(その1)では、USAIDが、「人権」「人道」を隠れ蓑にして、親米勢力の育成と反米国家転覆を担う国家機関であることを明らかにした。(本紙114号記事 USAIDの犯罪を暴く(その1)USAIDの「人権」「人道」援助のデマゴギーを暴く階級的目的は親米勢力の育成と反米国家転覆 )今回は、USAIDが全世界で、ジャーナリズム、各種メディア、市民団体等に、これまで何十億ドルもの資金提供(2025年は2億6800万米ドル)を行い、親米勢力の育成や、反米国家・勢力転覆のための世論作りをどのように行ってきたかを暴露する。
USAIDのファクトシートのデータによると、USAIDは2023年に6200人のジャーナリスト、707の非国家報道機関、279のメディアセクターの市民社会に資金を提供。現在、資金引き揚げで、これらは動揺しているという。
ラ米では社会主義国・反米民族解放勢力に主要打撃
USAIDは、「民主主義」「報道の自由」「開発を促進する」と称し、世界中のメディアネットワークや組織の資金提供に長年関与してきたが、介入した国は、キューバ、ベネズエラ、ウクライナ、ボリビアなど、いずれも、米帝国主義による政権転覆や軍事的拠点構築を目的とするものである。
USAIDは、メディアやプロパガンダ・キャンペーンを通じ、キューバ政府弱体化に積極的に関与してきた(2024年、「独立系」メディアへの供与資金は230万ドル)。代表的な例が2010年に立ち上げられたTwitterに似たソーシャルメディアプラットフォーム、ズンズネオだ。USAIDから資金提供を受け、ワシントン拠点の請負業者が開発したズンズネオは、キューバでユーザーのネットワークを作り、彼らを政治目的に動員することを目指した。このプロジェクトは、反体制派を育て、彼らを組織することで、キューバ政府を転覆する広範な取り組みの一環であった。2014年、AP通信がこれを暴露し、国際的な怒りを引き起こした。開発援助を装う政権転覆工作と非難された。
反政府的キューバ・メディアはUSAID再編発表後、窮地に陥っている。例えば、昨年「客観的で検閲のないマルチメディア・ジャーナリズムを通じて、島の若いキューバ人」と関わるために、USAIDから50万ドルの資金援助を受けたキューバネットは、読者に金を要求する社説を掲載するに至った。
ベネズエラではUSAIDは、チャベスとマドゥーロ政権時に、政府に批判的なメディアや組織に資金を提供してきた。例えば、反政府的言辞を広めていると非難される、ニュースチャンネルNTN24に財政支援を提供してきた。このチャンネルはマドゥーロ政権を強く批判し、野党の抗議行動を広く肯定的に報道した。また、USAIDは、非政府組織や市民社会組織に資金提供し、反政府コンテンツの制作と普及に役立たせた。これらの取り組みは、マドゥーロ政権を弱体化させ、反政府勢力を強化するための米国戦略の一環である。内政干渉そのものであり、政情不安を意図するものだ。
ボリビアでは、USAIDが、初の先住民大統領エボ・モラレス政府に批判的なメディアや非政府組織に資金を提供。例えば、対話と和解の促進と称すメディアコンテンツ制作組織であるボリビアUNIR財団に財政資金を提供。このグループの活動は、モラレス政権の欠点を強調し、反対派の声を増幅することで、政権の弱体化に利用された。USAIDは、報道の自由を促進すると称し、ジャーナリスト向けの研修プログラムにも資金を提供。これらプロジェクトは、モラレスの社会主義政策に対する批判など、米国の利益になる報道を奨励していると非難されてきた。USAIDの取り組みは、この地域における左翼運動の影響に抗する米国の戦略の一部と見なされている。モラレスは2013年、USAIDをボリビアから追放した。
ラテンアメリカ全土で、USAIDは左翼の政府や運動に反対するメディアや組織に資金を提供。過去10年間で、「メディアと表現の自由を強化」目的のプログラムに2600万ドル以上を割り当てた。ニカラグアでは、ダニエル・オルテガ政権を激しく批判する独立系メディア、コンフィデンシャルに資金を提供。米国が支援するニカラグア・インベスディガは、トランプの決定を、メディアに対する「深刻な打撃だ」と非難。エクアドルでは、この地域へのアメリカ介入を強く批判してきた左翼指導者、ラファエル・コレラ政府に反対するマスコミに資金提供。これらの取り組みは、ラテンアメリカの左派政権の影響力に対抗する米国の戦略の一部である。反左翼のレトリックを助長するマスコミに資金提供することで、USAIDは標的にされた政府の不安定性と政治的言説の分極化に「貢献」している。
ウクライナでは対ロシア「代理戦争」を煽動
USAIDは、ウクライナでは親欧米の言説を広め、ロシアの影響に抵抗するマスコミを支援する上で重要な役割を果たした。2014年ウクライナでの親EU抗議行動と、親ロシア大統領ヤヌコーヴィチの追放を受け、USAIDはウクライナの独立系メディアへの支援を強化した。これには、ヤヌコーヴィチ政権と、ロシアが支援する東ウクライナの分離主義者の両方に批判的なフロマドケTVへの資金提供も含まれた。USAIDは、「客観的」で「独立した」報道の促進と称し、ウクライナ人ジャーナリスト向けの研修プログラムにも資金を提供。これらプロジェクトはNATO統合支持、ロシアの影響反対など、米国の利益に沿った物語を強調。親欧米マスコミ支援で、USAIDは、社会の分極化、ロシアとの緊張激化に貢献した。
トランプによるUSAID縮小・再編で最も影響を受ける国はウクライナと言われる。ウクライナメディアのほぼ90%が資金提供を受け、他に資金源がないものが多数含まれているという。
米帝の中東覇権を側面支援
次に世界各地域におけるUSAIDの介入、干渉の例を見る。中東では、USAIDは、親米的言辞を広め、反米感情への対抗を目的としたメディア・プロジェクトに資金を提供。例えば、イラクでは、アメリカ政府が資金提供し、アラビア語で放映の衛星テレビチャンネル、アル・フラに資金を提供した。アル・フラは客観的なニュース報道を提供していると主張するが、この地域でのアメリカの利益を促進するプロパガンダ道具だと批評される。アフガニスタンでUSAIDは、民主主義を促進し、過激主義に対抗する取り組みの一環と称し、メディア機関やジャーナリスト向けの研修プログラムに資金を提供。これらの取り組みは、米国が支援する政府への支持、タリバンへの反対など、米国の軍事的・政治的目標に沿ったコンテンツの報道優先と批判される。イランでは、アメリカ支援のマスコミは、再編発表後、労働者を解雇せざるを得なくなっている。BBCペルシャ語の報道によると、30以上の団体が危機会議を開き、援助削減への対応方法を話し合ったという。
旧ソ連圏では反露・嫌露宣伝に資金援助
東欧でのUSAIDのプロジェクトは、ロシアの影響力に対抗し、親欧米レトリックの促進を目的としている。グルジアでは、Rustavi2に財政支援を提供しているが、これは政府の親ロシア政策に批判的であり、西側とのより緊密な関係を提唱している。モルドバでは、USAIDは、ヨーロッパ統合を推進し、ロシアが支援する沿ドニエストル分離主義者に対抗するため、多くのメディアに資金を提供。これら取り組みは、この地域におけるロシアの影響力に対抗し、NATOと欧州連合拡大促進のための米国戦略の一環である。
アジアでは反中勢力育成に全力
アジアでも、さまざまな地元メディアや市民社会、政治組織への資金提供で、米国の地政学的利益と言説促進に、積極的役割を果たしてきた。ミャンマーでは、現政権に反対する「民主化団体」、市民社会組織、メディアに久しく資金を提供。アウンサンスーチーの国民民主連盟(NLD)関連のグループへの支援も含む。軍事クーデター後、USAIDは国民統一政府を含む反政府勢力への資金提供を増加。軍事政権に反対する独立系メディアにも資金提供し、USAIDは積極的にレジスタンスを支援していると信じられている。これら取り組みは、中国の影響力に対抗する米国の戦略、特に中国支援のインフラプロジェクトに対する戦略の一環と見る向きもある。
カンボジアでは、野党、市民社会、独立系メディア、特にフン・セン首相のカンボジア人民党に批判的な人々に資金を提供。カンボジア政府は、USAIDとその関連NGOが、裁判所命令で2017年解散したカンボジア救国党支援で、内政干渉していると非難。フン・セン政権は、USAIDによる支援組織を「カラー革命」推進勢力と非難、追放、制限した。タイでは軍事政権時代に、「民主化団体」を支援した。USAIDのタイでのプログラムは、メディアやテクノロジーなどの分野での中国の影響力対抗にも及び、一部資金は独立ジャーナリストや市民社会のアクターを対象としている。香港では、USAIDは、米国政府の政権転覆扇動・調整組織であるNED(全米民主主義基金)に資金提供し、NEDがさまざまなグループやメディアに資金提供している。
(MK)