岸田政権はUNRWAへの資金停止を撤回せよ
米・イスラエルによる中東戦争拡大を許すな!

ICJ判決を打ち消す米・イスラエルの2つの攻撃

 米・イスラエル帝国主義は、国際司法裁判所ICJによるイスラエルのジェノサイド条約違反判決を打ち消す2つの政治的・軍事的カウンター攻撃を開始した。

 一つはICJ判決で高まるイスラエル批判をハマスと国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)批判に矛先を逸らせること。もう一つはイエメン、イラク、レバノン、シリアに対して軍事攻撃することだ。

 どちらもイスラエルのガザでのジェノサイドを正当化するだけではない。米国と同盟国が行うUNRWAへの資金拠出停止は、食料・水・医療不足に苦しむガザ住民に対する第2のジェノサイド攻撃だ。周辺諸国への攻撃激化は、中東全域を不安定化させ、戦争拡大を弄ぶ危険極まりない火遊びだ。われわれは、米帝国主義、欧日帝国主義のイスラエル免罪・正当化を断固糾弾する。

イスラエル非難をハマス攻撃に逸らせる宣伝戦

 米国は、イスラエル軍と情報部が提供した情報を、ICJ判決の直後に公表した。UNRWAの12人の職員が10月7日のハマスの攻撃に関与していたというものだ。この情報に基づいて米国とイスラエルは、UNRWAにハマスが浸透している、1万3千人のUNRWAにハマス組織員が1200人いる、UNRWAは解体すべきと大騒ぎした。この一方的な発表だけを根拠に米国と9カ国が即座にUNRWAへの資金拠出停止を発表し、他の国にも呼びかけた。彼らが共謀してICJ判決前にこの攻撃を準備していたことは明白だ。

 しかし、イスラエルの提示した文書には具体的な根拠はほとんど示されていない。10月7日の攻撃に関与したといいながら、情報源は「捕虜の自白」と携帯電話の位置情報に基づく状況証拠に過ぎない。「捕虜の自白」も苛酷な拷問によるものと言われている。携帯の位置情報では本人かどうかも不明だ。人質拉致に拘わったなど直接関与したとされているのは1~2名にすぎず、他は指令を受けた等々の状況証拠だけだ。イギリスの放送局チャンネル4は、この文書について「主要職員の少数が関与していたという『証拠を何も示していない』」と発表している。こんな状態なのに各国は示し合わせたように資金拠出を打ち切ったのだ。

 しかも、UNRWA職員がハマスに加担と言うが、イスラエルはすでに152人のUNRWA職員を殺害している。イスラエルにUNRWAやその職員を非難する資格はない。さらに、たとえ複数の職員が関与していたとしても、職員もパレスチナ住民だ。パレスチナ人民には武装抵抗を含めてシオニスト・イスラエル政府の殺戮と暴虐に抵抗する権利がある。

 何よりも、イスラエル軍情報部がこれまでも戦争を正当化するための宣伝、偽情報をばらまいてきたことは周知のことだ。「40人の赤ん坊を斬首した」「女性をレイプ」「シファ病院の地下にハマスの司令部がある」等々、数限りないデマが流され、その度にウソが次々と暴かれてきた。

 UNRWAだけではない。パレスチナ抵抗勢力の攪乱と国際的な孤立をめざしてデマとプロパガンダに一層力を入れている。「ガザ市民がハマスに抗議してデモ」「ハマス内部で停戦をめぐって割れ」「ハマスの軍事機構は壊滅」等々。目的はパレスチナ人民と抵抗勢力との分断だ。

 今回も日本を含む西側メディアは検証も現場調査もせずに、ただイスラエル政府・軍・情報機関が発信するデマ情報を繰り返し垂れ流している。ジャーナリズムの責任を厳しく問わねばならない。

資金拠出停止は集団的懲罰=「第2のジェノサイド」

 共謀して拠出停止した国は、米国、ドイツ、スウェーデン、日本、フランス、スイス、カナダ、英国、オランダ、オーストラリア、イタリア、オーストリア、フィンランド、ニュージーランド、アイスランド、ルーマニア、エストニアの17カ国。米・イスラエルのガザ大量虐殺戦争を支持してきた国だ。われわれは、これらの国々全てに対し拠出再開を要求する。

 イスラエルはICJ判決後も毎日数百人の市民を殺し、攻撃作戦を強化している。イスラエルのパレスチナ人虐殺はとんでもない規模になっている。すでに2万7000人以上の市民が殺された。その中には1万1500人の子どもたち、8000人の女性が含まれる。負傷者は6万6000人以上で、行方不明者も8000人を超える。

