【第98号主張】
安倍国葬中止、軍事費倍増反対、
人民生活防衛を結び、岸田政権と闘おう

    

[1] 国葬、統一教会、軍拡、新型コロナ感染拡大で岸田政権を徹底追及しよう!

参院選大勝から一転、守勢に立たされる岸田政権

 7月の参院選で、自民党は大勝し、改選議席125の過半数63を単独で獲得した。公明、維新、国民を加えた改憲政党の議席は3分の2を超えた。岸田首相は参院選後の会見で、臨時国会にむけ議論をリードし、早期に改憲を発議する方針であることを明らかにした。参院選勝利の勢いの中で、選挙期間中に殺害された安倍元首相の国葬を早々に発表して、安倍政権への礼賛ムードを作りだし、化けの皮の剥がれた「新たな資本主義」という口先改革を早々に投げ捨て、人民生活の悪化を完全に放置する無策を容認させ、弔問外交を通じて政権の「権威」を高め、国政選挙がない「黄金の三年」の最初の年に岸田政権が改憲への道筋をつける。岸田政権の見え透いた「長期政権」構想をメディアも煽った。
 だが、早くもその歯車の逆回転が始まった。岸田が国葬方針を発表した当初には賛成が上回っていた世論調査の結果が、まだ僅差だが逆転した。安倍礼賛押しつけや2億円もの支出への批判と警戒が強まり、何よりも統一教会の悪行と自民党とのつながりが連日指弾されている。もはや安倍元首相殺害の背景の問題ではない。長期にわたる政権与党・自民党と反社会的・反共・カルト集団との異常な蜜月・一体化の問題として暴露されているのだ。安倍派の大半が深くつながり自民党全体にもかかわっている。国葬と統一教会問題は岸田政権の最大の弱点である。
 世論を反転させた岸田不信の根底には、急激に進む人民生活悪化がある。生活が立ちゆかなくなるほどの現状に対する対応無策に対する怒りがある。新型コロナの感染放置と無責任な政策に人民大衆の不安が増し、物価高騰と生活窮乏化に何の手も打たない岸田政権への不信と不満が渦巻いている。
 内閣支持率は参院選直後から急落し始めた。今こそ岸田政権を追いつめるチャンスである。改憲勢力に有利となった国会内の力関係を、大衆世論と運動の力によって押し返していくことは十分に可能である。

国葬中止を軸に、岸田政権と闘おう

 岸田首相は、8月3日開会の臨時国会を、野党の延長要求を拒否して3日間で閉会させた。実質審議は何も行わず、逃げに終始した。発足当初に掲げていた「聞く政治」を悉く投げ捨てた。感染爆発が継続し医療破壊と医療放棄を進行させ多数の犠牲者を生み出している現状と対策、重症者を含む有症状者を放置している現状と対策、物価高騰の現状と喫緊の対策、連日明らかにされる自民党・政権中枢と統一教会との60年以上にわたる癒着関係に関する説明責任すら完全に投げ捨てた。岸田首相は政権への逆風を、核不拡散条約(NPT)会議出席、ペロシ訪台支持と訪日・岸田首相会談、グテーレス国連事務総長の広島訪問と会談など、一連の外交イベントで求心力を高めようとした。しかし、そのすべてが失敗に終わった。「戦争被爆国」の首相が「核兵器禁止条約」を改めて完全に無視したNPTでの岸田演説は、日本をはじめ世界の被爆者を落胆させ、条約加盟各国の非難を浴びた。グテーレス事務総長の広島訪問・平和記念式典参加は、広島出身である岸田が「条約」を無視し「核共有」という議論さえ容認する岸田首相への批判を抑え込むパフォーマンスに過ぎない。米政権の言いなりでペロシ訪台を無条件に支持したあげく、訪日したペロシの行動を首相自ら面談して絶賛した。中国による反発と軍事演習の脅威を煽り反中世論を高めることで米政権への服従ぶりを全世界にさらし、そうすることで国内向けの岸田政権への批判をそらそうとした。しかし、ペロシ訪台という危険な火遊びに加担した日本政府に中国をはじめASEAN諸国からも、台湾国内からも批判の声が上がっている。
 岸田政権への批判と怒りはますます高まるだろう。国民の命を危険にさらし、生活を破壊し、対中戦争準備を最優先する政権など許されない。国葬中止要求が現在の最大の集中点だ。国葬は安倍元首相が一強支配のもとで進めてきた改憲、対中軍拡、新自由主義とアベノミクス等を礼賛するものだからだ。一方での国葬への巨費投入と他方での人民生活悪化、改憲イデオロギーと統一教会の反共・反民主主義的教義、新型コロナ対策の放棄と医療破壊、軍事費増と社会保障切り捨て、低賃金・非正規雇用のさらなる拡大、等々。

