10月16~22日、中国共産党第20回全国代表大会(以下、20回大会)が開催された。日本のメディアは、「異例の3期目」「独裁体制」「国際ルール破壊が強まる」などと反中・嫌中を煽り立てる「習近平独裁」批判一辺倒であった。この点では、「覇権主義」「大国主義」と悪罵を浴びせ、中国敵視を露わにする日本共産党など、大多数の日本の左翼諸党派も同様である。
20回大会は、米帝一極支配に対抗するいかなる方針を打ち出したのか、社会主義現代化と共産党の使命、マルクス主義の理論と実践等々について何を語ったのか。西側メディアが全く報じないところにこそ最も重要な内容がある。習近平報告を丁寧に読み込めば、20回大会が、中国共産党員と中国人民だけでなく、全世界の労働者・人民にとって、日本帝国主義で活動するわれわれにとっても極めて重要な意義を持っていることが浮かび上がる。
われわれは、社会主義中国が内外の矛盾を抱えながらも、修正と自己変革を繰り返しながら社会主義建設の道を邁進していることを支持している。本稿では、今回の20回大会とその国際的意義について、反米・反帝の立場、反戦平和運動を担う立場から、とくに重要だと考える点について紹介したい。 『コミュニスト・デモクラット』編集局
※20回大会での習近平報告「中国の特色ある社会主義の偉大な旗印を高く掲げ 社会主義現代化国家を全面的に建設するために団結奮闘しよう」全文(日本語訳)は、新華社日本語版サイトに公表されている。
https://jp.news.cn/20221028/7d7768e4a1b34579b9b49d0bcad9ec14/c.html
米帝一極支配に対抗する戦略的方針を明確に
習近平報告の全体を貫くのは、米と帝国主義による中国封じ込めと真正面から対峙し、これと対抗しながら「社会主義現代化」を断固として推し進めるという戦略的方針である。
まず過去5年間の総括の中で、「国際情勢の急激な変化」「外部からの威嚇、抑制、封鎖、極限の圧力」に対して「国益を重視して国内政治を優先」するという基本姿勢を確認した。
続いて、直面する情勢認識として、「100年に一度の大きな変動の速度が増している」「世界の力関係が大きく転換し、わが国の発展は新たな戦略的チャンスを迎えている」こと、さらに脱グローバリズムや一国主義、世界経済の後退、局地的紛争や情勢不安など「新たな動揺・変革期に入った」こと、「戦略的チャンスとリスク・課題が併存」「不確実・予測不能な要素が増える時期」と捉えることを基本に据えた。
ここで問題にしているのは、国際的力関係が中国の着実な発展を原動力に社会主義と反米・反帝・進歩勢力の側に有利に転換していること、同時にこの力関係を逆転させようと米を頭目とする帝国主義諸国が対中対決で巻き返しに出ていることである。とくに前回大会(2017年11月)以降の5年間は、米の対中戦略が根本的に変化した時期であった。2017年12月、トランプは米軍事戦略の基本を対テロから変更し、明確に中国とロシアを敵とする「国家安全保障戦略」を打ち出した。さらにバイデンは2021年2月、主敵を中国一国に絞り、帝国主義諸国が一体となって中国に対抗する戦略転換を行った。要するに米と西側帝国主義が総がかりで中国を包囲し、国家分裂策動を追求し、対中戦争準備を進めていることに対し、党と国家を挙げて対抗し、社会主義中国を守り発展させる基本姿勢を固めたのである。
20回大会は、今後一時期続くであろう米帝を盟主とする西側帝国主義の対中包囲に対して、国内の経済、政治、軍事・外交からイデオロギー分野に至るまで、全面的に対抗していく方針を打ち出し、全人民・全民族の団結を呼びかけた。習近平報告では、国内における「社会主義現代化」を土台に、社会主義を断固として守り抜くための憲法と法に基づく揺るぎなき国家統治の強化(第7章)、帝国主義の制裁や内政干渉、様々な国家分裂・破壊活動を抑え込み、人民の安全を守り抜くための安全保障体制・能力の強化(第11章)など、新たな章を設けて強調した。
われわれが注目すべきは、この戦略的方針の要となるのが、あくまでも平和的発展の条件を作り上げるということだ。平和共存五原則(領土保全及び主権の相互不干渉・相互不侵略・内政不干渉・平等互恵・平和的共存)に基づく国際関係の構築、互恵ウィンウィンの対外開放戦略、BRICSやSCO(上海協力機構)などを軸とする多極間外交の推進、そしてデカップリングや制裁・圧力に反対することを強調し、米帝一極支配と帝国主義の世界覇権体制を突き崩していく姿勢を鮮明にした。
「社会主義現代化」の諸達成
