停戦合意:米=イスラエルはガザ植民地計画を撤回せよ
○イスラエルは合意を守れ! 直ちに攻撃をやめ、撤退せよ
○ハマス・抵抗勢力の戦争終結と民族解放要求支持

(1)トランプのガザ植民地計画に反対する

 米=イスラエル帝国主義のガザ大虐殺戦争は転換点を迎えた。2年間で国際情勢は大きく様変わりした。今、米=イスラエルはかつてない国際的孤立に陥っている。それは先の国連総会の場でパレスチナ国家承認の雪崩現象となって集中的に現れた。ネタニヤフ首相の演説にほとんどの代表が一斉退席したのだ。パレスチナ国家の承認は国連加盟国193カ国の8割、160カ国近くに達した。9月16日には、国連人権理事会の独立調査委員会が、イスラエルによるガザでのジェノサイドを認定する報告書を発表した。

 トランプ米大統領が打ち出した「20項目提案」は、この窮地を切り返し、脱却するためのものだった。提案は「入り口」と「出口の本質項目」からなる。前者は戦争終結と人質全員交換、イスラエル軍のガザ撤退を含む。これが直近の焦点になっている。

 メディアは、まるでトランプが救世主のように讃美している。だが、これはデタラメだ。トランプの強欲で薄汚い本質は、その露骨なガザ植民地計画に表れている。それは、ハマスの武装解除と戦後統治からの排除、外国政府によるガザの統治と軍事・警察支配、暫定統治機構のトップをトランプとブレアが占め、復興利権を牛耳ることである。つまり、イスラエルがガザを軍事包囲し、ガザの中に新しい植民地を作る構想だ。反吐の出る計画だ。ところがネタニヤフを非難し、パレスチナ国家を承認していた欧州各国、アラブ王政諸国は手のひらを返したようにハマス武装解除・排除のトランプ案をこぞって支持した。一時的にトランプ案が局面を支配し、トランプは居丈高に「ハマスが受け入れなければ、イスラエルの攻撃を支持する」と脅しつけた。しかし、その状況自体が脆弱だ。

(2)「ハマス提案」とハマス・抵抗勢力の外交的勝利

 今回の合意の直接の引き金になったのは「ハマス提案」である。トランプ提案の前記の「入り口」のごく一部を逆手にとって、「双方の捕虜解放」と「パレスチナ人のテクノクラートによる統治案」の2項目を逆提案したのだ。政治・外交闘争が始まった。これにトランプが飛びつき、イスラエルに協議開始と停戦の実施を迫り、今回の10月9日の「第一段階」の合意につながった。トランプとイスラエルとの間に微妙な亀裂が走った。
トランプ提案で流れが変わるかに思われたが、米=イスラエル帝国主義孤立の国際的力関係は底流で作用しているのである。ハマス・抵抗勢力の側は、仮に一時的休戦であっても、飢餓に苦しむガザ住民への食糧搬入、パレスチナ人捕虜の解放で息継ぎができる。今回の「第一段階合意」はハマス・抵抗勢力の外交的勝利だ。

 ハマスはこの合意について、①ガザでの戦争終結、②イスラエル軍のガザ地区からの撤退、③援助受け入れ、④捕虜の交換が含まれていると発表した。その上でハマスはカタール、エジプト、トルコの仲介国に感謝を表明し、戦争の完全終結とイスラエル軍のガザからの完全撤退をめざすトランプ大統領の努力を評価した。

(1)第二段階をめぐる外交戦。合意を守れ。パレスチナ人だけの統治を

 目下、戦争終結を巡る協議が進行中である。①戦争続行と従来通りの軍事占領=植民地支配を追求するイスラエル、②トランプ自身が復興利権で利益を得る新しい植民地主義体制を求める米国、③イスラエルの軍事支配と闘い、植民地支配の撤廃、パレスチナ人民の団結と民族自決を求める民族解放闘争の3つが争っている。

 「第一段階合意」以降の連帯運動の当面の課題は2つである。第1は、何よりも「合意」そのものを守らせることだ。協議中もイスラエル軍はガザへの攻撃をやめていない。捕虜交換後に戦争再開の危険がある。本当に攻撃をやめさせ撤退させよう。イスラエルは合意を守れ、戦争再開を許すなをスローガンに闘おう。
 第2は、第二段階で、トランプや帝国主義によるガザ統治計画を断念させることである。米=イスラエルは、あくまでも「第二段階」で、前記のトランプ提案の本質=植民地計画を実行するつもりだ。この点では両国の利害は完全に一致している。

 ハマス・抵抗勢力は、自らの逆提案政治的イニシアチブを握ったが、米と西側帝国主義、イスラエルと対決し、次の「第二段階」の協議で戦争を完全に終結させ、恒久停戦を勝ち取り、さらに戦後統治の中で米=イスラエルの植民地化を阻止し、民族解放と民族自決権の確立、パレスチナ国家樹立へと進む長い闘いが待ち受けている。われわれのパレスチナ連帯闘争は、さらなる拡大と持続性が問われている。