国会を開け。世論と運動の力で潮目の変化を確かなものに。岸田政権を追いつめよう

 もちろん、国内政治の力関係が根本的に変わったわけではない。参院選における自民党の大勝と改憲勢力の3分の2獲得、その結果から生み出された国会の力関係は厳然と存在する。内閣支持率が急落したとはいえ、多くの世論調査で今なお5割を超える。何より主要メディアが正面からの岸田批判に転じたわけでもない。確かに国内政治の潮目は変わったが、世論を背景に大衆運動によって追い詰めなければ、潮目は簡単に再逆転されるだろう。今ほど世論への働きかけが重要なときはない。SNSなどあらゆる手段を使って岸田政権批判を強めよう。足元から安倍国葬中止、統一教会問題糾明、軍事費倍増反対、コロナ感染対策を求める運動を作り上げよう。
 野党は安倍国葬で閉会中審査を行わせる方針だ。岸田与党を逃がしてはならない。早急に国会を開かせ、統一教会問題を徹底追及し、安倍国葬の中止を迫っていこう。

[2] 中国、韓国からの警告。改憲と軍事費倍増を許すな

日本の改憲に対する中国、韓国からの厳しい警告。侵略戦争の反省を忘れるな 

 参院選後、中国、韓国から日本の改憲の動きに対する警告が相次いだ。中国政府は、日本の憲法の戦争放棄はアジアの近隣諸国に対する国際公約であるとし、「日本側が歴史の教訓を真にくみ取」るよう求めた。韓国外交部も「平和憲法の精神尊重を」とコメントした。憲法9条は、日本一国の問題ではない。国際的な、とりわけ日本の侵略戦争の被害を受けたアジア諸国政府と人民に対する「不戦の誓い」であることを、被害を受けた近隣諸国は決して忘れていない。「台湾有事」を鮮明にし、これに自衛隊が直接参加し、日米両軍が一体となって中国を攻撃するために、憲法改悪を行おうとしていることを中国自身が強く警戒しているのだ。
 自民党は、憲法9条への「自衛隊」の明記、戦時に人権を制限する緊急事態条項の新設を中心に改憲に進もうとしている。国民投票法改定案の秋の臨時国会での強行成立を、改憲に向けた第一歩にしようとしている。
 日本国憲法が、朝鮮・中国・アジア太平洋諸国全体に対する侵略戦争の反省の上に成立した事実を改めて思い起こし、改憲反対の闘いを構築しよう。

軍事費倍増計画をやめよ

 岸田首相は、4月の日米会談でバイデンに約束した軍事費2倍化へ動き始めた。「GDP2%」は「台湾有事」「改憲」とセットである。それはまた、台湾問題で警戒を強める中国に対する挑発行為であり、威嚇行為であることを意味する。
 岸田政権は「骨太の方針」で「防衛力の5年以内の抜本的強化」を打ち出した。その中身は、スタンドオフ防衛能力、総合ミサイル防衛能力、無人アセット防衛能力等、従来とは次元の違う侵略的兵器と軍事システムになっている。そのための国家安全保障戦略、中期防、防衛大綱の今年中の見直し・策定に進んでいる。
 政府は、来年度予算概算要求基準について、中期防にかかわる経費を「予算編成過程で検討」と特別扱いし、金額を明記しない「事項要求」を認める方針だ。すなわち予算要求額について上限を設けず、価格を気にせず必要な兵器や装備をリストアップし要求させようというのだ。茂木幹事長は「来年度予算の防衛費を6兆円台半ばに増額すべき」と公言し、自民の宮沢税調会長は「社会保障切り下げの議論」に言及した。

