米・イスラエルはジェノサイド・飢餓政策をやめろ

○国内外の運動の力で恒久停戦を押しつけよう
○パレスチナ民族浄化=民族絶滅計画を断念させよう

[1] 大虐殺が新たな段階へーー意図的な飢餓・大惨事政策を許すな

(1) 12月1日、イスラエルはハマスの休戦再延長提案を拒否して交渉を打ち切り、ガザ地区全体への無差別全面攻撃を再開した。

 北部のガザ市ジェバリエ難民キャンプ、シュジャイア地区から南部の中心都市ハン・ユニス、ラファまで激しい空爆・攻撃を仕掛けた。すでにガザの全住宅の半数30万戸を瓦礫の山に変えた。北部は完全な廃墟にされ、ガザ住民の多数がハン・ユニスなど南部に強制的に追いやられた。イスラエル軍は、この南部の住宅、学校、病院を標的にして集中的に爆撃しているのだ。さらに南部への地上侵攻を開始した。

 残虐行為がエスカレートしている。8日には、「ハマスの一斉検挙」と称して、男性の民間人など100人以上を拉致し、裸にして手錠をし、砂漠地帯で見せしめにした画像が出た。エルサレム副市長は「人間ではないから穴を掘って生き埋めにしろ」とXに投稿した。文字通りナチスだ。

 ガザ保健省は、攻撃再開後1日で700人、5日までに1200人以上が殺されたと発表した。再開後の死者は急増している。すでに死者総数は1万6000人を超え、行方不明も7600人、負傷者だけで4万3千人を超えた。合計7万人に迫りつつある(12月5日)。ほとんどは子どもや女性、高齢者だ。われわれは満腔の怒りを込めて米・イスラエルの無差別殺戮を糾弾する。

(2) 多くのパレスチナ連帯運動や弁護士・法律家が、飢餓と疫病の蔓延による人道的大惨事を回避するために、抗議の要求に停戦だけではなく、ジェノサイド条約やアパルトヘイト条約の発動を加える動きが出ている。

 人道大惨事が切迫しているからだ。イスラエルは、ガザ地区に対して食料、燃料、水、電気、薬など人道物資の搬入を遮断し飢餓を作り出し、感染症が急速に広がっている。7万人の犠牲者では済まない。桁違いの大惨事だ。意図的な飢餓政策、意図的な大惨事政策を許すな。イスラエルの攻撃再開を糾弾し、大虐殺を止めろ、恒久停戦を受け入れよの声をさらに強めよう。

[2] 米・イスラエルの目標はパレスチナ民族の強制移住=浄化・絶滅

(1) イスラエルはなぜ一時休戦を打ち切り攻撃を再開したのか。それは、準備していた全面戦争を再開し、これを契機にパレスチナ人を強制排除する民族浄化政策を進めようというネタニヤフ極右政権の強い衝動があったからだ。休戦延長が続くことで、国際的批判と国内からの批判がさらに高まり、最後には停戦と撤退を余儀なくされるという危機感を抱いていた。

 イスラエルの本当の狙いは、ハマスだけでなく、パレスチナ人をせん滅し、民族浄化を成し遂げることである。大量殺りくだけではない。住居を破壊しつくし瓦礫の山に変えたのも、二度と住めなくするためである。意図的に病院を標的にして攻撃するのは、住民の命を守る医療基盤そのものを叩きつぶすためだ。さらにイスラエルが計画する地下トンネルへの海水投入は、地下水・帯水層に塩害をもたらし飲料水と農業用水を奪うことで、二度と生活できない土地にすることが狙いだ。そして、裁判所、公文書館、大学を爆撃し破壊したのは、パレスチナ人の歴史資料、記録と記憶そのものを抹消する民族浄化以外の何ものでもない。

