4月27~30日、アルゼンチンで「ALBA運動(ALBA Movimientos)」第3回総会がおこなわれた。「ALBA運動」は、ALBA(米州ボリバル同盟)に加盟していない諸国でのALBA連帯運動として2013年に創立されたもので、さまざまな社会運動を統合し、拡大し続けている。2016年にコロンビアで第2回総会がおこなわれた後、第3回総会は、コロナのパンデミックの中で、バーチャル空間での会議ではなく実際に集まっての会議にこだわって、これまで延期されてきた。今回採択された宣言を訳して後に付けている。
なお、5月29日のコロンビア大統領選は、首位が左派「歴史的盟約」候補グスタボ・ペトロ40・32%、第2位が右翼候補ロドルフォ・エルナンデス28・15%(開票99%以上)で、この2人による決選投票が6月19日に行われる。
(小津)
「我らがアメリカの時代が来た」ALBA運動総会がうたい上げる
「ALBA運動」総会は、昨年からラ米カリブ諸国の人民運動、労働組合、左翼政治団体などの代表団の間で交流と議論が続けられて準備され、ラ米カリブ地域を中心に世界各地からブエノスアイレスに代表が集まった(23ヵ国から300人以上)。そこでは、「我らがアメリカの時代が来た」として、現実を変革したいという願いで団結し、世界を変革するための運動の提案や取り組みが議論された。
各地の指導者たちが、右翼や帝国主義からの攻撃に抵抗し、土地と労働の権利を達成し、闘う人々の国内的・国際的結束を築く上での、人々の運動や組織の経験について語った。また、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアなどラ米カリブの社会主義や社会主義指向の国々に課せられた封鎖の終了を要求し、結束を呼びかけ、団結を築いてともに帝国主義・資本主義と闘うことの重要性を訴え、確認された。
ここ数年、「ALBA運動」が強化してきた重要な戦略のひとつは、ラ米カリブでこの活動に関わっている組織だけでなく、資本主義や帝国主義に抵抗している世界中の人民運動や組織とも連携していくことである。
前回2016年の総会から世界の情勢は大きく変わった。資本主義の危機はよりいっそう深刻化し、数千万人が経済的不安定、飢餓、失業に苦しみ、COVID-19の大流行やウクライナ戦争など新たな諸課題も出現している。だが同時に、ラ米カリブ諸国の進歩的・革命的勢力は、ペルー、ホンジュラス、チリ、アルゼンチン、ボリビア、メキシコ、ニカラグア、ベネズエラで選挙に勝利し、大きな前進を遂げたのである。
(註)「我らがアメリカ」という言葉は、キューバの国民的英雄、革命家、思想家、文学者であるホセ・マルティの、ラ米カリブ全体に反米・反帝民族独立の意思を強くにじませたエッセイ「ヌエストラ・アメリカ」からきている。
中国とラ米カリブ諸国の深まる協力関係
米帝国主義の支配の下で長年にわたって著しい低開発に見舞われてきたラ米カリブで、ここ数年、主要な投資家および貿易パートナーとして社会主義中国が大きな役割を果たすようになってきている。それは、この地域の経済発展にとって不可欠なものとなっている。国際金融機関(特にIMF)からの投融資は、通常、民営化、規制緩和、財政緊縮という厳しい条件を伴っている。それに対して、中国の開発融資にはそのような縛りがなく、平等互恵を原則に経済発展が推し進められている。
昨年末から今年にかけて、「一帯一路」構想がラ米カリブ地域に大きく広がってきている。昨年12月はじめに「ラ米カリブ諸国共同体(CELAC)」と中国の外相会合が遠隔でおこなわれ、その場で「一帯一路」へのCELACの参加が決まった。各国別ではラ米カリブ地域の33カ国中21カ国が参加している。貿易や投資以外にも、中国はラ米カリブに多くの援助をおこなっている。パンデミック開始以来、中国はこの地域のCOVID-19ワクチン投与量の約半分を提供し、多くの国が中国のワクチンに頼っている。
ニカラグアは、昨年12月に中国との国交を再開した。双方は「一帯一路」構想への参加をはじめ、いくつもの協力協定に調印した。キューバは、中国が主導する「一帯一路エネルギーパートナーシップ」にも参加し、中国とのウィンウィン関係を深化させている。中国はベネズエラへの支援も系統的におこなってきた。今年3月には、中国とCELACの第3回閣僚級サミットがおこなわれ、この間の交流と協力の深化が高く評価された。
米帝主催の米州サミットが開催の危機に
