[1]米・イスラエルの軍事的・政治的行き詰まり
米・イスラエルは共同作戦でヌセイラト・キャンプで大虐殺を強行した。2週間前には「タル・アル・スルタン」キャンプで50人の女性・子どもを生きたまま焼き殺し、300人を負傷させ、2日前にはUNRWAの学校で40人の住民と子どもを虐殺した。米・イスラエルの大虐殺戦争は暴走状態にある。だが、虐殺暴走は強さの表れではない。窮地に陥っているからだ。何としても、パレスチナ連帯の国際的包囲網でストップさせよう。
ネタニヤフ政権が崩壊の危機に瀕している。軍事的、外交的・政治的・経済的な多次元的な危機に陥っている。何より「ハマス壊滅」も軍事的勝利も不可能な状況にある。経済的危機も深刻だ。停戦協議でも戦後のガザ統治でも政権が深刻な分裂と混乱状態にある。ただネタニヤフとネオナチ閣僚の保身・延命のためだけに、戦略的展望もないまま大虐殺を繰り返しているのだ。政権内では、レバノン侵攻の企みが急浮上した。レバノンに矛先を向けることで、ガザから国際的注目を逸らせようという魂胆だ。だがそれは、ヒズボラからの猛反撃を受け、侵略国家イスラエルをさらに孤立させるだろう。
米帝国主義も完全に行き詰まっている。バイデンが突如として発表した「停戦協議」案は、崩壊寸前にあるネタニヤフ政権を救済し、11月大統領選で支持を得ることが狙いだったが、偽善的な茶番であることが早々に暴かれた。米・イスラエルが侵略と虐殺を欲しいままにし、米国が武器・資金援助を続けたままでは、いくら「停戦」を呼びかけても、パレスチナ抵抗勢力には通用しないのは当然だ。もはやバイデンは事態をコントロールすることさえできなくなっている。
バイデンとネタニヤフの軍事的暴走を許してはならない。イスラエルが侵略と虐殺を続けられるのは、バイデンが全面的に支持しているからだ。否、バイデンこそがガザ・ジェノサイドと民族浄化戦争の首謀者である。パレスチナ抵抗勢力の総意は、イスラエル軍のガザからの完全撤退と恒久停戦である。われわれはこれを断固支持する。米・イスラエルを徹底的に追いつめよう。
[2]パレスチナ抵抗闘争の歴史的意義
(1) ハマス、イスラム聖戦、パレスチナ解放人民戦線(PFLP)を中心とする抵抗勢力は団結し、抵抗姿勢を堅持している。イスラエルの重装備・大兵力による、街を破壊しつくしてがれきの山に変え、市民を大虐殺しながらの残虐きわまりない攻撃にもかかわらず、パレスチナ抵抗勢力は抵抗と反撃を続け、イスラエルに甚大な損害を与えている。バイデンは「ハマスは著しく弱体化した」と言ったが、実際にはイスラエルはハマスと抵抗勢力に壊滅的な打撃を与えていない。それどころか、機動戦に徹し、損耗した兵力を補充し、驚嘆すべき戦闘力を維持している。
ハマスの拠点と言われる北部ジャバリアでは、イスラエル軍が再侵攻してキャンプ攻撃したが、頑強な抵抗闘争で撤退に追い込んだ。イスラエル軍は過去3週間でジャバリア地区に200回の空爆と地上侵攻を行った。キャンプを破壊し尽くし、学校も病院も完全になくなった。だが第1次インティファーダを生みだした抵抗の地、ジャバリアは屈服しなかった。ジャバリアの抵抗精神を打ち砕くことはできなかったのだ。
われわれは、ハマスと抵抗勢力、パレスチナ人民の反米・反イスラエル民族解放闘争を断固支持する。抵抗勢力は、張り巡らせた地下トンネルを縦横に利用し、大量の瓦礫と狭い路地を活用しながら、少人数で柔軟かつ迅速に行動し、敵の弱点を突き、攻撃・即退却を繰り返すヒット・アンド・ラン戦法を駆使する、文字通りのゲリラ戦で闘っている。それは短期的な目先の勝利ではなく長期的勝利をめざし、人民大衆の支持を得ることを最重視した闘いである。抵抗勢力は多くの血を流し、犠牲を出しながらも、イスラエルを疲弊させ打撃を与え続けている。諦めることなく闘い続けているから、決して敗北しない。従来の「包囲せん滅」戦術は、地下トンネルで移動できる抵抗勢力には通用しない。ネタニヤフが唱える「ハマス壊滅」は不可能なのだ。