戦争への道は生活破壊への道 

 このまま「台湾有事」=対中戦争準備を進め戦争に突入したらどうなるか、ウクライナ戦争がそれを明らかにしている。米とNATOが挑発して戦争を引き起こし、おびただしい数の犠牲者と深刻な被害が拡大する。当事者は停戦や和平を結ばせてもらえず武器を供給されて否応なく戦うことを強いられる長引く戦争と経済制裁は日本を含む帝国主義諸国にも跳ね返り、人民生活を悪化させる。
 戦争は準備の段階から軍事費増による民生予算圧迫とともに、エネルギー需給の逼迫や一次産品の高騰、重要部品の輸出入の困難などを通じて経済へ打撃をあたえ国民生活を直撃する。中国との関係はロシアとの関係の比ではない。対中戦争準備に突き進むならば、日本の人民生活はさらに悪化する。中国との経済的結びつきの強さは、政府・支配層の対中軍事挑発、対中戦争にとって重要な対抗要因である。
 だが、7月29日に行われた経済版日米2プラス2会議では、対中軍事対決の強化と中国との関係悪化を前提にして、中国とのデカップリングとサプライチェーンの維持のための戦略を議論した。先の国会で成立した経済安全保障法は、日中緊張激化に備えて日本経済を中国経済の影響から切り離そうとするものだ。米は日本政府をあくまで対中対決に引きずり込むつもりだ。岸田政権はこれに応じている。中国との経済的結びつきの強さは、政府・支配層の対中軍事挑発、対中戦争にとっての重要な対抗要因だが、政府支配層をして対中戦争を断念させるものではないことを示している。
 岸田政権は米国の対ロ制裁、対中制裁に参加し、香港問題、新疆ウイグル問題などでの「人権」非難、中国経済のデカップリングとインド太平洋経済枠組み(IPEF)結成など、政治経済の面でも対中対立を強めている。それは、急速かつ着実に進み始めた米帝国主義の一極支配終焉と「多極化」に向けた世界の動き、社会主義中国を先頭にした世界の反米・反帝の途上諸国・新興諸国、進歩的諸勢力の前進、このような歴史の流れに逆行するものである。

[3] 新型コロナ放置、人民生活悪化、労働者への攻撃を許すな

新型コロナ拡大放置に批判を。徹底した封じ込め対策を要求する

 岸田政権への不信と逆風の一つは、新型コロナ感染爆発第7波を抑え込む対策を完全に放棄していることだ。感染爆発は過去最悪となり、重症者と死者が急増し始めた。学校園と高齢者施設での集団感染が急増し、医療体制が危機に瀕し始めている。公共交通機関はじめ生活インフラを担う部門での機能不全が生じるまでになっている。
 政府分科会はインフルエンザ並みの5類への移行、感染者の全数把握の段階的廃止や濃厚接触者の把握中止、医療機関の感染対策の緩和などを提言し、感染拡大の防止ではなく、逆に緩めることによって「見かけの感染」を低くねつ造することで乗り切ろうというのだ。それは感染拡大策に等しい。「マスク・消毒など各自の主体的行動」「大人数での会食の自粛」を呼びかけるだけの状況だ。このまま新型コロナ感染者数の全体数がわからず、診療は保険適用(3割負担)、PCR検査も抗原検査も自主判断ということになれば、真っ先に医療現場や介護現場で集団感染が多発し、人民生活がパニックに陥るのは不可避だ。
 感染拡大の放置を前提とした緩和策など受け入れられない。感染拡大を抑え込むための大前提は、いち早く感染者を発見し、症状に応じた療養隔離・入院治療を行う体制である。感染爆発に歯止めがかからない現状では、政府・自治体が症状の有無を問わず受けられる大規模なPCR検査体制を緊急整備することが必須である。同時に、抜本的な接触制限・人流減らしによる感染拡大の抑制、感染者の療養隔離と入院体制の抜本的拡充、学校での検査・感染防止体制の徹底、休業したあらゆる業者・事業所への完全補償、労働者への雇用・生活保障、生活困窮者のための生活支援等徹底した感染封じ込めと、そのための必要な措置をとることを改めて要求する。
 
物価上昇と人民生活悪化を放置

 物価高騰が続き人民生活を圧迫している。政府統計では物価上昇は2%超だが、1~2割上昇し生活を圧迫している感覚だ。サラダ油や小麦粉、即席めん、パン製品、冷凍食品等々日常生活で不可欠で利用頻度が高い商品の値上げ幅が突出しているからだ。22年の基礎食料品の値上げは1万5000品目を超える勢いだ。
 岸田政権は何の対策も講じないどころか、安倍・菅政権から引き継いだ「雇用流動化」と「全世代型社会保障」で一層の低賃金・不安定労働化と生活悪化、社会保障の切り捨てへと進もうとしている。一つは「副業・兼業の普及・促進」と「フリーランス」だ。前者はダブルワークやトリプルワークを政府として奨励して低賃金・過重労働にたたき込む、後者は労使関係の実態を形式的な個人事業主間の契約にすり替え、雇用主の義務も労働者の権利も無くしてしまおうというものだ。「働き方改革」の第二段階とされ、100時間未満の時間外労働を容認し過労死ラインの労働を合法化する第一段階に続くものだ。「裁量労働の拡大」などサービス残業の合法化や解雇規制の緩和、成果主義賃金の大幅導入と賃金抑制のさらなる徹底など、資本に有利な改悪が次々と提起されている。同時に進んでいる「全世代型社会保障」は、年金制度改悪によって、70歳までの就労義務化に合わせた年金受給年齢引き上げを柱とし、年金給付を徹底的に絞り込む狙いだ。医療費自己負担増、介護保険の給付縮小と自己負担増もさらに進めようとしている。消費税も10%にとどまらず13%、15%への引き上げすら目論まれている。物価高と低賃金にあえぐ労働者人民を、労働条件、社会保障、税収奪の面からさらに追い詰めようとしている。

