【第95号主張】岸田政権の感染対策投げ捨て・医療放棄を許すな 

〇 感染を自己責任にするな!「みなし陽性」方針撤回
〇大量PCR検査・療養体制の緊急拡充を行え
〇「ウイズコロナ」=棄民政策反対! 今こそ「ゼロコロナ」をめざせ

[1] 岸田政権は「検査・診察・治療」を受ける権利を侵害するな 
  国民皆保険制度の破壊をやめよ 

(1) 日本のコロナパンデミックは、第5波までとは全く異なる新しい段階に入った。 オミクロン感染爆発の第6波は、「ウイズコロナ」政策の必然的な帰結であった。岸田政権は、この突然の、想定を超える急激な感染爆発に対して、医療の根幹である「検査・診察・治療」そのものを投げ出し、自己責任にすり替えるという、感染症対策の全面放棄、人民を医療から排除する究極の棄民政策に舵を切った。
 それは従来の自公政権の単なる延長ではない。確かに安倍・菅政権は、まともな感染対策を行わず、医療破壊を進め、多数の自宅療養死など深刻な事態を引き起こしてきた。だが岸田政権はこれにとどまらない。全国規模の大災害とも言えるオミクロン急拡大に乗じて、感染拡大は不可避だとして、意図的に医療機関へのアクセスを止める方針に根本的に転換したのだ。確かに岸田政権のコロナ対策は、行き当たりばったりである。しかし、その場しのぎの後手後手の対策の中から、医療放棄を鮮明にしつつある。ついに政府分科会の尾身会長までもが、インフルエンザとの比較で社会経済活動を進める「出口戦略」を口にし始めた。
 医療放棄の最たるものは、まず第1に、PCR検査体制の拡充を放棄し、「みなし陽性」で乗り切る方針である。「重症化リスクが低いと考えられる者」はPCR検査なしで医師がコロナ感染と診断するというものだ(厚労省・1月24日付事務連絡)。濃厚接触者も検査なしで診断可能とされた。自宅療養も受診なしの自己判断で可能となった。検査もせずにコロナ陽性と「みなす」など、医療でも何でもない。すでに「みなし陽性」は全国21都道府県に拡大し、急増している。感染しても濃厚接触者になっても検査できない、受診できない、本当に感染かどうかも分からない、確定診断もできなければ保護療養も、治療方針も立てられない。検査も療養もすべてが「自助」=自己責任なのだ。本当の感染者数も分からなくなった。
 だが問題はそれだけではない。PCR検査体制はOECD諸国の中でも最低レベルであり、検査不足で飽和状態になった。検査陽性率が大阪や東京で4割前後というのは異常である。全国で連日10万人規模の感染者が出ているが、実際はその数倍から10倍と推定されている。
 第2に、入院日数短縮=入院制限だ。厚労省は、中等症Ⅰ以下の感染者を入院4日で退院させる方針を決めた(2月8日)。コロナ軽症・中等症でも基礎疾患が悪化し重症化する事例が急増する中で、しかも他人に感染させる状態であっても病院から追い出し、自宅に放置するというものだ。昨夏、反対世論に押されて撤回した重症者以外の入院制限方針を、感染爆発の最中に再び持ち出し形を変えて強行したのである。2月8日、吉村大阪府知事も入院基準を中等症Ⅱ以上に引き上げ、入院を制限した。
 第3は、感染拡大抑え込みの完全放棄である。岸田首相は、「緊急事態宣言発出は検討さえしていない」(2月7日)など、「経済社会活動の維持」を最優先に拡大抑制は行わない方針を繰り返し表明した。政府分科会の尾身会長は、「人流抑制でなく人数制限」「ステイホームは不要」(1月19日)と本音を吐露し、政府専門家が率先して感染拡大を容認する姿勢を露わにした。
 第4は、待機日数削減だ。厚労省は、濃厚接触者等の待機期間を、従来の14日間から10日間、さらに7日間へと短縮し、なし崩し的に感染防止策の緩和に踏み出した。エッセンシャルワーカーは2回の検査陰性で5日とした。
 第5に、米軍基地からの感染拡大を放置したことだ。オミクロン株はここから沖縄、岩国等で爆発的に広がった。
 第6に、「水際対策」の規制緩和である。日本の検疫体制は、PCR検査ではなく精度の低い抗原検査、自己責任による隔離などずさんなものであったが、財界や海外資本の入国制限解除要求で、制限解除に向けて動きだした。
 第7は、学校感染対策の放棄だ。政府・文科省は、第5波では濃厚接触の候補者リスト作成を学校に強制していたが、今回、濃厚接触者の判断そのものを学校園に丸投げし、休校園等の措置は極力行わないよう指示し、学校園での特別の感染対策は事実上不要とする方針を出した(2月2日通知)。感染の最大震源地が、学校と保育園であるにも関わらず、教職員・生徒・児童・園児らへの全員検査は行われず、感染者が出ても通常授業が強行され、感染が感染を招く感染連鎖に歯止めがかからなくなっている。いったん子どもが感染すれば一家全員が自宅療養・待機を強いられ、家庭内感染は避けられず、子どもから大人、さらには高齢者へと感染が急拡大している。