20回大会は、米と帝国主義の対中包囲に対抗できる力を持ちつつあることを明確にした。2035年までに「社会主義現代化」を基本的に実現し、今世紀半ばまでに「社会主義現代化強国」を作り上げる目標に向かっての自信と覚悟を示したのである。
とくに強調されているのが、「社会主義現代化」に向かっての、この10年間の着実かつ劇的な「変革」である。とくに3点強調したい。
第1に、人類史上最大規模の貧困撲滅の実現。絶対的貧困を解消した。「小康社会」を打ち立て、基本目標である「共同富裕」実現に向かっての新たな出発点に立った。
第2に、「質の高い発展」による「経済力の歴史的飛躍」。国内総生産GDPは、総額においても1人あたりについても、この10年間に倍増した。世界経済に占める割合は18・5%で世界第2位を保った。ここでは、世界最大の高速鉄道・道路網、空港・港湾、エネルギー、情報などのインフラ整備、科学技術の強化、基礎研究とイノベーション強化、いくつかの基幹核心技術におけるブレークスルー、新興産業の発展、等々での飛躍的成果を誇示した。
第3は、人民生活の全般的向上と生態環境保護。平均寿命の延び(78・2歳)、可処分所得の倍増、毎年1300万人以上の都市部雇用の創出、世界最大の教育・社会保障・医療衛生体系の構築、環境汚染の解消と循環型・低酸素発展、等々。
弱点・矛盾を自覚 自己変革・自己修正を自らに課す
もう一つ重要な点は、自らの弱点、未達成、諸矛盾をよく承知した上で進もうとしていることだ。西側メディアと左翼の一部は、中国国内の矛盾や弱点をあげつらい揶揄するが、当の中国共産党自身が自らの弱点を熟知しているのである。習近平政権は、中国の主要な社会矛盾が「人民の日増しに増大するより良い生活への需要と、不均衡で不十分な発展との矛盾」であると規定し、取り組みを進めてきた。
大会報告では赤裸々かつ率直に語られている。10年前の党は、腐敗・汚職の蔓延、官僚主義・形式主義など深刻な危機的状態、文字通り存亡の危機に立たされていた。腐敗撲滅を軸に党全体が取り組んだことで危機的状況は脱した。だが依然として反腐敗闘争は最重要の党の任務の一つとして強調されている。それだけではない。「社会主義現代化」が今日直面する諸矛盾、人民の間の格差・不平等、都市・農村間や地域間の発展の格差、所得分配の格差、就業や教育、医療、育児、住宅等々での諸問題、生態環境保護の立ち遅れ、党員や幹部の中の無責任、形式主義・官僚主義、等々、多くの困難と諸矛盾に立ち向かう方針を明確にした。近い将来、中国が米国を上回り世界最大の経済大国になるとしても、現時点ではまだ中国は発展途上国であり、「社会主義初級段階」にあること、まだまだ多くの困難を抱えていることを踏まえ、今後も厳しい一時代が続くと判断し、中長期的な覚悟を固めているのである。
習近平は、党の自己変革・自己修正についてこう繰り返し強調している――「中国共産党が偉大な党であるのは、過ちを犯さないからではなく、過ちに対処し正すからだ」
帝国主義とは根本的に異なる「現代化」の道
20回大会は、中国の今日に至る発展が、帝国主義の「現代化」とは根本的に異なる「社会主義現代化」であるとして、次の5点を指摘した。
①人口規模の大きな現代化。先進諸国の人口総数を上回る14億人が現代化の道を進んでいる。
②全人民の共同富裕をめざす現代化。
③物質文明と精神文明のバランスがとれた現代化。物質的な貧しさも、精神的な貧しさも社会主義ではない。
④人と自然の調和的共生をめざす現代化。環境を犠牲にしない発展、持続可能な成長を目指す。
⑤平和的発展の道を歩む現代化。
その上で大会報告はこう強調した――「われわれは、戦争や植民地支配、略奪などという広範な発展途上国の国民を不幸に陥れた、他国を犠牲にして自国の利益をはかる血なまぐさいかつての現代化の道は歩まない」「平和・発展・協力・ウィンウィンの旗印を高く掲げ、世界の平和と発展を堅守する中で自国の発展をはかると同時に、自国の発展によって世界の平和と発展をよりよく守る」
資本主義の「現代化」は、資本主義勃興期の「原始的蓄積」に始まり、植民地略奪と搾取・収奪・戦争による帝国主義的発展、そして戦後は幾度もの侵略戦争と新植民地主義支配による略奪、金融的締め付け、等々による文字通り血塗られた「現代化」であった。これに対し、中国が成し遂げ、追求しているのは、侵略や略奪ではなく、相互協力とウィンウィンによる平和的発展による「現代化」である。単なる経済成長ではなく、貧困と不平等の解消、全人民の共同富裕、腐敗の撲滅、生態系保護を追求しながらの発展なのだ。