[4] 職場・地域、労働組合、市民運動など足元からの闘いを岸田政権に集中しよう

先進資本主義諸国で階級闘争が激化し、新たな条件が生まれている

 欧米諸国では、リーマンショック後の長期的慢性不況が持続していたところにインフレ・物価高が労働者・人民の生活を直撃し、階級闘争を先鋭化させている。ベルギーのブリュッセルでの8万人デモ、英国の30年ぶりの鉄道労働者スト、賃上げと戦費支出に反対するイタリア全土での大規模デモ、ノルウェーの石油・ガス労組の賃上げスト、米国における大規模な貧者の行進、アマゾンに続くスターバックスでの労組結成と労働組合運動の活性化、等々。階級闘争の激化は、英ジョンソン政権の崩壊や伊ドラギ辞任、仏マクロン与党の敗北、米バイデン政権の支持率急落、欧州各国の相次ぐ閣僚辞任など、欧米諸国の政府危機、政治的危機へと転化し始めた。
 われわれがとくに注目するのは、この階級闘争の激化が決して単純ではないことだ。先進帝国主義諸国では、極右ファッショ勢力が勢いを増している。イタリアでは9月の総選挙で極右「イタリアの同胞」が第1党になる見込みだ。今年4月のフランス大統領選挙では極右ルペンが躍進した。今秋の米大統領選挙では極右トランプ共和党が下院を奪還する勢いである。この間の労働者・人民の賃金・労働・生活の極限までの破壊、これに追い打ちをかける今回のインフレ・物価高騰、ここから生み出される労働者・人民の不満を、極右ファッショ勢力が組織するのか、それとも左翼・共産主義勢力、労働運動・人民運動の側が組織するのか、という問題である。
 日本の人民運動は大きく立ち後れており、状況は異なる。だが、それでも客観的には欧米諸国と似たような政治状況が生み出されている。参院選では、維新や参政党など極右政党が若者の支持を得て伸張した。
 米欧諸国では「ジェネレーションレフト」と呼ばれる若い層の左傾化、反政府的行動への参加が広範に始まっている。この若い層の活発化が、労働者・人民の広範な不満を労働運動・人民運動の側に組織する非常に重要な原動力になっている。われわれも、このような観点から日本の議会選挙とそこに現れた若者の新たな動向に着目したい。日本ではまだまだ運動や有意な世論として形成されてはいないが、選挙結果や、組合活動、地域活動などを通じて、新しい芽を感じることができる。
 参院選では、小勢力だが反政府の姿勢を比較的鮮明にした「れいわ」、「社民」が健闘した。「れいわ」は、岸田政権の物価無策を突き消費税廃止と財政出動を掲げ、若者をはじめ幅広い層の支持を獲得し議席増につなげた。平和、9条護憲に加え、反差別、生活防衛・反貧困を強調して訴えた「社民」も若い女性の支持を集め政党要件を満たす得票を勝ち取った。沖縄では、オール沖縄が支持し反基地を訴えた候補が与党候補を僅差で破り議席獲得した。8月25日告示、9月11日投開票の沖縄県知事選に向け弾みをつける勝利となった。
 現在の日本の政治状況と階級闘争の低迷の下で、「生活・平和・反原発」を明確に掲げ、現在の議会政治の体制翼賛化と一線を画して旗幟鮮明にすることで、若者をはじめ広範な層を引きつけることができる客観的条件が生み出されている。

軍事費倍増反対、改憲阻止、人民生活防衛を結合して闘おう

 安倍国葬中止は、当面の国内政治の最大の対決点である。安倍元首相の罪状を暴露し、岸田政権による礼賛を批判しよう。長期政権で作り出した一強支配、官邸権力の強大化、政権私物化のもとでの改憲への執着、教育基本法改悪強行、集団的自衛権を合憲とする閣議決定、戦争法の強行成立、アベノミクス=新自由主義政策による貧困化と格差拡大、反基地や反原発の市民運動への弾圧等々。自民党・安倍派と統一教会との関係を徹底して追及し、真相を明らかにさせよう。
 岸田政権は、対中戦争準備・軍事費大幅増を強行しようとすれば、人民関連予算を削減し、人民生活を破壊し、命と健康を切り捨てなければできないという、究極のジレンマを抱えている。ここを徹底的に突き、訴えていこう。安倍国葬中止と統一教会疑惑究明、軍事費倍増反対、憲法改悪阻止、人民生活防衛を結合して闘おう。
 職場・地域、労働組合や市民運動など足元での運動を強め、岸田政権と対決しよう。

2022年8月9日 『コミュニスト・デモクラット』編集局

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