岸田政権は、安倍国葬の閣議決定を撤回せよ
安倍の礼賛を許すな 弔意を強制するな

 7月22日、岸田内閣は、殺害された安倍元首相の国葬を、9月27日に開くことを閣議決定した。安倍の国葬は、「志半ばで不条理な死を迎えた偉大な政治家」など、既に始まっている安倍の礼賛の仕上げとなる。安倍の遺志を国家として継承することを当然とする雰囲気を作り、憲法改悪や軍事費2倍化の推進力にしようとしている。安倍という人物、安倍が代表してきた極右路線への賛美と礼賛を国民に迫ろうとしている。岸田は、それを自らの政権基盤強化に利用しようとしている。
 しかし、思惑通りにはいかない。安倍殺害の動機となった「統一教会」と安倍、および多数の自民党議員との関係が次々と暴露され、当の議員も関係を認めざるをえなくなっている。当初「統一教会」の名前を伏せていたマスコミでも、被害者やこの問題を追及してきた弁護士の声が連日報じられるようになった。そのような関係の中心人物を国葬で送ることが妥当なのか、日々問われる事態となっている。ネットを中心に国葬反対の声が広がり、諸団体が反対声明を出し、世論調査でも反対がはっきりと増え、岸田政権の支持率も急落している。
 「安倍国葬」は思惑とは逆に、岸田政権の最大の弱点となった。追い打ちをかけ、国葬を中止に追い込めば、大きな打撃を与えることができる。国葬の阻止は、夏から秋にかけて、岸田政権との最大の政治的対決点となる。国葬反対の声を広げ、閣議決定の撤回、国葬の中止に追い込もう。

法的根拠もない国葬に、巨額の税金をつぎ込むな。「服喪」の強制を許すな

 国葬は、1967年の吉田茂元首相以来戦後2人目となるが、法的根拠は何もない。戦前からあった国葬令は1947年12月31日に失効している。岸田は、内閣府設置法第4条第3項第33号に「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること」とあることをもって、閣議決定で「国の儀式」としての「国葬儀」ができるとして、強行しようとしている。
 岸田政権は、「国民一般に喪に服することを求めるものではない」としているが、信じられるはずもない。8月6日の記者会見では「我が国としても弔意を国全体として示すことが適切だ」と述べ、事実上「国民」に弔意を強制する姿勢を示した。国葬ではなかった2020年の中曽根元首相の葬儀の際でさえ、文部科学省は国立大や都道府県教育委員会に弔意表明を要請した。国葬となれば、学校や公共施設、公務員などに対して、さらに民間企業に対しても、半旗掲揚などで弔意を表するよう、有形無形の圧力がかけられることは間違いない。また、安倍殺害を阻止できなかった警察は、その「反省」に基づいて、国葬に反対する団体や運動を監視・弾圧しようとするだろう。
 既に、7月12日に行われた安倍の葬儀に際し、東京都、山口県、仙台市、川崎市、福岡市、大阪府吹田市、北海道帯広市などの教育委員会が学校に半旗掲揚を要請していたことが明らかになっている。またこの葬儀では、陸上自衛隊の特別儀仗隊がずらりと並び、音楽隊が演奏した。個人の私的な葬儀に、自衛隊がいかなる法的根拠をもって、誰の命令で参列したというのか? 私的な葬儀ですらこの状態だ。国葬ともなればこれとは比べものにならない。
 国葬の費用は、すべて国費、すなわち税金で賄われる。法的根拠も国会の議決もなく、巨額の税金が使われるのだ。中曽根元首相の内閣・自民党合同葬の費用は約1億9300万円に上り、半額を国費で賄った。豪奢な国葬となれば、これを大きく上回る費用がかかるのは間違いない。さらに各国要人が参列し、過剰な「警備」にかかる費用を含めれば、桁違いの額に膨れあがる可能性もある。一部メディアは、総額は37億円に上るとの試算を報じた。急激なインフレとコロナ禍で多くの人々が生活苦に追い込まれる中、このような巨額の税金を投入した国葬の強行を許してよいはずがない。

