現在、米・英を始めとする世界帝国主義が、ロシアへの挑発と威嚇を繰り返し、フェイクに基づくメディア報道を総動員し危機を煽り、戦争をもてあそんでいる。非常に危険な動きが全世界を駆け巡っている。しかし一方、その動きに隠され、ほとんど報道されることがないが、世界の、途上国人民にとって非常に重要な外交的進展があった。中国が国連を舞台に、途上国人民への開発進展を主目的とし、各国を横断する「経済同盟」を立ち上げたのだ。その名は「GDIフレンズグループ」(the Group of Friends of the Global Development Initiative)。1月20日に行われた第1回会議には、80カ国以上の大使を含め全部で100カ国以上が参加し、盛大にこの組織が発足した。本稿では、社会主義国や進歩的反米諸国、途上国人民に対する、中国の外交面での最近の貢献とその前進について報告したい。
(佐竹)
国連を舞台とする「GDIフレンズグループ」
GDI(グローバル発展イニシアティブ)とは、昨年の国連総会で習近平国家主席が提唱したもの。まず、20~21年が、パンデミックによる直接の被害に加え、各国の経済成長への負の影響で、多くの国で人民生活向上に向けた「開発」事案が次々と中止に追い込まれる年となった。今回の習近平主席の提案は、その状況を改善するため、世界各国と「共に話し合い、共に建設し、共に分かち合う」理念の下、国連の『持続可能な開発のための2030アジェンダ』(「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため2030年を年限とする17の 国際目標SDGs、2015年の国連サミットにおいて全加盟国一致で採択)の実行加速と、より力強くより環境に配慮した、「世界発展運命共同体」を構築することを目的としている。その目的のために、中国が主導し、国連と手を携えて、途上国における「人中心」の開発を途切れることなく進め、貧困・飢餓や気候危機等の重大な問題を解決しようとした提案であった。最終的には、帝国主義の植民地主義及び新植民地主義によってもたらされた、途上国における低開発の負の遺産を打破することをめざしている。そしてこの提案を中国だけにせず世界全体に開かれたものにする、その第1歩としての発足会議が先日行われたのである。会議ではアミナ国連副事務総長があいさつを送り、この組織が大きな意義を持つことを全世界にアピールした。実際この会議には、100カ国以上の国だけでなく、国連開発計画(UNDP)や国連女性機関(UN Women)等の幹部も多数出席し、国連が全面的に協力することを内外に示した。中国が以前より進めている「一帯一路」や上海協力機構といういろいろな経済外交活動のチャンネルに、国連を主な舞台とした大きな組織連合体が加わった。今まで以上に、より多面的な中国による平和と平和共存、人類の貧困撲滅、気候危機解決に向けた外交が展開されることになった。
社会主義・反米諸国からなる「国連憲章擁護フレンズグループ」
上記の国連における中国主導の経済的外交活動を政治的に補完するものが、昨年3月に発足した「国連憲章を擁護するフレンズグループ」(the Group of Friends in Defense of the Charter of the United Nations)だ。これには、中国、ロシアはじめキューバ、ベネズエラ、イラン、シリア、パレスチナ等19カ国が加盟し、積極的に活動を展開している。加盟各国が連帯すること及び「国連憲章」(その原則は、すべての加盟国の主権平等、国際平和の維持・発展、内政不干渉)を前面に掲げることで、それぞれの国だけでは難しい米帝国主義の軍事的侵略策動を抑制する上で重要な役割を担っている。そして、加盟各国の政治・外交面での結びつきが強まっているだけでなく、同時に経済面での相互の結びつきも強まっている。
加盟国の多くは、米による理不尽で国連憲章に違反する経済制裁(中心はドル決済が遮断されることによる事実上の貿易・投資の停止)を課せられ、「ハイブリッド戦争」(軍事介入だけではなく、経済封鎖など非軍事的懲罰を含む)を仕掛けられている。反米国を兵糧攻めにし、政権転覆を狙うためだ。そのため多くの国が苦しい経済状態を余儀なくされている。ところが、最近になって、加盟各国による経済支援の進展で明るい兆しが見え始めているのだ。例えばイランとベネズエラ。米の金融制裁でイランからの石油の輸出が事実上大きな制約を受ける中、中
