米=イスラエルはガザ北部絶滅作戦を中止せよイスラエル停戦違反糾弾 UNRWA禁止を解除せよ

 イスラエルとレバノン両政府は、60日間の停戦に合意し、11月27日から発効した。ヒズボラは直接の合意者ではないが、停戦を受け入れた。ところが、イスラエル軍は何一つ停戦条件を遵守していない。停戦後1週間で100回以上攻撃し続けている。停戦発効後もイスラエル軍は居座っている。レバノン国軍が展開し、米仏を含み監視するという条件も反故にされたままだ。何度もレバノン南部を空爆しても見て見ぬ振りだ。西側の政府・メディアもイスラエルの停戦違反を全く非難しない。
 われわれは、イスラエルの公然たる停戦違反を糾弾する。レバノンから軍を即刻撤退するよう要求する。イスラエルの公然たる停戦違反を暴露し、世論に訴えていこう

レバノン停戦と直結する米主導連合軍のシリア侵略

 レバノン停戦のシナリオを描いたのは米帝国主義だ。停戦の翌日、イスラム原理主義テロ集団が突如、シリアでアレッポを占領し、ダマスカスに向けて進軍し始めた。これを計画し、指揮し、武器・弾薬を提供してきたのも、テロ集団の実体である傭兵部隊を操っているのも米軍・CIAだ。現在進行中の中東情勢を把握するには、米国・ロシア・イスラエル・パレスチナ・レバノン・シリア・イラン・イラクの国々の動きを別々に見るのではなく、米帝による中東覇権・石油支配の全体戦略の中で捉える必要がある。それを無視すれば米帝の侵略的本質を見誤る。アサド政権を崩壊させれば、ロシアとイラン・ヒズボラをも、さらにはパレスチナ解放闘争をも一気に窮地に陥れることができると、戦略転換したのだ。
 われわれは、パレスチナ連帯の闘いだけではなく、反米・反帝・親パレスチナ解放支持のシリア人民と連帯し、米=イスラエル・トルコのシリア侵略を糾弾する。

限界状態にあるイスラエル

 しかし、イスラエル帝国主義が軍事的な行き詰まりと破綻に直面しているのも確かだ。侵略=虐殺国家は侵略戦争の破綻で危機に陥る。ガザ戦争は1年2ヶ月に及ぶ。これほど長期の戦争も、ガザ、ヨルダン川西岸、レバノン、イエメン、シリア、イラン、イラクの「7正面」もの戦争を同時に展開するのもイスラエル史上初めてのことだ。イスラエルは昨年10月以降30万人以上の予備役を招集した。8月にレバノン向けに招集した兵士達も2カ月の招集期限が切れる。戦争の長期化でイスラエル兵の損耗と疲弊が進んでいる。予備役の招集拒否者も増加している。ヒズボラとの戦闘では約100人が死亡するなど大きな犠牲を出し、軍内部の士気低下も指摘され、戦線の縮小が必要になっていた。
 弾薬と兵器も消耗し、不足が激しくなっている。ネタニヤフ自身、停戦に合意した理由として「武器の供給の遅れ」を挙げている。ロケット弾を迎撃するアイアンドームのミサイルも不足し、重要拠点に向かうものだけを迎撃し、イスラエル北部の入植地に向かうものは迎撃していない。毎日のように200発ものロケット弾の攻撃を受け、北部で8800もの建物が焼かれたという。
 レバノン侵攻の目的はヒズボラに壊滅的打撃を与え、イスラエル北部へのロケット攻撃をやめさせ、イスラエル北部住民数万人の帰還を可能にすることだった。イスラエル軍は空爆で市民を大量に殺したが、地上侵攻では数キロしか進めずヒズボラに決定的な打撃を与えられなかった。逆にロケット攻撃は拡大し、ハイファやテルアビブも攻撃されるようになった。イスラエルは軍事的手段では目的を達成できなくなったのだ。
 一方、ヒズボラも空爆で市民を殺され、100万以上の避難民が出るなど大きな痛手を受けた。しかし、それでも、イスラエルの侵略からのレバノンの防衛、ガザの抵抗勢力に対する側面支援(たとえ停戦しても北部にイスラエル軍を引きつけ続けている)の戦争目標は実現した。「不敗のイスラエル」の幻想を吹き飛ばしたのだ。その意味で今回の停戦は「半ばの勝利」である。

