トランプの世界関税戦争の狙いは、台頭する中国の貿易・経済力を懲罰的関税で破壊し、同じく中国と結合して台頭するグローバル・サウスをも抑え込むというものである。だがこの狙いとは裏腹に、中国とグローバル・サウスはその全世界的な結束を一気に強化しつつある。
5月13日、「第4回中国・CELACフォーラム」が行われた。今年は、フォーラムの10周年目にあたる。CELAC(ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体)は、チャベスが主導し、米帝から自立したラ米カリブ地域統合を目指すために、米帝主導の米州機構(OAS)から米国とカナダを除き、キューバを加えた中南米のすべての国33カ国で構成する。
今回のフォーラムはこれまでとは異なる歴史的意義を持つ。トランプの関税戦争と、米帝による「モンロー・ドクトリン」の復活のような植民地主義支配、制裁と内政干渉に対して、CELACを軸に団結を強化し、これを社会主義中国との政治的・経済的協力に連結し、トランプ=米帝国主義との対峙を鮮明にしたのである。重要分野における協力のための行動計画「北京宣言」が採択された。それに先立って「CELAC首脳会議(サミット)」が行われ、トランプ政権の横暴に団結して対応することが強調された。
(K/H)
「中国・ラ米カリブ諸国運命共同体」の成功裏の形成
習近平国家主席は、今回の中国・CELACフォーラムの開会演説で、ラ米カリブ諸国の「外部からの干渉を拒否する」決定に支持を表明した。さらに「それぞれの国情に合った発展の道を歩む」よう促し、ビジョンから行動へ、青写真から実りある成果へと、具体的・実務的に前進を遂げるよう激励した。まさしくこの10年間は、「人類運命共同体」のラ米カリブ版、「中国とラ米カリブ諸国運命共同体」構築の10年だった。社会主義中国は、中国・CELACフォーラムの枠組みで、戦略的連携を強化し、互恵的な協力関係を深化させ、真の多国間主義を推進し、米帝国主義の植民地主義的暴虐に反対し、ラ米カリブ諸国が主権と独立の道を歩めるよう全面支援してきた。
中国・CELAC諸国の関係は政治、経済、社会、科学、教育、農業、幹部育成のあらゆる領域で発展を遂げている。各国の国情に合った課題解決、中長期を見据えた戦略の成果だ。中国は自らの革命プロセスの中で、社会主義建設の過程で苦闘しながら闘いとった教訓と経験をCELACと途上国全体に共有してもらうことを切望している。
――外交関係では、台湾と断交し中国と国交を樹立した国が、パナマ、ドミニカ、エルサルバドル、ニカラグア、ホンジュラスの5カ国が加わり、全体33カ国中26カ国に達した。
――経済関係では、中国・CELAC諸国間の貿易額は昨年初めて5000億ドルを超えた。中国は、ラ米カリブ諸国全体で第2位の貿易相手国であり、ブラジル、チリ、ペルーにとっては第1位である。この地域の経済が対米から対中へ移行しつつある。中国は、ニカラグア、チリ、ペルー、エクアドル、コスタリカとの間でFTA(自由貿易協定)を締結している。ブラジルは、CELAC諸国として初めて中国と包括的戦略的パートナーシップを構築した国であり、双方の協力は、経済・貿易、金融、インフラといった従来の分野から、エネルギー、デジタル経済、航空宇宙といった新興分野へと発展している。「一帯一路」構想には20カ国以上が参加している。
――交通・運輸面では、中国の深センとメキシコの首都メキシコシティを結ぶ直行航空路線が2024年5月に開設された。続いて中国が建設したペルーのチャンカイ港は、同年11月に開港し、ラ米カリブとアジアを結ぶゲートウェイとして大きく貢献している。交通・運輸網の整備は、時間とコストを縮小するだけでなく、両大陸を物心両面でいっそう近づけ緊密にしている。
――科学の面では、中国とCELACの間に「科学の架け橋」を築くために交流と協力を推し進め、「基礎研究、産業応用、医療、社会サービス」の統合プラットフォームの提供の展望が開かれている。
――雇用、農業、職業交流、文化交流、人的交流の面では、200件以上のインフラ整備プロジェクトを通じた数百万人の雇用創出、ラ米カリブ諸国に1万7000人の政府奨学金供与、1万3000人の研修生受け入れを行なっている。さらに今後3年間で中国がCELAC諸国の政党指導者300人を中国に招き、「統治に関する経験を交換」すると発表した。
