5月10~12日、南アフリカのヨハネスブルグで「世界反アパルトヘイト会議」が開催され、世界20ヵ国以上から大使館の代表者や国際的なゲストを含む約480名が集まった。その目的は、「パレスチナ人民に対するイスラエルの犯罪責任を追及し、ヨルダン川から地中海に至るまでイスラエルのアパルトヘイトを解体するために取り組む、世界的な反アパルトヘイト運動の動員の基礎を築くこと」であり、広範囲にわたるグローバルな行動と変革を目指している。3日間の会議の成果として「イスラエルの入植者植民地主義、アパルトヘイト、ジェノサイドに関するヨハネスブルグ宣言」が出された。事前のメディア声明とこの宣言を全訳紹介する。
(小津)
パレスチナ人の自由がなければ
私たちの自由は不完全である ネルソン・マンデラ
南アフリカがパレスチナ連帯運動の先頭に
ICJ提訴に続き、世界反アパルトヘイト闘争を提起
この重要な会議を南アフリカで開催したのは極めて象徴的である。南アフリカは、自国のアパルトヘイトを解体した後、パレスチナ人民に対するイスラエルのアパルトヘイトを解体するための闘いを一貫して支援してきた。そして今回は、イスラエルをパレスチナ人に対するジェノサイドの罪で国際司法裁判所(ICJ)に提訴し、現代のアパルトヘイトと入植者植民地主義に反対して世界を結集させるグローバルなパレスチナ連帯行動を先導している。
この会議は、南アフリカでのアパルトヘイト終結を支援した世界的な運動との類似点を取り出し、イスラエルを孤立させてアパルトヘイト体制を終わらせるよう圧力をかけるため、強力な国際的同盟を築こうとしている。「BDS(ボイコット、ダイベストメント、制裁)運動」をはじめとする多くの市民社会組織などの参加は、偏見と差別のあらゆる形態での現れと闘う、いっそう広範な連合体を示すものとなった。
グローバルな連帯と行動のマイルストーン
事前のメディア声明(4月24日)では、この会議を「グローバルな連帯と行動」を構築する「マイルストーン」として、その内容を紹介している。
「南アフリカ反アパルトヘイト運営委員会(SAAASC)」が、パレスチナの人々の声に応えて、現在進行中のガザにおけるイスラエルのジェノサイドに対処する緊急の必要性から、この国際会議の開催を呼びかけた。それは、パレスチナ人民に対する犯罪の責任をイスラエルに問い、ヨルダン川から地中海に至るイスラエルのアパルトヘイトを解体することを目的として世界規模の行動を結集する「世界反アパルトヘイト運動」の先駆けとなるものである。
南アフリカの活動家、宗教指導者、連帯諸組織は、2022年初頭から、つまり昨年10月7日のアルアクサ洪水作戦の以前から、パレスチナの人々とその闘いに対するグローバルな支援を劇的に活性化させるための世界会議の開催に取り組んできた。その活動の結実として今回の会議がある。
世界的なパレスチナ連帯闘争の結集
会議では、BDS運動などの重要問題、宗派を超えた活動やキャンペーン、法的領域における行動、パレスチナの政治犯を支援する方法などについて活発な議論が行われた。
会議は、運営委員長のフランク・チカネ牧師の講演からはじまった。牧師は、アフリカ民族会議のメンバーで南アフリカにおける反アパルトヘイト闘争の旗手である。76年前に始まった1948年のナクバとイスラエルの入植者植民地主義から語りはじめ、この会議の緊急性を強調し、南アフリカによる世界的な連帯の呼びかけを心から歓迎した。
会議の中心人物のひとりであるラミス・ディーク弁護士は、パレスチナの苦境を「漸進的ジェノサイド」ととらえ、現在ガザがこのジェノサイドのエスカレートした段階にあるとした。そして、ヨルダン川西岸も同じ危機に瀕していると警告した。また、人権活動家や他の会議出席者らとともに、パレスチナにおける武装抵抗の非犯罪化を求める呼びかけを行なった。
アイルランドの民族的統一を目指して英帝国主義と闘っているシン・フェイン党のデクラン・カーニー全国議長は、パレスチナの闘いに対するアイルランドの支持を表明し、、自決権を抑圧する長期にわたる植民地支配を経験してきたアイルランド人とパレスチナ人双方の闘いに共通する基本的な道徳的価値観や原則を提示した。
他に、次の諸氏が講演した。「パレスチナ・ナショナル・イニシャティブ」の共同創設者・指導者ムスタファ・バルグーティ博士、ANCと南アフリカ共産党の執行委員を長年務めたロニー・カスリルズ氏、「パレスチナ土地協会」の創設者兼会長サルマン・アブ・シッタ博士、パレスチナをはじめ世界各地で人権の促進と擁護に尽力してきた「パレスチナ人権センター」の代表ラジ・ソウラニ弁護士。なかでも、ロニー・カスリルズ氏は、1961年にANC主導の武装闘争の発足時に参加し、国内で活躍した後、亡命ANCの軍事情報部長に就任。1994年の南アフリカ初の民主的選挙後、政府の閣僚を歴任し、2008年に退官。献身的な国際主義者である。
イスラエルのジェノサイドは人類全体に対する犯罪
「ヨハネスブルグ宣言」は、イスラエルのジェノサイドを糾弾し、さらにイスラエルを支援してそのジェノサイドを可能にしている米国をはじめとした諸国を糾弾した。また、イスラエルの戦争を「パレスチナの人々に対するものであるだけでなく人類全体に対するものである」として、「帝国主義の策謀に対して怒りと抵抗の声を増幅させる」ことを主張している。
今回の会議と活動は、南アフリカとナミビアのアパルトヘイト終結を支援した世界的な反アパルトヘイト運動を引き継ぐものであり、イスラエルとその支援者たちの入植者植民地主義とアパルトヘイトに立ち向かうために立ち上がるとしている。そして、現在進行中のナクバが終わりパレスチナが解放されるまで、休むことなく活動することを誓っている。