(2) 急性的な感染爆発による社会の混乱をいいことに、全く本末転倒した「お手上げ論」「仕方がない論」がメディアや専門家の中から噴き出している。「検査パンクは不可抗力」「『みなし陽性』もオミクロン株の特性に合わせたもの」「いくら検査拡大を言ってもやる気がないのだから無理」等々の言説が、日々メディアから垂れ流され、諦めの気分を増長させている。「丸2年もコロナで営業できない」「自分の身は自分で守るしかない」といった「コロナ疲れ」も盛んに煽られる。これら全ては、批判の矛先を岸田政権に向かわせない一種のイデオロギー操作である。立憲民主をはじめとする野党の「提言」路線もまた、矛先を鈍らせる世論誘導に一役買っている。はっきりと矛先を岸田政権に向けたキャンペーンを張る必要がある。
 そもそも爆発的な第6波を招いたのは、岸田政権の責任だ。9月4日の発足以来、コロナ対策は全く何もやらなかった。総裁選に明け暮れたことに始まり、総選挙に全力を投入し、公的PCR検査体制の拡充も、保健所と公衆衛生体制の拡充も、療養・入院施設等の整備も、新たな感染拡大を見越した対策は皆無であった。岸田首相も吉村・松井らの維新首長も、総じて支配層全体が、第6波の感染者急増を一定予見しながら、感染抑制の対策を講じないこと、「ウイズコロナ」で社会経済活動を最優先にすることを早々と決めていたのである。今回の岸田政権の方針転換は、自ら招いた感染爆発の責任を、医療現場と労働者・人民の自己責任に転嫁し、押しつけるものである。その責任を徹底的に追及していかなければならない。

(3) 「みなし陽性」といった岸田政権の医療放棄は、医療現場を混乱させ、学校や保護者の間に不安や戸惑いを生みだしている。危機的状況が広がるにつれて、人民大衆の間から岸田政権に対する疑問や不満、怒りの声が次第に高まりつつある。
 事態は急速に深刻さを増している。すでに重症者は1000人を超え、重症者ベッドも急速に埋まりつつある。2月に入って死者数も急増し始めた。厚労省は死者急増を見越して、広域での火葬場計画を準備せよと各自治体に指示した。自宅療養という名の放置者は全国で43万人を超え(2月2日)、ほぼ同数が「入院・療養調整中」で自宅にとどまらされている。発熱外来があふれかえり、受診できない混乱状態が広がっている。医療スタッフの感染・濃厚接触で人員不足となり、多くの病院で診療制限を強いられている。救急搬送困難が急増し、救急医療体制もまた破綻寸前状態だ。保健所は、疫学調査はもとより、入院調整も感染者の健康観察も困難となり、公衆衛生体制が瓦解し始めた。
 症状が出ても受診できない、そもそも検査にたどり着けない、感染しても宿泊療養できない、入院もできない、投薬も受けられない、自己判断で自宅療養、健康観察も食料配布も受けられない、濃厚接触者には自分で連絡、等々、何もかも自己責任でオミクロン感染に立ち向かわなければならない状況になったのである。
 岸田政権の感染症対策の全面放棄、医療からの排除を許せば、これが今後の基準とされ既成事実となる。今後、さらなる医療切り捨て、自己責任の強要、命の選別が、より露骨な形で出てくるだろう。今こそ批判と怒りの声を岸田政権に集中し、感染対策放棄を転換させていくべき時である。検査し診断を受ける権利、陽性になれば療養隔離され、治療を受け、入院できる権利は、等しく医療を受ける権利を保障する国民皆保険制度の根幹である。「検査・診断・療養隔離・治療」体制の保障は、社会保障と公衆衛生の増進を国に義務づける憲法25条が命じる政府の責務である。感染症対策の自己責任は断じて許されないのである。検査・医療の放棄をやめさせ、感染症対策を再確立させて、「ゼロコロナ」を実現していこう。

