今年1月3日の米帝による軍事攻撃とマドゥーロ・フローレス大統領夫妻の拉致・連行から3ヶ月が経った。デルシー・ロドリゲス副大統領が大統領代行に就任したが、あくまでも大統領はマドゥーロ氏だという姿勢を崩していない。トランプの虫の居所一つでベネズエラは血の海になりかねない。ロドリゲス代行は計り知れない重圧の下で米帝と対峙している。左翼の一部は同代行の「譲歩」を非難し、フィゲラ派ベネズエラ共産党は依然打倒を呼びかけている。無責任極まりない。以下、この3ヶ月間の状況を報告する。
ロドリゲス支持者はこの「譲歩」を「カリブ海のブレスト=リトフスク」と評する。レーニンはロシア革命直後、大戦から離脱するためにロシアの領土・工業基盤をドイツに明け渡す屈辱的な「ブレスト=リトフスク条約」に調印し、これを批判する「左翼共産主義者」はこれを革命への裏切りだと非難した。だがこの条約は、ソビエト国家を打ち固め、赤軍を建設し、最終的には反革命軍と外国干渉軍を打ち破るために必要な「息継ぎ」だった。割譲された領土は、すべて数年後には奪還した。これになぞらえているのだ。
イランと違い、ベネズエラはとにかく狂暴な米帝から地理的に近すぎる。マドゥーロ政権は、米軍の作戦が地上侵攻で国家権力を一挙に奪取するものと想定し、ボリバル軍と民兵隊を含む800万人のゲリラ戦での全人民的防衛で侵略軍を打ち負かす計画を立てていた。だが、トランプは、マドゥーロ大統領夫妻の拉致・連行という作戦をとった。その理由は複数ある。最大の理由は、地上戦でゲリラ戦に追い込まれると米軍はベネズエラに釘付けになり、消耗戦を強いられることだ。さらにトランプには、キューバを石油封鎖で締め上げて崩壊させる計画があり、何よりも現在進行中のイラン侵略が控えていた。米帝は、権力のトップだけを奪い、後は軍事的・政治的・経済的脅迫で、権力を一つ一つ奪い取っていく漸次的権力奪取という方法をとった。
ロドリゲス代行は、軍事的劣勢の下で凶暴な米帝国主義に立ち向かっている。われわれは、未曾有の苦境の下で闘うベネズエラ政府・人民との連帯を継続する。
(小津)
ロドリゲス代行の下に人民が団結 独立と主権・権力・党を守り抜く

ロドリゲス大統領代行の最大の責務は、マドゥーロ大統領を米帝から奪還し無事復帰させるまで、チャベスとマドゥーロが築いてきたボリバル=コムーナ権力、ボリバル革命と社会主義統一党(PSUV)を守り抜くことである。この三つを守り抜くことが独立・主権防衛の根幹なのである。これさえ守れば、一時的に後退し譲歩しても局面が変われば前進に繋がる。その意味で、ロドリゲス代行は、米帝の脅迫と対峙しながら、その任務を見事に果たしている。
トランプは、ボリバル権力全体を一挙に破壊して奪うことができなかった。ベネズエラの右翼野党には国を率いるだけの力がなく、下手にマチャドや野党に権力を握らせれば、その途端に再度マドゥーロと人民が権力を奪還し、米帝が追放されることが分かっているのだ。
ロドリゲス代行が米国に制裁解除を要求
両国の外交関係および領事関係が3月5日から回復され、米国政府は3月11日にロドリゲス大統領代行が率いるベネズエラ政府を正式に承認した。2019年以来7年ぶりのことだ。続いて米政府は4月1日、ロドリゲス代行を制裁対象から削除した。同代行は、これを二国間関係正常化への第一歩だと歓迎し、さらに制裁の全面的解除、米国管理下の資産凍結解除を求めた。これより前の3月24日にも、国内外の投資家代表団と会談した際に、米国との二国間関係の最優先課題は米国が12年間にわたり課してきた制裁の解除だと述べた。これには、中国、ロシア、イラン、朝鮮、キューバなど、米国が敵とみなす国々への制裁の解除も含むとした。
「炭化水素法」改正 屈辱的譲歩だが石油収入の確保を優先
ロドリゲス代行が行なった最も重要な政治判断は、石油輸出を公式に再開させ、石油収入を実際に国庫に納めることである。もちろんベネズエラにとって石油政策決定は最重要の主権に関わる。だがトランプの侵略の最大の目的は石油資源の略奪だ。全面拒否は再攻撃につながる。代行は、米軍の再攻撃か譲歩かの究極の決断を迫られた。熟慮の上で、一部からの屈服・裏切りの批判を甘受して米国に石油輸出に関する大幅な管理権を与える決断をした。そして1月29日に「炭化水素法」を改正した。
