【翻訳資料】
シリアの青年コミュニスト「われわれは決して諦めない!」

 本インタビューは、2016年1~2月にかけて、シリア軍とシリア人民の側が内戦勃発以来初めて優位に立って戦うアレッポ攻防戦の真っ最中に行われた。直近では、中部の要衝パルミラを奪還した。答えるのは、民兵で最先頭に立つシリア共産党の青年組織=シリア共産主義青年同盟の幹部だ。
 インタビューで注目すべきは4点。①当面する真の敵をアメリカ帝国主義にはっきりと据えていること。IS(イスラム国)は米帝とサウジアラビア・トルコの尖兵と捉える。従って、②シリア人民の戦いの基本性格は、反米・反帝の愛国的闘争、いわば民族的・階級的な民族解放闘争。そして「グローバル帝国主義の攻撃に対する国際的闘争」という「国際的意義」を有する。③このシリア人民の民族解放闘争への、ロシア・イラン・ヒズボラの軍事支援の積極的・肯定的意義。④シリア共産主義運動のアサド政権との闘いの位置づけを局面変化において規定。反米・反帝民族解放闘争と自国のアサド=ブルジョア政権との闘いの「2つの任務」について。
 われわれは、このシリアの最先頭で戦う共産主義者から多くを学ばねばならない。

シリア共産主義青年同盟国際関係委員会メンバー 
ウィルヘルム・カヘル(WK)との特別インタビュー
国際共産主義プレス(ICP)による 2016・2・9 

ICP:今日のシリアにおける国内の動向と中心的な活動家たちの立ち位置を、どのように考察していますか?

WK:最新のいくつかの出来事から情報を提供したいと思います。シリア軍は最近、いくつもの異なった所で前進しました。ご存知のように、ここはとても広い国です。だから、シリア軍は、そのすべての部隊をあらゆる場所に拡散することはできません。この前進はロシアによるものと考えるべきで、それについては後で述べましょう。
 アレッポを例にとれば、アレッポの南は主としてシリア軍によってコントロールされていて、反動的な反乱軍はすべて一掃されました。シリア軍によるこの強力ですばやい前進は、ロシアによって支援されました。アレッポの南の75以上の場所が、今はシリア軍によってコントロールされています。そこは都市部ではなく、広大な地方です。いくつかの小都市で、シリア軍は反乱者たちを数時間で一掃しました。私たちはこの非常にすばやい前進に驚きました。
 また、アレッポの西で、今回ダーイッシュ(IS)に対して重要な前進がありました。南には、主要なテロ組織、アルカイダに属するヌスラ戦線がいます。そしてまた、このヌスラ戦線にコントロールされているその他の小さなテロ組織がいます。
 アレッポの西では、これまでも、ダーイッシュのいわゆる首都ラッカへ向けて前進がありました。私たちはみんな、今回の前進にとても驚いています。そしてまた、とても希望がふくらんでいます。
 また、ダマスカス周辺では、その大部分は政府のコントロール下にありますが、国境周辺や西方では、サウジアラビアにコントロールされている組織イスラム戦線がいます。この組織のリーダーは、シリアとロシアによる軍事作戦の中で死にました。彼の名はゼフラン・ハルーシュです。これは明らかにこの組織にとって大問題なのです。というのは、彼らはイデオロギーにではなく、一人の人物に依存していたからです。
 ダマスカスの南、ダラは、ヨルダンとイスラエルに近い所で、ここにもヌスラ戦線がいますが、シリア軍がいくつもの大都市と重要な所のコントロールを再獲得しました。これはとても広い地域ですが、シリア軍はこれらの場所のすべてで多くの前進をとげました。
 シリアの中央ホムスには、反乱者たちが基盤にしていたとても小さな基地がありました。シリア軍はそれを包囲して闘い、これらの反乱者たちを街から立ち去らせました。ホムスは今は解放されています。リーバンの方の地方も解放されています。

ICP:パルミラについてはどうですか?

WK:残念なことに、ご存知の通り、この小さな都市を取るために、数百あるいは数千かもしれない反乱者たちからの大きな攻撃がありました。そこはとても重要な都市です。というのは歴史的な場所ですから。シリア軍は、そこの歴史的遺跡が損なわれることを望まなかったので、退きました。そこはまだISISのコントロール下にありますが、シリア軍は約10㎞のところに位置を占めています。そこは今のところ、最も重要な場所ではありません。シリア軍が対処しようとしている大きな都市がまだたくさんあります。

ICP:この古代都市に損傷がありましたか?

