
3月18日未明、イスラエルは、パレスチナのガザ地区に対する全面攻撃を開始した。停戦合意をなきものにする暴挙である。この1日だけで400人以上を殺害した。1日にこれだけの殺戮は過去最大規模だ。20日には地上侵攻も開始した。攻撃再開後の死者数は4月4日までに1200人を超え、2023年10月以降の死者数は5万人を超えた。
我々は、イスラエルのジェノサイド・虐殺再開を満身の怒りをもって糾弾する。連日数十人~百人以上が殺害されている。ラファでは30日、暴行され手錠をかけたまま処刑され、埋められていた赤新月社の救急隊員ら15人の虐殺遺体が収容された。4月3日にはガザ市で避難所となっていた学校への攻撃で27人が死亡、70人以上が負傷した。イスラエルの残虐行為は歯止めを知らない。
ネタニヤフ首相は、ガザ南部や北部で「緩衝地帯」と称する占領地を拡大しようとしている。ガザ全体の65%が立ち入り禁止地帯となり、過去2週間で約28万人が避難を強いられている。ネタニヤフは占領地の合併を狙っている。7日のネタニヤフとトランプの会談で両者は住民移住と米国所有・再開発で一致した。
大規模攻撃再開に先立ってイスラエルは、3月2日からガザへの食糧はじめ物資の搬入を全面的にストップした。9日からは送電も停止し、淡水化施設も止めた。ガザの人々を極限まで追い込んだ上で、全面攻撃を再開したのである。国連職員の宿泊施設も攻撃され、国連は24日、ガザに滞在する職員約100人のうち3分の1を退去させ、人道支援活動を縮小すると発表した。世界食糧計画(WFP)は、小麦粉在庫がなくなりパン屋25店をすべて閉鎖した、温かい食事の供給施設も最長2週間しかもたない、保存食などの世帯向け配布は4月3日が最後になると明らかにした。一刻も早くイスラエルの攻撃を止めなければ、直接攻撃による犠牲に加えて、飢餓による犠牲も激増が避けられない。
停戦を破壊したのはイスラエルと米国
イスラエルは「ハマスが人質解放を拒否した」と、攻撃再開による犠牲の責任をハマスに押しつけ、西側メディアもこれをそのまま流している。しかし、これは全く事実に反する。停戦を破壊したのは、イスラエルのネタニヤフ政権と、それと一体である米トランプ政権である。
1月19日から始まった停戦合意は、3期からなっていた。第1期は6週間の停戦、33人のイスラエル人の人質交換、イスラエル軍の国境近くへの撤退、食料や人道支援物資の供給など。そして、第1期開始後16日目までに第2期に向けた協議の開始。第2期では、全イスラエル軍の撤退、イスラエル軍兵士の捕虜交換、そして恒久停戦。第3期では復興。このうち第1期の人質交換は合意通り履行された。
しかしイスラエルは、第1期の期限、3月1日になっても第2期の交渉に応じなかった。代わりに、人質交換のためだけの停戦延長を要求した。米トランプ政権も「4月中旬までの停戦延長」「人質を解放しなければ地獄の報いを受ける」とハマスを威嚇した。イスラエルと米国は結託して恒久停戦を拒否し、ハマスが受け入れなければ戦争を再開すると決めたのだ。ハマスがこれを拒否し、第2期への移行を要求したのは当然だ。しかしイスラエルは、ハマスの拒否を口実についに全面攻撃を再開した。
第2期に進まず停戦を崩壊させることを、ネタニヤフは当初から狙っていた。戦争はやめない、ガザからの住民追い出しも諦めるつもりがないのだ。停戦の破壊は極右政権維持のためにも必要だった。3月中に国会で予算が承認されなければ、ネタニヤフは議会の解散による選挙を迫られる。予算案承認のためには、停戦に反対し1月に政権を離脱した極右ベングビール前国家安全保障相を、政権に復帰させる必要があった。思惑通り、ベングビールは攻撃再開を歓迎し、国家安全保障相に復帰した。
イスラエルに戦争のゴーサインを出したのはトランプ
イスラエルによる大規模攻撃再開にゴーを指示したのはトランプ政権だ。トランプはネタニヤフとともに、ジェノサイドの戦争犯罪者である。
米はハマスと直接交渉し米国籍の兵士交換で合意したが、停戦2期に協議が及ぶや直ちに交渉を打ち切った。そして米軍は3月15日、イエメン・フーシ派への攻撃を行い、子どもを含む57人を殺害した。その後も攻撃を継続している。これこそネタニヤフへのゴーインだった。
トランプは1月の大統領就任以来、イスラエルへの約200億ドルの武器取引を承認し、最近も30億ドルの軍事支援を許可するなど、武器・弾薬を供給し、大規模攻撃再開の態勢を整えさせた。3月21日、国連安保理で米代表は「ガザで進行中の戦争と戦闘再開の全責任はハマスにある」と主張し、全責任をハマスに押し付けイスラエルを擁護した。
トランプは米国内においても、反イスラエル・パレスチナ連帯運動への弾圧を異常なほど強化している。1月にはすでに、大学などに「外国人の学生やスタッフによる活動を監視・報告」し、彼らを排除できるようにする大統領令を出した。3月4日には、「違法な」抗議活動を許可している米大学への資金援助を停止し、抗議に参加した留学生を起訴して強制送還すると表明した。そして8日には元コロンビア大学大学院生で、昨年の抗議活動のリーダーであったマフムード・ハリル氏を逮捕し、グリーンカードも剥奪した。その後も拘束される者が相次いでいる。資金援助停止の第1号となったコロンビア大学は、4億ドルの資金を失い、援助復活の条件として9つの要求を突きつけられた。大学側はこれに屈し、新たな懲戒委員会を設置し、親パレスチナ派の学生に対する調査を開始した。すでに22人の学生に対する退学・停学・学位剥奪の処分を発表している。
中東でのさらなる戦争拡大を狙うトランプとネタニヤフ
ネタニヤフとトランプによる中東での戦争は、ガザだけにとどまらない。周辺国全体に戦争挑発を続けている。ネタニヤフは、ガザでの停戦中から「対テロ作戦」と称してヨルダン川西岸地区での攻撃を激化させ、犠牲者が急増している。レバノンでは、撤退期限であった2月18日以降もイスラエル軍が南部に居座り続け、3月下旬には2度にわたってベイルートを爆撃した。アサド政権を崩壊させたシリアへも侵攻と空爆を続けている。
トランプはイエメン空爆後も、インド洋のディエゴガルシア島に戦略爆撃機B2を再配置し、2隻目の空母カールビンソンを中東に向かわせている。トランプとネタニヤフの標的はイランだ。米国は交渉での屈服を迫りつつ、最終的には反米・反イスラエルの「抵抗の枢軸」を壊滅させ、中東を完全支配することを狙っている。
世界の運動と国際世論で各国を動かし、イスラエルと米国を包囲しよう
殺戮とジェノサイドを止めるためには、全世界の運動と国際世論で、イスラエルと米国を包囲し、即時恒久停戦とイスラエル軍の撤退を受け入れさせる、それ以外に道はない。
3月30日は、パレスチナの抵抗の記念日、「土地の日」であった。ハマスは「抵抗こそがパレスチナの土地を守り、権利を取り戻し、占領軍の侵略的計画を阻止する唯一の手段である」と声明し、世界に対しガザの人々との連帯努力を強化し、イスラエルの侵略を終わらせるために圧力をかけるよう呼びかけた。
「土地の日」を期してパレスチナと連帯する集会やデモが、世界各地で行われた。英国のマンチェスターのデモは政府の戦争犯罪への加担を非難し、イスラエルへの武器輸出停止を要求した。パリでは、「パレスチナは奪うことも売ることもできない」というスローガンを掲げてデモ行進した。ドイツでは、ベルリンなど各地で当局の妨害にあいながらも、抗議活動や座り込みが行われた。日本でも東京・大阪など各地でデモ・集会が行われた。
米国では、運動への弾圧に抗議し、ハリル氏らの釈放を要求する行動が、連日のように取り組まれている。3月13日には親パレスチナのユダヤ人デモ隊が「トランプタワー」内を一時占拠し、4月5日にはニューヨークを数千人がデモした。退学や国外追放の脅迫にさらされながらも、学生たちは屈せずに運動を続けている。
イスラエル国内では、ネタニヤフを批判する集会やデモが続いている。ガザへの攻撃が再開された翌日の3月19日には、エルサレムの国会議事堂前で大規模な抗議デモが行われた。自らの政権維持のために、イスラエル人・パレスチナ人の命を平気で犠牲にするネタニヤフへの怒りは高まっている。3月の世論調査では70%超が停戦を支持していた。ネタニヤフ政権は非常に不安定で、綱渡り状態だ。弱いが故に強硬策に頼るしかないのだ。
日本でも、イスラエルと米国によるジェノサイドに反対し、日本の加担を止めさせる運動を強化しよう。在日イスラエル大使館や日本の首相官邸・外務省にメールやFAXで怒りを伝え、以下のことを要求しよう。
①イスラエル政府に即時停戦を要求すること。②イスラエル軍にガザからの撤退、ヨルダン川西岸での攻撃の中止、恒久停戦の受け入れを要求すること。③ガザの住民に食料、水、医薬品などの物資を提供すること。④イスラエル政府に、レバノン、シリアの占領地からの撤退を要求すること。イエメン、イランへの戦争に反対すること。⑤イスラエル政府支持をやめ、軍用ドローン導入などイスラエルとの協力をやめること。⑥パレスチナ国家を承認すること。
2025年4月8日
『コミュニスト・デモクラット』編集局