第9回「米州サミット」が米国ロサンゼルスで6月6日から始まった(10日まで)。だが、開催国の米国がキューバ、ベネズエラ、ニカラグアを招かないと発表したことに対して多くの国が反発し、メキシコ、グアテマラ、ボリビア、ホンジュラスなどをはじめとして、大統領が出席しない国が続出した。5月段階で、カリブ諸国14ヵ国が、排除国のある米州サミットはボイコットすると表明し、メキシコほか数カ国の首脳も強く反発、ALBA事務局長も「米国政府の誤り」を批判した。米国内の反戦・反帝・平和を目指す組織からも「米国政府の独断的決定は帝国の傲慢と妄想を示すものである」などの批判の声が上がっている。
「米州サミット」に対抗して、現地では「人民サミット」がおこなわれ、メキシコで「米州労働者サミット」が開催される。前者は、いくつかの国を排除するようなサミットに代わる別な選択肢を提示する。「米州機構(OAS)が招集する米州サミットは長い間、私たちが共有する大陸の人々を顧みず、ラテンアメリカとカリブ海において米国の経済・政治利益を押し付ける場となってきた」と批判し、「人民サミットでは、運動指導者や現場の組織者が集まり、民主主義、主権、変革について議論する」としている。
後者は、「米州サミット」を、北米の企業に奉仕する新自由主義的なものとして糾弾し、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアに対する経済封鎖、ベネズエラの特使アレックス・サーブの誘拐、米・メキシコ国境の〝恥ずべき壁〟などを糾弾している。また、メキシコ、米国、カナダにおいて新しい世界のために闘っている先進的な活動家や労働組合組織と緊密な関係を結び、CELACやUNASURを支持し、米州の先住民の闘いを支持している。ラ米へのNATOの拡大を〝我々の大陸の恥部〟であるとして批判している。
反米・反帝の地域統合UNASUR・CELACが復活
かつてチャベスが主導してつくられたUNASUR(南米諸国連合)やCELAC(ラ米カリブ諸国共同体)は、米帝による反動攻勢が強まる中で停滞と後退を余儀なくされてきた。だが、2020年後半からの人民運動の未曾有の再活性化の中で、メキシコとアルゼンチンが中心になって、4年間首脳会議がおこなわれていなかったCELACが21年9月に復活再生した。そのCELACと中国が緊密に協力するようになった。
ブラジルのルラ元大統領は、5月はじめの集会での演説で、新たな中南米通貨の創設を提案した。スペイン語で「南」を意味する「SUR」と命名されたこの通貨の目的は、ラ米カリブの統合を深め、地域の経済的主権を強化し、米国への依存を弱めることにある。
この4月にニカラグアが、反革命的介入を繰り返すOASを「米国政府・国務省の介入と支配の政治的道具」として糾弾し、OASからの脱退を発表した。ALBAがそれを支持したのに続き、エボ・モラレスが、ボリビアもOASを脱退すべきだと主張し、CELACを中心に据えるべきだとした。さらに、5月8~9日にキューバを訪問して広範な経済的・商業的発展協定を締結したメキシコのオブラドール大統領も、それに同調した。
ラ米カリブでは、米帝国主義の支配の弱体化がかつてなく進行し、反米反帝反ネオリベ運動が再度急速に強まっている。ALBA諸国とその下に結集している「ALBA運動」は、その中心にあって、いっそう発展し拡大しようとしているのである。
宣言「ALBA運動」第3回大陸会議
チェ・ゲバラの、また、エビータの、プラザ・デ・マヨの母や祖母の、ディエゴの、サン・マルティンとフアナ・アスルデュイの、その闘いと記憶の地で、ラ米カリブ諸国の20カ国から300人以上の代表が、「ALBA運動」第3回大陸総会に集まった。コロナ・パンデミックの後の複雑で目もくらむような世界のシナリオの中で、また2016年にコロンビアでおこなわれた前回の総会から5年後に、この地域全体からの代表団が、交流と議論の熱烈なプロセスに参加し、またわれわれの社会運動・人民運動の綱領の戦略的計画に参加した。
前回の総会からの数年の間に、この地域と世界は根本的に変わった。グローバルなレベルでは、COVID- 19の大流行が、前方への真の飛躍を伴った。それは地平線上にすでに存在していた社会的・地政学的矛盾の多くを鋭くし鮮明にした。回避可能だった何百万人もの死、ワクチンや医薬品の階級的・植民地的分配、グローバル大企業による数百万ドル規模のビジネスの出現、これらがこの2年間の評価の一部である。疑いもなく、新しく生じた最新の非常に大きな地域的事態は、新しいヨーロッパ戦争