その代わりに石油販売による収入にアクセスできて、投資に回せるようになった。ベネズエラは米国と長期的な二国間エネルギー協定を締結し、ベネズエラ資産の凍結解除への道を開くことになる。加えて米政府は、ベネズエラの石油産業への原材料やソフトウェアの輸出を許可するライセンスを発行した。特定の企業によるベネズエラでの原油採掘活動拡大を許可する免除措置も講じた。問題は、これらのライセンスがベネズエラ政府へのロイヤルティ、税金、配当金の支払いをすべて米国管理口座に入金することを義務付けていることだ。また、引き続きPDVSAは金融制裁下にあり、中国、ロシア、イラン、キューバ、北朝鮮の企業との取引は禁止されている。それでもロドリゲス代行は、石油収入の確保を優先し、譲歩した。しかし闘いは継続中だ。
もう一つの権力であるコムーナも健在 大規模な「全国人民協議」を開催
コムーナは生きて活動している。米帝の侵略後も一時も止まっていない。これがロドリゲス代行率いるボリバル権力の、もう一つの権力基盤をなす。コムーナは生産手段と分配手段に対する共同所有を主張し、外側へと押し広げ始めている。多くのコムーナが自らの小規模工場、農業協同組合、パン屋、屠殺場、輸送集団、流通ネットワークを運営している。コムーナは単に国家の資金を受け取り使うだけでなく、実際の富の創造と配分の管理に向かっている。これが、従来の社会民主主義的な福祉国家とは質的に異なるボリバル社会主義なのである。
3月8日に「全国人民協議」と投票が実施された。5336の地域でコムーナ・サーキットが、どの地域投資プロジェクトに公的資金を投入するかを直接決定するものである。そこでは3万6000件以上のプロジェクトが議論された。マドゥーロ政権は、草の根組織を支援するための主要メカニズムとして、2024年からこの「全国人民協議」制度を導入した。それによって、地域社会が独自の具体的な行動計画に基づいて特定されたプロジェクトを実行できるようになり、政府は地方の知事や市長を介さずに直接資金を供給できるようになった。
トランプの大量強制送還に対抗し 尊厳ある「祖国帰還プログラム」を実施
ロドリゲス代行が取り組むもう一つの優先課題が、ベネズエラ市民の「尊厳ある祖国帰還プログラム」だ。帰還者数は2025年に2万3000人、今年に入って3月末時点で4800人に達した。このプログラムは、2018年以降に米帝主導で煽られた「強制移住」政策に対する主権防衛であり、ボリバル革命の社会政策の柱である。しかも政府は帰還者に包括的な社会支援対策を実施しているのだ。この措置もまた、ボリバル権力が存在するからこそ可能なのだ。
この取り組みは、過去8年間、トランプ政権下で激化し蔓延した外国人嫌悪への対応や、米移民・関税執行局(ICE)による逮捕・拘束や命の危険から逃れようとする100万人以上の市民の救済措置となってきた。米政府は、これまでベネズエラを「破綻国家」と糾弾し、「強制移住」を奨励したが、今や手のひらを返して「犯罪者」として投獄・強制送還しているのだ。
ベネズエラ人民は代行の下に団結 大統領夫妻釈放デモ・制裁解除デモで強い意思表明
3月26日、第2回審理でマドゥーロ大統領は、「私は無実だ。私は良識ある人間であり、わが国の憲法に基づく大統領である」と宣言し、自身の逮捕と裁判には正当な法的根拠が一切ないことを改めて強調した。
同日、マドゥーロ大統領夫妻釈放を求める集会・デモが、カラカスのボリバル広場とニューヨーク南部地区連邦地方裁判所近くで同時に行われた。さらにエジプト、ブラジル、コロンビア、ベラルーシ、アメリカ合衆国を含む世界中の社会運動や組織が、国際的なキャンペーン「#BringThemBack」を開始した。釈放要求デモは3月3日にも12日にも行われていた。こうした意思表示を通じてベネズエラ人民は独立と主権、ボリバル革命への揺るぎない決意を改めて表明した。
3月23日には、大勢の人民が米国に対して制裁解除を要求してカラカスの主要通りをデモ行進した。PSUVのカベージョ書記長は、制裁解除を勝ち取り、病院の医療、電力システム、国の賃金の改善を実現しようと訴えた。併せてマドゥーロ大統領夫妻の釈放を要求した。
イランの徹底抗戦は米=イスラエルを軍事的敗北に追い込んだ。これは世界中の社会主義と反米・反帝民族解放闘争を勇気づけるものだ。仮にトランプが腹いせでベネズエラを再攻撃しても、800万の軍民抵抗軍が侵略者を叩き出すだろう。