軍事部門だけではない。パレスチナの全人民がハマスと抵抗勢力を支持し、団結を固めて共に闘っている。破壊されても破壊されても、瓦礫を片づけ、生活を再建し、命をつなぐために住民が総力で助け合い、活動している。飢餓と人道的危機を武器にしたイスラエルの暴虐に対し、食糧・水・医薬品を確保するために総がかりで奔走し、病院を破壊されてもテントを建てて医療設備を整え、乳幼児と子どもの命を守るために闘っている。ハマスの行政組織は健在であり、潰されても再建し、全住民がその周りに結集して総力で生活の営みを支えている。教員はテント教室をつくり、即席の学校を再開している。西岸地区においてもイスラエル占領軍の攻撃エスカレートに毅然として反撃している。パレスチナの民族解放闘争は、「人民戦争」の様相を呈しているのだ。
(2) 昨年10月7日のパレスチナ抵抗勢力による英雄的決起から8ヶ月。パレスチナ人民は、米帝の中東支配の拠点・手先であるイスラエルとほぼ独力で真正面から対峙してきた。米・イスラエルを行き詰まらせたのは彼らの力だ。この闘いは、パレスチナの民族解放闘争にとって重要な歴史的意義を持っている。
第1に、自ら武器を手にし、武装抵抗闘争に起ち上がった。最初の民衆蜂起となった第1次インティファーダ(1987年)の時、武器は石礫とパチンコであり、デモと抗議ストで闘った。第2次インティファーダ(2000年)では、投石に加え自爆攻撃とゼネストで闘った。武器はごく少数であった。だが今回は、銃で武装し、ロケット弾を製造してゲリラ戦を軸とする武装闘争に打って出たのである。この闘いは、イスラエルの軍事的支配を困難にする決定的な力となった。
第2に、オスロ体制という、米とイスラエルが認める統治形態の幻想を完全に断ち切ったことだ。腐敗を極めるパレスチナ自治政府(PA)=傀儡政権を拒否し、西岸地区を含め抵抗勢力が共同して統治する新政府を追求する動きが始まった。オスロ合意の枠組みではなく、真の独立したパレスチナ国家をめざすものだ。
第3は、パレスチナ抵抗勢力の不屈の闘いが、全世界の人民を鼓舞し、国際的なパレスチナ連帯行動を作り出し、米・イスラエルを国際的孤立に追い込んでいることだ。これほど多くの人々がパレスチナ人民を支持し連帯行動に起ち上がったことはかつてなかった。
第4に、パレスチナ人民の闘いが、民族解放闘争の新たな段階を切り開いたことである。昨春には、西アフリカにおいてニジェールの軍事クーデターが起き、マリ、ブルキナファソと共にフランス植民地支配を打破する新しい闘いが発展した。さらに南太平洋の仏植民地ニューカレドニアでは、反仏・反植民地主義の民族解放闘争が巻き起こっている(ニューカレドニア:カナック社会主義民族解放戦線の人民蜂起 植民地永続化を狙うフランス帝国主義 | コミュニスト・デモクラット (communist-democrat.org))。まさにパレスチナ人民は、今日の新たな反植民地・民族解放闘争の最前線に立っているのである。
[3]米・イスラエルの国際的孤立 反米・反帝・反植民地闘争が切り開く新しい時代
(1) パレスチナ抵抗運動に連帯し、米・イスラエルにジェノサイド中止と即時恒久停戦を要求する国際的包囲網が着実に強まっている。パレスチナ抵抗勢力の不屈の闘争とパレスチナ人民の強固な団結が最大の原動力となり、米・イスラエルを孤立へと追い込む幾重もの陣形が形成されている。
第1に、米国の学生野営運動の世界的拡大と全世界で展開されるパレスチナ連帯行動である。4月17日、米コロンビア大で始まった野営地運動は、全米の大学に広がり、さらに南北アメリカ大陸、欧州、アフリカ、アジア・太平洋諸国へと拡大して、文字通りの全世界的学生運動へと発展した。苛烈な弾圧をはねのけて闘争を続ける学生たちの不屈の精神、抵抗と団結にパレスチナ抵抗勢力も全面的な連帯と支援を表明した。ジェノサイドと民族浄化阻止、大虐殺に加担する企業、大学、学術機関等の協力中止・ボイコット、資金・武器供与反対など、明確に米・イスラエルに矛先を向けた、文字通り国境を越えたグローバル・インティファーダの様相を呈し始めている。(バイデン政権を揺るがす全米大学生のパレスチナ連帯行動 大学にイスラエルとの協力中止を要求 | コミュニスト・デモクラット (communist-democrat.org))
(2) 第2は、国際司法裁判所(ICJ)と国際刑事裁判所(ICC)による相次ぐ命令措置だ。ICJは今年1月と3月、ジェノサイド防止の暫定措置を命じたのに続き、5月24日にはラファ市に対する攻撃の即時中止命令を発した。ここで決定的役割を果たしたのは、アパルトヘイト体制を打倒した南アフリカとこれを支援するグローバル・サウス諸国である。南アは、自らの闘争と教訓を経て、ジェノサイド条約を発動して繰り返しICJに追加命令を要求し、積極的にリーダーシップを発揮した。
ICCは、ネタニヤフ首相とギャラント国防相、そしてハマス指導者3人の国際逮捕状を請求した。ハマスを加えたのは全く不当なものだ。だがそれでも、これまで西側の植民地支配者を決して裁くことがなかった偽善的機関、米・西側諸国の手先であったICCが歴史上初めて、イスラエルの戦争犯罪と人道に対する刑事責任を負わせる判断をしたのである。
(3) 第3に、パレスチナ国家承認の拡大と国連を舞台とする外交的圧力である。
5月10日の国連総会は、パレスチナの国連加盟を支持する決議案を、177ヵ国中143ヵ国の賛成で採択した。
イスラエルのラファ侵攻による大虐殺と人道的大惨事は、これまでパレスチナを国家として認めてこなかった西側諸国の中で、国家承認の気運を高めている。スペイン、アイルランド、ノルウェーの3ヵ国に続き、スロベニアがパレスチナ国家を正式に承認した。パレスチナ国家承認国が増えても、それが直接イスラエルの大虐殺を止める力になるわけではない。だが国家承認は、オスロ体制が破綻している現状で、真の「二国家解決」実現に向けた不可欠の一歩である。それは米とイスラエルをさらに孤立化させる重要なテコとなる。すでに現在、パレスチナ国家を正式に承認する国は、中国、ロシアをはじめグローバル・サウスを中心に世界で約140ヵ国、実に世界人口の85%を占める。
(4) 第4は、社会主義中国のリーダーシップとその中東における平和・和解攻勢である。米帝主導のオスロ合意など帝国主義的植民地主義的「中東和平」の偽善は通用しなくなっている。中国は、昨年3月のイランとサウジアラビアの和解仲介を契機に、中東・アラブ諸国との経済的外交的関係強化を積み重ねてきた。4月には北京でハマスとファタハの会談を実現し、パレスチナ諸派の和解と団結強化を支援している。6月中旬には両者の再度の協議が北京で行われる予定だ。