[2] 政府・支配層とメディアは、オミクロン過小評価、「ウイズコロナ」=感染放置のイデオロギー攻撃をやめよ

(1) 政府・支配層は、感染者の爆発的急増により現場が対応するのに必死で、考える余裕さえなく忙殺されている状況を逆手にとって、検査・診断・隔離体制が崩壊するのを放置し、「ウイズコロナ」やむなしという状況を意図的に作り出し、人民に押しつけている。「ウイズコロナ」は、経済・社会活動=資本の利益を最優先にする金融資本の、日本の支配層全体の戦略的方針である。もちろん彼らはあからさまに「感染対策は不要だ」とはいわない。しかし経団連や経済同友会など財界は、「ウイズコロナ、ポストコロナ時代の経済活性化」「新しい日常に移行する姿勢」を掲げ、緊急事態宣言は出すな、社会経済活動を活性化せよ、感染症法2類から5類に引き下げよ、等々と露骨に「ウイズコロナ」を推し進めようとしている。
 政府の方針転換と連動して、厚労省と専門家、維新首長やメディア等が一体となってオミクロンの過小評価論を日々大量に垂れ流し、感染リスクを受忍させる究極の「ウイズコロナ」論のイデオロギー操作をエスカレートさせている。その柱は以下のようなものだ。
 第1に、「オミクロンは重症化しない」「インフルエンザ扱いにすべき」等々の、科学的根拠に基づかない過小評価だ。すでに高齢者や基礎疾患がある感染者の重症化が増えている。死者も急増し始めた。新型コロナウイルスの最大の特性の1つは、弱者を重症化させることである。高齢者、透析患者、基礎疾患を有するもの、妊婦など社会的弱者を重症化させ、死に至らせるのだ。オミクロン株は、この特性を一段と強める形でウイルス進化=変異してきたものである。「重症化しないから大丈夫」という言説は、差別と偏見による「命の選別」と優生思想に直結する、きわめて危険なイデオロギーだ。
 普通の風邪などではないこともすでに明らかだ。血管などの全身症状、集中力低下や記憶障害、長期的な後遺症なども報告されている。しかも、さらに感染力の強い「ステルスオミクロン」(BA2)、毒性が強い可能性がある新たなデルタ株変異も日本国内で広がっている。たとえ現在の第6波がピークアウトしても、高止まりあるいはすぐに第7波が来る可能性が高い。楽観論は極めて危険だ。
 第2は、「検査すれば医療崩壊する」「無症状者への検査はムダ」といった検査否定論である。新型コロナウイルスのもう一つの重要な特性は、無症状者からも感染することである。これはオミクロン変異も同じだ。したがって、無症状感染者をいち早く発見し、療養隔離することが決定的な鍵となる。「無症状者への検査はムダ」なる主張は、科学的知見を無視した暴論だ。これほど急速な感染爆発は、PCR検査を徹底的に抑制してきたからである。その結果、今日では医療現場でさえまともにPCR検査できない状況になった。検査抑制論・否定論を唱えてきた国立感染研や感染症ムラの専門家らは、自らの非を認め責任をとらなければならない。
 第3は、「ワクチンこそが最大の武器」という楽観論である。それは資本主義・帝国主義諸国における「ウイズコロナ」政策の柱ともなっている。だがオミクロン株は、免疫逃避という特徴を明確に示している。ワクチンを接種していても感染する。WHOでさえ、ワクチンだけでウイルスを抑え込むことはできず、防疫措置でウイルス拡散率を引き下げるべきと警告している。しかも心筋炎など重篤な副反応もある。発がん性や遺伝毒性、次世代への影響など長期的な安全性評価は全く行われていない。このようなワクチンを子どもにまで接種させる政府方針は誤りである。
 感染爆発の中での過小評価と楽観論は極めて危険である。専門家もメディアも「ウイズコロナ」の世論操作を直ちにやめるべきだ。

