2月6日、トルコ南東部・シリア北部でマグニチュード7・8、M6・4、M7・5の大地震が立て続けに起こった。余震は数限りない。建物、道路、橋が瓦礫の山となっている。膨大な負傷者、避難民が発生している。トルコ、シリア両国の死者は9日現在計2万人を超え、増え続けている。シリアの被災者は人口の半数、1千万人にのぼると言われているが、メディアでは無視され、救助も遅れている。
今こそ米・NATOは対ロシア戦争の停戦を
今こそ、この深刻な自然災害に対して全世界が被災者に即刻の支援を提供し、人道的災害の発生を防ぐ時だ。ところが、米・NATOは、対ロシア戦争と対中戦争準備に夢中になっている。戦争は全人類的課題ではない! 気球騒ぎに興じるヒマがあるなら、ウクライナ戦争の緊急停戦を呼びかけ、対中戦争準備を中止し、全世界に人道支援を呼びかけるべきだ。
バイデンは世界の対シリア制裁解除要請を無視
とりわけシリアはすでに長年の戦争で慢性的な危機にあり、トルコ以上に人道的危機に陥る危険が高い。ところがバイデン政権は、「アサド政権を承認しない」と救助活動の妨害に出ている。米は今回の地震をアサド政権を打倒する好機とみているのだ。
問題は、米国が主導する西側諸国による経済制裁だ。米政府は2020年に「シーザー法」を制定し、シリア政府と取引する企業に制裁をかけ、シリアの貿易・投資をストップさせる暴挙に出た。これが国家再建も、今回の被災者救助をも困難にしている。
シリア外務省は7日、人道的活動と救助活動を妨害したとして米国の制裁を非難した。瓦礫を取り除くための機器が制裁によって禁止されているため、手作業や粗末な道具でしか瓦礫を掘れない。医薬品や医療機器へのアクセスも拒否されている。シリア・アラブ赤新月社は、救助活動のための機器、救急車、消防車、重機、医薬品の調達のため、即刻の制裁解除を求めた。中国政府は、米に対してシリアへの一方的かつ違法な制裁を解除するよう要求した。イラン外務省も、制裁解除のため米国に圧力をかけるよう世界に呼びかけた。
しかし、米当局者は、何と制裁はシリアへの人道援助に全く影響を与えないと、制裁解除を拒否した。人道に対する犯罪行為だ。
反米アサド政権打倒で米帝が介入 今も米軍が駐留
米政府は、2003年にイラクを侵略し、フセインを打倒・殺害し、2011年にリビアを打倒しカダフィを殺害した。そして同年、米帝主導でシリアへの軍事介入が始まった。直接介入ではなく、アルカイダやイスラム国などイスラム原理主義武装勢力を使った介入だ。アサド政権を打倒すれば、反米独立を掲げる国は激減し、米帝の中東支配・石油支配は大きく前進する。
しかし、アサド政権は持ちこたえ勝利した。米国は、今度は制裁でシリアを崩壊させようと目論んだ。シリア制裁は、米帝のシリア侵略戦争の延長なのである。実際、米国は2014年以来、今もシリア北東部と東部に米軍を駐留させ、軍事的プレゼンスを維持している。米帝国主義は、シリアの分割と資源略奪を諦めていないのだ。
シリアの石油の8割を略奪
シリア制裁だけではない。米国は国家再建の資金源を断とうと、シリアの石油、天然ガス、鉱物資源を露骨に略奪し続けている。これは荒廃した国家の再建の財政基盤を掘り崩す、まさに強盗行為だ。国家主権の侵害であり、天然資源の違法な植民地的略奪だ。米軍は、盗んだ石油を、一部は石油タンカーで中東の米軍基地に運び込み、一部はイラクに輸送し、そこでイラクの石油会社に低価格で販売し、そのお金を使って米国が支援する反政府武装グループを支援している。目がくらむほどの極悪非道のやり方だ。
シリア政府は、2022年前半時点で、シリアの1日の平均石油生産量8万バレルの約8割が米国に奪われたと非難している。シリア外務省は、米国が2011年から2022年6月までにシリアの石油・ガス部門に与えた損害は約1071億ドルにのぼると、国連に申し立てている。
しかし、米国や西側政府も、西側メディアも、この米国の帝国主義的強盗行為や軍事占領を無視し、一切報道しない。これが西側のメディア覇権の実態である。
バイデンはシリア制裁を解除せよ。救助活動妨害をやめよ。米軍はシリアから撤退せよ。シリアの石油略奪をやめよ。満腔の怒りをもって、この公然たる前時代的な帝国主義的植民地主義を糾弾する!
2023年2月8日 『コミュニスト・デモクラット』編集局