さらに5月30日、中国・アラブ協力フォーラム第10回閣僚会議が開催された。中国は、アラブ諸国にとってすでに最大の貿易相手国であり、「一帯一路」構想を通じたインフラ、技術、産業開発など経済協力関係を構築してきた。今回の会議は、従来の貿易・経済を主体にした協力関係から、経済・安全保障・文化において平和的発展を追求する相互尊重と平等互恵に基づく新たな友好関係へと発展させることを確認した。
イスラエルを侵略の先兵として使い、パレスチナを植民地化し続け、サウジをはじめアラブ諸国を切り崩すという米帝による中東支配構造が崩れ始めた。
(5) 今日、米帝一極支配と世界覇権、新植民地主義体制が急速に瓦解する新しい時代が始まっている。その最大の原動力が、社会主義中国の急速な発展と、これと固く結合したグローバル・サウス諸国の台頭である。米帝が世界覇権の後退を阻止するために仕掛けている「三正面戦争」は、対ウクライナでも対パレスチナでも大きく行き詰まっている。「台湾有事」策動も社会主義中国の防衛力の前に破綻するだろう。
エジプト、サウジ、UAE、イランを加えた新BRICSの発足は、中東における米帝支配の要、米・イスラエル枢軸に歴史的打撃を与えるだろう。この6月に開催されるBRICS2024には97ヵ国が参加準備をしており、40ヵ国以上が2024年の加盟をめざしている。
このような新しい多極化世界と国際的力関係の下で、パレスチナ人民の闘いは、反植民地・民族解放闘争の最前線に躍り出ている。もはやパレスチナ抵抗闘争を屈服させることはできない。今や、1967年、1993年、2007年、2014年とは全く異なる、新しい時代が始まっているのだ。紆余曲折は避けられないが、パレスチナ人民は必ず勝利する。
[4]日本政府はイスラエルに攻撃中止、恒久停戦を要求せよ。パレスチナ国家を承認せよ
日本政府は、イスラエルの暴虐に対する国際的非難に押される形で、ラマダン停戦要求の国連安保理決議を支持し、ICJのラファ攻撃停止判決を支持した。だが10月7日以降、ハマスをテロ組織として幹部に資産凍結の制裁を科し、ガザ攻撃、住民大虐殺を繰り返すイスラエルを支持し続けてきた。日本政府の偽善的姿勢を許してはならない。われわれは日本政府に対し、口先でなく、イスラエルに攻撃をやめさせる実効力ある措置を要求する。
①岸田政権はイスラエル支持を直ちにやめること。
②米・イスラエルにラファ攻撃を即刻停止し、恒久停戦を受け入れ、軍のガザからの全面撤退を要求すること。
③政府はパレスチナ国家を承認すること。
④政府・防衛省はイスラエルの軍需産業との軍事協力・取引をやめること。
⑤米政府にイスラエルに対する武器・弾薬供与、軍事支援を中止するよう要求すること。
⑥政府・万博協会はイスラエルを大阪・関西万博に参加させないこと。
⑦イスラエルに対し、外交関係断絶、制裁などの措置をとること。
日本国内でも、若者・学生を先頭にパレスチナ連帯行動が広がり始めている。反戦平和や労働組合の中央組織が全く取り組まない中で、市民・学生が呼びかける街頭スタンディングや集会、大学内でのキャンプや宣伝活動などが粘り強く行われている。積極的に世論にも働きかけ、参加者がますます増えている。米・イスラエルは大虐殺をやめよ、即時恒久停戦を受け入れろ、アパルトヘイト植民地支配反対、これらの声をさらに広げよう。
全世界で繰り広げられるパレスチナ連帯運動、イスラエル支援企業に対するBDS運動に合流しよう。イスラエルの軍事ドローン導入などを進める日本の軍需産業に対して批判の声を上げよう。ジェノサイド阻止、即時恒久停戦を実現し、パレスチナの民族自決を実現するまで運動を継続しよう。
2024年6月9日
『コミュニスト・デモクラット』編集局