(2) 政府・支配層の世論操作のもう一つのターゲットは、中国の「ゼロコロナ」政策である。政府・厚労省と分科会専門家、維新や極右政治家、新自由主義の学者らが一斉に、中国の「ゼロコロナ」批判に血眼となり、「社会と経済を止めるな」「ゼロコロナは失敗した」等々の大合唱を繰り広げている。自らの感染症対策の全面放棄を押し隠すために、中国の「ゼロコロナ」政策の徹底ぶりを揶揄し、中国が感染拡大を抑え込み、人民の命と健康最優先で万全の対策を講じている事実をことごとく無視し、「強権的に封鎖している」「自由がない」など、悪意に満ちた中国批判を意図的に垂れ流している。
 その一方で、欧米諸国の「ウイズコロナ」政策を持ち上げ、「ゼロリスクはない」「中国のようなことはできない」等々と、あらゆる規制を解除して「ウイズコロナ」でいくしかないといった大々的な宣伝を繰り返している。異常な事態を異常と感じさせない、諦めさせるための世論誘導である。
 日本だけではない。西側帝国主義は総じて、自らの感染爆発と甚大な被害は棚に上げ、一斉に、中国の「ゼロコロナ」政策に集中的な批判を浴びせている。米FRBやIMFまでも、「中国のオミクロン対応に懸念」、中国の封鎖措置増加で「米国の供給網や世界経済に影響を与える」「経済に劇的な打撃を与える」等々と、中国に対して「ゼロコロナ」政策の放棄をけしかけている。
 サプライチェーン危機や物価高とインフレ進行など、資本主義体制の危機深刻化の原因を、中国「ゼロコロナ」政策に押しつけ、人民の命と健康を最優先にするゼロコロナ政策の転換を要求しているのだ。帝国主義支配層は、自らの危機、資本主義の危機を社会主義中国に責任転嫁している。

(3) 政府・支配層の世論操作によって、「ゼロコロナ」政策に対する誤解と偏見が広く流布されている。
 「ゼロコロナ」政策は、ウイルスの完全撲滅をめざすものではない。感染者数を絶対的にゼロにすることでも、「社会を止める」ことでもない。「ゼロコロナ」政策とは、感染者が出ても、少しでも早く発見する検査体制で拡大を最小の範囲にとどめ、再拡大しても集中的対策を全力で講じて、短期間で感染拡大を抑え込むことである。それは、早期発見・早期診断・早期隔離・早期治療という感染症対策の基本原則に従って、これを徹底的に行うという考え方に基づいている。感染拡大を容認し、重症者や死者が増えても経済活動=資本の利益を最優先で、制限を強めたり緩めたりする「ウイズコロナ」とは根本的に対立する。
 われわれは、「ウイズコロナ」政策を徹底的に批判し、その階級的本質を暴き出すと同時に、「ゼロコロナ」政策の意義、その必要性・緊急性を具体的に訴えていく必要がある。

[3]「ウイズコロナ」で爆発的感染を放置する西側帝国主義
    人命最優先の「ゼロコロナ」で感染を抑え込む社会主義中国

(1) 欧米の西側帝国主義は相次いで、行動規制の緩和、入国時水際対策の緩和、待機期間短縮などに踏み切り、感染拡大を公然と容認する経済活動=資本最優先政策をエスカレートさせている。
 とくに欧州諸国は一斉に、オミクロン感染をインフルエンザや通常の風邪と同等の扱いにして、規制の緩和・解除に動き始めた。急先鋒は英国だ。1月27日、イングランドのマスク着用義務をなくすなど規制を緩和し、感染者の隔離義務の撤廃を3月から2月下旬に前倒しした。デンマークは2月1日、マスク着用義務や検査陽性時の自己隔離など、あらゆる規制を撤廃した。スウェーデンは2月9日から全規制を撤廃すると発表し、イタリアもまた制限緩和に向けて動きだした。
 これら諸国では軒並み、新型コロナウイルスの特性や科学的知見を無視した「ウイズコロナ」論が台頭している。真っ当な主張をする科学者は脇に追いやられ、非科学的なウイズコロナ論者が政策決定の中枢にのさばる事態である。
 要するに、西側諸国は軒並み、「感染を止めず社会を動かす」という「ウイズコロナ」を徹底し、ほぼ完全な感染放置、毎日毎日数百人、数千人が死亡してもそれを認めるという究極の人命無視・軽視政策に踏み出したのだ。帝国主義、独占資本主義の本性を露わにした。
 だがオミクロン感染爆発の波は、世界規模では決してピークアウトしたわけではない。深刻な被害は拡大している。英国や南アなど、先行してオミクロンに見舞われた諸国ではピークアウトして感染者数が減少したが、一途減少ではなく高止まり傾向も見られている。独などでは今なお爆発的増大を続けピークアウトは未だ見えない。
 WHOは2月1日、一連の諸国の制限解除に対して、「勝利宣言はまだ早い」「誤りだ」と警鐘を鳴らし、ワクチンだけでなくすべての対策をとるように呼びかけた。
 米国とカナダでは入院患者が激増し、医療体制が崩壊し始めた。学校での集団感染も相次ぎ、学校教育が崩壊状態に陥っている。オミクロンに見舞われた欧米諸国全体で、死者数も増大し始めている。米国では今なお一日2600人以上が死亡している現実を見なければならない。
 オミクロン株の急激な感染爆発は、帝国主義・資本主義諸国の医療体制を破壊するだけでなく、通信、電力、物流など重要インフラを機能不全に陥れ、人民生活を破壊し始めた。同時にそれは、循環的・構造的危機を一段と激化させ、階級闘争を先鋭化させる最大の要因の1つとなっている。

(2) 中国は、西安、天津、北京など主要都市で散発的な感染発生、小規模な集団感染など感染の連鎖で大きな困難に直面してきたが、徹底的な「動的ゼロコロナ策」によって市中感染をほぼ抑え込んでいる。「動的ゼロコロナ策」は、早期発見・早期診断・早期隔離・早期治療によってコミュニティ内の拡大を断固として防止することであり、感染と発症、重症化と死亡者を最小限に抑える、真に人民大衆の命と健康を最優先にした政策である。「動的」とは、迅速に対応するという意味だ。
 とくに重点が置かれているのが、迅速な大規模PCR検査と疫学調査である。PCR検査は、昨年9月の国務院方針で、500万人以内は2日間で、500万人以上では3日以内に完了させることが決められた。さらに感染初期段階では最低3回の全員PCR検査と疫学調査、陽性者が出た住宅エリアでは隔離と封鎖管理をして毎日PCR検査、等々、感染状況に応じたエリアごとのピンポイント対策で、地的感染連鎖を抑え込み、全体として社会経済活動を維持するのである。中国は、この「動的ゼロコロナ策」に基づき党と国家が主導し、共産党員が最先頭に立って社会主義的民主主義機構(社区、都市居民委員会、農村の村民委員会、ボランティアなど住民自治活動)を総動員し、人民大衆に依拠して感染を抑え込むことで社会主義の優位性を発揮している。
 もちろん問題が生じなかったわけではない。西安市で起きた診察拒否で妊婦が流産した事件は、西側メディアが一斉に飛びついて「ゼロコロナ」の失敗を騒ぎ立てた。だが中央政府は、この事件だけでなく西安市民からの多数の苦情を受け入れ、防疫対策の問題点をあぶり出し、重篤な患者の優先的受け入れ、透析患者、妊婦、新生児など迅速対応が求められる者の施設設置、慢性病患者の薬の自宅配布、病人を医療機関に送り届ける責任体制、等々、人命最優先の措置を迅速に実行に移したのである。中国の「ゼロコロナ」政策は、変異株の特性と最新の科学的知見を取り入れ、最先端技術も駆使した、きめ細かく精確な対策へと日々進化し続けている。
 何よりも中国「ゼロコロナ」の成功、優位性は客観的数字が雄弁に物語っている。中国におけるコロナ感染者は約13万7000人、死亡は5700人(香港213人、台湾851人を含む)、2020年5月以降の中国本土の死亡者は累計3人だ。他方、米国の感染者は累計7635万人、死亡者は90万5000人を超えた(2月4日)。
 われわれはこの事実を直視すべきだ。何よりも日本政府、厚労省と分科会、専門家は、この中国の成功事例に学び、「ウイズコロナ」から「ゼロコロナ」政策に転換しなければならない。