の出現であり、おそらく本当の歴史的分岐点となるものであろう。それは、NATOと米国を主役とし、他の諸国を警戒させ、間接的にグローバル・サウスの国々に多大な影響を与える。この紛争の真の本質は、世界の覇権をめぐる争いである。
この状況の中で、われわれのラ米カリブ地域は、新自由主義のパンデミックとCOVID- 19のパンデミックという二重の破壊的な影響によって、最も大きなインパクトを受けた地域のひとつである。つまり、経済的社会的危機、大多数者の貧困化、欠乏、飢餓、不平等などである。しかしながら、連帯、コミュニティ、集団への深い信仰が、われわれの大陸のDNAの一部である。「我らがアメリカ(Our America/Nuestra America)」における生活の強さの対比は、そのことをわれわれが理解するのを
可能にした。もちろん、この状況は、「ALBA運動」を推進した社会運動や人民組織に対して、ひとつの課題を提起した。都市の街頭や田舎の地方が、われわれが共に建設する主要な場所であるため、われわれは、調整と統合の新しい形態を見つけなければならなかった。しかしわれわれは、第3回大陸総会の会合については、バーチャル空間ではなく現実に開くという目標を維持した。
われわれは、次のような準備をしてブエノスアイレスに到着した。われわれの大陸の現実を変革するために、また、ALBAの一部である諸組織の間での統一と結束をよりいっそう強固にするために、分析し、熟考し、行動のための提案を構築する準備である。それは、「偉大な祖国(Patria Grande)」という目標とともに日々夢見ながら構築している組織間の統一と結束である。
アルゼンチンは、国際通貨基金(IMF)に対する闘争の歴史的な時期の中にあって、われわれを歓迎してくれている。われわれは、2001年のときのようなバリケードの熱気をともなう反新自由主義闘争の中にあるアルゼンチンの人々を受け入れ抱擁する。そして、3万人の失踪した抑留者のために、その記憶、真実、正義を求める闘いの歴史を、感謝を込めて賞賛する。
米帝国主義とその欧州のパートナーは、10年以上前に開始された反転攻勢以来、長い道のりを歩んできた。独裁政権、クーデター、マイナーな選挙勝利、ハイブリッド戦争の傘の下でのあらゆる形態での介入、そういったことが、われわれとこの大陸に無慈悲に適用されてきた。
これは、カリブ諸国で民間企業によってプロモートされているような“安全保障”モデルの輸出に顕著に表れている。それは、ベネズエラでの「ギデオン作戦」の場合のように、準軍事組織や傭兵部隊を派遣して選択的に暗殺したりクーデターを試みたりする。また、われわれの国の領土に米軍基地を設置することや、支配階級の富裕な領主に巨額の利益をもたらすために、貧困地域の若者に対して訓練を施したり暴力を行使したりする方法として、麻薬密売を実施することも含まれている。
国家と準国家による抑圧は、われわれの地域ではありふれたことであり続けてきた。われわれは、生命、水、共有地を守るコミュニティーのリーダーが毎日何百人も暗殺されている「中央アメリカ地域」でそれを目の当たりにしている。それは、ハイチにも存在し、社会の結束と社会組織を破壊する目的でギャングの暴力が増加している。ハイチの人々は、植民地の前哨部隊でしかない「人道的ミッション」によってもたらされるハイレベルの暴力と貧困に直面しなければならないだけでなく、イスラエルから
の資金提供によるドミニカ共和国との国境での壁の建設などの措置にも直面しなければならない。それは、反乱を起こしたキスケヤ島で非人間的な傷口をつくっている。OASと国連とハイチの極右は、現政権の下で続く極右プロジェクトの猛攻に苦しむハイチ人民の生活諸条件の悪化に対して責任がある。
コロンビアでは、戦闘の激化、準軍主義の深化、迫害、犯罪の多発、社会的指導者や和平署名者たちに対する政治的暴力などの形で、この大陸における米帝国主義の野望の諸結果を白日の下にさらしているのである。また、治安部隊による恒常的な人権侵害は、もはやニュースですらない。2016年に署名した和平合意に違反し続けているイバン・ドゥケ政権下で、2021年の全国ストのときにも、覇権的メディアでそういう状況が生じていた。そのようなことを、われわれは毎日見ているのである。
ファシスト右翼の前進は、われわれの主要な懸念のひとつである。したがって、われわれは、ブラジルにおけるジャイル・ボルソナロのファシズムの前進を糾弾する。彼は、国家と警察の暴力によって社会的活動家を暗殺し、ブラジル人民の諸権利を切り縮めている。そのブラジル人民は、今年10月のル
