○レーニン主義を通してマルクス主義を学ぶ年にしよう
○反米・反帝・反植民地主義闘争を強化しよう
1924年1月21日、ヴェ・イ・レーニン(ウラジーミル・イリイチ・ウリヤノフ)が亡くなった。54歳、早すぎる死であった。それから100年が経った。
レーニンは、帝国主義とプロレタリア革命の時代に、マルクス・エンゲルスの政治的・理論的・思想的見解を継承し発展させた革命家であり理論家である。ロシアにおいてマルクス主義党理論を形成し、ボリシェヴィキ党を創設して革命運動を指導した。第一次帝国主義間戦争に直面し、帝国主義理論と新しい戦術を提起して、社会排外主義や右翼日和見主義と一線を画し、崩壊した第二インタナショナルに代えて第三インタナショナルを創設した。10月ロシア革命を成功させ、世界で初めて社会主義国家を打ち立て、ソヴェト政権樹立後は前人未踏の社会主義建設に全力を挙げた。同時に、激しい政治的・理論的・思想的闘争を通じて、マルクス主義をマルクス・レーニン主義へと創造的に発展させた理論家でもあった。
レーニン没後100年の今年、われわれは、レーニンの生涯、その革命的実践活動、理論活動と組織活動の全体、「行動の指針」としてのレーニン主義を学びとり、レーニンを通してマルクス主義を学びとることに全力を注ぎたい。その一助として本連載を開始する。
世界の共産党・労働者党はどのように100年を迎えたか?
(1) 日本国内ではほとんど無視されている。マルクス・レーニン主義を掲げ、レーニンの遺産を継承・発展させようという政党・政治勢力は皆無に近い。だから、われわれのこの連載は重要になる。
日本共産党は、もう半世紀近く前にマルクス・レーニン主義を放棄した。4年前の綱領改定で「覇権主義批判」を根幹に据えて以降は、米国よりも社会主義中国に対する批判を強調するようになった。
(2) 中国、キューバを始めとする社会主義諸国、先進諸国・途上諸国の左翼・共産主義勢力の多くが、レーニン没後100年を記念して様々な行事を行い、多くの論説を発表した。中国共産党とマルクス主義研究者は、ロシア革命を導き世界最初の社会主義を打ち立てたレーニンが、中国に生きたマルクス主義を持ち込んだこと、レーニン主義が毛沢東をはじめ中国共産党の指導者に影響を及ぼし、中国革命への理論的実践的原動力を与えたこと、現代に至る中国における社会主義の発展に多大な貢献をしたことなど、レーニンを全世界のプロレタリアートの指導者として高く評価した。中国とキューバの研究者は、レーニンのネップやソヴェト・ロシアの社会主義建設から教訓を得ようとしている。
先進諸国の共産党・労働者党の多くは、レーニン没後100年を、帝国主義との闘争を前面に押し出して強調することで記念した。ドイツ共産党(DKP)は、ドイツ革命で虐殺されたローザ・ルクセンブルクとカール・リープクリヒト、そしてレーニンの3人の名前を冠した集会を行い、パレスチナ人民との連帯、ドイツ軍国主義のファッショ的台頭との闘いと反帝平和運動の強化を呼びかけた。米のワーカーズ・ワールド党は、「パレスチナ連帯・反帝国主義国際会議」を開催し、パレスチナ連帯と帝国主義支配からの解放に全世界の労働者と民族解放運動が取り組みを強めることを訴えた。
「グローバル・サウス」のマルクス主義者もまた、植民地・半植民地に関するレーニンの思想が反植民地の民族解放運動の強力な推進力になったこと、米帝と西側帝国主義の世界覇権体制が新興・途上諸国の「主権」を奪い、新たな「従属国」的新植民地主義的構造を作り出していること、これに対する反米・反帝・反植民地闘争の意義を強調している。
帝国主義戦争の根本原因の解明
(1) われわれの眼前で展開中のガザ大虐殺戦争、ウクライナ戦争、「台湾有事」と対中戦争準備など「三正面戦争」の元凶は誰か?イエメン、シリア、イラクなど中東戦争への拡大を画策しているのは誰か?ラ米・カリブで反米政権を転覆するために軍事介入とクーデターを次々と起こしているのは誰なのか?――これら全ての元凶は米帝国主義である。
現代戦争の階級的根源は米帝一極支配、米帝主導の西側帝国主義にあるのだ。そして現代帝国主義戦争の目的が、レーニンの時代から今日まで続く植民地主義支配の維持強化と「超過利潤」の獲得なのである。これに真正面から対抗し、平和を追求し、平和な環境の下で人民生活の発展を推進し、「平和と開発」を新興・途上諸国全体に拡大しようと奮闘しているのが中国やキューバやベトナムを先頭とする社会主義国、ベネズエラやニカラグアなどの社会主義指向国である。
