[1]イスラエルは国家テロ・虐殺をやめ、レバノンから撤退せよ
イスラエル・ネタニヤフ政権は、ガザ侵攻一年を前にレバノンへの全面侵略に乗り出した。われわれはレバノン侵略と無差別空爆と住民の大虐殺を徹底的に糾弾する。
イスラエルは10月1日にレバノンへの地上侵攻を始めたが、早くから侵略のための攻撃を開始していた。9月17・18日にはポケベル・トランシーバ爆弾を爆発させ、ヒズボラの戦闘員だけでなく、病院の医師や看護師、公務員など3000人以上を無差別に殺傷した。さらに大規模な無差別爆撃を繰り返し市民を大量に虐殺した。一日に500人を超える市民を殺し、1600カ所を爆撃した。攻撃開始以来の犠牲者は2000人を超えた。ヒズボラ指導部に対する暗殺爆撃を繰り返し、9月27日にはヒズボラの最高指導者ナスララ氏を爆殺した。この時には1㌧バンカーバスター爆弾80数発を投下し、いくつもの集合住宅を住民もろとも瓦礫の山に変えた。指導部の暗殺、指揮通信の混乱を作り出して、地上侵攻を開始したのだ。まさに国家テロ、無差別殺戮だ。
メディアはイスラエルの宣伝通り「限定的攻撃」であるかのように報じるが全くデタラメだ。数百機が一日に何度も昼夜を問わず爆撃を繰り返し、その範囲はベイルートどころかレバノン全土に及ぶ。イスラエル国境からは数万人、4個師団が攻め込んだ。イスラエル軍が攻撃で破壊しようとして住民退去を要求した地域は国境から40キロに及ぶ。文字通り全面攻撃だ。イスラエルは、残忍な「ダヒヤ・ドクトリン」をレバノン南部地域にも適用し、第2のガザにして、無差別爆撃、地上攻撃、地域の徹底した破壊と住民の無差別虐殺を繰り返そうとしている(参照:民間人虐殺が柱の「ダヒヤ・ドクトリン」)。われわれは国際ジェノサイド禁止条約やジュネーブ条約に反する市民の無差別虐殺を厳しく糾弾し、即刻攻撃を止め、撤退することを要求する。
[2]対イラン戦争は米=イスラエル帝国主義共通の利害
イスラエルは戦争をイランを含む中東全域に拡大しようとしている。イランは、ハマスの指導者で停戦協議の責任者であったハニヤ氏暗殺と革命防衛隊司令官暗殺、これに加えてナスララ氏暗殺とレバノン侵略への糾弾として、10月2日にイスラエルの軍事施設に対して弾道ミサイル180発を打ち込んだ。自制した上での対抗措置だった。イランは国連憲章51条に基づく「国内への攻撃への反撃」の自衛権行使だと国連に通告した。イスラエルと米国、西側メディアは「大半は無力化した」とごまかした。だが、実際には大半は迎撃できず、イスラエル軍の空軍基地、モサドの基地周辺に降り注いだ。イスラエルの弾道弾迎撃能力の限界が露呈した。ガザ侵略以来初の大規模な軍事的打撃だ。
イスラエルは「報復」を宣言し、目標をめぐって米国と協議している。石油精製施設への攻撃、果ては核関連施設への攻撃を行う可能性がある。もし攻撃が行われれば、イランがそれに再反撃し、双方の間で大規模な攻撃に拡大する。そうなれば米国がイラン攻撃に参戦する可能性が出てくる。
いつ、どんな方法で崩壊させるかは決まっていないが、イラン政権を打倒することは米帝国主義支配層の長年の戦略目的である。長期にわたり経済制裁を科し、「カラー革命」で政権転覆策動を繰り返している。トランプ時代にイラン核合意を破棄し、それをバイデンも継続した。米帝と西側帝国主義は、石油支配に邪魔な反米・反帝のイラクのフセインを軍事力で打倒し、国家元首を堂々と処刑した。リビアに軍事介入し、カダフィも処刑した。シリアに対しては、イスラム原理主義をかき集めてアサド処刑と政権打倒を画策したが、これは失敗した。残る中東の反米・反帝政権はイランだけとなった。中東の米軍基地のほとんどはペルシャ湾を挟んでイランに向け配置され、イスラエル防衛の位置に配置されている。
暴走するイスラエルを利用してイラン政権打倒へと動く危険は十分にある。イラン攻撃は中東戦争にまで一気にエスカレートする。パレスチナ連帯運動の1年を期して、全世界で「レバノンから手を引け」「イランと戦争するな」の反戦運動が行われた。米=イスラエル帝国主義によるイラン戦争を絶対やらせてはならない。(参照:虐殺の1年、抵抗の1年~レバノンから手を引け!イランと戦争するな!)