[4] 今こそ「ゼロコロナ」をめざせ
岸田政権・維新行政にコロナ感染防止・生活最優先を要求しよう

(1) 緊急事態宣言を出すかどうか――これまで感染爆発の波が来る度に繰り返されてきた、不毛な議論が今また湧き上がり、目下の最大の政治的争点の1つになっている。野党や自治体の中から宣言発出を求める声が上がり始めた。だが宣言発出の是非が政局の焦点になること自体、日本の感染症対策が決定的に立ち遅れ、これにメスを入れることができないブルジョア議会政治の危機を現している。
 野党の責任はきわめて重大である。コロナ対策では全く存在感がない。有効な対策を打ち出すこともできていない。立憲民主は昨年、いったんは「ゼロコロナ」を掲げながら、批判を浴びると早々に下ろして腰砕けとなった。共産党もワクチン一辺倒の姿勢で、「ゼロコロナ」を降ろし、中国批判を繰り返している。コロナ対策だけではない。野党はこぞって対中非難決議に賛成あるいは右から批判して岸田政権の対中戦争準備に加担した。改憲策動では立憲民主が憲法審査会の早期審議に方針転換した。岸田政権と闘うのではなく、同調して手を貸す非常に危険な動きである。野党は真っ先に、岸田政権の感染症対策の全面放棄を徹底的に批判し追及すべきである。国民皆保険制度の要である「検査・診断・治療」を当たり前に受けられる権利を保障するよう、岸田政権に迫らなければならない。
 われわれは、緊急事態宣言も蔓延防止等重点措置も反対である。罰則で人民の権利を制限し、有無を言わさず命令に従わせる強権的手法は許されないからだ。だがそれだけではない。そもそも緊急事態宣言や蔓延防止措置は、感染防止対策としては完全に的を外している。爆発的感染拡大の中で、もっぱら飲食業に焦点を当てた対策で感染拡大を抑え込むことなどできない。
 いま緊急に問われているのは、緊急事態宣言ではない。いかに検査を当たり前のようにできる体制を作り上げるか、いかに検査の試薬・キット等を緊急増産し供給するか、いかに早期に感染者を療養・隔離して感染者数を抑え込むか、いかに軽症・中等症・重症者の治療を早期に行うか、感染や濃厚接触で仕事ができず収入減少で生活困難に陥っている人々をいかに救済するか、等々である。岸田政権は感染防止と検査・治療・療養体制拡充に最優先で対策を講じなければならない。資本の利益ではなく、労働者・人民の命と健康、雇用と生活を最優先にする「ゼロコロナ」政策への転換こそが緊急課題である。

(2) オミクロンの感染爆発は、非正規労働者、生活困窮者をさらに困難かつ深刻な状況に追い込んでいる。岸田政権の公的責任放棄と自己責任押しつけ、支援策の立ち遅れが、この状況に一段と拍車をかけている。
 今年に入り、非正規雇用のシフト急減による収入激減で生活困難に陥る人、経済的困窮で住居を失う人が急増している。とくに生活困難者が感染したり、濃厚接触者になって自宅療養を強いられると、より深刻な状態に陥る。
 政府の様々な救済制度は、非正規労働者、生活困難者には極めて冷たい。コロナによる収入減少のための休業支援金・給付金は、原則事業者申請だ。労働者自身も申請可能とされるが、いくつもの壁が立

ちはだかり、結局は自己責任とされて多くの人が諦めざるをえなくなっているのだ。とくにダブルワーク、トリプルワークをしている非正規労働者にとってハードルが高い。しかも助成額はこの1月から減額された。雇用調整助成金も同じである。
 子どもが感染したり学校が休校になった場合の保護者への支援制度「小学校休業等対応助成金」もまた、雇用主の申請・助成が基本であり、申請自体ができない事例が多発している。一連の支援策の条件緩和、休業・生活補償、助成金等の支援制度の抜本的改善、生活困窮者の救済と住居確保は喫緊の課題である。