(2) レーニンは、『帝国主義論』や『社会主義と戦争』において、こうした帝国主義戦争論を第一次世界大戦の勃発直後から全面的に解明した。戦争の性格、戦争に対する階級的・党派的立場、戦争を阻止する戦術とスローガンを、「右」と「左」の誤りを批判しながら、労働者・人民に提起した。
われわれは、レーニンや途上諸国のマルクス主義者に学びながら、帝国主義の盟主アメリカの戦略的危険性を、米帝に従属し軍事大国化を追求する西側帝国主義の危険性を、その軍産複合体と金融資本の支配に遡り、解明する必要がある。そして、米帝主導の三正面戦争を社会主義中国と3大革命勢力の結集で抑え込んでいく戦術やスローガンに結実させる必要がある。
『帝国主義論』と植民地主義論の不可分一体性
(1) なぜ今、われわれは、植民地主義論を特別に強調するのか?――それは、ソ連崩壊後、先進諸国の共産主義者や「新左翼」、広義の「西側左翼」の中で、マルクス主義植民地主義論が無視・軽視され、過小評価されているからである。一部の共産党は、すべての植民地が崩壊したという「植民地体制なき帝国主義」を唱え、抑圧民族と被抑圧民族の区別を否定し、帝国主義と金融資本による新興・途上諸国に対する収奪・略奪、新植民地主義構造を否定している。
レーニンは、講壇理論家ではない。なぜ、『帝国主義論』を書いたのか?独占構造を分析するため、第1章を書くためではない。19世紀前半以来の欧米列強による植民地・勢力圏の分割競争の「最終的完了」を論証し、当時の帝国主義間戦争がその植民地・勢力圏の「再分割戦争」であることを政治的・実践的に明らかにするためであった(第5章、6章)。そしてその戦争からの活路の革命戦術を指し示すためであった。同時に、金融資本の支配、植民地支配が帝国主義の腐朽性・寄生性を強め、資本主義そのものを歴史的な衰退と没落の特殊な独占資本主義段階に追いやることを解明するためであった(第7~10章)。当時も今も、帝国主義戦争の階級的目的が金融資本による植民地支配の維持強化にあることを否定することは、レーニンとレーニン主義そのものを否定することである。
(2) 今回のハマス・抵抗勢力の抵抗闘争は、「植民地体制なき帝国主義」が全く現実に合致しない誤った理論であることを暴き出した。その前のニジェールや西アフリカを含む反米・反帝・反植民地主義の民族解放闘争の新しいうねりが歴史の表舞台に登場したのである。民族解放闘争の新しい時代を切り開いたパレスチナ人民の闘いは、マルクス主義の植民地主義論に新たな理論・イデオロギー問題を提起している。
世界の左翼・共産主義者の圧倒的多数は、米・イスラエルの虐殺・民族浄化戦争を糾弾し、即刻の恒久停戦と全面撤退、封鎖解除を喫緊の課題として要求している。そして、この民族解放闘争を、帝国主義的植民地主義との闘いとして位置づけ、歴史的に評価している。
われわれは、このような植民地主義および新植民地主義体制の歴史的把握に学び、帝国主義的新植民地主義支配の構造と超過利潤収奪体制を具体的に解明していきたいと考えている。
レーニンの「帝国主義と民族・植民地問題」を学ぶ
(1) レーニンの『帝国主義論』に立ち返り、「帝国主義と民族・植民地問題」を学び直すことがとくに重要である。レーニンは植民地主義に特別の関心を払い、20世紀初頭の帝国主義と植民地・半植民地・従属国等々との関係を分析することで帝国主義概念を確立した。抑圧民族と被抑圧民族の区別が決定的に重要であり、これこそが帝国主義の本質であるとした――このことは、今日においてとくに強調されなければならない。レーニンは、帝国主義が「新しい歴史的基礎における諸民族の抑圧である」ことを示すと同時に、東欧、アジア、アフリカにおける植民地・反植民地諸国における「民族運動のめざめ」に注目した。
レーニンは、この理論的基礎の上に立って、労働者階級と帝国主義に抑圧された全ての人民の世界的統一戦線、世界的な反帝国主義戦線を追求した。それは、1920年の共産主義インターナショナル(コミンテルン)第2回大会において、マルクス・エンゲルスの『共産党宣言』以来のスローガン「万国の労働者団結せよ」を発展させ、「すべての国の労働者と被抑圧人民は団結せよ」へと結実したのである。