(2) ネタニヤフ政権は昨年12月、十数年前から構想していた民族浄化政策を本格的に実行する強権的姿勢に舵を切った。宗教シオニズム党のスモトリッチ(財務相)、ユダヤの力のベングビール(国家安全保障相)など極右と連立しファシズム的性格を一層強め、入植地植民地国家の完成をめざす戦略転換を図ったのである。ヨルダン川西岸地域では武装した入植者を前に立ててパレスチナ人の土地略奪を拡大してきた。そして10・7アル・アクサ洪水作戦を逆手にとって、彼らが考える「ガザ問題の最終解決」(この表現はナチス・ドイツによるユダヤ人絶滅計画だ)=民族浄化へと一気に突き進み始めたのだ。

 民族浄化計画は机上の空論ではない。政権と支配層中枢と米政府が共有し、実行に移し始めた現実の計画だ。それはイスラエル情報省の10月13日付「政策文書;ガザの民間人に対する政治的指令の選択肢」なる文書で暴かれた。「政策文書」の戦略目標はハマス壊滅とガザ220万住民のシナイ半島への放逐だ。

 そのシナリオは、①ガザ北部からの市民立ち退き、②第1段階ではガザ北部に焦点を当てた空爆と地上部隊侵攻、③第2段階で北と東からの地上作戦とガザ地区全域の占領、ハマス戦闘員の一掃、④民間人をシナイ半島に追い出す、⑤エジプトに受け入れさせ北シナイに定住地を作る、⑥国境に数キロの「無菌」(パレスチナ人を菌と表現)地帯を作り、帰還を認めないというものだ。イスラエルは作戦を「政策文書」通りに進めている。現在は③第2段階で、「問題解決」=住民のシナイ半島追放にひたすら突き進んでいる。これは2007年以降「大イスラエル構想」としてイスラエル中枢の共通の国家戦略だ。農業大臣で元情報局長のアヴィ・ディヒターは「我々は今、ガザ・ナクバを展開している」と露骨に語った。長期にわたって練りに練ったこの民族浄化=絶滅計画の実現にイスラエルは打って出たのだ。

[3] 米帝国主義の全面加担と役割分担――大虐殺の共謀・共犯

(1) イスラエルが、全世界で高まる停戦要求を一顧だにせず、大虐殺を続けられるのは、バイデンの米帝国主義が全面的にイスラエルを支援し、共謀しているからである。国際法違反、国際人道法違反の戦争犯罪が裁かれることがないのも、米国がイスラエルを全面的に擁護し、日本を含む西側諸国が同調しているからである。

 米国のイスラエル支持・援助は、政治・軍事・経済の全面にわたる。それは単に、バイデンの大統領選対策ではない。深い歴史的・階級的基礎、物質的・経済的基礎がある。米と西側帝国主義にとってイスラエルは、中東諸国を分断支配し、民族解放運動を叩き潰し、植民地主義支配を永続化させる最大の支柱なのである。大虐殺も民族浄化計画も米国が支持するからだ。だから、われわれは、「米・イスラエル」とし、並べて指弾する。

(2) 米とイスラエルの共謀・共犯関係を徹底的に暴き出そう。第1に、イスラエルの大虐殺戦争における緊密な協力である。休戦延長拒否と全面攻撃の再開も、バイデンがゴーサインを出した。ブリンケン国務長官が一時休戦中の11月30日、イスラエル戦時内閣に出席して同意し、翌日には、「戦争が終わるまで支援を続ける」と本音を露わにした。バイデンやブリンケンのイスラエル戦時閣議参加は恒例化している。地上作戦開始の際にも、イラクで市街戦を指揮した米海兵隊将校が作戦に加わった。直接虐殺と破壊を行っているのはイスラエル軍だが、その作戦計画段階から、その戦術、進め方やテンポについて米国が緊密に連携・協力しているのだ。彼らの「人道配慮」は全くの偽善だ。

 第2に、民族浄化計画についても、米とイスラエルは共謀関係にある。米国がエジプトなどアラブの諸政府にガザ住民を受け入れるよう圧力を加えている。米国はまたIMFを通じてエジプトに難民引き取りと債務軽減の取引を執拗に働きかけている。

