中国本土への攻撃を可能にする長射程ミサイル配備反対!
急速に進む対中戦争準備を全国の運動と連帯して阻止しよう

 安保3文書(2022年)で掲げられた戦略と計画に沿って、日本の対中戦争準備が国を上げて広範な領域で矢継ぎ早に進められている。天皇制軍国主義敗戦80年を迎える今、「中国の脅威」「台湾有事は日本有事」を煽りながら、再び、今度は米軍とともに中国との一戦を交えるための国家総動員態勢を構築しようとしている。とりわけ2025年度中とされる中国本土を直接攻撃可能な長射程ミサイルの配備は、自衛隊の創設以来初めてのことだ。それは、従来の軍拡のいいわけであった「専守防衛」さえ逸脱し、憲法9条が禁止する「戦力不保持」に真っ向から反し、「武力による威嚇又は武力行使」そのものだ。日本の対中戦争の準備は、「戦争前夜」というべき新たな段階に入ろうとしている。

長射程ミサイルの九州先行配備

 3月17日、長射程ミサイル(中国沿岸部を攻撃できる射程1000㎞の12式地対艦ミサイル能力向上型)の2025年度の先行配備先が九州と報道された。大分の陸自由布院駐屯地、熊本の健軍駐屯地がその候補地だ。湯布院駐屯地には、昨年、沖縄、九州のミサイル部隊を統括する第2特科団が設置され、3月30日には第8ミサイル連隊が新設された。健軍駐屯地には、九州と沖縄を統括する陸上自衛隊西部方面総監部と第5ミサイル連隊がある。中谷防衛大臣は、翌日の定例記者会見で「ミサイル部隊は移動式で、配備先はまだ決まっていない」と報道を否定した。とんでもないごまかしだ。移動式であっても出動拠点はあるはずだ。九州配備が狙われているのは間違いない。
 2月22日に結成された「戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク」は、長射程ミサイルの九州先行配備の報道直後、撤回と説明会の開催を要求する声明を発表した。大分や熊本、福岡、佐賀、沖縄等で抗議行動や申し入れが行われた。
 同じく2025年度中に配備される米国から購入のトマホーク(射程約1600㎞)は、海上自衛隊の佐世保基地に所属するイージス艦4隻から配備される見込みだ。順次8隻すべてのイージス艦(横須賀、舞鶴)に配備を進める計画だ。加えてF35戦闘機やF15戦闘機への長距離巡航ミサイル(JASSM、JSM)の配備を進める。さらに防衛省は次の世代の長距離攻撃兵器開発を加速させている。4月1日、低空を亜音速で飛翔し、情報収集衛星や無人機のサポートを受けて、目標まで到達する「新地対艦・地対地精密誘導弾開発」の契約(323億円)を三菱重工と結んだ。さらに「潜水艦発射型誘導弾」や「島嶼防衛用高速滑空弾」「極超音速誘導弾」など、より長射程(2000~3000㎞)でより迎撃困難な複数の新ミサイルの開発にも着手している。九州への先行配備の後には沖縄のみならず北海道を含む日本列島に中国本土を狙う大量のミサイル配備が強行されることは必至だ。そのために必要な大量の弾薬庫を全国に新設する計画だ。その一環として、大型弾薬庫建設が大分の敷戸ではすでに着工し、京都の祝園では、説明会を開催しないまま、入札・着工準備が行われている。

自衛隊を一元指揮する統合司令部の発足

 3月24日、自衛隊「統合作戦司令部」(JJOC)が、東京市ヶ谷の防衛省庁舎内に240人規模で発足した。「統合作戦司令部」は、統合幕僚長の任務から直接の部隊運用を切り離して、陸海空自衛隊全部隊を一元的に指揮し軍事作戦を担う常設部隊となる。戦前戦中の「軍令」(統帥)組織である陸軍参謀本部、海軍軍令部に相当するものだ。自衛隊の制服組の権限を強め、国会の関与やシビリアンコントロール(文民による軍隊の統制)を形骸化、軍隊の暴走につながる。
 米軍は、在日米軍司令部を改変強化することで作戦指揮の権限を持つ「統合軍司令部」にすることを目指している。「統合作戦司令部」は、米軍「統合軍司令部」との「作戦調整」を担うとされている。しかし、圧倒的な 情報を持つ米軍の指揮下に自衛隊の全ての部隊が戦争の駒として組み込まれるのは必至だ。日米のそれぞれの「統合ミサイル防衛システム」(IAMD)は、リンクされており、日米共同軍事演習においてミサイル戦闘訓練が積み重ねられている。自衛隊が配備する長射程ミサイルは、集団的自衛権の下で、日本がたとえ攻撃されていなくても米軍の指令で中国に向けて発射されることにもなる。