(2) レーニンは最晩年、先進国ドイツの革命が頓挫した後、後進国ソヴェト・ロシアはどう生き残っていくかを必死に探求した。そして死の床で、口述筆記に頼りながら、ようやく「社会主義の輝かしい可能性」すなわち新たな革命的展望を、人口の圧倒的に多い東洋の後進国革命に見いだした。「闘争の結末は」「ロシア、インド、中国などが地球人口の圧倒的多数を占めていることにかかっている」「このまさに多数の住民が異常な速さで解放闘争に引き入れられており、この点で、世界的闘争の最終的な結末がどうなるかは、少しも疑う余地がない。この意味では、社会主義の終局的な勝利は、完全にまた無条件に保障されている」(『量は少なくても質の良いものを』)。レーニンのこの展望は、文字通り、天才的な予言の如く、社会主義中国の台頭という形で、100年後の今日においても生き続け、ますます光り輝いている。
時代の転換点とわれわれ
(1) ソ連社会主義世界体制が崩壊して30数年、われわれが生きて活動している現在は、米帝一極支配、世界覇権体制と植民地主義体制が瓦解し始め、他方で社会主義中国の急速な発展、これを原動力とする「多極化」世界秩序の進展と「グローバル・サウス」の台頭が、歴史のすう勢、不可逆的な過程として進み始めた時代である。われわれは、このような大激動、新しい時代への転換点に立っている。
中国や途上国の共産主義者、マルクス主義者が強調する「多極化」「グローバル・サウス」とは、いかなる概念か?それは、社会主義中国主導で、新興・途上諸国の「平和と開発」を軸とする新しい国際システムを作り出そうという運動を表す新しい概念である。その土台となっているのが、中国「一帯一路」構想、上海協力機構(SCO)、ラ米カリブ諸国共同体(CELAC)をはじめとする「南南協力」強化であり、BRICS拡大による脱ドル化と「国際紛争の平和的解決」の推進である。
それは、19世紀前半の大英帝国を手始めとする新たな資本主義的蓄積が生みだし、第2次世界大戦後から現在まで続く政治・軍事・経済を総動員した植民地主義体制「国際的な不平等・不等価交換システム」を根本から覆そうとする壮大な歴史的挑戦である。この世界的な植民地主義体制は、コロンブスの大航海時代以来の、「西洋」が「東洋」から富を略奪して世界史的発展を支配するようになって以降の、前資本主義時代からの植民地や三角貿易=奴隷制以来、500~600年にわたり続いてきたものであり、20世紀の帝国主義時代以降も再編しながら持続してきたものである。社会主義中国は、侵略や略奪、植民地主義的収奪のない「中国式現代化」を掲げ、この歴史的挑戦を率いようとしている。
それが現在、「グローバル・ノース」と言われる米と西側帝国主義の覇権体制・植民地主義支配体制の衰退と「グローバル・サウス」の平和的台頭として歴史の表舞台に現れてきているのだ。
(2) 先進国革命と先進国階級闘争が、とりわけ日本において、なぜ歴史的に立ち後れているのか? その根底にも植民地主義と途上国収奪がある。しかし、この長きにわたる歴史も変わり始めている。
社会主義中国と「グローバル・サウス」が突き崩す植民地主義的収奪体制と途上国支配の危機は、階級闘争を抑え込み、危機を先送りして帝国主義が延命してきた物的基礎、超過利潤体制そのものを掘り崩し始めている。この過程が進めば進むほど、資本主義の全般的危機は一段と加速し、先進諸国の階級闘争が再び復活する条件を生み出すことは不可避である。すでにインフレ・物価高で階級矛盾が激化する欧米諸国で、労働運動の新たな活性化が始まり、パレスチナ連帯運動の新しいうねりが巻き起こっている。
帝国主義の世界覇権と植民地主義体制が崩壊し、社会主義中国の発展と「グローバル・サウス」が台頭する新しい激動の時代は、必ずや労働者・人民の階級的覚醒を促し、帝国主義を打倒して社会主義を打ち立てる主体的条件を成熟させる――これがわれわれの揺るぎなき確信である。
本連載では、レーニンの遺産を導きの糸に、レーニンの戦争論と階級的根源論、レーニンの4大矛盾(体制間矛盾、帝国主義と民族解放勢力の矛盾、帝国主義間矛盾、帝国主義国内の階級矛盾)に基づく国際情勢論、帝国主義の世界覇権体制と新植民地主義支配=収奪・略奪体制の具体的形態、レーニンの国家論と社会主義革命論、レーニンのネップ論と中国・キューバなどの社会主義建設、レーニンの後進国革命論と「中国式現代化」論、レーニンの女性解放論、等々について、具体的に分析し論じていく予定である。
2024年2月6日 『コミュニスト・デモクラット』編集局