民主主義の破壊者の国葬などありえない

 岸田は、国葬とする理由について、「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く決意を示す」などとしている。しかし安倍こそ、「戦後民主主義」を目の敵にし、それを破壊してきた張本人ではなかったか。
 何よりも安倍は憲法の破壊者であった。改憲発議要件緩和の96条改訂から、自衛隊の9条への書き込み、9条や「緊急事態条項」4項目の改憲など、手を変え品を変え改憲を追求したが、それだけではない。憲法解釈を変更して集団的自衛権を合憲とし、戦争法を強行採決で成立させ(2015年)、自衛隊を米軍による対中国戦争、侵略戦争に積極的に参加する軍隊にした。秘密保護法(13年)、共謀罪法(17年)など、憲法違反の法律を次々と成立させた。教育基本法を改悪し(06年)、教育を子どものためではなく国家のためのものに変えようとした。生活保護の切り下げや生活関連予算の削減、消費税の引き上げなどによって、とりわけ低所得者を生活困難に追い込み、生存権を奪った。
 何度も反対を表明した沖縄の民意を無視し、辺野古新基地建設を強行し続けている。高江のオスプレイ・パッド建設を強行した。宮古島など南西諸島のミサイル基地化を進めている。福島事故の避難者を切り捨て、原発再稼働を進めた。
 森友学園、加計学園、「桜を見る会」など、数々の政治の私物化と腐敗をもたらした張本人であった。これら悪法の成立や疑惑追及の封じ込めのため、国会審議を軽視・無視し、異論・批判を数の力によって封じ込め、強行採決を乱発した。虚偽答弁を繰り返し、その数は「桜を見る会」関係だけでも118回に及ぶ。森友疑惑では前代未聞の「決裁文書の改ざん」を引き起こし、財務省職員を自殺に追い込んだ。親しい「ジャーナリスト」の性犯罪もみ消しのために警察権力も利用した。
 被害者を切り捨てた日韓「慰安婦」合意(15年)、徴用工被害者への賠償を命じた韓国大法院判決(18年)への非難、半導体材料などの輸出規制による報復(19年)などによって、日韓関係を「戦後最悪」と言われるところまで叩き落とした。
 「アベノミクス」で、異常な金融緩和と国債乱発で円安と株高を演出したが、富は輸出で潤う独占企業と富裕層に集中した。失業率は下がったが、それは非正規労働拡大によるものであり、「持つ者」と「持たざる者」の格差を広げた。現在は、円安も大きな要因であるインフレによって「持たざる者」の生活を一段と苦しくしている。膨大な国債を日銀に買い取らせたことは、他国が金利を引き上げても日本は引き上げられない袋小路に追い込む原因となって、日本経済を痛めつけている。
 国葬は、こうした安倍のあらゆる所行に対する批判を封じ、逆に全面的に肯定することで、民主主義をさらに押しつぶすものだ。絶対に許されない。