次の戦略方針 ~「北京宣言」
今回のフォーラムは、次の新しい戦略方針を28項目の「北京宣言」にまとめた。
――世界平和を守り、友好と協力を強化し、地球規模での共同の発展を促進するために、ラ米カリブ地域を「平和地帯」だと宣言した。この宣言は米国に対して侵略戦争や軍事介入を許さず先頭で闘うという決然たる表明である。
――ブラジルが提案した「飢餓と貧困に対抗するグローバル同盟」や、中国が提案した「グローバル開発イニシアチブ(GDI)」などの世界的事業を推進する。
――COP30の11月ブラジル開催を歓迎し、これまでCOPで設立された気候関連基金を全面的に運用し、十分な資金を投入する。
――インフラ、科学技術革新、貧困削減などの分野で相互学習を深めるため、政府間の交流を促進する。コロンビアでの第2回「農地改革・農村開発国際会議+20(ICARRD+20)」を歓迎する。この会議は、国連食糧農業機関(FAO)の支援を受け、南南協力を促進するとともに、中国の農村振興戦略などの経験についても検討する。貧困削減における相互学習や政府間交流、中国の農村振興戦略などの経験の検討などの表現に、中国の歴史的経験と教訓を共有し実践的に前進しようという姿勢が示されている。
――ラ米カリブ諸国を含む発展途上国の代表性と発言力の強化を目的として、国連安保理を改革する。ラ米カリブ地域の出身者が国連事務総長の職に就くべき時が来たという同地域諸国の立場を支持する。これらはグローバルガバナンスの面で国連トップの職責をラ米カリブ諸国代表が担うという、世界史の現段階を示す画期的方針である。

CELACサミット~地域共同でトランプと対決
4月9~11日にホンジュラスの首都テグシガルパで行われた「CELAC首脳会議」は、トランプ政権の関税攻撃や制裁強化などへの批判と団結した対応が強調され、「テグシガルパ宣言」が採択された。「宣言」では、この地域のすべての国を結集する政治的調整メカニズムとしてのCELACの強化、国連憲章及び国際法の目的と原則の尊重と促進、ラ米カリブ地域を平和地帯とする宣言の正当性、国際法に反する一方的な強制措置の拒否などが強調された。
CELACの首脳たちは、団結と共同した対応の必要性を強調した。ベネズエラのマドゥーロ大統領はCELACの共同行動を迅速化する「CELAC事務局」の創設を提案した。キューバのディアス・カネル大統領は、移民、気候変動の問題について非難して、キューバの現状をもとに次のように発言した。移民の強制送還は、権力の濫用であり、ラ米カリブ諸国の市民の基本的権利の侵害である。グアンタナモのキューバ領土内の不法占領地にある海軍基地は、再び移民の投獄に利用されている。ますます壊滅的なハリケーンの被害に苦しむ荒廃したカリブ海地域から気候危機対策強化を訴える。60年以上にわたり最も残酷な形で強化されてきた経済・金融封鎖による人的・物的影響に抵抗してきた国を代表して、国際法の原則と規範に違反する途上国への一方的な強制措置の即時停止を要求する、と。
ディアス・カネル大統領は、キューバの決意と使命を次のように語った。「キューバは、CELACを強化し、国際舞台におけるラ米カリブ諸国の位置付けを再構築するための統合に向けて、常に最前線に立っていく。脅威が重なり合うこの時代の重大さは、団結した力を倍増させることを必要としている。団結だけが私たちを救うことができる。ボリバルの時代から今日に至るまで、『我らのアメリカ』の最も勇敢な息子たちと娘たちが夢見て闘ってきた統合を、これ以上遅らせるべきではない」と。
メキシコのシェインバウム大統領は、ラ米カリブの結束、制裁の拒否、移民問題の構造的原因の解決を主張し、地域経済サミットの開催を提案した。ブラジルのルーラ大統領は、歴史的に重大な時期であることを強調して、民主主義、気候変動対策、経済統合が優先課題であるとした。ホンジュラスのシオマラ・カストロ大統領は、CELACが解放のためのツールとなることを主張した。コロンビアのペトロ大統領は、トランプ関税への対抗で結束して行動することを求めた。
サミットは、米植民地主義=「モンロー・ドクトリン」復活を許さない、真の解放と民族の誇りを取り戻すという強い反発と怒りが漲るものとなった。米帝国主義が侮蔑する「裏庭」から、反米・反帝・反植民地主義の新しい歴史的な力強いうねりが起ころうとしている。