ラの勝利を視野に入れ、それを期待している。同様に、われわれは、ペルーの民主的に選出されたペドロ・カスティージョの政府に対する恒常的なクーデターの企てを拒絶する。カスティージョは、フジ
モリ右翼とその恒常的な反民主主義的攻撃に立ち向かっているのである。
われわれの地域に資本主義と帝国主義が残した貧困は、「中央アメリカ(Mesoamerica)」が経験しつつある移民の危機に反映されている。そこでは大規模な移住が起こっているが、それは、排除や、機会の欠如、独裁的政府による人民弾圧、この地域の何十もの先住民族の領土の剥奪などの結果である。
主権のための闘いと独立は、解放の父や母たちによってわれわれに残された最も重要な遺産のひとつである。そのため、われわれは、英国によるマルビナス諸島占領を糾弾し、その領土に対するアルゼンチンの主権を認めるよう要求する。加えて、南大西洋で最大のNATO軍事基地の存在についても糾弾する。「マルビナス諸島は、アルゼンチン領であり、またラテンアメリカである」ということを主張する。われわれは、また、プエルトリコの人々の米国からの独立の主張にも同調する。
われわれは、キューバ人民とその革命に対する米国政府のジェノサイド的で犯罪的な政策を糾弾する。キューバは、この3年間に、キューバ人民を絶滅させようとする243もの措置に直面した。それは、60年以上にわたる経済、金融、商業封鎖という敵対的政策に加えてのもので、キューバの経済発展に対する主要な障害となっている。
「ALBA運動」は、ベネズエラのボリバル革命、キューバ革命、ボリビアの変革過程を、拳をあげて心の底から無制限に擁護することを再確認する。なぜなら、われわれは、チャベスの息子と娘であり、ボリバルの息子と娘、トゥパク・アマルの息子と娘、デサリーヌの息子と娘であるからだ。この枠組みにおいて、また、われわれの歴史的基盤を見直し拡大し調整した後に、われわれは、6つの基本原則を再確認する。すなわち、①「我らがアメリカ」の統一と国際主義、② 思想的・文化的闘いと脱植
民地化、③ 母なる地球と人民主権の防衛、④ 良好な生活のための経済、⑤ 民主化と人民権力の構築、⑥大衆的フェミニズムである。
これらの基盤から、われわれは、少なくとも今後4年にわたってわれわれの組織の政治的活動の指針となる次のような一連の優先事項と課題について、この「第3回大陸総会」において合意した。
1 われわれの地域における最も急進的な変革プロセスの擁護。それは、「すべては革命とともにあり、革命に反するものは何もない」という、コマンダンテ・フィデル・カストロの前提に基づいて。
2 進歩的、人民的、左翼的な政府との同盟を打ち固めること。それは、その諸国人民とその組織的表現の自律性と行動の自由に基づいて。
3 連帯に基づく生きた具体的な国際主義の実践。また、基盤となる労働組合、農民、先住民、アフリカ系住民、女性、青年、環境などの、あらゆる種類の組織において、その実践と認識を大衆化するという課題の実践。
4 われわれの「政治教育の大陸的システム」の強化、コミュニケーション・イニシアティブの強化、連帯キャンペーンの強化、国際ブリゲードの強化。
5 不幸にも依然として完了していない脱植民地化の過程への支持と激励。それは、われわれの独立革命の歴史的なヒーローとヒロインの遺産を拾い上げながら。また、フォークランド諸島からグアンタナモまでの、ナバサ島からグアヤナ・エセキバまでの領土における、われわれの主権の防衛と同様に。
6 アジア、アフリカ、アラブ・マグレブ地域、ヨーロッパ、北米、ラ米カリブ地域、これら地域の人民の政治的統一の表現である「国際人民会議(IPIPA)」に、地域プロセスとして「ALBA運動」が参加すること。われわれの地域の統合と国際主義的統一は、グローバル資本主義体制に立
ち向かうために必要な条件である。十分ではないが。
7 われわれのプロセスにおいて統一的に行動し、各国の支部を発展させ、多様性の中の統一を優先させることを可能にした組織的機構を強化していくこと。訓練学校や、連帯キャンペーン、コミュニケーション・プロセス、国際ブリゲードなどの、多くのイニシアチブにおいてそれをおこなうこと。
世界の南側から、われわれは、組織と闘いのための大陸的な呼びかけを発する。困難な時代であっても、それ以上に、今は「我らがアメリカ」の時代であることを、われわれは確信している。なぜなら、「我
らがアメリカ」の時代、人民の時代は、決して終わらないからである。