キューバ:第22回共産党・労働者党国際会議
米帝狂暴化に抗して反米・反帝で団結を訴える第22回共産党・労働者党国際会議

 今会議のスローガン「私たちは団結して一層強くなる」は、特別な意味をもっている。国際情勢が、激動の真っ只中、米帝国主義の凶暴性、攻撃性が強まり世界の平和と安定への脅威が増す中で、さらに帝国主義による共産主義・進歩勢力に対する分断が図られる中で、世界の共産党と労働者党は団結を強化するための集団行動の枠組みをいかに確立して立ち向かうのか、が最大の課題となった。そのために、米帝との64年もの長期にわたる闘いで革命権力を守り通したキューバ共産党が、1998年のこの国際会議発足以来初めて、この会議を主催しイニシアチブをとった。反米・反帝の最前線こそがキューバである。米帝のキューバ封鎖を阻止することは国際的課題だ。会議では、参加した83の共産党・労働者党で「封鎖を非難し、キューバと連帯する決議」が採択された。まさにキューバが「団結」の軸となった。われわれは今回の会議が特別な意味を持つと考える。        (渉)

キューバ共産党がイニシアティブを発揮~キューバ封鎖反対で結束

 会議の開会演説で、キューバ共産党中央委員会政治局委員ロベルト・モラレス・オヘダは、幾つかの教訓を強調した。
――社会主義国家の軍事的防衛に加えて、「戦争は戦場だけではなく」、従来の戦争と同じくらい困難で複雑で危険な別の戦争があるとして、経済面、文化・イデオロギー面における闘いの重要性を強調した。
――文化・イデオロギー面における帝国主義の攻撃は、諸民族の文化を破壊し、アイデンティティを消し去り、人道的価値観を無視し、排除と暴力を強化するイデオロギーモデルであるがゆえに、闘争は米帝国主義との直接の政治対立の形をとって行われると強調した。
――そして「多様性の中の団結」(ラウル・カストロ)である。団結は願望にとどまってはならず、「努力と結束をもって働かなければ」幻想に終る可能性がある、と警告した。その克服には、今日の世界の問題に向き合う方法と手段に関する理論的議論が非常に重要であること、さらに帝国主義に抵抗するには、各国の歴史的違いと政治過程の特殊性の相互尊重に基づいて団結を強固にしなければならない、と訴えた。
 また、閉会の挨拶でキューバ共産党中央委員会第一書記ディアス・カネルは、反米・反NATO、反帝国主義を強調し、中国、ベトナム、朝鮮民主主義人民共和国、ラオスの共産党による社会主義建設の努力を称賛し、特に中国共産党第20回大会の成功を祝福した。反米・反帝と社会主義国の団結、これが国際共産主義運動の団結の基礎になるという意味である。締めくくりのスローガンは、社会主義万歳!プロレタリア国際主義よ永遠なれ!だ。

ウクライナ紛争をめぐる二潮流の対立

 キューバ共産党が団結の必要を強く訴えた背景には、ウクライナ戦争をめぐって表面化した共産主義運動内部の対立がある。実際、この会議で2つの相異なる立場・見解の文書が、参加78組織中いずれも二十数党の署名を得て発表された。1つはドイツ共産党、ロシア連邦共産党、ロシア共産主義労働者党、ウクライナ共産党を中心とするグループの声明「世界覇権を追求する米・NATO帝国主義に反対する闘争は全進歩勢力の重要任務である」、もう1つは、ギリシャ共産党、トルコ共産党、メキシコ共産党を中心とするグループの決議「ウクライナ領土における帝国主義戦争について」である。
 ウクライナ戦争の評価が全く違う。「声明」は、人類と世界平和にとっての米・NATO帝国主義の危険性を強く主張し、米帝を国際共産主義・進歩勢力の主敵と規定する。ウクライナ戦争の性格が、米国とNATO による、ウクライナ・ナチス傀儡政権を使った対ロシア帝国主義戦争と規定し、米国・NATO帝国主義に対する闘争を呼びかけている。
 一方、「決議」は、ウクライナ戦争の本質を、米・NATO帝国主義による対ロシアの帝国主義戦争とは規定せず、基本的にウクライナとロシアの間の帝国主義間戦争であると見なす。米帝国主義を主敵とせず、米・NATOへの全面批判はない。実践的結論は、「労働者を動員し武装させたこれらの備は、民族間の帝国主義戦争を階級間の内戦に変えるために、戦争政府を標的にする必要がある」と主張する。いわゆる「帝国主義戦争を内乱へ」だ。
 われわれは、ロシアの軍事侵攻への批判がないが、矛先が米・NATO帝国主義に向けられているという意味でドイツ共産党などの「声明」の方に優位性があると考える。
 会議終了から約1か月後の11月下旬、キューバのディアス・カネル大統領はロシアを訪問し、ロシア国会での演説で、現在の紛争の原因が米国の侵略政策とNATOのロシア国境への拡大にあることを指摘し、交渉による解決を支持し、米国による制裁に対して協力して闘っていくことを言明した。

反米・反帝に貫かれた「最終宣言」と「行動計画」

 キューバ共産党は、団結を呼びかける会議主催者として、「声明」にも「決議」にも署名していない。しかし、「最終宣言」と「行動計画」(いずれも全訳)の両方とも、米・NATO帝国主義に矛先を集中したものとなっている。当然のごとく、ロシアに矛先を向けた方針はない。われわれも全面的に支持する。
 とりわけ「最終宣言」は優れたものだ。前半の情勢評価の部分で、米が主導する西側帝国主義の「漸進的な衰退」が逆にこれら帝国主義の「支配」「攻撃性」「略奪性」の増大を招き、人類の脅威になっていることを強調し、「社会主義の優位性」を誇示する。そして後半部分で、これら反米・反NATO、反帝国主義、自決・独立、内政不干渉、軍拡競争・人民予算切り捨て反対、暴力・外国人排斥・人種差別反対、経済封鎖・制裁反対、環境破壊反対、マルクス主義擁護と帝国主義のイデオロギー攻撃との闘いなどの課題を列挙し、社会主義的変革に向けた共産主義運動の団結で締めくくっている。

キューバと中国との社会主義的連帯の強化

 今回、ベトナム共産党、朝鮮労働党、ラオスの社会主義国の共産党は参加したが、中国共産党は参加しなかった。しかし、キューバと中国との政治的・経済的協力・連帯はますます強まっている。ディアス・カネルは、11月25日に中国を訪問し、キューバ共産党指導部が中国共産党第20回大会での習主席報告を厳密に研究し、複雑で深刻な政治経済状況の中で社会主義建設にまい進する中国の経験に学ぼうとしていること、中国との関係発展はキューバの外交政策における最優先事項の一つであることを強調した。習主席は、国際情勢がどのように変化しても、キューバとの長期的な友情に対する中国のコミットメントは変わらない、キューバ社会主義を支援する中国の決意は変わらない、と述べた。そして、米の経済封鎖に対抗すべく、投資協定、キューバの対中債務の再交渉と再編、1億ドルの中国の寄付で合意した。

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