[1] 停戦・和平反対の言論・イデオロギーと闘おう
ウクライナ戦争は非常に危険な段階に
ウクライナ戦争は新しい非常に危険な段階に入っている。米・NATO・ウクライナ軍の9月の電撃的進撃、ノルドストリーム、クリミア橋へのテロ攻撃が相次いでいる。戦争が拡大スパイラルの兆候を示している。モスクワの米国大使館は9月28日に、イタリア大使館は翌29日に、ポーランド外務省も9月27日に、自国民にロシアを緊急に離れるよう要請した。戦争を煽る非常に無責任かつ危険な動きだ。
まずは、このスパイラルをストップすべきだ。ヨーロッパ戦争になりかねない。バイデンやゼレンスキーが核危機を弄んでいる。戦争と制裁が続くことで、世界中が食糧危機や燃料費高騰、物価高騰と生活苦に見舞われている。
危機感を抱いた国々や団体や諸個人が即時停戦の声を挙げ始めた。9月下旬の国連総会で、新興・途上諸国を中心に66カ国が演説で停戦、平和的交渉を通じての解決を要求した。国家数で3分の1、人口で大半を占める。9月中旬の上海協力機構(SCO)サマルカンド・サミットでも、中国が主導して停戦・和平を呼びかけた。
停戦反対=徹底抗戦の異常な言論状況
9月に入ってウクライナ軍が快進撃をしてから、メディアはロシア敗退の戦況報道一色になった。次いで、部分動員批判とその後の混乱報道。そして住民投票・併合批判。ロシアの敗北が見えてきたと煽っている。今や、親ウクライナ報道一色だ。
西側政府・メディアが、言論抑圧、言論統制の先頭に立っている。戦争を煽る言論の自由はあるが、停戦を要求する言論の自由はない。保守・極右はもちろん、左翼の一部や人権団体までもが停戦に反対し、ロシアの一方的撤退、一方的降伏を要求している。ウクライナ支援を理由に、ウクライナの徹底抗戦、米・NATOの介入や武器供与・戦費支出を支持するという異常な状況になっている。停戦要求は即プーチン支持、親ロシアの裏切り者とされ排撃される。イーロン・マスク(ウクライナ軍に大量の衛星通信電話スターリンクを提供した)や米経済学者ジェフリー・サックスでさえ、停戦と交渉を呼びかけるや否や一斉に袋だたきにあう状態だ。
西側メディアの「ウクライナの勝利はあと一歩」はウソだ。ウクライナの勝利は幻想だ。ロシア軍は守勢に回っても部分動員を発令して増員し、その兵力は併合した地域を防衛する十分な力を持っている。結局は長期戦になる。その結果は犠牲者が増えるだけだ。
ウクライナ人権団体「市民自由センター」がノーベル平和賞を受賞した。「ロシアの戦争犯罪」を人為的に作り上げている政治団体である。政権転覆を主任務とする米CIAの別動隊・全米民主主義基金が全面支援している。
異常な言論状況の流れを変えなければならない。
ウクライナ反戦の新しい緊急任務
戦争拡大スパイラルを前に、ウクライナ反戦は新しい緊急任務に直面している。
第1に、ウクライナ戦争が新しい超危険な段階に入っていることに警鐘乱打することだ。その張本人が米・NATOであり、それに追随するゼレンスキー政権であることを暴露する。
第2に、われわれは、ロシアが主導したウクライナ東部・南部地域4地域の住民投票とロシア併合に反対する。ただし、この政策を米・NATO主導の戦争拡大スパイラルの中に位置づける必要がある。
第3に、今こそ、米・NATOが主導するウクライナ戦争の拡大スパイラルを阻止し、ロシアの一方的撤退、一方的敗北ではなく、相互の妥協・譲歩による停戦・和平交渉へ進むこと、ロシアを含むヨーロッパ規模の安全保障の枠組みを作り上げる必要を訴える。
第4に、米・NATOは、ウクライナ介入に続き、「台湾有事」「朝鮮半島有事」への介入を強めている。米帝国主義の侵略性、好戦性の異常な拡大を暴露・批判し、反米・反帝の反戦運動を呼びかける。
[2] ウクライナ戦争の拡大スパイラルの危険を阻止しよう
米・NATO軍の本格的な戦争指導夏が転換点
最大の危険は、米・NATO帝国主義が、守勢に立ったロシア・プーチン打倒に向けて戦争に本格介入し始めたことだ。転換点は夏だ。米が長射程砲のハイマース(HIMARS、装輪式自走多連装ロケット砲)を供与し、弾薬庫・物資集積地・橋梁などの破壊による補給妨害を可能にした。目標選定も米主導した。それまで米・NATO軍は、西側製の携帯式対戦車ミサイル、対空ミサイルを供与し、ロシア軍の動向情報を与えて都市部、塹壕戦でウクライナ軍の防御を支援するにとどまっていた。
9月、ウクライナ軍は電撃作戦を成功させた。その作戦を計画し、指導したのも米・NATOである。ウクライナ戦闘員をNATO諸国で数ヶ月、半年かけて訓練し、西側の戦闘法で鍛え、戦車や装甲車で重武装させ、それまでロシア軍が秘匿してきた数万の精鋭機甲師団を偵察衛星などで探り出し、ロシア軍の弱点に突入させた。これがハリコフでの快進撃となった。
