反動・軍事諸法案の強行成立に抗議する
岸田政権批判を緩めず、闘いを続行しよう
憲法改悪・国民投票法の危険を訴えよう

大軍拡財源確保法案の廃案を最後まで追求しよう
 今通常国会は、岸田政権が日本の国家政策の根幹、軍事外交政策を根本的に変える予算案と軍事法案、安倍・菅政権さえできなかった反動諸法案を、次々と成立させる異常な国会となった。これほどの反動・軍事諸法案を一気に強行するのは前代未聞だ。
 すでに原発GX法、マイナンバー法、防衛産業育成法等を成立させた。防衛産業育成法は自公だけでなく、維新、国民、立憲等の野党も賛成した。GX推進法も最終的に立憲も賛成に回った。まさに与野党翼賛の形で、反動諸法案が次々と成立していく状況だ。すべてを軍事に従属させる軍事最優先の政府予算は、まともな議論や抵抗もないままにすでに年度内に成立している。
 9日には、入管法改悪を強行した。入管に殺されたウィシュマさんの家族や難民・移民、仮放免者の切実な声を無視し、全国に広がった若者をはじめとする反対運動を押し切っての暴挙である。われわれは、一連の反動・軍事諸法案の強行に断固抗議する。
 9日時点で、軍事費財源確保法案はまだ成立していない。それは、軍事費を5年間で倍増し敵基地攻撃(=中国本土への攻撃)を可能とする長距離ミサイルなどを大量配備するためのものだ。増税によって人民負担を強いることが不可避となる。法案成立を許してはならない。最後まで反対の声を上げ続け、廃案に追い込んでいこう。
 岸田政権の強硬姿勢は、国会だけではない。昨年12月には「安保3文書」を閣議決定し、南西諸島への自衛隊・ミサイル配備など最前線攻撃基地化、対中戦争準備を着々と進め始めた。朝鮮民主主義人民共和国の人工衛星発射に対して、事前の発射通告を無視して「弾道ミサイル」と決めつけ、破壊措置命令とJアラートを発出して、自ら軍事的脅威を煽り立てた。G7広島サミットにおいては、米帝の世界覇権維持、ウクライナ戦争継続と対中包囲強化の先兵、戦争挑発の急先鋒として奔走し、文字通りの「戦争サミット」を仕立て上げた。広島から軍事対決を唱えるその姿勢は、被爆地広島への冒涜以外のなにものでもない。
 だがすべてが岸田の思惑通りに進んでいるのではない。入管法改悪では、難民審査のずさんな実態が次々と暴露され、立法根拠そのものが総崩れになった。にもかかわらず強行する政権に対する怒りが、反対運動のうねりを生み出した。維新の差別発言が火に油を注ぎ、入管行政の非人道性に対する怒りの声が急速に広がっていった。多数の学生・若者も積極的に加わったこの運動は、他の法案では動揺的な立憲など野党の妥協を許さず、最後まで国会内での抵抗を貫かせる原動力となったのである。強行の結果、岸田批判の声はさらに拡大している。入管法改悪反対の新たなうねりは、大衆運動こそ世論を喚起し、政権の反動政策を押しとどめる力になることを改めて示した。
 われわれは引き続き、岸田政権の反動的・反人民的・軍国主義的諸政策を批判し、闘うことを呼びかける。

高まる憲法改悪の危険――「緊急事態条項」による政府「独裁化」と人権抑圧
 6月21日が会期末となる今国会での解散、7月総選挙の可能性が浮上している。反動化・軍事化を強行する岸田政権が、次は憲法そのものの改悪を狙ってくることは確実だ。早ければ秋の臨時国会で国民投票法改定を上程する可能性がある。改めて警戒を強めるとともに、憲法改悪の危険性を広範に訴えていく必要がある。
 現在衆参両院で憲法審査会が全会派参加のもとで毎週開かれている。緊急事態条項が最優先のテーマとなり、6月15日には論点整理に進むつもりだ。目下の議論の中心は第54条、衆院解散時に開催できる参院緊急集会の期間の問題だ。現行憲法では解散から総選挙までの40日、総選挙から特別国会までの30日、併せて最大70日しか認められていないが、これを「1年程度延長が認められるよう」憲法を変えろというのが自民や維新ら改憲派の主張である。
 一見すれば、「たまたま衆院が解散されている時に天変地異が起きたときの参院の対応」が、あれこれ延々と議論されているように見える。だがここに「台湾有事」における政府の対応の危険性が表われている。「台湾有事」は自然災害ではない。突然起こるのではなく米国が計画的に引き起こす戦争だ。米国が「台湾有事」Xデーを決定し、首相がそれに連動し衆院をわざと解散して衆院不在を作り出せば、内閣の権限で緊急集会を統制することが可能となる。1年延長の継続を繰り返すことで緊急集会を常態化させ、内閣独裁を作り出せるのだ。もともと自民党の改憲案には、100日ごとの緊急事態宣言の継続、内閣による政令制定の権限、内閣総理大臣による財政的措置、地方自治体の長への命令等が盛り込まれ、国による人権制約規定がある。緊急事態条項は、まぎれもなく「台湾有事」における政府「独裁化」と人権抑圧条項だ。
 憲法審査会での9条改憲の議論もエスカレートしている。9条に「自衛隊」を明記するのに加え、〝内閣総理大臣および内閣の職務規定(72条、73条)にも自衛隊条項を入れる〟〝憲法裁判所を設置〟など、戦争勃発を前提にした自衛隊の統制や特別裁判所の設置に関する議論が交わされている。
 もう一つの重要テーマが国民投票法改定だ。改憲反対・賛成の意見を広報誌に掲載するための「国民投票広報協議会」の規定や国民投票14日前以前のCM規制、ネットCM規制など重大な課題がある。豊富な資金力とメディア規制の力をもつ与党と大資本が、毎日シャワーのようにテレビやラジオ、新聞に加えて、ネットやSNSなどを使ってやりたい放題という状況になれば、圧倒的に改憲派が有利となる。
 憲法審査会は現在、自民、公明、維新、国民が改憲賛成の立場をとり、立憲が改憲反対ながらも「論憲」で議論に応じ、共産は9条堅持など原則的な見解を述べるにとどまるという厳しい状況にある。憲法審査会全会一致の原則を放棄し多数決によって国民投票法案や改憲条文を採決していく危険も生まれている。

「台湾有事」に向けた国内体制づくりを許すな
 「安保3文書」によって、日本の軍国主義は全く新しい段階に入った。一般的な「戦争する国」、集団的自衛権の行使、対中・対北戦争準備、海外派兵ではなく、「台湾有事」を明確に想定した具体的な国内体制作りに舵を切っていると見るべきである。
 「台湾有事」とは、第1に、米国が日本を盾にして2027年をめどに引き起こそうとしている対中戦争である。第2に、自衛隊が長距離巡航ミサイルで全国を攻撃基地化し、沖縄と南西諸島だけでなく日本全土の米軍基地、自衛隊基地を巻き込むものになる。第3に、自衛隊の一部が出動するだけの戦争ではなく、国民全体を動員するものとなる。
 日本政府は、これまでデタラメな解釈改憲を積み重ねアフガニスタンやイラクに自衛隊を派遣し、米国の侵略戦争に加担してきた。2014年、2015年には憲法違反の集団的自衛権行使容認を閣議決定し、海外派兵や米軍との共同作戦を可能とする戦争法を強行成立させた。いずれも自衛隊の行動範囲と役割を飛躍的に拡大させる法整備となった。しかし隣国の中国と武力対決、武力行使、軍事衝突、戦争に突き進むのであれば、問題は自衛隊の役割の変更にとどまらない。日本全体が出撃基地、侵略の拠点になり、従って日本全体が攻撃の対象=戦場になる。戦時の日本における米軍や自衛隊の移動や作戦行動、国内での人民生活の制約や人権の制限、人民の行動の掌握と統制、外国人の管理、平時の法律の制限や停止と無力化、戦争のための人民の避難強制、官邸や原発・基地の防衛(土地規制法)、病院や学校など公共施設の強制使用や動員、民間企業や施設の協力と接収、メディアの統制等々が問題になる。
 もちろん現行法でも台風や地震など災害時に、強制力を持たせる形で、国民を避難させることや公共施設を使用することは可能だ。「国民保護法」では、国や自治体、病院や公共施設に対して、強制命令を出すことはできる。しかしそれはあくまで「国民の命を守る」ためである。現憲法のもとでは、戦争や国益を目的とした人権の制約や強制はできない。なぜなら、日本国憲法は一切の戦争と軍隊を否定し、その根幹には「人権」が据えられているからだ。これが、岸田政権が改憲への強い衝動を示す理由だ。

一つ一つの抵抗を通じて、戦争への道をストップしよう
 岸田政権は、G7でのゼレンスキー来日などを取り上げたメディアの大騒ぎで、支持率上昇につなげたが、東京選挙区をめぐる自民・公明の対立や長男の公邸での宴会問題などで当初の思惑通りにはいっていない。しかし岸田首相は「任期中改憲」を掲げている。解散総選挙によって自民議席を拡大し、2/3を大きく超える改憲勢力を獲得し、国民投票法改定から、憲法国民投票実施へつなげたいという衝動がある。
 岸田政権は、今から4年後に中国との戦争に突入することを前提に、逆算してその準備をしていると考えなければならない。その一つひとつに抵抗していこう。そのいくつかでも阻止できれば、戦争に向かう全体の中の一つのピースを欠落させることになり、「台湾有事」を困難にすることができるだろう。絶対に戦争を引き起こさないために、反中プロパガンダに対抗し、対中軍事挑発をやめ、平和外交こそを第一にするよう要求しよう。9条改悪と緊急事態条項を軸とした改憲反対の声を強めよう。


2023年6月9日『コミュニスト・デモクラット』編集局

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました