沖縄県民大会
全国・全世界へ戦争の拒否と平和の思いを発信

11月23日、秋晴れの強い日差しの中、沖縄県那覇市の奥武山公園陸上競技場で、「全国連帯 11・23県民平和大集会――対話による信頼と平和こそ平和の道」が開催された。集会は「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」が主催した。1万人の参加が目標とされ、沖縄全県と全国に集会への参加が呼びかけられた。

新しい参加者の獲得をめざす県民大集会の準備

 集会は、市民団体が主導して行われた初めての県民大集会となった。9月24日、県下60を超える反戦平和の市民団体の賛同で「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」が結成されキックオフ集会に800名の参加があった。米軍辺野古基地建設反対や米軍オスプレイ配備反対に絞って政府の反対してきた「オール沖縄」の枠組みから南西諸島で敵基地攻撃ミサイルの配備など自衛隊の急速な戦争準備に反対する運動の再構築が求められていた。2022年1月「台湾有事」で沖縄を再び戦場とする計画に正面から反対する個人加盟の組織「ノーモア沖縄戦 ぬちどぅ宝の会」が結成され、本島と与那国島、石垣島、宮古島の南西諸島の運動との連携も進められてきた。今年に入ってからの市民運動を主体とした行動の積み重ねが「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」の結成につながった。1万人集会の成功はこれらの運動の成果であった。

 集会準備の過程で、これまで集会に参加してこなかった人たちにどう足を運んでもらえるのか。とりわけ次世代を担う若者の参加をどう実現するのかが真剣に議論されてきた。「争うより愛しなさい」のスローガンや「スイミーバイ」(後述)の企画が採用された。女性や若者子どもたちを全面に押し出したカラフルな呼びかけのチラシも作成された。山城博治さんは全国を巡ってこの集会への結集を呼び掛けてきた。沖縄県民大会に連帯する同時アクションが全国で提起されるなか、県民集会は、「全国連帯!」と銘打たれた。

続々と会場に詰めかける人たち

 会場では、キッズスペースやキッチンカーなどが設置され、親子連れが参加しやすいように配慮されていた。集会に先立ち12時から前段の企画が行われ、音楽やエイサーで平和の思いが表現された。平和の歌声が会場に響く。

 この段階での参加者は数百人だった。本当に1万人が来るのかと危ぶまれた。共同代表の山城博治さんは、自らゲート前にたって参加者を出迎えた。「参加してくれてありがとう」と私は山城さんに直接声をかけられ握手を交わした。山城さんは笑顔の中に、ほんとうに1万人の人が参加してくれるのかという共同代表としての責任感からくる心配、悲壮な思いがその顔から感じられた。

 コンサートが行われる中、2時からの集会開始に合わせ続々と参加者が入場してきた。20分前には会場ステージ正面と日陰のステージの裏側も多くの人で埋め尽くされた。キッズスペースやその周辺には親子連れが多く、メッセージで魚を描く巨大アート「スイミーバイ」の制作が続けられた。会場内の外側のテントでは、ミサイル写真展やPFAS展、土地規制法やパレスチナ映像展などのコーナーも設けられた。

玉城知事の集会参加とアピール

 若き城南市会議員 瑞慶覧長風さんの司会で集会は始まった。主催者代表に続いて玉城デニー知事が挨拶した。

 玉城デニー知事の集会参加は開催日の数日前に決まった。台湾訪問の直前に集会に駆け付け、「子どもたちの未来に戦争の未来があってはならない。今私たちがもとめている平和の思いを、全国、全世界で共有するために行動し声をあげていこう」と訴えた。辺野古新基地建設の代執行訴訟での判決が控える中、辺野古の基地建設の反対と合わせ、自衛隊を前に押し立てた沖縄の軍事要塞化に反対する集会への知事の参加は政治的に重要な意味をもつ。知事の挨拶は大きな拍手につつまれた。

 沖縄国際大学の前泊博盛教授が基調報告を行い、「台湾有事そして沖縄有事は近いという報道による印象操作をはねのけなければならない。なぜ沖縄が戦場にならなければいけないのか。新しい時代を若い人に託し、育てて一緒に立ち上がろう」と述べた。オール沖縄の共同代表高里鈴代さんは「沖縄戦の凄まじい経験。だからこそ被害者にも加害者にもなりたくない。次の戦争への加担を明確に拒否するためにノーの声を上げよう」と訴えた。共同代表のひとり具志堅隆松さんは「県民一人一人が戦争を拒否する意思表示をする機会、このような集会をこれからも続けていく。台湾、フィリピン、韓国など近隣諸国とも連帯していきたい」と述べた。全国基地爆音訴訟原告団連絡会議の金子豊貴男さんは「爆音訴訟での違法判決も、実際には騒音問題を解決できていない。騒音被害の裁判で日米地位協定の実態を曝露していく。爆音訴訟の全国の仲間が沖縄と連帯して闘う」と述べた。