9月攻勢で米・NATO軍が戦争全般、攻勢作戦を全面的に指導するようになった。いまやウクライナ兵は米とNATOの指図に従って闘う手足となっている。具体的には、米・NATOが軍事衛星・偵察全体を引き受け、兵器・弾薬を補給し、米・NATOの司令部が計画を立案、ウクライナ軍とすりあわせながら各地の地域レベルの指導を行い、電撃戦と攻勢を指揮している。米ペンタゴンは長期戦に備えて、ウクライナ戦争専用の軍司令部さえ新たに設置する構えだ。
米・NATOはまた、機甲部隊編成に数百両のソ連製戦車とそれを上回る西側装甲車両など大量の必要な兵器・武器を提供した。西側兵器の操作指導等、彼らの訓練はNATO諸国で行っている。莫大な軍事費はバイデン政権が中心に出している。すでに米政府は2月以来170億ドル(2兆5千億円)もの軍事支援をウクライナに行っている。
要がするに、戦争計画と作戦指揮は米・NATO、現地で戦い死傷するのはウクライナ軍兵士とウクライナ住民。破壊されるのもウクライナの国土、農地、インフラというものだ。
この「代理戦争方式」は、ロシア軍のウクライナ侵攻以後に米帝国主義が編み出した新しい侵略方式である。イラク戦争やアフガニスタン戦争のように、米・NATO軍が直接戦闘に参加する必要はない。だから米・NATO軍兵士は犠牲者にならない。米・NATO諸国の国民は、他人事で済ますことができる。ウクライナ人兵士が消耗品として補給される限り、いつまでも戦争を継続できる。おぞましいやり方だ。
ゼレンスキーの暴走と野望 法律で停戦・和平交渉の禁止を決定
9月電撃戦の成功でゼレンスキーは勝利の幻想を持った。東部・南部地域やクリミアの武力奪還の野望を抱くようになっている。調子に乗って9月30日にはNATO加盟申請を行った。
ゼレンスキーは10月4日にはプーチン政権と停戦・和平交渉を禁止する法に署名した。停戦・和平にはプーチン政権の打倒が前提だとの強硬姿勢だ。また同月8日にはザポリージャ原発に砲撃を行い、外部電源を喪失させた。重大事故寸前の火遊びを繰り返している。また同じ日、クリミヤ大橋を車両爆弾で攻撃し重大な被害を与えた。ゼレンスキーはクリミヤを武力で奪還するまで戦うと公言し、徹底抗戦、玉砕路線を加速させている。ロシア側のインフラへのテロ攻撃は、戦争拡大スパイラルの着火点になりかねない。
ゼレンスキーは10月6日、インタビューで、「NATOがロシアに先制核攻撃を行うべきだ」と主張した。バイデンはこれを止めるのではなく、核攻撃をしようとしているのはロシアの側だ、「ハルマゲドンだ」と無責任な宣伝をしている。戦争は制御できない危険水域に近づきつつある。
米・NATOのノルドストリーム破壊工作
9月26日にノルドストリーム1・2のパイプラインの4カ所が爆破された。西側のメディアは直ちにロシアがやったと馬鹿げたことを垂れ流した。しかし、ロシアでないことは明白だ。供給を止めたければパイプ破壊ではなくバルブを閉めればいいだけだ。事件は米国の軍・諜報機関であろう。
この破壊工作は、バイデン政権によるドイツのショルツ政権への脅しだ。インフレ・物価高、ガス価格の高騰でヨーロッパ諸国が政治危機に陥る中で、EUの盟主ドイツがロシアに妥協的になるのを阻止するためと言われている。米帝国主義が対ロシア戦争を完遂するには、EUの動揺を締め上げ、ヨーロッパ帝国主義を従属させる必要があるからだ。
[3] 東部・南部4地域の住民投票・併合と米・NATO主導の戦争拡大スパイラル
住民投票・ロシア併合に反対する
ロシアは9月下旬、占領下のウクライナ東部・南部4州でロシアへの併合に関する住民投票を行い、圧倒的多数の住民が支持したとして10月5日、プーチン大統領は南部2州の独立と4州のロシアへの併合手続きを終えた。
われわれはウクライナ東部・南部地域の住民投票・ロシア併合に反対である。国家主権・領土主権の侵害だからである。現在いる住民の圧倒的多数がロシアへの帰属を望んだという。彼らの多くは、2014年以来、ウクライナ政府からの差別、虐待、虐殺を受けてきた。だからウクライナ政府からの住民保護・防衛的措置の側面はある。しかし、戦争状態、占領下での住民投票は自由意志と公正さに疑問が残る。ウクライナ側に避難した住民の意思も反映されない。本来なら、住民すべてが参加し、公正さが保障されなければならない。このためにも停戦と政治的解決が必要なのだ。
ウクライナ戦争の階級的・基本的評価は変わらない