[3]米=イスラエルは停戦を拒否し、ハマス・抵抗勢力の戦いは新局面へ
もともとレバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派などの「抵抗の枢軸」はハマスと抵抗勢力に連帯してイスラエルを攻撃しており、両者とも「ガザ攻撃を止め、停戦に応じれば攻撃は停止する」と言明している。ネタニヤフがガザ侵略を停止すれば、事態は収拾するのだ。イランはハニヤ氏暗殺後も、停戦協議の進行を促すために自衛権行使の報復を凍結してきた。しかしネタニヤフ政権とバイデン政権は一時停戦すら応じるつもりがなく、停戦協議は時間稼ぎに過ぎなかった。ガザでの攻撃と虐殺をいつまでもやり続けた。それどころかレバノンを全面侵略した。停戦を拒否し、暴走し続けるのは米=イスラエルなのだ。
イスラエルとパレスチナ抵抗勢力の戦争は新しい局面を迎えた。ハマス・抵抗勢力は、当面、停戦協議は不可能と判断し、長期戦、徹底抗戦の覚悟を決めた。国際的なパレスチナ連帯運動も、「停戦から民族解放へ」シフトし始めている。
[4]イスラエルの「7正面戦争」は矛盾爆発と自滅への道
ネタニヤフ政権の軍事的暴走は、ガザ、ヨルダン川西岸、レバノン、イエメン、イラン、シリア、イラクの「7正面戦争」にエスカレートしている。明らかにイスラエルの軍事的力量、国力を超える戦争に突き進んでいる。ガザでの戦争に勝利できないイスラエルが、7正面で勝てるはずがないのだ。すでにイスラエルとレバノン以外の戦争には米軍やNATO諸国が参戦しているが、それでも勝てる見込みが立たない。にもかかわらず、ネタニヤフ政権は中東全域を巻き込む戦争に突き進んでいる。
イスラエルが闘うべき相手は大幅に増えた。侵略を拡大すればするほど、抵抗も拡大する。イスラエル対ガザ人民、ハマスと抵抗勢力が真正面からぶつかっている戦いに、イスラエル対レバノン人民、ヒズボラ、あるいはイスラエル対「抵抗の枢軸」の闘いが加わった。ヒズボラはハマスよりずっと強力だ。イスラエルは、指揮通信を混乱させ、大規模空爆と強力な地上攻撃でヒズボラがすぐに音を上げると甘く見ていた。しかし機甲部隊を先頭に攻め込んでも戦車を撃破され、特殊部隊に国境を越えさせても待ち伏せ攻撃で大きな被害が出た。地上侵攻を始めてわずか数日だが、死傷者数が跳ね上がり、国境まで引き下がらざるを得なくなっている。ガザ侵略ですでに財政・経済は深刻な危機にある。これに軍事的な危機も生じ始めたのだ。
[5]「7正面戦争」は米=イスラエルの共同作戦。米と西側帝国主義に矛先を集中しよう
なぜイスラエルは戦争と侵略を拡大し続けられるのか? 誰がその暴走を支えているのか? 米帝と西側帝国主義だ。これら西側帝国主義におけるパレスチナ連帯運動の重要性、責任はますます増している。西側政府は、これだけの無差別殺戮さえ「イスラエルの自衛」だといい、バイデンはナスララ暗殺を「正しい措置」だと公然と支持した。やりたい放題の空爆は米国製の戦闘機であり、爆弾、砲弾、軍事資金を提供し続けているのも米国だ。ナスララ氏を爆殺した80数発のバンカーバスターは米国が与えたものだ。これが欧米の言う人権や民主主義の正体だ。
すでに欧米諸国はイスラエルの戦争に直接参戦している。米英はイスラエルに爆撃・強襲する目標の情報を提供し、レバノン侵略が始まるや、追加の米兵を増派し空母部隊を駆けつけさせた。10月4日には米軍がイエメンの15カ所を空爆し、ミサイル攻撃した。10月2日にイランの発射したミサイル迎撃に米イージス艦が参加し、イスラエルの「盾」の役割を果たしている。この戦争はイスラエル単独の戦争ではなく、米=イスラエル帝国主義の共同の戦争であり、膨大な兵器・弾薬と金融・財政支援からして、米国が丸抱えする戦争なのである。バイデンやハリスにイスラエルの「コントロール」や「停戦」を期待することは幻想でしかない。米帝の中東戦略の根幹がイスラエル防衛であることを忘れてはならない。
国連総会は9月18日にイスラエルの占領支配を国際法違反と断定し、1年以内に占領支配を終わらせろというパレスチナ提案の総会決議を採択した。占領支配、植民地支配こそこの問題の本質であり、パレスチナ民族の解放と自決抜きに問題の解決はあり得ない。イスラエルに停戦と戦争中止を迫るだけでなく、植民地支配の放棄を迫る国際的な対イスラエル制裁で迫っていこう。
イスラエル支持は日本政府も同じだ。石破首相は、イランのミサイル攻撃に対して即座に「厳しく非難」した。イスラエルのガザ大虐殺戦争、レバノン全面侵略は一切非難しない。この一方的なイスラエル支持こそが、虐殺国家、戦争国家イスラエルを増長させているのだ。日本政府を批判し、姿勢を変えさせることが必要だ。
われわれは日本政府に対して、イスラエル支持を撤回し、直ちに停戦と戦争中止、レバノン、ガザ、ヨルダン川西岸からの軍の撤退、占領と植民地支配の放棄をイスラエル政府に要求するよう求める。イスラエル政府に対して制裁を行うことを要求する。民間企業を含めてイスラエルとの協力とくに軍用ドローンなどの軍事協力を直ちに止めさせることを要求する。
2024年10月9日
『コミュニスト・デモクラット』編集局