「停戦」を利用し、戦力をガザに集中 UNRWA活動禁止の暴挙

 レバノンとの停戦によって、戦力を再度ガザに集中させ、ハマスの壊滅を狙ってさらなる虐殺を継続するのがネタニヤフの狙いだ。ガザへの空爆と虐殺は激しさを増している。ヨルダン川西岸への攻撃と入植地拡大も強行している。
 すでにガザの死者は4万5千人に迫り、うち7割が子どもと女性だ。大半の建物が破壊され、1万人以上ががれきに埋まったまま行方不明と見られる。死傷者・行方不明を含め、実際には20万人以上が犠牲になっている。人口の9割にあたる190万人が壊れた建物やテントで暮らしている。
 そうした事態の上に、さらに10月28日、イスラエル議会が国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁止する法案を可決し、11月3日、イスラエル外務省がUNRWAとの協力関係解消を国連に正式通告した。UNRWAは230万人のガザ住民に対して食料や水、医薬品などを供給し、ガザの一次医療の半分を担い、学校を運営してきた。イスラエルは、UNRWAによる食料の搬入を妨害し、人々を飢餓状態に追い込んでいる。10月以降搬入を大幅に制限し、昨年10月以前の6%にまで激減させている。イスラエルは、北部住民を南部に追い出しているが、その南部でも食料などの搬入を妨害しているのだ。来年1月とされるこの法律の施行は、文字通りガザの住民の命綱を奪うものだ。

飢餓作戦は、絶滅作戦=「将軍達の計画」の一環

 UNRWAの活動禁止は、イスラエルがガザ北部で新たに遂行している民族浄化・パレスチナ人排除のための作戦の一部である。「将軍達の計画」と呼ばれるこの作戦は、ガザ北部(ガザ市以北)を包囲し、食料と水の供給を止めて住民に退去を要求する。それでも残留するものは全員ハマスとみなして殲滅するというものだ。40万人が残っていたと言われる北部住民に、出て行くか、餓死するか、ハマスとみなされて殺されるか、どれかを選ばせるという残忍極まりない作戦である。すでに10月はじめから食糧、水、医薬品などの搬入を完全に止めている。パレスチナ人を追い出した後でイスラエルに併合し、新しい入植地を作ろうと画策している。
 このイスラエルによる国際法違反の残虐極まりない作戦が明らかになっても、米バイデン政権はイスラエルへの大量の爆弾、砲弾、ミサイルの輸出を続けている。トランプ次期政権では大虐殺戦争支持が一段と露骨になるだろう。米国は、ガザ住民の虐殺に加担しているのではなく、共同で虐殺作戦を遂行しているのだ。

強まる米=イスラエルに対する包囲網

 イスラエルへの国際的包囲網は着実に狭まっている。国際刑事裁判所(ICC)は11月21日、ネタニヤフとガラント前国防相に、戦争犯罪や人道に対する犯罪の容疑で逮捕状を出したと発表した。ガザで意図的に市民に対する攻撃を指示した行為や、人道支援物資の提供を妨害し飢餓を引き起こした行為に責任があるとし、ICC検察局が5月に逮捕状を請求していたものだ。イスラエルはICCに加盟していないが、両者の国外への移動に制約が課され、外交面での影響は避けられず、イスラエルの国際的地位にとって大きな打撃となる。
 国連安全保障理事会は11月20日、すべての当事者に即時かつ恒久的な停戦、人道支援物資の搬入を求める決議案を採決し、米国の拒否権行使により否決されたが、それ以外の14理事国が賛成した。昨年10月以降、米国がガザに関する決議案で拒否権を使うのは5度目だ。

パレスチナ連帯の闘いを強めよう

 ハマスは今回のレバノン停戦合意を歓迎し、「抵抗勢力を打破するというネタニヤフ首相の幻想を打ち砕く上で重要なものだった」と声明を出した。パレスチナの抵抗勢力は、イスラエルの限界も見据えながら、長期戦を覚悟し、不屈の闘争を継続していくだろう。
 一体となってジェノサイドを継続する米=イスラエル帝国主義に、非難を集中しよう。ただちにガザへの攻撃を止めること、UNRWAの活動禁止を撤回し、食料・水・医薬品などの支援を保障することを要求しよう。さらに力を倍加し、恒久停戦とイスラエル軍の撤退を要求しよう。
 11月29日は、1947年に国連総会でパレスチナ分割決議が採択されたことにちなむ、「パレスチナ人民連帯国際デー」であった。全世界でこの日、ジェノサイドの即時中止と停戦、イスラエル軍の撤退を要求する行動が行われた。日本でも、東京・大阪・京都・福岡・札幌など各地で行動が行われた。東京では新宿駅の4つの出口でスタンディングを行う「ラッピングデモ」が行われた。大阪では、米国領事館とドイツ領事館への抗議行動が行われた。また、イスラエル製ドローン Heron MKIIの代理店として防衛省への導入を進めている川崎重工が、12月から南紀白浜空港で実証試験を行うことが明らかとなり、12月6日には東京と神戸の本社に対して抗議行動が行われた。
 我々は、日本政府と企業に以下のことを要求する。

○イスラエル支持をやめること。戦争を止めるために制裁など実効性ある措置をとること。
○イスラエル企業、特に軍需企業との関係を絶ち、一切の協力を止めること。万博への招待を取り消すこと。
○ネタニヤフへの逮捕状発行を支持すること。
○パレスチナ国家を承認すること。

2024年12月8日
『コミュニスト・デモクラット』編集局

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました