中国+53カ国、地球上3分の1の人口代表が北京で歴史的会議
「西洋の現代化」「西洋中心主義」の歴史は、15世紀初頭のポルトガルによるモロッコ侵攻、アフリカ大陸の植民地化と先住民の大量虐殺から始まった。それから600年。そのアフリカから、西洋支配の歴史を覆そうという動きが始まっている。社会主義中国と結びつき、「西洋の現代化」と手を切り、平和的発展とウィンウィン協力による現代化で、帝国主義の植民地主義支配体制を打破しようという歴史的な動きである。
9月4日~6日に北京で開催された中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)首脳会議は、アフリカ全54カ国中、実に53カ国の国家元首・政府代表、アフリカ連合(AU)委員長らが参加した。それぞれ14億人を擁するアフリカと中国、地球人口の3分の1を代表する政府首脳が人民大会堂に結集したのだ。近年では世界最大規模のサミットである。
日本のメディアは、ほとんど取り上げることもなく、中国の「債務の罠」「植民地主義だ」と非難を浴びせ、中国叩きに利用しただけであった。中国・アフリカ協力の歴史的進展の現実を見えないようにしているのだ。
中国が推し進めるアフリカ諸国との協力強化は、帝国主義の偽善的な「援助」「協力」と根本的に異なる。それは、習近平国家主席が提起した「5つのノー」アプローチに凝縮されている。①それぞれの国情にあった発展の道の模索に干渉しない、②内政に干渉しない、③自らの意志を押しつけない、④援助に政治的な紐帯をつけない、⑤一方的な政治的利益を求めない。要するに中国は、「平和・発展・ウィンウィン協力」の原則に従い、アフリカが西側の植民地主義によって強制され続けてきた貧困と「低開発」からの脱却を友好協力関係の深化で手助けしているのだ。
習主席は基調演説で、次のように述べた。「西側の現代化プロセスは、発展途上国に計り知れない苦難をもたらしてきた。第2次世界大戦後、中国とアフリカに代表される第三世界諸国は、相次いで独立と発展を実現し、現代化過程で歴史的不公正を是正しようとたえず努力してきた」「中国とアフリカが共に現代化を追求することで、人類運命共同体構築の新たなページを記すに違いない」と。
北京行動計画――平和的現代化で貧困と「低開発」の克服へ
FOCACサミットは、「全天候型の中国・アフリカ共同体」を共に構築していくことを確認し、今後3年間の共同行動を盛り込んだ「北京行動計画」を採択した。中国はそのために、3年間で3600億元(約506億9000万ドル)をアフリカに提供し、中国と国交がある後発発展途上諸国の関税を100%免税することを約束した。同時に、すべての2国間関係を戦略的関係へ引き上げた。中国・アフリカの協力関係の急速な発展は、米と西側帝国主義の世界覇権を掘り崩し、グローバル・サウスが新植民地主義支配から脱却する最大の原動力の一つになりつつある。その特徴は以下の通りだ。
第1に、協力の全面性・包括性である。貿易、インフラ、産業開発・サプライチェーン、医療・保健衛生、農村活性化、工業化、エネルギー協力、グリーン開発、安全保障、人的交流など、あらゆる分野を含む全面的で包括的なものだ。そこには知識の移転、統治経験の共有、軍事協力なども含まれる。
第2は、インフラ建設を中心としたアフリカの「低開発」の克服である。製造業を柱としたアフリカの工業化、農業現代化、グローバル・サプライチェーンへの統合を支援すること、対立ではなく協力・連帯で、お互いが不可欠のパートナーとなることをめざしている。
第3は、質の高い現代化での協力深化である。「持続可能な開発」がキーワードだ。気候変動対策、生態系保護、自然災害対策での協力が重視された。さらに大規模インフラ建設だけではなく、より小規模で各国の実情に合致した、持続可能なプロジェクトに焦点をあてている。
第4に、ウィンウィン互恵協力を実現すること。すでに中国は、15年連続でアフリカ最大の貿易相手国であり、昨年の貿易額は2820億ドルと過去最大となった。だが中国の対アフリカ輸出(1730億ドル)は、輸入(1090億ドル)を大きく上回り、貿易赤字がアフリカ諸国には大きな負担となっていた。今回、ゼロ関税措置を打ち出すことで、アフリカ諸国からの農産物や水産物・漁業製品等の輸入を拡大し、不均衡を是正することをめざしている。
第5は、人民第一主義である。人民生活向上と貧困削減が柱だ。飢餓の撲滅、食糧安全保障、持続可能な農業発展を通じた貧困削減は、アフリカ諸国にとって死活の問題であり喫緊の課題である。中国は、1億人を貧困から脱却させ、絶対的貧困を克服した経験を共有し、貧困削減を全面的に支援する。さらに病院建設、公衆衛生に関する技術協力、医療・公衆衛生の専門家派遣、専門家育成、伝染病対策、等々。いわば「脱貧困の輸出」である。
これら一連の協力強化は、中国・アフリカ関係にとどまらず、中国とグローバル・サウス諸国との協力、南南協力の普遍的モデルとなっているのだ。
※新時代の未来を共有する全天候型中国アフリカ共同体の共同構築に関する北京宣言
https://www.fmprc.gov.cn/eng/xw/zyxw/202409/t20240905_11485993.html
※中国・アフリカ協力フォーラム 北京行動計画(2025-2027)
https://www.fmprc.gov.cn/eng/xw/zyxw/202409/t20240905_11485719.html
社会主義中国と結びつくことで新植民地主義支配から脱却めざす
第2次世界大戦後、とくに1960年代、アフリカ諸国は民族解放闘争の前進で次々と独立を成し遂げた。しかし60年を経た現在に至るまで、アフリカ大陸は総じて経済的発展を抑えられ、「低開発」と極度の貧困に苦しめられてきた。西側帝国主義への経済的従属、安価な原材料を一方的に供給する経済構造からの脱却を求めて様々な開発計画が策定されたが、ことごとく失敗した。多くのアフリカ諸国の工業レベルは、60年代とほぼ同じである。実質賃金も70年代より現在の方が低い。貧困人口は1990年の3億人から2020年には4億人へと増大した。
なぜアフリカ諸国は今日に至るまで「低開発」と貧困を強いられているのか? その元凶は、帝国主義の途上国収奪である。とくに1980年代以降の新自由主義政策、IMF・世銀をテコとした規制緩和と民営化の波がアフリカ諸国を席巻した。西側帝国主義諸国は、アフリカ経済の自律的発展を促すことなく、新植民地主義的従属構造を再生産して剰余価値を吸い上げてきたのだ(参照:途上国収奪の定量的分析 (その1) )。
しかし2010年代以降、とくにこの数年、社会主義中国の発展と結びついたグローバル・サウス諸国が急速に台頭した。アフリカ諸国も例外ではない。とくに中国の「一帯一路」と多極化世界戦略に基づく平和的現代化は、グローバル・サウスが発展するもう一つの選択肢を示した。中国と結びつくことで経済的に発展し、貧困を克服し、帝国主義の新植民地主義支配体制を脱却する新しい道である。
中国とアフリカ諸国には、すでに友好協力関係の長い歴史がある。中国は1949年の建国以来、反帝国主義、反植民地主義、民族解放の歴史を共有し、経済的発展の追求を通じて、緊密な友好協力関係を築いてきた。西側帝国主義の新植民地支配、収奪と略奪、主権侵害と干渉、人種差別に対するアフリカ諸国の闘いを積極的に支援し、インフラ、保健衛生、エネルギー、産業、安全保障などあらゆる分野で継続的な援助を行ってきたのだ。
とりわけ、2000年のFOCAC創設で、中国・アフリカ関係は段階的発展を遂げてきた。そして今回、アフリカ53ヵ国すべてとの戦略的パートナーシップの「フルカバー」を完成させ、両者の関係を「全天候型の運命共同体の構築」という新段階へと引き上げたのである。それは、国際情勢がどのように変化しても、何が起きても、中国とアフリカの友好協力関係は揺るぎないという確信を表すものだ。
社会主義中国とアフリカの連携が米帝の没落を加速
FOCACサミットが打ち出した現代化協力を進めれば進めるほど、米帝の世界覇権体制の没落、アフリカ大陸における経済的・政治的・外交的影響力のさらなる後退は不可避である。
米・西側帝国主義は、いまだに資源の宝庫アフリカを軍事的に支配し、新植民地主義支配を維持している。だが、昨夏のニジェール軍事クーデターに現れた西アフリカ地域の反仏・反植民地主義の民族解放闘争は、米・西側帝国主義の軍事覇権を根底から揺るがしている。今年3月、米軍をニジェールから全面撤退させ、ドイツとフランスの軍隊も撤退させた。他方で、BRICSには新たにエジプトとエチオピアが加わり、マリ、ブルキナファソ、ニジェール3国が加盟申請の姿勢を示すなど、多極化世界のうねりはアフリカにも及んでいる。このような中でFOCACサミットが行われたのだ。
最後に、「北京行動計画」が第1に掲げた「文明間の相互学習」の意義を強調しておきたい。イスラエルのネタニヤフ首相は今年7月、米議会演説で「野蛮と文明が衝突している。勝利のために文明勢力は団結しよう」と呼びかけ、スタンディング・オベーションの嵐で大歓迎された。米・イスラエルと西側帝国主義にとって、侵略と大虐殺こそが「文明」の証だというのだ。中国とアフリカ諸国は、これとは全く正反対の「文明」を対置した。文明間交流と相互学習を前面に押し出すことで、侵略・抑圧・略奪を正当化する帝国主義の価値観に断固として立ち向かうことを宣言した――「異なる文明間の包摂、共存、交流、相互学習は、人類社会の現代化を推進し、文化の多様性を促進する上で、かけがえのない役割を果たす」と。
(水島)