 このままでは2月中にもUNRWAは活動停止に追い込まれる。被害を受ける200万人以上のガザ市民には何の罪もない。ガザの住民全部を罰する行為は国際法に禁止された「集団的懲罰」そのものだ。ICJ判決にあるように、ガザの人々は食料・水・医療品などの極度の不足に苦しみ命の危機に晒され、支援物資を最も必要としている時である。今、支援物資を止めることは200万人の命を奪うことだ。それは「第2のジェノサイド」、国際法違反の犯罪行為に他ならない。

米・イスラエルのUNRWA解体策動を許すな 

 UNRWAはパレスチナ難民のための特別な国連組織で、他の人道支援組織とは異なる。UNRWAはイスラエルの軍事力により虐殺され、故郷を追い出されたパレスチナ難民の生活を支援するだけでなく、帰還と補償の支援のために作られた。イスラエルの戦争と占領によって奪われたパレスチナ人の民族自決を支援するための組織だ。

 だから、イスラエルはICJ判決に敵意をむき出しにするだけでなく、この機会に長年目の敵にしてきたUNRWAの解体に踏み出した。イスラエルのガザ侵攻は市民の大量虐殺(ジェノサイド)だけでなく、市民の追放と土地を奪う民族浄化をめざしている。パレスチナ人の生活を支えるだけでなく、パレスチナ人の民族自決とパレスチナ国家建設を支援する組織であるUNRWAを、イスラエルは2重の敵意と憎しみで攻撃している。

中東全域への戦争拡大でICJ判決を打ち消す狙い

 米とイスラエルが結託した周辺国への軍事攻撃が活発化している。イスラエルはレバノンのヒズボラへの攻撃を激化させ、攻め込むぞと脅している。米軍は英軍と一緒になってイエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)への大規模な空爆を繰り返している。米軍は2月2日にイラクやシリアの85カ所に空爆を行い45人の抵抗勢力や地元市民を殺した。これらの攻撃をイスラエルも米国も「自衛」だとうそぶく。攻撃されるから守る権利がある、攻撃してくるのはイランの息のかかった組織だ、イランが地域の不安定要素、戦争の根源だとプロパガンダをばらまく。

 しかし、事実は全く違う。レバノンに侵攻し、数限りなく空爆や攻撃を繰り返してきたのはイスラエルだ。シリアに侵略戦争を仕掛け、不法に基地をおき、資源を略奪してきたのは米国だ。イスラエルも米もシリアを日常的に空爆し、ミサイル攻撃している。イラクでは出て行ってくれと言う政府の要求を無視して居座り、イラン高官を暗殺し、民兵を攻撃している。紅海では米英の連合軍がイエメンを地域の安全に対する脅威と決めつけ、国際法を無視して攻撃している。

 中東全域で、軍事力を振りかざして侵略と戦争を繰り返し、民衆の間に憎しみをかき立ててきたのは米とイスラエルだ。ガザだけではない。他国に対しても平気で空爆やミサイル攻撃を仕掛ける異常な国がイスラエルであり、中東で米の手先を務めるイスラエルと米こそが戦争の震源だ。彼らは今イスラエルのジェノサイドから目をそらせるために各地で攻撃を繰り返している。われわれは米とイスラエルによる中東全体への戦争拡大の火遊びを断固糾弾する。

ICJ判決を受け入れよ 即時恒久停戦と全面撤退を

 米政府は、今回もイスラエルの自衛権を持ち出して、ICJ判決を拒否した。国連安保理でICJ判決の実行が審議されているが、米国は拒否権を使うつもりだ。これまでも米国は、ガザ侵略・爆撃の武器・弾薬・ミサイルを途切れることなくイスラエルに提供し、国連安保理での停戦決議に繰り返し拒否権を行使し、事実上、ガザ大量虐殺戦争に参加し、共謀している。米帝こそガザ大虐殺の凶暴な共犯者だ。

 われわれは、米・イスラエルに対し、ICJ判決を受け入れるよう要求する。米・イスラエルに即時恒久停戦と全面撤退を要求し、ジェノサイドを止めさせること、人道支援物資搬入を拡大し、住民の命を飢餓、病気から救うことこそ緊急に必要である。

 岸田政権は1月28日にUNRWAに対する3500万ドルの資金拠出を停止した。日本政府は27日にICJ判決を支持し、誠実に履行するべきだと上川外相が談話を出したばかりだ。支離滅裂というほかない。ICJがイスラエルのジェノサイドの防止、人道支援物資の搬入拡大を命じているその時に、日本政府が人道支援の中心を担うUNRWA攻撃に参加し、ガザの人々を飢餓の地獄に突き落とす行為は犯罪的だ。われわれは、岸田政権にUNRWA拠出再開と人道支援拡大を要求する。

2024年2月9日 『コミュニスト・デモクラット』編集局

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