平和へのメッセージ

93歳と26歳 世代を超えた三線と歌 

 93歳の山根安行さんは三線と八重山民謡に平和の願いを込めて創作した歌を披露した。石垣島での戦争マラリアで、母親をなくした体験を語った。「戦争は地獄。絶対に起こしてはいけない」と訴えた。山根さんの訴えに会場は静まり参加者は聞き入った。

 若者を代表して、平和をテーマにした三線ライブに取り組む桑江優稀乃さんが登壇。桑江さんは医師の国家試験をとったばかりの26歳、那覇在住の女性だ。近づく「戦争の足音」に危機感を覚え、軍隊のない中米のコスタリカを訪問するなど「どうしたら戦争を起こさないようにできるか」を考えてきた。桑江さんは「世代をこえてこの沖縄から日本に、世界に、平和の輪を広げていきましょう」とアピール。三線に乗せて沖縄で馴染み深い「童神」を力強く歌い上げた。会場は大きな拍手に包まれた。

 続いて与那国(与那国島の明るい未来を願うイソバの会 狩野史江さん)、石垣(石垣市議 内原英聡さん)、宮古(宮古島平和ネットワーク 福里猛さん)、奄美(奄美ブロック護憲平和フォーラム 関誠之さん)、鹿児島(馬毛島への米軍施設に反対する市民連絡会 西之表市議議員 長野広美さん)、沖縄市(自衛隊弾薬庫等建設に反対する沖縄市民の会 島袋恵祐さん)、うるま市(ミサイル配備から市民を守るうるま市民の会 照屋寛之さん)など、この間の南西諸島、鹿児島での現状と運動の報告があった。

 県民の会事務局長の山城博治さんから行動提起があった。「運動を未来につなぐため若者を見守り押し出してほしい」と若者への運動の継承と世代をつないで闘うことを最初に訴えた。「与那国、石垣、宮古、奄美、馬毛島の島々では自衛隊が入り孤立感が深まり反対の声を上げるのが難しくなっているといわれている。島々は決して孤立していない。平和を守る声は一つだと訴えていきたい」と島々との連帯の強化を訴えた。そして「沖縄を孤立させない、再びこの国を戦争国家にさせないという連帯を今日からスタートさせよう」と運動の全国化を呼びかけた。

 「戦争を知らない子どもたち」を参加者全員で大合唱。初めて参加した人たちも含め、思いは一つになった。

 この集会をスタートラインとし、次は5万10万人の県民総決起の大集会を開催し、全国と全世界と団結して戦争を止める決意を発信するとの「11・23県民平和大集会 宣言」が読み上げられ参加者全員で確認された。

 完成された巨大アート「スイミーバイ」がステージの前に移動。全参加者がそれを囲み、具志堅隆松さんコールの団結頑張ろうに合わせて声をあげた。会場は熱気に包まれた。この集会を出発点として闘いを継続していくことの意志が示された。

 会場内での集会カンパは200万円が集まった。会場内では集会参加者7500人とアナウンスされたが、その後主催者からメインゲートとは別の入り口からの入場者をカウントしていなかったことから参加者1万人に訂正された。目標は達成された。

 集会はYoutubeで同時中継され全国に発信された。同日、石垣島では「県民平和大集会」に連帯して「島を戦場にしない市民の会」が呼びかけ集会を開催、音楽とリレートーク、パレードが行われた。東京2000人、大阪400人など全国各地でこの日の集会に連帯する集会が開催された。

全国交流会の開催

11・23はスタートラインを確認

 集会後、会場をパレット市民劇場に移して全国交流集会が行われた。山城さんの司会で東京、埼玉、神奈川、静岡、愛知、奈良、京都、大阪、兵庫、愛媛、大分、鹿児島など全国各地で闘われている運動の紹介リレートークが行われた。200名の参加があった。 集会の大成功で本来の笑顔に戻って、発言者を紹介する山城さんの姿が印象的だった。沖縄の運動が全国の反戦運動を牽引する結集軸となっている。全国から結集した運動は、11・23県民大集会の熱気と闘いの決意に触発、刺激されて、各地の運動を強化していくであろう。

(NOW)

11.23 沖縄県民大会 提供 琉球新報
PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました