岸田政権は、安倍元首相の国葬を強行した。しかし、国葬に反対する運動と世論は日を追う毎に拡大し、直前の世論調査では内閣不支持が支持を上回る事態に追い込まれた。国葬によって、自民党最大派閥の「安倍派」と安倍1強支配で勢いを得た右派勢力の信任を取り付け、岸田政権の求心力を高めようとした企ては完全に失敗した。
岸田首相は、決定に問題点があったことを認め、国葬の「基準」に論点をすり替えて幕引きを図ろうとしている。国葬決定に至った経緯、国葬そのものと天皇・皇族や自衛隊の関与、戦前同様に天皇制を讃える形で実施された内容の違憲・違法性の審査、実際にかかった経費の全容、弔旗掲揚や弔意の表明など子どもたちをはじめ全国に強要された事態と影響の調査を約束させよう。岸田政権の責任を臨時国会で徹底追及しよう。
統一教会と安倍とのつながりを明らかにせよ
安倍国葬の責任は、統一教会を巡る問題と密接に絡んでいる。自民党と統一教会を結ぶ要にいたのは安倍だ。祖父の岸信介元首相以来の密接な関係を受け継ぎ、選挙に際して統一教会の票を自ら振り分けていたなど、明確な証言がいくつも出ている。統一教会とその関連団体が主催するイベントにメッセージを寄せ、関連誌の表紙を飾り、インタビューに応え、記事を掲載し、堂々と統一教会の広告塔の役割を果たしていた。岸田は、その安倍を「点検」から完全に除外し「調査」さえ拒否している。統一教会を巡る問題の、最大の焦点はここだ。安倍と統一教会とのつながりの実相を、具体的に、証拠に基づいて、徹底的に明らかにさせなければならない。
9月8日に自民党が公表した「点検」では、統一教会や関係団体と何らかの関係があった自民党議員は、全体の半数近くの179人(9月30日の追加で180人)に上り、大臣8人、副大臣11人が含まれていた。これも各議員からの自己申告にすぎず、「関係」の具体的な中身は明らかにされず、検証もできない。特に、統一教会の政策への関与につながる秘書や事務所スタッフの受け入れについては、報告対象に含まれていない。数をより少なく関係を薄く見せるため、党側が内容を歪めたことも明らかになっている。
「点検」後も「報告漏れ」が次々と明らかになり、中でも山際経済再生相は、旧統一教会系のイベントへの出席を、外部からの指摘を受けてしぶしぶ認めるということを繰り返している。細田衆院議長も「点検」対象外とされ、世論への対応のため紙1枚と、非公開の議運委員長と筆頭理事に15分の説明を行っただけだ。「統一教会」の集票とりまとめや選挙支援の要にあった萩生田光一、文科大臣として統一教会の名称変更の認可に関わった下村博文、「家庭教育支援法案」「ジェンダー平等批判」等で重要な役割を担う山谷えり子ら安倍派重鎮と統一教会の関係を徹底的に明らかにさせなければならない。それを拒否する限り、自民党は統一教会とのつながりを継続するということである。宗教の体裁を取った極右の犯罪集団である統一教会に、「解散命令」を出すよう要求しよう。
中国を攻撃するための軍事費倍増 物価高騰と生活苦は放置
臨時国会の最重要の対決点は、今年度の第2次補正予算案だ。岸田政権は、軍事費倍増に加えて、「経済対策」の名を借りた国債の大量発行と資本への大盤振る舞いを繰り返そうとしている。
所信表明で、「5年以内に防衛力を抜本的に強化」と表明した。今後5年間で軍事費を5~6兆円増やして倍増させ、GDP比2%へと引き上げる狙いだ。自衛隊を、米軍と一体となって中国を包囲し「台湾有事」をでっち上げて戦争をしかける「軍隊」に変貌させる態勢作りだ。岸田政権が獲得を目指す敵基地攻撃能力(「反撃能力」)とはこのことである。これだけの軍事費を生み出すには、当面は国債の大増発で乗り切り、いずれは、社会保障や教育など生活関連予算の大幅削減や消費税の大増税によって人民から搾り取るしかない。補正予算と来年度予算での軍事費の異常な膨張に歯止めをかけることが、生活を守るためにも重要だ。
既に生活は、止まらない物価高騰によって痛めつけられている。8月の消費者物価指数(CPI、2020年を100とする)は総合指数(生鮮食品を除く)が102・5となり、前年同月比2・8%上昇した。消費増税の影響を除くと30年11カ月ぶりの上昇率だ。2%台は5カ月連続。エネルギー関連が16・9%上がり、電気代は21・5%上昇と7月の19・6%をも上回る。都市ガスは26・4%と41年5カ月ぶりの上昇率。食料も7月の4・4%を上回る4・7%と、高い上昇率が続く。2万品目を超える今年の値上げで、家計の負担は月平均5730円、年では6万8760円増えるという(2人以上の世帯について、帝国データバンクの試算)。特に低所得者層では負担増が大きく、年収329万円未満の世帯では、負担増が5万1423円で、支出の2・3%になる。