(2)ハマス・抵抗勢力の民族解放闘争を断固支持する

 10月7日でハマスと抵抗勢力が「アル・アクサの洪水作戦」を開始してから2年になる。西側政府・メディアは未だにこれをテロ攻撃と糾弾し、6万7000人以上を虐殺し、23万人以上の死傷者・行方不明者を出したジェノサイドを「自衛権の行使」と擁護・支持している。

 しかし、ハマスと抵抗勢力は「テロリスト」ではない。2005年から18年間ガザを「天井のない監獄」に変え、人々を閉じ込め、貿易を制限し、職業の自由を奪い、生活に絶望させた上、数年おきに戦車で攻め込んで数千人を虐殺するという蛮行を繰返してきたのは米=イスラエルの側だ。遡れば、1948年のナクバから続くガザ・西岸の植民地支配と占領・軍事支配がガザの人々を苦しめてきた。

 「アル・アクサの洪水作戦」は75年におよぶ虐殺と植民地支配に対する正当な民族解放闘争の全く新しい段階である。この生死を賭した不屈の闘争こそが、米=イスラエル帝国主義の残忍なジェノサイドを黙認し加担するのか、それともハマス・抵抗勢力の民族解放闘争を支持するのかを全世界に問いかけ、今や世界的な連帯運動のうねりを作りだしているのである。われわれはパレスチナ人民の反米=反イスラエルの民族解放闘争を断固支持し、最後まで闘う決意である。

(1)パレスチナ連帯運動の世界的高揚の波

 パレスチナ国際連帯運動がかつてなく高揚し広がっている。ガザ植民地化計画を阻止する可能性は十分ある。
 イスラエル軍は「グローバル・スムード・フロティラ」の約40隻、約500人の船団、コンシャンス号の約100人を襲撃し、拿捕した。非武装で平和目的の民間船を公海上で拿捕するなど海賊行為そのものだ。世界中から非難が集中し、パリ、バルセロナ、ベルリン、ブリュッセル、イスタンブールなど欧州各地では抗議行動が巻き起こった。イタリアでは、10月3日に全国規模のゼネストが実施され、ローマで30万人、ミラノで10万人など、全国で200万人以上がデモに参加した。アルゼンチン・ブエノスアイレスやメキシコシティ、パキスタン・カラチでも集会が開かれた。コロンビアはイスラエル外交官を追放し、貿易協定を終了させた。

 英国では9月6日、「ガザ・グローバル行動デー」としてロンドンで30万人がデモ行進した。イタリアでは9月22日、ローマで5万人など大規模なデモが各地で行われ、50万人が参加するゼネストも打たれた。ジェノバでは、港湾労働者が港の入り口を封鎖し、イスラエルへの武器輸送阻止を訴えた。ドイツでは9月27日ガザ連帯行動としては過去最大の規模の6万人がベルリンでデモを行なった。

 イスラエル・ボイコットが広がっている。スペインでは自転車レースがイスラエル参加に抗議する10万人行動で中止に追い込まれた。欧州サッカー連盟(UEFA)は、イスラエルの大会参加の停止を検討している。文化行事では、国別対抗歌謡祭「ユーロビジョン」を巡って、イスラエル参加に反対するアイルランド、オランダ、スロベニア、アイスランド、スペインなどの放送局が、ボイコットを表明している。

 運動の圧力は、一部の企業をも動かし始めた。米マイクロソフト社は9月25日、イスラエル軍へのクラウドサービスの提供を一部停止すると発表した。パレスチナ市民の数百万件の電話監視データを保存して攻撃対象の特定などに使っていたことで、同社の従業員らも抗議していた。

(2)国際連帯運動の力を背景に恒久停戦を勝ち取ろう

 国際的な連帯運動の力を結集して、進行中の戦争終結協議を包囲しよう。協議中も合意違反を繰り返すイスラエルに攻撃と殺戮の即時中止を迫ろう。米=イスラエル帝国主義に不屈の闘いを挑んでいるハマス・抵抗勢力と連帯し、パレスチナ人民の民族解放闘争を支持し、トランプのガザ植民地計画を打ち砕こう。
 日本政府は米国の指示に従いパレスチナ国家を承認せず、戦争と虐殺などなかったかのようにイスラエルから殺人ドローンを新たに輸入しようとしている。われわれは日本における連帯運動の遅れを自覚し、運動の強化拡大のために闘おう。

 新政権に対し、以下を要求する。①イスラエルに、ガザ即時停戦、軍の全面撤退、恒久停戦を求めること、②イスラエルに人道支援物資のガザ搬入制限撤廃を求めること、③駐イスラエル大使召還など制裁を課すこと、④年金基金(GPIF)による投資引き上げ、軍用ドローン輸入中止など、イスラエルとの経済協力関係の停止、⑤無条件でパレスチナ国家を承認すること。

2025年10月9日
『コミュニスト・デモクラット』編集局

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