 第3に、武器弾薬供給・軍事物資支援である。米政府は10月7日以降、100発の大型バンカーバスターを初め、爆弾1万5000発、155ミリ砲弾5万7千発、アイアンドーム対空システムのミサイル、戦闘車両の補充など戦争と大虐殺に不可欠な弾薬を供給し続けてきた。イスラエルの退役少将は告白する。「ミサイル、弾薬、精密誘導爆弾、飛行機、爆弾は全て米国製だ」「米国が蛇口を閉めた瞬間に戦えなくなる」と。イスラエルの暴走を即効停止させる力は米国だけが持っているのだ。その意味でバイデンの強固なイスラエル支持は犯罪的である。これに追加経済援助143億ドルが加わる。これまでも米国は毎年38億ドルを援助してきた。イスラエルを財政支援と軍備供給で支え、植民地国家の怪物を育て上げたのは、他ならぬ米国なのである。

 欧州諸国もまた米国と一体となり、戦争に軍隊を直接参加させイスラエルを支えている。米英は特殊部隊を送り込み、人質探査を受け持ち、都市戦争、トンネル戦争を指導している。さらにイスラエル国内に対空ミサイル部隊を送り込み、核爆弾製造工場や原発の防衛、他国からの弾道ミサイル迎撃任務を担っている。

 第4に、中東全域での米・イスラエルの共謀、役割分担がある。米軍は2隻の空母と打撃部隊を地中海や周辺に展開している。紅海上にはミサイル駆逐艦2隻を配備し、イエメン(フーシ派)からイスラエルに向かう弾道ミサイルやドローンを打ち落とし、イスラエル関係の船舶防衛の任務を請け負っている。地中海でも空母打撃部隊が海上からレバノンのヒズボラ、イラク、シリアの武装勢力を攻撃・威嚇し、ハマスと呼応してイスラエルに戦火を開かないように威圧し続けている。米軍はすでに軍事力を派遣するだけでなく、国外での戦争の一部を引き受けており、その意味ではすでに参戦しているのだ。

(3) そして、国連での米国のイスラエル擁護である。停戦決議を全て葬ってきた。直近では、グテーレス事務総長が就任以来初めて、人道的大惨事を回避すべく国連憲章99条を発動し、安保理に強力な要請をしたが、これも封じ込めた。12月8日、アラブ首長国連邦が提案した即時人道的停戦決議をただ一カ国米国だけが拒否権を行使し叩き潰したのだ。バイデンはこれによって数万人の死傷者をつくり出す戦争犯罪者になるのだ。

[4] 米・イスラエルの行き詰まり――国際的な圧力で恒久停戦を押しつけよう

(1) 大規模空爆開始から2ヶ月、米・イスラエルは暴虐の限りを尽くしている。だが、米・イスラエルはともに様々な対抗要因・阻止要因によって逆に包囲され始め、行き詰まりの局面に入っている。

 何よりも第1に、「テロ組織」との交渉は拒否してきたが、ハマスとの交渉に応じて一時休戦を受け入れ、パレスチナ人拘束者の解放へと追い込まれた。イスラエル軍は、パレスチナ抵抗勢力の不屈のゲリラ戦で、北部ガザ市の制圧はできず、相当程度の損害を被っている。抵抗勢力は非対称の強大な米・イスラエルの軍事力を消耗させているのだ。

 第2に、パレスチナ民族が、英雄的な犠牲と忍耐を発揮し、ハマスと抵抗勢力の周りにかつてなく団結している。ガザで大虐殺を起こせば、批判がハマスに向くだろうという米・イスラエルの思惑は破綻した。ヒズボラ、イエメン(フーシ派)等がこれに呼応してイスラエルを攻撃し、イスラエルが関わる船舶を拿捕し脅威を与えている。

 第3に、ネタニヤフ政権が足元から揺らぎ始めた。国内で人質全員解放と即時退陣を要求する大規模デモが頻発し、支持率急落でいつ崩壊してもおかしくない。一時休戦と人質解放をめぐって、政権内の対立・亀裂も表面化した。さらに失業率急増や財政破綻などイスラエル経済は甚大な打撃を受け、経済危機の深刻化で予備役の動員を一部解除せざるをえなくなった。

 第4に、米国内で若者世代の反感、アラブ・イスラム系の人々の批判が強まり、来年のバイデン再選が大きく揺らぎ始めた。

 第5に、国際的世論戦での孤立である。何よりも、現場から真実を伝える親パレスチナのSNSの猛烈な勢いでの対抗が、米・イスラエル・西側メディアの共謀による大量虐殺否定のデマやプロパガンダを打ち砕いている。国際法、国際人道法に反する戦争犯罪とジェノサイドに対する国際的な非難が集中している。

 第6に、社会主義中国が主導し、キューバ、ベネズエラなど社会主義・社会主義指向諸国、さらには新興・途上諸国が連携して、国連を舞台に、対米包囲網を狭めている。国連安保理で拘束力・強制力のある決議を採択し、それに従わない場合、イスラエルに制裁を課すという決議が追求されている。

(2) 最後に、米帝の軍事覇権の破綻である。米国自身のイスラエル支援の行き詰まりだ。武器・弾薬の供給が限界に達しつつある。特に155ミリ砲弾は枯渇している。ウクライナとイスラエルの両方に大量の弾薬を供与し続けることなど不可能だ。二つの戦争を財政的に支えることも壁に当たっている。両国の戦争支援に1000億ドル以上の予算を組んだが、年末までに使い切り枯渇する。

 それだけではない。イスラエル支援に2隻の空母、打撃艦隊を展開しているが、同時に南シナ海においてフィリピンを巻き込んで対中軍事挑発を繰り返している。要するに好戦的なバイデンは、ウクライナ、イスラエルに加えて、「台湾有事」=対中国戦争という、冒険主義的な同時三正面戦争に自らはまり込んでいるのだ。世界最大最強の軍事力を持つ米国といえども、同時に三正面での軍事力展開は能力を超えており、もはや限界である。このままバイデンが、イスラエルとウクライナへの軍事支援を続け、対中戦争準備を進めるならば、米帝の軍事覇権そのものが根底から崩れるだろう。

 

(3) 全世界で、攻撃再開後も、米・イスラエルに対する抗議、即時停戦を要求する行動が巻き起こっている。国際的なパレスチナ連帯行動に合流しよう。パレスチナ人民の不屈の闘いに連帯し、即時停戦の運動を一層広げていこう。とりわけ日本では岸田政権にイスラエル支持を止めさせ、停戦を要求するよう迫ろう。

 われわれは、以下の要求・スローガンを掲げ、街頭、地域、職場・組合でパレスチナ連帯行動を強めていく。

○パレスチナ人民の反占領・反植民地・民族解放闘争と連帯しよう

・米・イスラエルは、大虐殺(ジェノ サイド)=民族浄化戦争をやめよ。

・即時恒久停戦に応じよ。

・ガザ封鎖を全面的に解除せよ。水、 食糧、燃料等の生活物資を搬入せよ。 分離壁・検問所を撤去せよ。

・ヨルダン川西岸、エルサレムでの虐 殺・弾圧をやめよ。違法入植地を撤 去せよ。占領体制を終結せよ。

国際法違反、国際人道法違反の戦争 犯罪を全面的に暴き出そう。

民族自決権に基づくパレスチナ国家 の樹立。帰還権の承認と補償、全政 治囚の解放。

日本政府はイスラエル支援・支持を やめよ。日本・イスラエル軍事協力、 投資協力協定を撤回せよ。経済制裁 を行え。

 

2023年12月9日『コミュニスト・デモクラット』編集局

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