は何か? それは、社会主義中国、反米・反帝・平和勢力と連帯し、現代の世界戦争の脅威の源泉である米帝が主導する西側帝国主義、グローバル金融独占資本と闘うこと、その戦争衝動を抑え込むことである。同時に、対ロ制裁や対中輸出規制、デカップリングなど、社会主義中国を封じ込め、帝国主義の世界覇権体制を維持しようとする策動に反対することである。とくに自国帝国主義、自国政府に矛先を向けた反戦平和運動を作り上げることが喫緊の課題だ。
 欧米諸国で新たな反戦運動が広がり始めている。自国政府のウクライナ武器援助反対、反NATO、カネは軍事ではなく生活に、が中心スローガンだ。仏英独などで、歴史的高揚を見せる労働運動との結合が追求されている。米国でもイラク侵略20年の3月、抗議行動が展開された。

(3) 日本国内では、G7は全く政治的争点になっていない。広島「戦争サミット」反対の声は皆無に近い。野党は問題にしようとさえしない。メディアも報じない。それどころか、岸田首相が「ウクライナ電撃訪問」で武器援助と戦争継続を公然と支持し、ウクライナ徹底抗戦でG7諸国をまとめ上げ、その先導役を果たしていることを賛美している。
 野党の体たらくの中、日韓首脳会談やウクライナ訪問などを転機として内閣支持率が上昇し始めている。G7後の解散・総選挙の可能性も浮上してきた。「ウクライナへの大規模援助」を争点にするとも言われている。「戦争サミット」で岸田政権を勢いづかせ、好き勝手をさせてはならない。後半国会で、大軍拡・戦争態勢強化法反対と併せて、広島「戦争サミット」を争点化させ、岸田政権のウクライナ戦争支援と対中戦争準備、戦争国家づくりの諸法案に反対する運動と世論を強めていこう。
 日本では、運動は大きく立ち後れているが、ようやくG7に向けウクライナ戦争の即時停戦を求める学者・ジャーナリストらの声明が出され、賛同の署名運動が始まった。われわれもこれを支持する。さらに対中戦争準備の最前線基地化が進み始めた沖縄では、自衛隊配備やミサイル基地化など軍事要塞化反対とあわせて、日中間の緊張緩和と外交強化を要求する闘いが広がり始めている。3月30日、①軍事力ではなく外交と対話による平和構築、②日中間の諸原則順守、友好関係の発展と問題の平和的解決、これらを日本政府に要求する県議会「平和外交意見書」が採択された。沖縄と連帯し、本土からも声を上げていこう。
 広島G7に向けて暴露・宣伝を強め、足元から世論と運動を作り上げることを呼びかける。
    
①広島G7「戦争サミット」に反対しよう。
②対中戦争準備、大軍拡と軍事費2倍化に反対しよう。「安保3文書」撤回。財源確保法案、防衛力基盤強化法案を葬り去ろう。
③今こそ停戦を! 中国のウクライナ和平提案支持。岸田政権に中国の和平案支持を要求しよう。武器援助と戦争継続ではなく、停戦と交渉による解決を訴えよう。
④軍事費増税に反対しよう。生活闘争、困窮者支援の闘いと結びつけて闘おう。
⑤福島放射能汚染水の海洋放出に反対しよう。GX推進法案・電源法案(原発束ね法案)を廃案にしよう。
⑥軍事要塞化に反対し平和外交を求める沖縄の闘いとの連帯を強めよう。


    
2023年4月8日『コミュニスト・デモクラット』編集局

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