統一教会と自民党との関係を徹底糾明せよ

 安倍を殺害した容疑者は、安倍と統一教会(現「世界平和統一家庭連合」)とのつながりを動機として語っている。容疑者は、統一教会によって家族を破壊され、人生を狂わされた被害者だ。
 統一教会は1954年に文鮮明が韓国で創設、59年に日本支部を設立した。文鮮明はまた、「国際勝共連合」を68年に創設し、同じ年に日本支部を設立している。「日本の共産化」阻止のために、これらの日本支部創設に深く関わったのが、安倍の祖父・岸信介だ。渋谷にあった自宅の隣に統一教会の本部を置かせるなど、死ぬまで密接な交流を続けた。1984年には、米国において脱税で実刑を受けていた文鮮明の釈放を求める嘆願書を、レーガン米大統領に送っている。その関係は、岸の娘婿安倍晋太郎から孫の安倍晋三に引き継がれた。
 安倍は昨年9月、統一教会の関連団体「天宙平和連合(UPF)」のイベントにビデオメッセージを送った。容疑者はこれを見て、安倍の殺害を決意したとされている。安倍は、統一協会系月刊誌『世界思想』の表紙を、少なくとも6回飾っている。
 統一教会が、自民党を中心とする政治家に、カネ・人・票を提供する一方、政治家側はイベント出席やメッセージでその活動にお墨付きを与えるという、「持ちつ持たれつ」の関係が、100人以上の国会議員との間で築かれている。そのほとんどは自民党議員だ。茂木幹事長は党と統一教会との「組織的関係」を否定したが、これだけの議員がつながりを持っていれば、党自体つながっているのと変わりない。中でも安倍派が多く、少なくとも35人。萩生田経産相、岸防衛相、稲田元防衛相、山谷元国家公安委員長、細田衆院議長などそうそうたる顔ぶれだ(ジャーナリスト鈴木エイト氏による)。選挙の際、安倍自身が統一教会の票の振り分けをしていたことを、自民党議員が証言している。
 そうした中でも、安倍派会長代理の下村元文科相とのつながりは特筆される。第2次安倍政権で文科相を務めていた2015年に、統一教会から「世界平和統一家庭連合」への名称変更を、文化庁が認可した。1997年に初めて名称変更を申請しながらその後18年も受理されなかった申請が、受理されたのだ。思惑通り、かつて「集団結婚式」や「霊感商法」で悪名をとどろかせた統一教会が、名称変更とともに近年ほとんど報じられなくなった。下村は、統一教会の悪名を打ち消すことに大きく貢献したのである。そして今回、安倍の国葬を真っ先に主張したのが下村だ。
 統一教会は、こうした関係を通じて自らのイデオロギーを政策に反映させることに成功してきた。2012年の「自民党改憲草案」をはじめとする改憲案や反共政策を強く後押ししてきた。最近は特に、家族・ジェンダーを巡る反動的な主張に基づき、同性婚や夫婦別姓の合法化に反対する活動を活発に展開してきた。「子ども庁」の名称が「こども家庭庁」に変更されたことにも関わっている。安倍は、昨年9月のUPFへのメッセージで「UPFの平和ビジョンにおいて、家庭の価値を強調する点を高く評価いたします」「偏った価値観を社会革命運動として展開する動きに警戒しましょう」と呼びかけていた。
 岸田政権・自民党は、統一教会との関係について、すべてを明らかにし、関係を一切断つべきだ。

国葬反対の声をさらに広げ、岸田政権を追いつめよう 


 安倍国葬について、世論は変化してきている。NHKの世論調査(7月16~18日)では国葬を「評価する」が「評価しない」を上回っていたが、共同通信(7月30~31日)では「反対」「どちらかといえば反対」が53・3%で、「賛成」「どちらかといえば賛成」の45・1%を上回った。日経とテレビ東京(7月29~31日)でも「反対」47%が、「賛成」43%より多かった。
 ネット署名「安倍晋三の国葬に反対します」は7万筆を超え(8月5日現在)、別のネット署名も1万8000筆超が集まっている。ツイッターでは、閣議決定より前にハッシュタグ「#安倍晋三の国葬に反対します」が拡散され、トレンド入りした。
 閣議決定当日の7月22日には、これに反対する首相官邸前緊急行動が行われ、急な呼びかけにもかかわらず約500人が参加した。その後も29日や8月4日にも院内集会や官邸前・議員会館前集会が行われている。国葬の予算執行の差し止めを求める仮処分も、東京地裁に対して申し立てられている。数多くの市民団体、労働組合、教科書運動の団体、被爆者団体、法律家団体、キリスト教団体などが国葬反対の声明を出している。


 政党では、共産党・れいわ新選組・社民党が反対を表明し、当初あいまいな態度を取っていた立憲民主党も反対を明言した。自民党の一部からも疑問の声が上がっている。8月はじめの臨時国会で予定されていた安倍追悼の演説は、野党のほか自民党内からの批判もあり、9月に延期された。


 国葬の実施までにはまだ時間がある。国葬反対の声をさらに広げよう。国葬の目的は、「厳粛」な国葬で安倍を送り、その「遺志」を受け継ぐことが「日本国民」として当然であるような雰囲気をつくることだ。国葬に徹底して反対する運動自体が「厳粛」な雰囲気に抵抗し、安倍の礼賛の阻止につながる。閣議決定撤回、国葬中止を求め、岸田政権を揺るがそう。この運動を、安倍が「悲願」とした改憲を阻止する運動につなげよう。

2022年8月9日『コミュニスト・デモクラット』編集局

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