トランプはベネズエラから手を引け
○国際法違反の空域封鎖を撤回せよ
○ボート乗組員の超法規処刑は戦争犯罪だ
○米艦隊はラ米カリブから撤収せよ

(1) 米帝国主義のベネズエラ攻撃が切迫している。トランプは12月2日、ホワイトハウスの閣議で「地上攻撃が間近である、地上の方が攻撃しやすい。目標はわかっている」とベネズエラを軍事脅迫した。攻撃目標はベネズエラだけでなくコロンビアなども含まれるとも述べた。11月27日にも地上攻撃に言及している。トランプは11月24日に、実在しない「太陽のカルテル」をベネズエラのテロ組織と認定し、マドゥーロ大統領をその頭目と決めつけた。麻薬密輸阻止のためという口実など誰も信じていない。迎合する西側メディアが垂れ流すだけだ。米帝の軍事侵略反対、「トランプはベネズエラから手を引け」の声を広げよう。

(2) 空域封鎖と自国民退去勧告は、米帝が軍事侵略する直前の常套手段だ。イラク戦争では飛行禁止ゾーンの設定は、ゾーン内のイラク航空機を撃墜し、その後の本格航空攻撃の先駆けだった。今回の「空域閉鎖」もベネズエラ空爆へと続く可能性が高い。大統領府や軍事基地だけでなく石油精製施設や産業インフラへの攻撃が予想される。その場合の被害は極めて大きなものになる。直ちに空域封鎖反対、攻撃反対の声を挙げよう。
 トランプは11月29日、ベネズエラの空域を事実上全面閉鎖するよう指示を出した。SNSで「全ての航空会社と操縦士、麻薬密売人と人身売買者に伝える」とし、「ベネズエラの上空と周辺の空域全体が閉鎖された」と恫喝した。12月3日には、ベネズエラにいる米国人に即刻退避するよう勧告した。日本の外務省もこれに倣って4日に渡航中止勧告を行った。この措置で米軍は作戦空域から民間機を排除して、米軍機が上空の制空権をとる形で偵察し、地上への攻撃などを行うことができる。退去勧告も爆撃する地上に米国人がいない状態を作るものだ。
 しかし、米国はベネズエラ上空を飛行禁止にする何の法的権限もない。公然たる国際法違反だ。米国はこの通知(NOTAM)でベネズエラへの国際便を停止させ、人々を移動できなくした。しかし、米国が無理やり飛行禁止を押し付けることは、露骨な介入でありベネズエラの主権を侵害する侵略行為だ。

(3) ラ米カリブの緊張を高める米艦隊の撤収を要求しよう。米帝はカリブ海に米軍戦力を集中している。世界最大の原子力空母フォードと75機の艦載機、それを取り巻く2隻の巡洋艦と6隻のイージス艦、強襲揚陸艦イオージマとハリアー、あと2隻の強襲揚陸艦と2200人の海兵隊員、原子力潜水艦。米本土からはB1やB52爆撃機、P8哨戒機がベネズエラ領空すれすれを飛び回り、長年空き家になっていたプエルトリコの米軍基地には10機のF35と給油機が配備されている。兵員総数1万5000人、配備されている米海軍の2割以上がカリブ海に集められているのだ。いまフォードとイオージマはプエルトリコ近くのバージン諸島沖で待機している。11月下旬にヘグセス戦争大臣はドミニカ共和国を訪問し、ベネズエラ攻撃の際の米軍給油機の配備への協力を取り付けた。ベネズエラの隣国トリニダード・トバゴにはケイン統合参謀本部議長が訪れ協力を取り付けた。
 一方、謀略活動にもゴーサインを出した。10月16日にトランプはCIAに対してベネズエラでの特殊作戦の実行を許可した。CIAはエージェントを送り込み、開戦に向けた作戦を展開している。マドゥーロ誘拐未遂、自作自演の米艦船攻撃の偽旗作戦、ベネズエラ国内の電力インフラへの攻撃などがすでに行われている。

(1) トランプはなぜ攻撃を発動できないのか。それは、米国内で反対の声が高まっているからだ。米議会で民主党議員を中心に前記の「空域封鎖」の違法性を追及している。メディアのトランプ迎合報道を誰も信じていない。トランプがマドゥーロ大統領を麻薬密輸のボスと決めつけても、世論はベネズエラ攻撃に反対だ。世論調査では米国民の70%がベネズエラ攻撃に反対し、75%が軍事行動に議会の承認を要求している。大統領支持率は、最低の36%に落ち込み、共和党支持者の半数以上も攻撃に反対し、トランプの基盤も分裂している。MAGA支持者では攻撃支持が66%を占めるが、MAGA非支持者の共和党員では半数以上が反対だ。

(2) トランプと国防長官が指揮してきた小型ボート攻撃と乗組員に対する超法規処刑に対して、戦争犯罪だという批判が巻き起こっている。コロンビアのペトロ大統領は自国の漁民が殺害されたと糾弾し、主権侵害と領空侵犯についても指弾している。これで手当たり次第に米軍が処刑をやりまくっていることが暴露された。すでに86人が殺されたのだ。
 9月2日の最初のボート爆撃で、11人の乗組員のうち2人の乗組員が生き残ってボートにしがみついていたのを2回目の攻撃(ダブルタップ)を行って爆殺したのだ。この爆撃を誰が命じたのか政治問題になっている。命じたのはヘグセス戦争大臣かブラッドリー提督か。ヘグセスは爆撃ビデオを見ていて、しがみ付く2人を殺すよう命じたのかどうか。メディアの報道をきっかけに議会での争点になっている。何の証拠もなく、突然攻撃して爆殺するやり方も違法で「超法規的処刑」で非/難されるが、さらに無力化した人間の爆殺を命じたことは二重の明白な殺人、戦争犯罪だ。その責任は誰にあるかで紛糾しているのである。この責任追及と、戦争を始めるのに議会の承認の縛りをかける問題が絡んで、トランプのベネズエラ攻撃にブレーキをかけている可能性がある。

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(1) しかし、トランプが躊躇する最大の理由は、マドゥーロ政権が労働者・人民を団結させ、万全の防衛態勢を構築しているからだ。マチャドなど買弁ブルジョアジーや野党強硬派とCIAとが一体となった暴力的撹乱やクーデターの危険を押さえ込んでいる。すでに600万人が民兵に志願し、4万9000のコムーナが背後で支えている。カリブ海に配備されている海兵隊の強襲部隊は2200人に過ぎない。陸上作戦でベネズエラを制圧するにはあまりに少ない。一撃での政権打倒など不可能である。人民が団結する国、米帝と闘う決意を持った国の政権転覆などできない。どれだけ大きな被害を与えても、米国の思い通りにはできない。
 ベネズエラは全国に分散した防衛拠点を設定し、正規軍と民兵で陸上侵攻を受けた場合の体制作りに入った。ベネズエラは正面から闘うのではなく、ゲリラ戦争の体制を取ると報じられている。遅延、待ち伏せ、後方攪乱などで打撃を与える作戦だ。地上侵攻すれば米軍はベトナムと同じ運命となるだろう。泥沼に踏み込み、足を取られ、引き揚げざるを得なくなるだろう。

(2) コロンビアやキューバなどラ米カリブ諸国や中国・ロシアなどが米軍の軍事行動に反対し、ベネズエラとの連帯を表明している。ALBA(米州ボリバル同盟)は、米軍の軍事演習を地域全体の自決権を脅かすと非難した。CELAC(ラ米カリブ諸国共同体)も地域を平和地帯として維持する立場から米国の軍事行動に反対している。ベネズエラとその同盟諸国は、国際的な連帯を呼びかけ「シモン・ボリバル国際旅団」を組織した。
 米国内の反対世論や議会の反対と併せて、米国内の反戦運動が鍵を握っている。米国の反介入運動は、飛行禁止区域設定を戦争開始とみて非難の声を上げ始めた。ワーカーズ・ワールド党や米国平和評議会が飛行禁止区域設定に反対している。「ベネズエラから手を引け」の反戦運動が急速に拡大している。11月15~23日には全世界各地で反対行動が行われた。米国、カナダ、オーストラリア、英国、ドミニカ共和国、ドイツ、ギリシャ、メキシコ、ネパール、パキスタンなど。60カ所で100件以上にのぼる。ANSWER連合、社会主義解放党(PSL)、民主社会のための学生(SDS)、コード・ピンク、国際行動センター、カナダ全土平和正義ネットワークなど、さまざまな活動家や反戦団体が主催した。米国内では、その後も12月5~6日に運動が継続している。
 われわれも日本で反対活動を継続している。
 時代錯誤の植民地主義的な領土・石油資源略奪の武力介入、モンロードクトリンの復活は妄想に終わるだろう。世界中の反米・反帝反戦平和運動が連帯すれば阻止することはまだ可能だ。何としてもトランプのベネズエラ侵略を阻止しよう。

2025年12月8日
『コミュニスト・デモクラット』編集局

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