岸田政権は、所信表明で「日本経済の再生が最優先」としたが、物価高対策としては何もできず、ガソリンや小麦の価格を抑える対策だけを漫然と続けるだけ。むしろガソリン対策は大企業への補助金だ。低所得世帯に5万円を給付するというが、対象とする「住民税非課税世帯」は、東京23区で単身の場合、年間給与収入100万円以下程度。貧困世帯でもそれを上回ると対象外だ。9月30日に打ち出した「総合経済対策」で電気代負担減の新制度を打ち出したが、これも対症療法に過ぎない。物価高騰の一因である円安に対しては、「伝家の宝刀」過去最大規模のドル売り介入も「焼け石に水」であった。巨額の「経済対策」は、財政への懸念からさらなる円安を招きかねない。
物価高騰にもかかわらず年金は引き下げられている。10月から、75歳以上の高齢者の一部に対し、医療費負担が1割から2割に引き上げられた。厚生労働相の諮問機関である社会保障審議会の部会では、介護保険の自己負担増と給付減の議論が9月26日に始まり、来年の通常国会に改悪法案を提出しようとしている。
コロナ対策放棄、原発再稼働と新増設
岸田政権は、「ウィズコロナ」を標榜し、療養期間の短縮や無症状者の外出容認など、科学的根拠もなく規制緩和に走っている。9月26日から感染者の「全数把握」の放棄に踏み出した。その一方で、新たな感染拡大を生みかねない「全国旅行支援」(旧GoToトラベル)を、10月11日から実施するとしている。
また、今臨時国会で感染症法を改悪しようとしている。都道府県が医療機関と協定を結び病床や外来医療の確保などを義務づける、感染のおそれがある人に自宅などでの待機を罰則付きで指示できる、等だ。医療態勢の抜本的な強化抜きに義務や罰則で縛り、医療現場や患者に責任を押しつけるものだ。
岸田は、所信表明で「十数基の原発の再稼働、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設などについて、年末に向け、専門家による議論の加速」を表明し、再稼働と新増設推進を明確にした。これを受け、原子力規制委員会は10月5日、運転期間40年最大60年の定めを原子炉等規制法から外すことを容認した。岸田政権は、「新増設・リプレース」を考えず原発依存度は「可能な限り低減する」としてきた従来方針の大転換をはかろうとしている。11年たってもその全容が明らかにならない福島原発事故の教訓を顧みることもなく、一層の原発推進に舵を切るなど許されない。
改憲への動きを食い止めよう
岸田政権は、憲法改悪に向けた動きを加速させようとしている。代表質問で維新の会の馬場代表が「今国会は、議論が真に軌道に乗るか否かの重大な試金石になる」としたのに対し、岸田は「任期中に憲法改正を実現したいという考えにいささかの変わりもない」と応じた。今年の通常国会では、衆参両院の憲法審査会がほぼ毎週開かれた。臨時国会でも同様のペースで議論し、来年の通常国会に向けて改憲原案の作成に進むことを狙うだろう。改憲発議の前提となる国民投票法改定を、CM規制その他の公平かつ公正な投票を確保するための措置を含まないまま、強行しようとするだろう。改憲の問題点を広く宣伝するとともに、ぐらつく岸田政権をあらゆる問題で批判することが、改憲阻止のためにも重要だ。
支持率急落の岸田政権を追撃しよう
安倍国葬実施後も、岸田内閣の支持率は下がり続けている。10月初めのJNNの世論調査では、内閣支持率は42・7%で9月から5・4ポイント低下、2か月連続で発足後最低を更新した。不支持は53・9%で5・6ポイント上昇した。朝日の世論調査では支持率40%、不支持率50%(9月は40%と47%)。読売ですら支持率45%で、不支持46%と逆転した。国葬前だが毎日の調査では支持率は29%まで下がり、自民党の支持率も23%まで落ちた。
岸田内閣の支持率を急落させたのは、国葬や統一教会とのつながりに対する批判と運動だ。7月の参院選で自民が大勝し、直後に岸田が安倍国葬を打ち出した時と、政権を取り巻く環境は様変わりした。「何もしない」ことによって高支持率を保ってきたが、逆風が吹き始めると、目をそらすための政策やキャッチフレーズが打ち出せない。
岸田政権を臨時国会で追撃しよう。国葬強行、統一教会との癒着の責任を追及しよう。国葬に莫大な税金が使われ、これを批判する人が多かった。物価高騰と生活苦を放置して軍事費を5~6兆円も増やすなどとんでもない。怒りの声を国会へ。
2022年10月8日 『コミュニスト・デモクラット』編集局