しかし、住民投票と併合問題を、前記の米・NATO主導の戦争拡大スパイラルと切り離して考えるのは誤りだ。メディアは、一つ一つの出来事をロシア批判のためにだけバラバラに報道する。惑わされないようにしよう。歴史過程を無視すれば事の本質を見誤る。
改めて、今回の2月以降のロシア軍の侵攻について立場を明らかにしたい。まず、われわれはロシアのウクライナ侵攻には反対だ。独立主権国家に対する軍事侵攻は、国連憲章、国家主権と領土主権不可分性の侵害であり国際法に違反するからだ。
しかし、ロシア・ウクライナ関係には、今回の戦争に至る歴史的な背景、経緯がある。この理解抜きには、停戦・和平交渉の意義も、永続的な和平の道の意義も見出すことはできない。
今回の戦争の直接的・根本的原因は、米・NATOが直接間接に介入した2014年の「マイダン・クーデター」による親ロシア政権打倒に始まる。米は莫大な資金と人脈で育成した反ロシア勢力、ネオナチ勢力を利用し、ウクライナ軍をネオナチ化した。ゼレンスキー・ネオナチ政権は、反ロシア=ウクライナ民族主義を前面に出し、東部2州のロシア系住民への虐殺と弾圧を続け、2国間・多国間で合意した東部2州の和平合意(2つの「ミンスク合意」)を守らず、破棄し続けた。その意味で、戦争は7ヶ月ではなく8年間続いている。クリミアを奪還するために、自国を対ロシアミサイル基地にするために、NATO加盟を企てた。
今ではゼレンスキー政権が一方的な被害者、聖者として世界中に宣伝されているが、反動的・軍国主義的で、ネオナチと一体化した軍隊をもってロシア系住民を虐殺した残忍な政権であることを忘れてはならない。
ヨーロッパの永続的安全保障の枠組みを目指すべき
マイダン・クーデターをそそのかしたのも、ゼレンスキーの好戦的野望を後押ししたのも米・NATOである。この一連の歴史過程を主導したのは、ソ連社会主義崩壊以降の米・NATO帝国主義による東方拡大=ロシア封じ込め、プーチン打倒政策にある。ロシアを属国化し、その石油・天然ガス・鉱物資源を略奪すること、核大国ロシアを崩壊させることが目的だ。
ロシアが2月に先制攻撃したために事態は複雑になっているが、今回の戦争の歴史的起源、根本原因を見誤ってはならない。元々、今回の戦争は、米・NATO帝国主義による資本主義ロシアに対する帝国主義戦争である。さらに戦争拡大スパイラルの現局面では、危険な帝国主義的性格が前面に出ている。従って、米・NATO帝国主義に矛先を向け、非難・批判を集中する必要がある。
戦争スパイラルの中でのロシアの一方的撤退は何を意味するか。それは何が起こるかを考えれば容易にわかる。東部2州とクリミアのロシア語系住民に対する報復と大虐殺、大惨劇が起こる。ウクライナが米・NATO帝国主義の新たなロシア攻撃拠点になる。中距離核兵器が配備される。次の米・NATOとロシアとの本格戦争が起こるだけだ。
まずは、即時停戦・和平だが、それはヨーロッパ全域の永続的和平の枠組みへの第一歩として位置づけられなければならない。ロシアに一方的に犠牲を強いるのではなく、さらには東部・南部のロシア語系住民の安全と自由を保障するシステムを作ること、米・NATO帝国主義の東方拡大、ロシア打倒戦略を断念させることが絶対条件だ。
[4] 米・NATOの異常な好戦性に批判を集中し、反米・反帝の反戦運動を強めよう
米・NATOのかつてないグローバルな戦争介入
バイデンの冒険主義は常軌を逸している。米・NATOは、ウクライナでの「代理戦争」を拡大しながら、同時に「台湾有事」で対中戦争挑発を加速させ、さらに、新たに「朝鮮半島有事」に乗り出した。イランでも政権転覆を策動している。米軍が3つの正面で戦争を構えるのはかつてなかった。異常というしかない。
最近の相次ぐ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のミサイル発射は、米韓共同軍事演習に対する牽制と対抗だ。バイデンは、米空母を日本海に2度にわたって展開し、対北朝鮮、対中国挑発を続けている。ここでも日本が加担し、日本海では日米韓の共同訓練で北朝鮮を威嚇している。だが、西側政府・メディアは、米韓の軍事演習の危険性は無視し、北朝鮮を一方的に非難している。
反米・反帝の反戦運動を強めよう
米では全米統一反戦連合や女性反戦団体コードピンクなどの反戦運動が10月15~22日の週、中間選挙の選挙戦の最中に「ロシアと中国に向けたワシントンの戦争を止めよう! イラク、シリア、ソマリア、パレスチナ、あらゆる場所での終わりのない戦争を阻止しよう! 戦争ではなく、住宅、気候、医療におカネを!」を掲げて全米・全世界50カ所で街頭行動を計画している。
2022年10月9日 『コミュニスト・デモクラット』編集局