WK:はい、不幸なことに・・・。ご存知のように、ダーイッシュと他の諸組織は、イデオロギーもなければ、人間性もないし、理性もありません。彼らは、殺し、闘い、あらゆる歴史的な遺跡を破壊します。それは、彼らがファシスト・イデオロギーと呼ばれうる反動的な思考をもった反動的な組織だからです。「もしおまえたちがわれわれといっしょに来ないのなら、お前たちを殺す」とか、あるいは「この場所がおまえたちのイデオロギーに属しているものなら、それを破壊する」、これが彼らの行動のやり方です。

ICP:そのような困難な諸条件で闘っているコミュニストとして、ロシアの介入や、その他のヒズボラやイランの役割をどう考えていますか? 彼らは米帝国主義に反対していると言っていますが。

WK:私たちは、ロシアが今ではもはやソビエト連邦ではない資本主義国だと認識しています。でも私たちはまた、現在の真の敵は米帝国主義であり(the actual enemy now is the US imperialism)、それこそが今日私たちが対決しなければならないものだということも知っています。
 今回、この軍事介入は初めから合法的でした。というのは、シリア政府がロシアに介入を要請したからです。だから私たちは、それを侵略とか攻撃とか呼ぶことはできません。それは、とても役立っています。そもそもの初めから、多くの積極的な活動があり、シリア軍にとって重要な前進がありました。
 また、同じような役割が、これまでヒズボラとイランによって果たされてきました。私たちは、シリア軍に対する、またシリア人民に対する、支援の軍事行動、支援の立場・姿勢を受け取ってきました。私たちは、そのすべてが現在に至るまで私たちにとってとても肯定的な(positive)ものだったと考えています。なぜなら、それは帝国主義の攻撃に対する闘いへの支援だったからです。そしてまた、それは私たちに一定の時間的猶予を与えてくれています。

ICP:青年同盟の活動についてはどうですか? 私たちは、あなたがたが積極的に国の防衛に加わっていると思いますが、そして今日では反アサドであることは反動的な立場だと思いますが、でも、それは今後変わるだろう(one day it willchange)と思います。あなたがたの組織の将来的戦略について教えてもらえますか?

WK:いくつもの場所で、私たちは動くことができず、何らかのことをしようとしてもやることができないのですが、それは「死ぬか、立ち去るか」です(it is “die or leave”)。そこでは、私たちは軍といっしょに立場を保持しなければなりません。そしてそれらの場所では、独自の活動は何もしていません。でも、政府によって、シリア軍によってコントロールされているところでは、あなたがおっしゃったように、私たちは戦争前にそうであったように活動しています。私は、私たちの活動を2つの部分に分けます。第1の部分は、「シリアは決して屈しない!」という大きな旗の下にあります。この標語は私たちの歴史的な指導者ハリド・バクダッシュによって、ずいぶん前につくられたものです。この愛国的な旗は、依然として今現在のもの(up to date)です。この旗の下で、私たちは闘いを続け、シリア軍を支援し、抵抗闘争をおこなっているシリア人民を支えます。私たちがこの旗を共有するのは、共産主義者と共に、わが青年同盟と共に、わが党と共にというだけでなく、この愛国主義を共有する他の重要な民族諸勢力とも共にします。私たちは、これを、私たちの民族的義務または階級的義務であるだけでなく、国際的な義務でもあると考えています。なぜなら、シリアはグローバル帝国主義の攻撃に対する国際的闘争を代表しているからです。
(訳註 Halid Bakdash/1912~95、1936年から死去までシリア共産党指導者。by Wikipedia)
 そして、第2の部分は、「シリアの青年の諸権利の防衛」という旗の下にあります。それは、我が国の政府の経済的自由主義に対する、われわれの経済的・社会的闘いに関係するものです。私たちは、医療、教育、その他あらゆることにおける政府の自由主義的諸活動に反対です。私たちは、医療、教育、その他の領域での獲得物を維持しようとしています。私たちはまた、若い世代の雇用や家屋において、よりいっそうの社会的・進歩的諸権利を獲得するために、継続して闘います。また、生産の国有化を支持します。というのは、私たちはそれがシリアを支える重要な経済的要素だと確信しているからです。
 また、私たちには、イベントがいくつかあります。戦争前には、国中でおこなわれるカーニバルがありました。でも今では、この状況のために、それは局地的なものになりました。もうひとつ別な活動は、毎年の文化行事「ハリド・バクダッシュ・ミーティング」で、そこに私たちは進歩的な芸術家や歌手を招きます。また、組織として、私たちは現情勢について議論し分析します。
 大学においては、特にダマスカスとアレッポでは、私たちはたいていの大学で青年同盟を代表しています。また、「シリア学生同盟」においても青年同盟を代表しています。このように、私たちは学生の諸要求に接近することができ、そして、私たちのコミュニストとしての考え、分析、主張を、私たちの第一の義務として、学生の間に広めることができます。第二の義務は、学生の要求を、そしてまた一般に青年の要求を、広く伝え知らせることです。
 私たちは、戦争にもかかわらず、私たちの闘いを継続しようと努めています。そして私たちは、決して諦めることはないでしょう・・・。

■引用元 http://icp.sol.org.tr/asia/communist-youth-syria-we-will-never-give

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