このような「社会主義現代化」は、多くの途上諸国にもう一つの発展の道を指し示している。現在の帝国主義の世界覇権体制に組み込まれた、経済制裁や金融的隷属、抑圧にさらされた「現代化」とは全く異なる、もう一つの道である。「一帯一路」政策や「真の多国間主義外交」は、その道の具体化に他ならない。
このような社会主義現代化の発展と積極的な多極化外交は、ロシアをはじめBRICS諸国、反米・反帝・反新植民地主義の途上国・新興諸国との連携・協力を強めることで、米帝一極支配に抗う「多極化」世界を作り出しつつある。これが帝国主義的覇権体制を、したがって新植民地主義的収奪体制を掘り崩す最大の原動力になっている。この新植民地収奪体制が危機に陥れば、先進諸国の階級闘争を抑え込む物的基礎となってきた膨大な超過利潤が大きく揺らぐことになり、先進諸国の階級闘争を復活させる条件を生み出すだろう。
中国と中国共産党は、このようなもう一つの世界、侵略・略奪・制裁・報復のない平和共存と平和的発展を基本とする世界を作っていこうと全世界に呼びかけているのだ。
マルクス・レーニン主義を創造的に発展させる中国共産党のリーダーシップ
20回大会で特筆すべき点は、中国共産党と社会主義中国にとってのマルクス主義の意義、「マルクス主義の中国化・時代化」の意義を特別に強調していることだ。その根幹は「人民至上」(人民第一)である。それは習近平報告全体を貫く根本原則・基本思想だ。20回大会は、「すべては人民のため、すべては人民に依拠し、大衆の中から、大衆の中へ」「終始人民大衆との血肉のつながりを保ち、終始人民の批判と監督を受け入れ、終始人民と一心同体であるように」と全人民の団結を呼びかけた。
大会閉幕の4日後、習近平総書記は政治局常務委員6人を率いて、陝西省・延安を訪問した。延安は1935年から1948年まで中国共産党中央委員会本部が置かれた場所であり、抗日戦争の政治指導の中心地、人民解放戦争の後方支援地、文字通りの中国革命の拠点であった。正しい政治的方向性、マルクス・レーニン主義の理論と思想、自立と勤勉の姿勢、何よりも人民のために心を尽くして奉仕するという人民第一主義など、中国革命を率いる党の基本原則が確立されたのは、まさにこの延安時代であった(「延安精神」)。習近平は大会後すぐに延安を訪問することで、新指導部が初心に立ち返り、党の革命的遺産・革命的精神を引き継ぎ、共同富裕を柱とする社会主義現代化を進める20回大会決定を断固として推し進める決意と確信を明らかにしたのである。
中国共産党は9670万人の党員を擁し、14億の人民を率いる世界最大のマルクス主義政権政党である。この10年、中国共産党はマルクス・レーニン主義の党内学習を抜本的に強化してきた。ソ連とソ連共産党崩壊の教訓に学び、理論と実践におけるイデオロギー的活動、思想闘争を党の歴史的使命として推し進めてきたのである。ここ数年、中国共産党が主催するマルクス主義政党の二国間、地域・国際会議が頻繁に開催されるようになった。今後、国際共産主義運動においてますます重要な役割を果たしていくに違いない。
対中戦争準備の阻止、中国との平和共存実現は反戦平和運動の責務
米バイデン政権は、中国が米国を追い抜き、世界最大の経済大国になることを阻止しようと経済制裁とデカップリング、「台湾有事」策動と軍事挑発など、帝国主義諸国を総動員して対中包囲をエスカレートさせている。10月7日、半導体と関連技術の輸出を全面的に規制する「対中チップ戦争」を発動した。さらに11月末、中国の動的ゼロコロナ政策に対する一部の不満に乗じて、全米民主主義基金(NED)などが絡む組織が「反ゼロコロナ運動」を中国各地で焚きつけ、西側メディアが大々的に騒ぎ立てた。香港、チベット、ウイグル、台湾などに続く国家分裂策動を仕掛けようとしたのだ。
彼らにとって、平和的発展による「社会主義現代化」が自らの新植民地主義的収奪体制を掘り崩すこと、自らの存立基盤そのものが揺るがされることが最大の脅威である。だから中国の発展を抑え込み、弱体化し、打倒することが至上命令なのだ。この米帝の野望を打ち破り、思い通りにさせないことが重要だ。
日本の反戦平和運動、左翼・共産主義運動の任務は、何よりも米国・日本の対中戦争準備・戦争挑発を阻止し、軍事費倍増や敵基地攻撃能力確保をやめさせ、中国との平和共存、東アジアの平和を実現していくことである。同時に、支配層とメディアが一体となって日々垂れ流す反中・嫌中イデオロギー、「中国脅威論」「習近平独裁論」「ゼロコロナ否定論」等々と対決し、そのウソ・デマを暴き出して多くの人々に知らせていくことである。