米国の日本への軍拡要求 自衛隊が中国との戦争の前線に

 3月30日、ヘグセス米国防長官は、 中谷元・防衛相と初会談を行い、平和を求めているのであれば、戦争の準備をする必要がある」「米軍は自衛隊と肩を並べ、台湾海峡を含むインド太平洋での盤石で万全な抑止力を維持する」とし、「西太平洋で有事に直面した場合、日本は前線に立つことになる」と語った。これは、台湾海峡だけでなく、日本海から南シナ海(南中国海)までの対中包囲の全戦線で自衛隊が中国との戦争の前線に立つことを公然と要求するものだ。日米指揮権の統合に向けた在日米軍の統合軍司令部への再編の第一段階の開始も表明された。さらにF35に搭載する中距離空対空ミサイル(AMRAAM)の共同生産の早期開始が確認された。中谷防衛相は対地攻撃にも転用可能な艦対空ミサイル「SM6」の共同生産を申し入れた。宇宙やサイバー分野での日米の軍事連携強化でも合意した。
 ただし、「統合軍司令部」に日本に拠点を置く「第7艦隊」や「第3海兵遠征軍」「第5空軍」といった米主要部隊に対する作戦指揮権を与えることは当面見送りとなった。トランプ政権の下で国防総省が在日米軍強化の計画の見直しを検討していることが背景にある。
 米国の対日軍事要求は目白押しだ。駐日大使に指名されたジョージ・グラスは「日本に地域の防衛や日米同盟、米軍に対する支援を引き続き強化させる」とし在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の増額を要求する意向を示した。国防総省ナンバー3の国防次官(政策担当)に指名されたエルブリッジ・コルビーは、現在進められている27年度までの日本の軍事予算を国内総生産GDP比2%まで増やす計画に対して「早急にGDP比3%」と引き上げを求めている。3%は年間18兆円規模に相当する。
 米国は、自国軍隊の前面投入を避けて中国との戦争での負担を、日本により多く負わせようとしている。日本は、米国の要求に応えて自衛隊の攻撃能力の強化を更に推し進めて、米軍に指揮権を委ねる日米指揮権の統合、米国製兵器の購入と共同生産、米国の核兵器による威嚇(「拡大抑止」や核共有)など米国の関与をつなぎとめようしている。

「台湾有事」ー沖縄を戦場に想定する自衛隊の強化と実現不可能な「避難計画」の公表

 自衛隊「統合作戦司令部」が設置された同じ日、陸海空自衛隊の共同部隊として沖縄南西諸島の離島まで部隊や装備品を運ぶ新しい部隊「自衛隊海上輸送群」が海上自衛隊の呉基地に発足した。神戸の阪神基地も拠点になる。在沖米海兵隊は、南西諸島の島々に拠点を設けて戦う作戦構想「遠征前方基地作戦(EABO)」の中核部隊である第12海兵沿岸連隊(12MLR)の編成を完了した。陸自の水陸機動団を従えて中国軍に対する海上封鎖作戦を最前線で担う部隊だ。「自衛隊海上輸送群」は島嶼に展開するEABOに奉仕するための部隊だ。
 3月27日、防衛省は、「台湾有事」を想定し、沖縄の宮古・八重山5市町村から住民全員を九州・山口県の8県32市町村に振り分ける住民避難計画を公表した。計画では「6日で12万人の輸送」「受け入れ側各県が借り上げた宿泊施設に1カ月滞在する」などとされる。「特定利用」で軍事利用される港湾・空港が軍事攻撃目標になり、軍事化のすすむ避難先の九州も攻撃の対象となる。そもそも「住民避難」は戦争準備の手段で、戦争の敷居を引き下げる。計画は、80年前沖縄戦を経験した沖縄の人々を愚弄するもので、沖縄では、実現不可能な計画の公表に強い批判の声が起こっている。「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」は事実上の住民疎開で「戦争準備の一環だ」と反対する声明を発表した。

敗戦80年、沖縄戦80年
対中戦争ではなく日中友好を、参院選挙で軍拡を争点に

 3月22日の日中韓外相会談では「戦略的互恵関係」の包括的な推進が確認された。中国の王毅外相は、今年が「抗日戦勝80周年」の節目に当たると指摘。「歴史を振り返り、反省し、有意義な経験と教訓をくみ取る重要な年だ。3カ国は歴史を直視し、未来に向かう精神を実現し、中日韓協力の健全かつ長期的で安定した発展を推進することが重要だ」と述べた。
 我々は、日本政府に対して日中共同声明や日中平和友好条約に立ち返り、対中戦争の準備をやめて、日中友好の外交政策に転換することを求める。
 国会では、膨張する軍事予算の問題は、まったくと言っていいほど議論となることなく2025年度の予算が成立した。自衛隊と警察による他国に対するサイバー先制攻撃を可能とする「能動的サイバー防御法」も、反対の声を無視して、立憲民主党の「法案修正」で与野党が合意し4月8日に衆院で可決した。
 物価高騰による生活の悪化と政治と金の問題で、政権に対する人々の不満が高まっている。憲法9条の破壊と25条の破壊が同時進行で進んでいる。戦争反対と生活防衛の闘いを結びつけよう。戦争を止めよう!沖縄・西日本ネットワークをはじめとする運動と連帯して中国との戦争と戦争準備を阻止しよう。
 来る参院選で対中戦争準備と軍拡の賛否を争点化させよう。


(NOW)

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