(3) 岸田政権は決して盤石ではない。想定を超える感染拡大と人民の中で高まる不安と批判に対して、「1000床の臨時医療施設」「ワクチン接種1日100万回」など、後追いの場当たり的対策を繰り出し、取り繕いに躍起になっている。すでに当初の「感染力2倍」という想定は崩れ、感染拡大を抑え込む姿勢がないことが露呈し、次々と政権のボロが出ている。与党内の対立も目立ち始め、内閣支持率が下がり始めた。コロナ放置に加え、物価上昇などで人民生活は確実に悪化し始めている。
 だが自動的に政権が弱体化したり危機に陥ることはない。政権に矛先を向けて批判を強め、大衆運動と大衆世論の力で闘っていかなければ、「ウイズコロナ」政策を転換させていくことはできない。闘うことによってはじめて政権を弱体化させ、追い込んでいくことができる。今こそ、足元から闘いを組織し、世論喚起して、岸田政権と維新政治に怒りの声を集中すべき時である。
 コロナ第6波を抑え込み、感染者の命を救い、医療破壊を食い止め、労働者・人民の健康・生活を守るために、以下の緊急対策を要求する。岸田政権と維新行政に「ゼロコロナ」政策を迫っていこう。

○岸田政権の感染対策全面放棄に批判を集中しよう
○人民の医療からの排除を許すな!国民皆保険制度、医療を受ける権利を守り抜こう
○「ウイズコロナ」ではなく「ゼロコロナ」政策をめざせ
・「早期検査・早期療養・早期治療」で感染拡大を封じ込めよ。検査なしの「みなし陽性」方針撤回。
・公的な大量PCR検査体制の緊急拡充。最低限、有症状者と濃厚接触者には全員検査を速やかに実施せよ。
・感染者と濃厚接触者のための臨時療養施設の緊急整備。重症者と軽中等症の病床確保。そのための財政援助と人員確保。
・自宅療養、自宅隔離者に対する健康観察、食料・生活用品支援。
・医療従事者、介護職員、学校教職員などエッセンシャルワーカーへの定期的検査の実施。
・保健所など感染防止部門への人員増。公衆衛生体制を維持・強化すること。
・食糧品等生活必需品を除く店舗の休業、大規模イベントの中止、公共施設の休止。休業・生活補償の実施。
・抜本的な接触制限・人流削減による感染拡大の抑制。
○学校園に対する公的な感染防止対策を強化せよ
・感染者が出た学校園のすべての教職員、生徒児童らのPCR検査の完全実施。一時的な休校・休園措置。
・学校園のすべての教職員・児童生徒の定期的なPCR検査の実施。
・濃厚接触者調査を学校園任せにしないこと
・医療従事者、エッセンシャルワーカー、子どもを見る人がいない子どもの保育園、学童での預かり、保護者への休業手当、等々。
○コロナによる生活困窮者に対する全面的な生活・雇用支援
・とくに住居喪失者、経済的困窮者に対する宿泊療養、食料・生活の支援。
・「小学校休業等対応助成金」「休業支援金・給付金」等の公的支援制度の条件を緩和し、個人給付にする等の改善を大至急行うこと。
・コロナで休業を余儀なくされたすべての業者・事業所への完全補償。
・生活困窮者支援のためのオンラインとリアルの相談窓口の全市町村への設置。
○コロナ禍で一段と厳しくなっている低賃金・非正規労働者の状態の底上げを図れ
・最低賃金の引き上げ、不安定な非正規雇用の解消と無期雇用への切り替え。
○軍事費拡大・独占資本へのくれてやり・コロナ後の経済対策ではなく、抜本的な検査拡充・医療整備・休業補償に投入せよ
・消費税廃止。「金融所得課税」をはじめ累進課税の強化、法人税増税など高所得者や大企業への増税、軍事費や独占資本へのくれてやりの大幅削減を要求しよう。
○コロナ禍を口実とした憲法への「緊急事態条項」新設、私権制限と政府による強権発動を阻止しよう

2022年2月10日 『コミュニスト・デモクラット』編集局

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