国はその制約を恐れることなくイランから石油を買い続けており、イラン経済を下支えしている。それだけではない。この中国による下支えを受け、今度はイランがベネズエラへの石油生産における技術支援を行っている。具体的には、ベネズエラ原油を製品化するために必要不可欠な薄め液(シンナー類)を大量に供与するとともに、製油所の修理部品類等を輸出することで、米による制裁で大幅減産を余儀なくされ続けていたベネズエラの石油生産を、倍増という回復軌道に反転させた。さらにベネズエラ産石油の販売に対してもイラン経由とすることでスムーズに販売できるようにしている。これらの協力で、ベネズエラは、今年、6年ぶりに経済成長がプラスに転じる予定だ。
更にキューバと中国の一帯一路における関係の加速化がある。2018年に「一帯一路」に参加したキューバは、21年11月に「一帯一路」のエネルギー・パートナーシップのメンバーになり、再生可能エネルギーでの協力を促進し始めた。更に21年12月下旬に「一帯一路」共同推進に向けた協力計画に署名した。これによって、インフラ建設や医療等での幅広い協力プロジェクトが始まろうとしている。
キューバだけでなく、「一帯一路」はたゆみなく発展しており、昨年末までに147カ国、32の国際組織と「一帯一路」共同建設に関する200以上の協力文書が調印されている。ラ米カリブに限っても19カ国が参加している。そして、ラ米カリブ諸国間の重要な連合組織であるCELAC(ラ米カリブ諸国共同体、33カ国加盟)も「一帯一路」に加盟している。それもあって昨年のCELAC首脳会議では最終日サプライズゲストとして、習近平主席がビデオ出演した。
ニカラグアが中国との国交回復
上記のような多国間協力だけでなく、中国と革命的進歩的反米諸国との直接の外交的結びつきも世界的規模で強まっている。その象徴が、12月10日のニカラグアと中国の国交回復だ。当然台湾との断交を伴っている。1990年にFSLNが大統領選で敗北・下野し、新自由主義政権ができた直後に、中国と断交し台湾を国家承認する反動政策がとられたのだが、再び中国との国交回復へと至った。実は中国と断交し台湾を不当にも国家承認している国が全世界には2016年時点で22カ国あった。その内12カ国が中南米カリブ海地域に集中している。ところが、次々に中国との国交正常化へと雪崩を打っている。この流れは、実は台湾の政治指導者に蔡英文が就任した2016年から加速している。今回のニカラグアで8カ国に上り、ラ米カリブでは17年にパナマが、18年にエルサルバドルとドミニカ共和国が台湾との断交=中国との国交正常化を行っている。西側メディアは、蔡英文やその政権内の人物を時代の寵児としてもてはやすが、実際世界では、まったくその逆の存在として見られており、上記のような断交の嵐がそのことを雄弁に物語っている。もう一つ忘れてならないのは、先述した3カ国は、決して社会主義でも、社会主義指向でもない。ところが、米帝国主義がこれらの国に対し、少しでも意に沿わなければ、そして自国の勝手な都合で、傍若無人に制裁を連発することに反発したのが、この中国との国交正常化という流れの大きな要因となっている。すなわち、米帝国主義は、ことあるごとに、今でもラ米カリブを自分の裏庭とし、そこに住む人民を自分の従僕か奴隷としか考えていないことへの、強烈な反発なのだ。
中国外交攻勢の基礎にある経済協力の強化
ラ米カリブで、全世界で、中国が力強く外交攻勢をかけている基礎となっているのは、中国の貿易・投資等を通じた経済に占める大きな比重だ。まず、貿易。全世界の3分の2以上の国で最大の貿易相手先が中国となっている。ラ米カリブも例外ではない。2021年1月から9月までの中国とラ米カリブ諸国との貿易額は、前年同期比45・5%増の3318億8000万ドルとコロナ禍でも急増している。これに対し、2002年通年では、180億ドルを超えなかった。わずか20年弱で約25倍まで膨れ上がっている。また投資においてもラ米カリブの対内直接投資ストックの約3分の1を中国が占め、米を抜いてトップに立っている。インフラ分野に限れば、中国はラ米カリブで138のインフラプロジェクトを持ち、約940億ドルを投資し、60万の直接雇用を生んでいる。
ALBAを通じた協力・連帯強化
ラ米カリブの社会主義・社会主義指向・革命的進歩的諸国間の連帯も引き続き強化されている。昨年12月には20回目となるALBA(米州ボリバル同盟)の首脳会議がキューバの首都ハバナで開催された。ベネズエラのマドゥーロ大統領、ボリビアのアルセ大統領等首脳自らがキューバの国際空港に降り立ち、キューバの国際観光解禁を世界にアピールした。会議では、「国連憲章を尊重し、主権と独立の防衛及び経済協力の強化」を声明し、米の経済制裁を強く糾弾した。
現在ラ米カリブでは、進歩的革命的勢力の前進と表裏一体の形で、中国の平和・人民優先外交が着実に地歩を固めながら、一歩一歩確実に前進している。社会主義中国の平和共存外交は、着実にラ米カリブ地域での階級闘争、革命過程を加速するだろう。